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第二の人生はファンタジー ~七つの玉を集めるぞい~  作者: 不亜後
第一章 チュートリアル編
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第三十三話 黒崎病院

 エミは貞郎を病院に連れて行くと言った。


「……信用していいのか?」


 エミは俺の財布を盗んだ奴だ。

 今、目の前で貞郎を治療してもらったとはいえ少し不安だ。


「……くす。その様子、私のことは知っているみたいね」

「ああ…」

「別に私を頼らなくてもいいよ。でもこのままだとその人腕ないままだよ。それに最悪死んじゃうかも」


 仮にそんなことになったら取り返しがつかないな。


「永輔……ここは彼女を頼りましょう」

「そうだな」


 咲夜もそう言っていることだしここはエミの言う通りに従おう。


「おーい!兄ちゃん!」


 また誰かがこっちに向かってきた。

 今度は俺の隣で観戦していた小汚男だ。

 小汚男の手には袋が持たれている。


「これ忘れもんだぞ」


 小汚男が俺に袋を差し出した。

 咲夜の服が入った袋だった。


「すまねぇ、ありがとな」

「これくらいいいってもんよ。俺と兄ちゃんの仲じゃねぇか」


 観戦を通して少し仲良くなっただけなのに…

 いい奴だなこいつ。


「そっちの兄ちゃんも死んではないみたいだな」

「無事ではないがな」

「ははは。でもよかったな!」

「あぁ…本当によかっ

「あのさぁ」


 俺たちの会話をエミの声が遮った。


「さっさとしないと手遅れになるよ」

「あぁ、すまねぇ」


 そして俺は貞郎をお姫様抱っこした。

 腕がなくなっていて貞郎を背負うことが難しかったからだ。

 結構な重さだが弱音を吐いている暇はない。

 ちなみに腕の方は咲夜がもっている。


「じゃあ、案内してくれ」

「はぐれたら自己責任だから」


 するとエミは赤い入場口の方へ走り出した。


「なっ!?ちょっと待て!」


 エミは俺の言葉に聞く耳を持たず止まる気配はない。

 急いで俺と咲夜は追いかけた。


「無事を祈るぜ〜兄ちゃん!」


 小汚男の声が聞こえ、俺は手を挙げ応答した。



 ーーー



 観戦を終えた大勢の人達を避けながらエミを追いかけた。

 途中、貞郎の姿を見て声をかけた人もちらほらいたが当然無視した。

 そしてたどり着いた場所はシンジュクの街外れだった。


「はぁはぁ…ここが病院か」


 そこにはごく普通の家があった。

『黒崎病院』と書かれた立て看板が家の前にあった。

 本当にここは病院なのだろうか?

 もっと大きい建物のイメージがあるんだが?


「ほら、さっさと入って!」


 エミがドアを開けながら待っている。


「行きましょうか」

「…あぁ」


 俺たちは病院と思わしき家に入った。

 中は野戦病院みたいな感じでベッドがたくさん置いてあった。

 いくつかのベッドの中には人が寝ていた。

 おそらく患者だろう。

 どうやらちゃんとした病院のようだ。


「おぉ、エミちゃん。帰ってきたのか。また足が痛くな…

「ごめん今は無理」


 患者の1人が声をかけたがエミはそれを最後まで聞かずに断った。


「タツヒコー!降りてきてー!」


 エミは大声で誰かを呼んだ。

 その声で寝ていた患者たちが次々と目を覚ました。

 そして患者たちは俺たちの方を見て、正確には貞郎の方を見て何やらぶつぶつと隣同士で喋っていた。


 大声出すんじゃなくて普通に呼びにいけばよかったのでは……


 すると階段から白衣をきた男が降りてきた。

 髪型は銀髪オールバックで口周りと顎に短い髭を生やし、銀色のペンダントをつけていた。

 ガタイもかなりゴツい。


 え?何その人。怖いんだけど。


「なんかようか?」


 タツヒコと呼ばれた男は容姿通りの渋い声を出した。


「治療よ。急いで」


 タツヒコが俺が背負っている貞郎の方を見た。


「そこのベッドに寝かせて待ってろ」


 タツヒコは俺の横にあるベッドを指差して言った人

 俺は言われた通り貞郎を寝かせた。


「腕はそこに置いといて」

「わかりました」


 エミに言われ咲夜はベッドの横にある机の上に腕を置いた。

 そして、タツヒコがワゴンを押して俺たちの方へやってきた。

 ワゴンの上には医療機器と思われるものが乗っていた。

 緑の魔法石もある。


「腕が切れているわ」

「見ればわかる。…一応射っとくか」


 タツヒコはワゴンの上にある注射器を手に取った。

 中には何かが入っている。


「あの…それは…」


 咲夜が心配そうにタツヒコに聞いた。


「安心しろ。私特製の麻酔だ」


 私特製?

