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第二の人生はファンタジー ~七つの玉を集めるぞい~  作者: 不亜後
第一章 チュートリアル編
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第三十二話 VS死神

 入場してきたのは貞郎だった。

 貞郎は「行きたいところがある」と言っていたがコロシアムのことだったのか。


「驚きましたね…まさか貞郎が出場しているとは」

「あぁ…まぁあいつ強いからな。俺もこんなのあるってあらかじめ知っていたら出てたかもしれないし」


 今までの出場者はみんなそこまで強くない。

 つまり、賞金を手にすることはほぼ確実ってことだ。

 貞郎はいったい、いくら賞金をもらうことになるのだろう。

 賭け金が楽しみだ。

 今度何か奢ってもらおう。


「なんだい。あの兄ちゃん、兄ちゃんの知り合いなのか?」


 小汚男が話しかけてきた。


「まぁ、そうだが」

「ははは、それはついてないな」

「はあ…」


 何を言ってるんだこいつ。

 貞郎の強さを知らないからそんなこと言えるんだ。

 あのオルストのNo.9だぞ。


「そして貞郎選手の対戦相手は!コロシアム無敗の女。今まで彼女の喜怒哀楽を誰も見たことない!無表情かつ無口な女!“死神"西園寺 (さいおんじ)(ゆかり)ーー!!」


 田口のアナウンスで場内が今日一の歓声で包まれる。

 コロシアム無敗の女か…なるほどそういうことね。

 貞郎はそいつに勝つことができないからついてないのね。

 まぁ貞郎なら負けないだろう。

 あいつも試合に出続けていたらジンや白火のような化け物が出ない限り無敗だろうし。


 青の入場口からは黒いマフラーをした黒髪のショートカットの女の子が出てきた。

 目は前髪で、口はマフラーで隠れていた。


「ふーん…あれが無敗の女か」

「なんだか不気味ですね」


 それは顔がよく見えてないからだと思うけど。


「兄ちゃん。なんで西園寺が死神と言われているか知ってるか?」

「いや…」


 どうせ試合で何人か対戦相手を殺してきたからだと思うけど。

 ん?ていうかそもそも試合で殺しはありなのか?

 ルール説明では特に言及がなかったけど…


「それはな対戦相手を全員殺してきているからだ」

「ぜ、全員!?」


 おいおい。

 物騒な女だな。

 しかも殺しアリなのかよ。

 …大丈夫だよな、貞郎。

 少し心配になってきた。


「なんでそんなおっかない女がこんなに人気あるんだ?」

「あ?人気なんかねえよ」

「じゃあなんでこんなに歓声があがっているんだよ」

「それはな…絶対に勝つからだ!」


 意味がわからないんだけど?

 仮にそうだったら俺のいう通り人気があるだろ。


「要するになぁ、西園寺には金貨10枚賭けても勝つんだよ」

「でもそれじゃあオッズも低いだろ」

「確かに低い。だがオッズが例え1.1倍でも金貨が1枚増えるんだ。観客の中にはこの試合だけベットして、小遣い稼ぎにしている奴もいるぜ」

「なるほどね」


 西園寺に金貨10枚賭けてオッズが1.1倍だったとき金貨1枚勝ち…入場券が銀貨5枚だから、銀貨5枚の利益が出る上に観戦も楽しめる。

 観客からしたらボーナスステージってことか。



「すげ〜歓声だな。それにしても、強い奴とやりたいと言ったがまさか相手が女の子だなんて」


 貞郎は西園寺に向かって言い放った。


「………」


 西園寺は無言で立っている。



「さあ!あと1分でベットする時間が終了だよ!」


 今日1の見せ場だからだろうか、田口の声量が今までより明らかにデカくなっている。

 小汚男は金貨を何枚かベットしていた。


「なぁ咲夜」

「はい」

「貞郎に銅貨1枚だけ賭けてみない?」

「ですから、私は賭け事はしないです」

「はは…冗談だよ」


 ちくしょ〜財布さえすられてなかったら貞郎に賭けてたのに。

 エミのやろ〜。

 絶対に許さんぞ!


「終りょーーう!では集まった賭け金及びオッズをどうぞ!」


 パネルがそれぞれはまっていく。

 そこにはとんでもない金額が表示されていた。


「え〜合計金額は〜…金貨5372枚!銀貨212枚!銅貨565枚!闘技者の獲得金額は約金貨54枚!そしてオッズが西園寺1.1倍、サダローが124.5倍だー!」


 ひえ〜。

 なんて額だ。


「それでは両者構えて!」


 貞郎はバットを生成し、右手で持っている。

 西園寺は相変わらずボーっと突っ立ているだけだ。


「最高のバトルを期待してるぜ!………………はじめっ!!」


 バンッ!!キィィィン!


