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第二の人生はファンタジー ~七つの玉を集めるぞい~  作者: 不亜後
第二章 オルスト編
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第四十話 十文字焼き 中編

「タ、タツヒコ……」


 エミは思わず声を漏らした。

 タツヒコは十文字雷壱を殴り飛ばしたあとエミのそばに行き、片膝をついた。

 そして、エミに平手打ちをした。

 平手打ちをしたあと、タツヒコは何も言わなかった。


「ん、んぐ……ご、ごめんなさい…」


 エミはそう言いタツヒコの胸で泣いた。

 タツヒコは泣いているエミの頭を撫でてこう言った。


「帰ったら大忙しだぞ」


 タツヒコはエミの頭をポンっと叩きエミから離れた。

 そして殴り飛ばした雷壱の方を見た。


「いててぇ…なんで邪魔が入るんだ?光人(こうと)たちはやられたのか?」


 雷壱は殴られた頬をさすりながら立ち上がった。


「さすがにあれでやられはしないか」

「カカカ、当たり前よぉ。…久しぶりだね〜黒崎さん。エミが私のとこに来たからてっきり死んだんだと思ってたよ」

「勝手な想像、ご苦労さんだ」

「カカカ。でも、今殺したらいいだけか」


 雷壱は日本刀を生成し手に持った。


「エミ。すぐ片付けるから股でも濡らして待っておけ。カカカ」

「クズが…エミ。安全なところに身を隠しといておけ。最悪の場合お前の治癒能力を頼るかもしれん」


 タツヒコは拳を握り言った。


「グスっ…わかったわ」


 エミは涙を拭い身を廊下に移動した。

 同時に貞郎はバットに雷を纏わせた。


「カカカ、そこのお兄ちゃんも戦うのか?」

「もちろんだ」

「カカカ。だったらこの部屋はちと狭いなぁ」


 雷壱が刀を二度振った。

 すると雷壱の左右にある壁、すなわち寝室の壁が斬り崩れ、両隣の部屋が使えるようになった。


「斬撃が飛ぶっていい切れ味してるじゃねぇか」


 貞郎が雷壱に向かって言った。


「カカカ。これは私の一次成長だよ。でも、お兄ちゃんのいう通り切れ味はいいよ〜。私の体が少年ごときに真っ二つにされたからね」

「少年に日本刀で殺されるって…どういう状況だよ」

「カカカ、お兄ちゃんもそう思うか。いや〜それがな、『井原(いばら)組』との抗争中に急に現れたんだよ。最初はこんな少年に何ができるんだよって思ったんだがっと…人が話している途中に仕掛けるとかやめてくれよ」


 タツヒコから岩石が放たれ雷壱が咄嗟に刀で弾き飛ばしたのだ。

 タツヒコの手には青の魔法石が握られている。


「貞郎君。悪いが十文字の話なんて聞いても時間の無駄だ」

「いや、あんたのいう通りだ。さっさとこいつをぶっ飛ばそう」

「酷いこと言うな〜。カカカカカ」


 雷壱が刀を振り下ろした。



 ーーー獅子童(ししど)視点ーーー


 一方、大広間では………


「おいおい!さっきからよそ見ばっかりしやがって随分と余裕だなぁ!」


 白い眼帯をつけた男、闇人(あんと)の日本刀が止まることなく斬りかかってくる。

 その猛攻を全て軽々と宍戸は避けていた。


「ははは、光人君の言う通り。見ての通り余裕だよ〜」


 すると獅子童は右足をあげ、左足一本で闇人の攻撃を避け始めた。


「ふざけやがってぇ!そもそも俺は光人じゃない!闇人だぁ!」

「おっと、それはごめんよ」


 獅子童は片手を顔の前に出し「ごめんね」とジェスチャーした。

 ちなみに光人は永輔と戦っていた。

 獅子童はその様子を闇人の攻撃を避けながら終始見ていた。


 見ている感じでは内海君の方が身体能力は高いな。


 実際、永輔の方が光人より動きのキレが良く、力でも上回っている感じがした。

 しかし、戦いは拮抗していた。

 なぜなら、光人の日本刀は一次成長によって鞭のようにしなっているからだ。

 永輔はその不規則な刀の動きに苦戦していた。


 う〜ん…決して弱くはないが少しがっかりだなぁ。

 あれくらいの相手にサクッと勝てないとは…


 光人が刀を振り下ろした。

 しかし、永輔はそれをかわし光人のこめかみ付近に肘を入れた。

 光人はそれを喰らいはしたが咄嗟に永輔と距離をとった。


 おっ、でも今のカウンターはいいね。

 あれは普段から誰かと組み手でもしてないとできないな。

 さっきバットを持ってた人とよくやっているのかな?


