表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第二の人生はファンタジー ~七つの玉を集めるぞい~  作者: 不亜後
第一章 チュートリアル編
11/15

第三十八話 それぞれの決意

 ーーー貞郎視点ーーー


 タツヒコが言うには早くてあと3日で俺は退院できるらしい。

 つまり、3日後にはエミとさよならしなければならないのか……

 エミを慰めてから一週間、エミは表向きは患者たちに明るく振る舞ってはいたが無理しているようにも見えた。

 おそらく、タツヒコと同じ空間にいることが辛いのだろう。

 俺が退院するまでに2人の関係性が修復して欲しいんだけどな〜。


 そんなことをベッドに寝転がりながら考えていると病院の扉が勢いよく開いた。


「先生!いったいどういうことだい!?」


 入ってきたのは永輔がエミにお金を取られた飲食店で働いているお姉さんだった。


 いきなりどうしたんだこのお姉さん。

 タツヒコの知り合いなんだろうが。


「タツヒコさんなら二階におるよ」


 患者の1人が答えた。

 お姉さんそれを聞き、階段の方へと向かっていったがちょうどタツヒコが降りてきた。


「どうしたんだ明里(あかり)?そんなに慌てて」

「エミちゃんが今何をしているか知ってる!?」

「エミのやつか?知らないが……」

「あの子、十文字と結婚する気でいるよ!!」

「なっ!ほんとかそれは!」


 俺はベッドから立ち上がりお姉さんに言った。

 するとお姉さんもとい明里は顔だけを俺の方を向けた。


「間違いないわ」

「明里、詳しく聞かせてくれ」


 タツヒコに言われて明里が見てきたことを話した。


「今日は店が休みだったから街をぶらついてのよ。そしたら十文字組の組員たちが歩いてるのを見つけて…その中に着物を着ているエミちゃんの姿があったの」

「それってそういうことじゃないか!今すぐ十文字組のところに行ってエミを連れ戻さないと!」


 俺は靴を履き準備し始めた。


「待て貞郎君!」


 タツヒコが貞郎を呼び止めた。


「何を待つんだ!こうしている間にもエミは

「相手は十文字組だぞ!…残念だが今すぐ行っても無駄だ」

「なんでだよ!?」

「おそらく十文字組はエミを迎え入れることができ今夜は組総出で宴会をしている。そうなったら相手は十文字組全員だ。そして、こちらの戦力は私と君の2人だけ。しかも君は怪我がまだ治っていない。おそらくエミに辿り着く前に無駄死にするだろう」

「だったら永輔にも協力してもらおう!あいつなら絶対協力してくれる!」

「永輔君がどれくらい強いのかはわからないがそれでも変わらないだろう。…もしかしたらエミは辛い体験をするかもしれないが襲撃は宴会を終え、組員たちの酔いが回っているであろう深夜にしよう」