 田口のアナウンスと同時に銃声みたいな音と金属音が鳴り響いた。


「……頭を狙うって殺す気マンマンかよ」


 貞郎が呟いた。


「おおーーっと!サダロー選手これはすごい!対戦相手の9割以上を葬ってきた西園寺の早撃ちを防いだー!!」


 アナウンスを聞き観客がさらに盛り上がる。


「9割っとマジかよ」


 ていうか、今まで9割は速攻で試合が終わっていたのか。

 そんなあっけない試合が予想されてもこんなに盛り上がるのかよ。


「さすが貞郎ですね。よく防ぎました」


 咲夜は心配しているのだろうか。

 今までと違い落ち着いて試合を見ている。


 その後、立て続けに銃声と金属音が鳴り続く。

 西園寺が何発も貞郎に弾丸を撃ち込んでいるのだ。

 しかし、完全に見切っているのか貞郎は全てバットで防いでいる。


「ちっ…めんどくせぇな!!」


 貞郎が西園寺の方へ走り出した。

 能力で生成した銃は弾丸の数に制限がない。

 西園寺はかわらず銃を撃ち続ける。

 さすがは野球の天才。

 素晴らしい動体視力をもっている貞郎もかわらず全ての弾丸を防ぎ西園寺が貞郎の間合いに入った。

 貞郎は雷をバットに纏い西園寺を殴った。

 西園寺はその攻撃を銃を盾がわりにして防いだ。

 貞郎が距離を取る。


「サダロー選手!あの西園寺選手に攻撃を喰らわしたー!いつ以来でしょうか?私は覚えていませーん!」


 観客も西園寺の敗北が一瞬よぎったのか貞郎にヤジを飛ばす奴もいた。


「おいおい。兄ちゃんの知り合いすげぇじゃねえか。いったい何もんなんだ?」


 小汚男が俺に聞いてきた。

 オルストのNo.9だった男ですと言えばいいだろうか?

 いや、オルストの話題を出すのはやめておこう。

 噂を聞きつけて生き残っているオルストの連中がきたら面倒だし。


「運動神経抜群の男だよ」

「いや、それは見たら分かるんだが…くそっ負けんじゃねえぞ西園寺!!」


 西園寺に大金を賭けている小汚男は不安な表情で言った。


 西園寺は銃でガードした方の手をブラブラ振ってグーパーしている。



 ーーー貞郎視点ーーー


 ガードしたとはいえそれなりの衝撃があらだろう。

 最低でも手が痺れ、雷によって感電しているはずだ。

 痺れで銃の精度も落ちて


 バンッ!キィィン!


「なっ!?」


 貞郎は驚いた。

 バットで防いでいなかったら弾丸が貞郎の頭に直撃していた。

 要するに西園寺の銃の精度は落ちていないのだ。


「西園寺選手ノーダメージなのでしょうか?さすがだー!!」


 しかし、銃の攻撃は通じないと考えたのか、西園寺は銃を消した。


「なんだ?終わりか?」

「……」


 相変わらず無視かよ。

 でも、銃をしまうなら今度はこちらが遠距離攻撃させてもらうぜ。


 貞郎は地面にバットを叩きつけた。

 武闘台の石畳が砕ける。

 そして宙を舞っている石をバットで打ち込んだ。

 石には雷が纏っている。

 貞郎の能力の二次成長によるものだ。


 西園寺は飛んでくる石を次々と蹴りと拳で破壊する。

 雷を纏った石は触れると感電する。

 ジンみたいに能力が「ソリッド」の場合は別だが、西園寺は「ソリッド」ではなく銃を生成する能力だ。

 しかし、西園寺は感電してなさそうだった。


「あの石…雷を纏っているよな?」


 永輔は咲夜に聞いた。


「えぇ…おそらく。…これ少しまずくないですか?」


 何がまずいのか。

 それは貞郎が負けるかもしれないということだ。

 小汚男のいう通り西園寺が対戦相手を全員殺してきたのなら貞郎の命が危ない。


「負けても死ぬんじゃねぇぞ…貞郎」


 貞郎の遠距離攻撃が止んだ。

 やはり西園寺にダメージはないようだ。


 ……俺最近何か悪いことでもしたかな?

 戦う相手が悪すぎる。

 どっかさんの社長といい今回の相手といい、強すぎないか?

 過信しているわけではないが俺は仮にもオルストのNo.9だったんだぞ。

 そんな弱くもねぇだろ……

 こんな化け物が出てくるなら運営にあんなこと言わなければよかった。


 貞郎は相手が強いほど賞金が跳ね上がると考え運営にあんなこと言ったのだ。


「西園寺選手!サダロー選手の猛攻をもろともー……」


 田口の実況中に西園寺は動いた。


 なっ!?速っ……


 貞郎は突進してくる西園寺を避けようとした。

 しかし、間に合わなかったようだ。

 貞郎は右肩に違和感を感じた。

 そして……


「うがぁぁぁぁーー!!」


 貞郎が右肩を抑えて地べたをのたうち回った。

 その様子を見た観客達はかすかに悲鳴を上げるものも人もいたがほとんどの人が歓声を上げた。



 ーーー永輔視点ーーー


 …嘘だろ。


 俺の目には右腕を斬られのたうち回っている貞郎が見えた。

 西園寺はナイフを隠し持っておりそれを使って貞郎の腕を斬り落としたのだ。


 まずい…このままじゃ貞郎が…


 すると西園寺は銃を生成し手に持った。


「咲夜!!頼んだぞ!!」


 俺は立ち上がり、俺より前に座っている観客の頭を踏みつけ武闘台に向かった。


「おい!兄ちゃんどこ行くんだ!?」


 小汚男の声が聞こえたが当然無視した。


 バン!