「おっとっと」


 獅子童は闇人が変化したことに気づき思わず両足を使って避けた。

 闇人の両手には日本刀が握られていた。

 闇人の能力の一次成長は日本刀を一本増やすだ。


「あれれぇ!両足使っちゃったねぇ!!」

「はは、そんなことできたんだ。最初から2本で戦えばよかったのに」

「わざわざ使う必要ないと思ってたからな!」


 闇人が2本の刀を同時に振り下ろした。

 しかし、獅子童には当たらない。


「ははは、そんなに弱く見えた、僕?」

「俺にとっては全員弱者だからなぁ!」


 今度は刀を右の刀を突き刺し、獅子童がそれを避けた方向に左の刀を振り下ろした。

 しかしそれも獅子童には当たらない。


「ははは、君の世界は狭いなっ!」

「なっ!」


 ずっと避け続けていた獅子童だが、ついに闇人の腹に蹴りを入れた。

 闇人の体が後方に転がっていく。

 するとその光景を見ていた組員達がざわつき始めた。


「闇人さん!」

「嘘だろ!?何者なんだあいつ?」

「多分、闇人さんは手でも抜いているのだろう」


 一方、闇人を蹴飛ばした獅子童は追撃に行かず、また永輔の戦いを見ていた。


 おっ、気付いたようだね。

 頭は結構使えるタイプかな?


 永輔はさっきまで棒を持って戦っていたが、今は素手で光人と戦っていた。


 あの鞭みたいな刀だと懐に入り込まれたら何もできないもんね。

 お〜、いいパンチが入ったなぁ。


 永輔のアッパーが光人の顎に入った。

 脳が揺れたのか光人は右手で頭を押さえた。

 その隙に永輔は再び棒を生成し、棒に炎を纏わせ、光人の脇腹の棒を振り込んだ。

 そして、光人はその場で倒れた。

 永輔は大きく息を吐いた。

 その光景を見ていた組員たちは相変わらず驚いていた。


 う〜ん、終わってみれば内海君の圧勝だったのかな?

 でも結構身体は傷だらけだなぁ。


 永輔の身体は深くはないが全身斬り傷だらけだった。


 まぁとりあえず、僕の方も決着をつけるか。


 獅子童は闇人の方を見た。

 闇人は立ち上がっていたが少しふらついていた。


「はぁ…はぁ…やるじゃねぇか…」

「びっくりしたかい?」

「多少わな…でも俺の勝ちは変わらねぇ!」


 闇人が獅子童に向かって走り出した。

 しかし、獅子童は永輔の方をチラッと見た。

 永輔と目が合う。


 内海君が見ていることだし少し僕の強さを見せておくか。


 獅子童は腕を前に出し手のひらを広げた。


「リベレイション」


 次の瞬間、獅子童目の前にあったものが全て吹き飛んだ。

 闇人を中心に組員たちや、貞郎が連れてきた味方たちすら巻き込んで。


「あれ?少し加減はしたけどやりすぎちゃったかな、ははは」


 獅子童の攻撃を喰らった人たちは全員その場で倒れていた。


「馬鹿野郎!なに味方までぶっ飛ばしているんだ!」


 永輔が獅子童のそばに行き言った。


「はは、ミスは誰にだってあるさ。でも、誰も死んではいなそうだから別にいいでしょ。それよりどうだい内海君。僕の強さは?驚いたかい?」

「…強いと思うけど強いやつなんてたくさん見てきた」

「あらら…そうかい」


 なんだ…「今のどうやったんだ!?」とか言ってくると思ったのに。


「そもそもお前の能力を見たときから俺は驚いているよ」

「ははは、確かにそうだったね」


 永輔と獅子童が談笑しているのを見て、さっきまで戦っていた一部の組員たち及び貞郎が連れてきた味方たちは手をとめた。


「嘘だろ…光人さんと闇人さんがやられたぞ」

「俺たちもしかしてやばいんじゃないか?」

「でもまだこっちには組長がいるぞ!」

「それでも無理だろ。特にあの闇人さんをぶっ飛ばしたやつ。化け物だあれは」


 組員たちのほとんどが絶望していた。


「あいつらすげぇ強いな」

「おい!あの緑頭のやつ、味方まで吹っ飛ばしたぞ!」

「そういえばあいつ、俺たちがここにきたときから戦っていたな…もしかして味方ではないかも…」

「でもそばにいるのあれ、永輔だろ?永輔と貞郎は仲間なんだしあいつも仲間なんじゃないか?」

「ってあの顔!?『オルスト』から指名手配されている獅子童じゃないか?」

「うお!?まじか!?実在したのか…」


 貞郎が連れてきた味方たちは各々喋り出した。



 ーーー永輔視点ーーー


「内海君。あの人たち君の知り合いなんだろ。ちょっと僕のことは味方だって伝えてもらえるかな?なんだか視線が怖い…」


 嘘つけ!