 逆に心配なんだけど。


 タツヒコは麻酔を貞郎に射った。

 そして、手術?が始まった。

 まず、緑の魔法石で右腕の切断口にそれぞれ解毒魔法をかけた。

 これはおそらく消毒の代わりだろう。


 次に腕をくっつけた。

 少しでのズレたらいけないらしく慎重に行われた。

 おそらくこれは素人にはできない。

 タツヒコがちゃんとした医者だと確信した。


 その次はくっついた腕をエミが片手で支え、タツヒコが腕を縫合していった。

 エミのもう片方の手は切断口に治癒能力をかけていた。


 そして縫合が終え


「これでひとまずは大丈夫だ」


 タツヒコの額には汗が流れていた。


「ありがとうございます」

「ありがとうございます」


 俺たちはタツヒコに頭を下げた。


「とりあえず最低でも1ヶ月はうちで治療に専念してもらう。そこらへん大丈夫か?」


 1ヶ月か…

 まぁ、シンジュクでの滞在が延びても大丈夫だろう。

 急ぎの用事があるわけでもないし。


「大丈夫だよな?」


 一応咲夜にも確認しておく。


「はい。…でも…白火の確認も一応取っておいた方がいいのでは?」

「そうだな。……ていうことでもう1人の仲間にも確認を取りたいので少しの間…いや、もう遅いんで明日の朝また来ます」

「そうか。だが、その仲間がなんと言おうが絶対に入院はしてもらうぞ。数日後にこいつの腕が取れてもいいなら別にいいが」


 タツヒコは少し口角を上げ言った。

 まぁ、事情を話せば白火が無理やり貞郎を連れて帰ることはないだろう。


「すいません…帰る前に…着替えられる場所とかありますか?」


 咲夜は少し顔を赤めて言った。

 咲夜が今着ているワンピースの裾は、貞郎の腕を止血に使ったため破れたまんまだ。

 おそらく少しでも太ももを上げれば下着が見えるだろう。


「あぁ、二階を使ってくれ。エミ、案内してやれ」

「はーい。ついてきて」


 エミは咲夜を連れて二階に登っていった。

 タツヒコは空いているベッドに座った。


「自己紹介が遅れたな。私は黒崎 龍彦(くろさき たつひこ)だ」

「あ、僕は内海永輔です。そんでこいつが野田貞郎です」

「一応聞いとくが、なんでこうなったんだ?」


 タツヒコは貞郎の方を見て言った。


「あ〜…コロシアムに出場して対戦相手にバサっと……」

「コロシアム?ちっ…ていうことはエミの奴またコロシアムに行ってたのか」


 タツヒコは顔を顰めた。

 別にそれくらい構わないと思うが、ギャンブルが嫌いな人なのだろうか。

 その後は沈黙が続いた。

 しかし、すぐに咲夜たちが降りてきた。

 咲夜は黒いタイトのミニスカートに無地の白いTシャツ姿になっていた。


「じゃあ、帰るか」


 俺たちはもう一度タツヒコとエミにお礼を言い病院を出た。



 帰り道…

 時計の針はてっぺんをこえていたが街はまだ明るかった。


「いや〜…一時はどうなることかと思ったぜ」


 不安から解放されたからだろうか、身体には相当な疲れが溜まっていた。


「はい。タツヒコさんたちには感謝しきれませんね」

「そうだな。…咲夜もその…ありがとな」

「私ですか?」


 咲夜はきょとんとした顔をしている。


「あぁ。買ったばかりの服を破いてまで貞郎を助けてくれて」

「…そのことに関しては申し訳ないです。せっかく永輔が選んでくれましたのにすぐにダメにしてしまって…」

「おいおい、なんで咲夜が謝るんだよ。もし、その行動がなかったら貞郎は死んでたかもしれないんだぞ」

「ですが…」

「まだシンジュクに滞在することになったんだ。また一緒に買いに行ったらいいじゃねぇか」

「…ふふ、そうですね」


 やったね。

 また咲夜とデートする予定が決まったよ。


「それにしてもまだあんな化け物がいるとはな〜」

「…西園寺のことですか?」

「あぁ。まさか貞郎が手も足も出ないとは」

「おそらく、白火やジンと同等の強さでしょうね」

「そうだな」


 白火、ジン、火茶栗、我妻そして西園寺。

 今までたくさんの化け物と出会ってきた。