 銃声が鳴り響いた。

 それと同時に貞郎の前に水しぶきが飛び散った。

 弾丸が咲夜の能力の二次成長によって生成した水の壁に当たったのだ。

 弾丸は勢いを殺し、貞郎の頭部に当たりはしたが石ころを投げられた程度の威力だ。

 つまり貞郎の頭部が撃ち抜かれなかった。

 そして俺もなんとか間に合い貞郎と西園寺の間に立った。

 俺は棒を手に持ち構えた。


「はぁはぁ…もう勝負はついているだろ!殺さないでくれ!」


 すると俺の言葉が通じたのか西園寺は銃を下ろした。

 だが、消したわけではない。

 まだ油断はできない。


「な、何やっているんですかあなたは!まだ試合中ですよ!」


 田口が俺にむかって言った。

 それと同時に観客からも非難の声が上がった。


「そうだそうだー!」

「引っ込めー!」

「西園寺!そいつもろとも殺しちまえー!」


 なんなんだ、こいつら。

 そんなに人の死が見たいのか。

 だったら…


「うるせー!そんなに死体が見たけりゃ隣のやつでも殺してろ!!」


 俺は観客に向かって叫んだ。

 すると観客が少し静かになった。

 咲夜も遅れて駆けつけてきた。

 そして、貞郎のそばに行き…


「貞郎!大丈夫ですか?」

「……はぁ…はぁ…なんでお前らがここに……くっ……」


 貞郎が腕の切断部を押さえていた。


「緑ですが一応治療してみます」


 咲夜は緑の魔法石を取り出し治癒魔法を貞郎にかけた。

 しかし、所詮は緑。

 あまり意味がなさそうだ。

 このままでは貞郎が大量出血で死んでしまう。

 いや、そんなことより今はこいつだ。


 俺は西園寺を睨んだ。

 西園寺は呆然と立っている。


「………その人…何年目?」


 西園寺の口が開いた。


「何年目?」


 どういう意味だ?


「…その人が死んでから」


 つまり貞郎がこの世界に来て何年目という意味だろうか…

 なんで今そんなこと教えなきゃ……いや今は従おう。

 確か当時貞郎が死んだニュースが流れたのは俺が野球を始めた頃だから……俺が死ぬ10年くらい前か。

 そして、俺がこの世界に来て4年くらい経つから…


「多分…15年くらいだ」

「……そう」


 すると西園寺は銃を消し、武闘台を降り入場口の方へ歩いていった。

 助かったのか?


「え?え?西園寺選手?まだ試合中ですよ!」


 この実況は頭イカれているのか?


「どう見ても西園寺の勝ちだろ!貞郎も後から文句なんて言わねえよ!」


 また俺は怒鳴ってしまった。


「……そうですか。では!西園寺選手の勝利!!」


 静まっていた観客が再び歓声を上げた。

 結局あいつらは賭けの勝敗しか気にしていないのだ。


 俺は棒を消し、貞郎の元へ駆け寄った。


「大丈夫か?」

「もう…無理です」


 咲夜が涙を流していた。

 咲夜は今日買ったばかりの青いワンピースの裾を破り、それで止血をしていたが貞郎の顔がだんだんと青白くなっていた。


「おい!実況!医療班とかいねぇのか!?」

「…いませんよそんなの」

「何ぃ!!」


 俺は田口の元に行き田口の胸ぐらを掴んだ。


「どういうことだよ!普通こういうところには待機とかしているだろ!」

「ちょっと落ち着いてください。いないものはいないんですから」

「クソッ」


 俺は田口を突き飛ばした。

 そして貞郎の方を振り返ると1人のフードを被った子が向かってきてた。


 あの服装どっかで……あ!あいつ!

 なんであいつがここに?


 俺たちがコロシアムに行く理由をつくった人。

 俺の財布を盗んだエミという女の子がいた。

 俺はエミの方へ早歩きで向かった。


「お前何しに

「うるさい。黙って」


 俺の口の前にエミの手のひらが出された。


「黙れって…お、おい」


 エミは俺を無視して貞郎の元へいきその場で座った。

 そして、貞郎の腕の切断部に手を当てた。


 何してやがる……

 ん?…この感じどこかで見た気が……あ、五郎の治癒能力だ。


 すると貞郎の呻き声は止まり気を失った。

 消滅してないところを見ると死んではないようだ。

 そして、治療が終わったのかエミは立ち上がり被っていたフードを脱いだ。

 朱色でショートカットの小さい頭が出てきて、てっぺん生えているアホ毛がぴょんぴょんと揺れている。


「今から病院に連れて行くからそこの腕持ってついてきて」


 エミは貞郎を助けたのだ。








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