 お前恐怖心とかないだろ。

 でも、獅子童の言う通りちゃんと味方だって伝えなくては……といっても見渡した感じ俺の知り合いは黒崎病院に入院していた患者だけなんだよな。

 それ以外のやつは信じてくれるだろうか?


「えー…皆さん!この人は一応味方です!さっき仲間を攻撃したのはこの人のミスです!…ほら謝って」


 俺は獅子童の尻を叩いた。


「ごめんね〜」


 獅子童は片手で「ごめんね」のジェスチャーをした。


 こいつ!?

 そんな舐めた謝罪したら下手すりゃあ逆効果だろ……ってあれ?


 俺の発言を聞き、味方は再び組員たちと戦いだした。


「どうやら伝わったみたいだね」

「あ、あぁ…」

「ところでこれからどうする?僕たちも一応、組長を探す?」

「いや、先生に「ここは任せてもらう」みたいなこと言われたからとりあえず残っている組員たちを倒そう。まだたくさんいるしな」

「りょーかい」


 俺らは残っている組員たちの相手をした。

 ほとんどが俺らが近づいた途端逃げ出したが…

 そして時間は経ち…


「ふー…これでもう全員かな?」


 十文字組の組員たちは見渡す限り全員倒れている。

 一方、貞郎が連れてきた味方は倒れている奴もいたが誰も死んではいなかった。


「それにしても、お前たち強いんだな。怪我しているのに」


 俺は黒崎病院に入院していた患者たちに言った。


「当たり前よぉ。俺たち全員コロシアムの闘技者だからな。こんなチンピラごときには負けるわけないだろ」

「そういえばそんなこと言っていたな」


 俺は貞郎のお見舞いした後、特にやることがなかったら患者たちと話していた。


「そういう永輔もとんでもねぇ強さしてるな。正直、俺たちじゃあの眼帯野郎には勝てなかったぜ」


 さっきとは違う患者が言った。


「ははは…」


 俺は苦笑いした。

 正直、素手の方が戦いやすいって気づかなかったら負けてたと思うが黙っておこう。


「そんな人がエミちゃんから財布を盗られるなんて今でも信じられないよ」

「あ、あなたは!?」


 そこには、俺がエミに財布を盗られた飲食店の店員である胸が大きいお姉さんがいた。


「どうしてこんなところに?」

「昔、黒崎病院にはお世話になったからね。少しでも恩返しがしたかったんだよ。でも、またお世話になるかもしれないね」


 お姉さんの左肩は血で滲んでいた。


「他にも怪我した人が大勢いるから先生とエミちゃんには申し訳ないねぇ」

「だったら僕が治してあげよう。ちょっと失礼」


 獅子童はそう言い、お姉さんの左肩に手を当てた。

 するとお姉さんの肩は治ったようで


「え?あ、ありがとうございます」


 お姉さんは獅子童に頭を下げた。


「いえいえ」

「ん?お前それ治癒能力じゃないか?どういうことだよ?」


 獅子童の能力は「手に触れたものを吸収する」とかいうわけのわからない能力だ。

 だが今のは誰がどう見ても治癒能力による現象だった。


「え……あ〜実はね…そうそう!僕の能力は痛みとかも吸収できるんだ。だからこのお姉さんの傷も治ったんだよ」


 獅子童の目は泳いでいた。

 なんだか怪しい…

 もしかしてそういう効果があることはあまり知られたくなかったのだろうか?

 まぁ、ぶっちゃけどうでもいいけど。

 チート能力には変わりないし。


「それだったら他に負傷している奴も治してやれよ」

「あ〜ごめんね、内海君。これは1日一回だけしかできないんだ」


 獅子童は両手を合わせ、少し腰を曲げた。


「へ〜そうなんだ」


 チート能力とはいえど制限はあるのね。

 まぁ、とりあえずあとは…って!


「それよりまだ先生と貞郎が帰ってきてねぇじゃねぇか!」

「う〜ん…もしかしたらまだ組長さんと戦っているのかもね〜」


 獅子童は背伸びして言った。


「戦っているかもね〜って、仮にそうだったら早く加勢しに行かなきゃ!」


 俺は大広間の出口に向かって走り出した。




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