 4年近く過ごしてきて5人……

 実はこの世界はそんな化け物たちがゴロゴロしているのではなかろうか。

 怖いな〜…


「ところで、永輔。財布の件はどうしますか?」

「あっ…」


 完全に忘れてた。

 でも…


「まぁ貞郎を助けてくれたんだ。今回はなかったことにしよう」

「…永輔がそれでいいなら私は構いませんが」

「でも貞郎の治療費がとんでもない額だったら、その時はエミに払わせよう」

「それがいいですね」


 でも、デートの時にまたお金を使うから少しくらい返してもらおうかな…なんて俺は思ったのだった。



 15分くらいで宿に着いた。


「遅い…」


 白火は椅子の背もたれを抱えるように座っていた。

 声のトーンが少し低い。

 もしかして怒っているのか?

 そりゃそうか。

 日を跨いでるからな。


「すいません。いろいろありまして」


 咲夜が少し頭を下げた。

 そして、白火は俺たちをじろじろ見て


「怪我は……なさそうね。全く〜心配したんだから」


 どうやら白火は俺たちがなんらかのトラブルに巻き込まれたと思ったようだ。

 実際、トラブルはあったんだけど…


「あとは貞郎だけね。まったくどこをほっつき歩いているんだか」


 腕がもげて入院しています。


「あ、そのことですけど」


 その後、咲夜は今日起こった出来事を白火に説明した。

 そして説明を聞き終えた白火は


「医者が()()って言ってるなら従うしかないけど、私は明日帰るよ」

「なんでだよ。1ヶ月くらい待ったらいいじゃねぇか」

「待てないから言ってるの」

「どういうことだ?」


 実は白火は人がたくさんいるところは嫌いなんだろうか?

 実際あんな人気(ひとけ)のない森の中に住んでるし。


「人形を申請したからよ」


 そういえば増築するためにしてたなそんなこと。


「別にキャンセルしたらいいじゃねえか。それともあれか?できないのか?」

「できはするけど、払ったお金は返ってこないのよ。要するに、また人形を申請するために大金を払わなきゃいけないの」

「なるほど…じゃあとりあえず1ヶ月間はお別れだな」

「………」


 白火が不機嫌そうな顔でこっちをジーッと見てくる。


「なんだよ…」

「永輔と咲夜はシンジュクに残るの?…1人は寂しいんだけど……」


 白火が俯いた。

 なんだろう、ものすごく愛おしい。


「だったら、私と貞郎は白火の家の場所を知らないので私が一緒にいきましょう」

「わ〜ん、咲夜ありがと〜」


 白火は咲夜の胸に飛び込んだ。

 微笑ましい光景だね。

 そして、咲夜とのシンジュクデートは無くなったね。


「じゃあ、俺が残って貞郎の腕が治り次第帰る、でいいな」

「うん」

「大丈夫です」


 こうして今後の予定が決まった。



 翌日…

 俺たち3人は朝早くに病院へと向かった。

 病院に着くと貞郎が目覚めていた。

 隣にはタツヒコもいる。

 エミは……まだ寝ているのかな?

 そして、今後について簡潔に説明し終え


「それじゃあ、もう行くね。タツヒコさん。貞郎を助けてくれてありがとね」


 白火がタツヒコに軽く頭を下げた。


「本当にありがとうございます」


 一方咲夜は深々と下げた。

 全く、見習って欲しいもんだ。


「別に医者として当たり前のことをしただけだ」


 やだなにこの人、かっこいい。

 ちなみに治療費はタダだった。

 どうやらここの病院はボランティア活動みたいなもので治療費をとっていないのだ。

 黒崎龍彦さん、人間ができていらっしゃる。

 これからは敬意をこめて、タツヒコ先生と呼ぼう。


「貞郎は治療頑張ってね〜」

「おう」

「永輔は〜特にないや」

「…はい」


 なんだよそれ。

 こうして白火と咲夜は家へと帰ったいった。

 さて、今日から1ヶ月間何をしようか。




















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