「…本当にいいのか?」

「いいわけないだろう!!」


 タツヒコは拳を握り壁に叩きつけた。


「それでも無駄死にしてエミを助けれないよりかはマシだ」


 タツヒコが叩きつけた壁にはヒビがはいっていた。

 エミと一番長く過ごしてきたのはタツヒコだ。

 一番悔しいであろうタツヒコがそう言っているんだ。

 俺はタツヒコの言うことに従うことにした。


「先生。俺も協力するぜ。だから今すぐ向かおう!」


 患者の1人が言い出した。

 それを皮切りに他の患者たちも似たようなことを言い出した。


「…わかっているのか?…死ぬぞ」

「それでも俺たちはエミちゃんを助けたいんだ!死ぬ覚悟はできている!」


 患者たちの視線が全く泳いでいない。

 おそらく本気で言っているんだろう。


「私も戦うよ!先生!」


 明里も言い出した。


「明里…」

「先生には助けてもらった恩があるんだ。今こそその恩返しがしたい!」

「医者として当たり前のことをしただけだ。恩返しなどいらん」

「それでも私は戦うよ。他にも先生やエミちゃんにも助けてもらった人はこの街に沢山いる。私、今からその人たちにできるだけ声をかけてくるよ!」


 明里はそう言い、病院の入り口へ向かって走り出した。


「お、おい。待て!」

「1時間後くらいに中央広場で待っているからー」


 明里はそう言い残し病院を出ていった。


「タツヒコ。もう後戻りはできないみたいだな。エミを助けに行くぞ!」


 俺はタツヒコの目の前に移動し拳を突き出した。


「ふん…明日、ベッドが足りなくて困りそうだ」


 タツヒコはそう言い俺の拳を合わせた。



 ーーーエミ視点ーーー


 私は現在、十文字組のお屋敷の大広間にいる。

 そこでは宴会が行なわれていた。

 私が十文字組の組長、十文字 雷壱(じゅうもんじ らいち)と婚約したからだ。

 十文字雷壱。

 濃紫色の髪のショートヘアでタレ目、頬には傷跡があった。

 容姿からは怖さを感じられず、彼を知らない人からしたら一目見て十文字組の組長とは誰も思わないだろう。


 大広間には100人近い人達が集まっていた。

 私は主役ということで十文字雷壱と一緒に上座に座っている。


「カカカ、エミよ。私はほんと幸せもんだな〜」


 雷壱がそう言い、私を抱き寄せた。


 気持ち悪い……。


 私はこの男と婚約する覚悟はできたつもりでいたが、いざ迫られると寒気が走った。


「でもな〜エミ。私は不思議でしょうがないんだ。なぜ急に私の嫁になることを承諾したんだ?金もまだ払えるんだろう?」


 そんなのタツヒコに振られたからだ。

 私がタツヒコに振られた以降、お互い、一緒の空間にいることが気まずく感じていた。

 おそらくそれは私がタツヒコに対する恋心を捨てない限り続くだろう。

 しかし、私はその心を捨てることがいつまで経ってもできないだろう。

 それくらいタツヒコのことが好きだった。

 だから雷壱と婚約することで無理やりタツヒコのことを諦めようとした。

 それに私が婚約したらタツヒコは毎月、十文字組にお金を払わなくて済むようになる。

 だからこの行動は好きな人を助ける行動でもあるのよ。


「そんなのあんたとくっつくのも悪くないと思ったからよ」


 胸に痛みが走った。


「そうかそうか〜。疑うようなことして悪かったな」


 雷壱が私の頭を撫でた。


 自分で決断したことだ。

 これでよかったのよ………


 私はそう自分に言い聞かせ続けた。



 ーーー永輔視点ーーー


 目が覚めた。

 俺の手には鎖が巻かれていた。

 あたりは薄暗い。

 目の前には鉄格子がある。

 組員たちは光人とかいう奴の指示通り、俺を地下牢に入れたのか。


「う〜〜ん…」


 状態を起こし身体を伸ばした。

 いったい何時間寝ていたのだろう?

 エミはまだ無事なんだろうか?

 硬い地面の上で寝ていたからか身体中が痛い。


「さて、これからどうしようか…」


 独り言を呟いた瞬間、どこかから男の声が聞こえた。


「おっ、やっと起きたのかい?おはよう」


 おかしい。

 俺の視界には誰も映っていない。


「なんだ?幻聴か?」

「ははは、幻聴ではないよ。君の隣の牢に僕がいるのさ」


 確かに隣の壁から声が聞こえてきた。


「いや〜ずっと寂しかったんだよ〜、話し相手が誰もいなくて。あっ、僕は獅子童 龍(ししど りゅう)っていうんだ。よろしくね〜」


 獅子童龍?どこかで聞いたことある名だな…

 まぁ、仮に知り合いでもすぐに思い出せないあたり俺にとってどうでもいい奴なんだろう。


「俺は内海永輔だ」

「内海永輔君ね〜…ところで内海君。君はどうして捕まったんだい?」

「…すまねぇが今、談笑している暇はないんだ。今すぐ脱獄したいんだが何か手はねぇか?」

「え〜せっかく話し相手ができたっていうのに寂しいじゃないか〜。ちょっと話していこうよ〜」

「急いでいるんだ!」

「ふ〜ん。でも仮に僕が脱獄の仕方を知っているんだったらもうやってるよ」

「…知らないってことだな」

「そゆこと〜」


 俺は立ち上がって鉄格子を力一杯蹴った。

 地下牢に金属音が鳴り響いた。


「ちっ…壊れねぇか」

「…ねぇ、なんでそんなに脱獄したいの〜」

「はぁ…今すぐ連れ戻さないといけない奴がいるんだ」


 俺はため息をつき言った。


「つまり、内海君はその人を連れ戻そうとしたが失敗して捕まったのかい?」

「……まぁ、間違ってはいない」

「ははは」


 突然、獅子童が笑い出した。


「何がおかしい」

「いや〜内海君、君相当弱いんだから脱獄しても同じ結果だろう」


 なんだコイツ…失礼な奴だな。


「なんで俺が弱いと勝手に決めつけるんだ?」

「ん?あ〜それはね〜、内海君。君、その様子だと目立った外傷はないんだろ?」


 獅子童のいう通り俺は眠らされただけで身体に外傷はない。


「あぁ、そうだが」

「つまり君は眠らされてここに来たっていうことだ。人を眠らせる方法は魔法石を使う以外方法はない。あっ、ちなみに催眠術とかは無しね。僕、ああいうのはあまり信じていないから」


 お前が催眠術を信用していないとかどうでもいいわ。

 獅子童が話を続ける。


「そして、魔法石を使って相手に睡眠魔法をかけるには相手の顔の至近距離で光っている石を少なくとも5秒は見せ続けないといけないんだ」


 なるほど。

 だからあの時、急に眠くなったのか。


「ここまで説明したらなんで内海君が弱いのかわかるね?」

「いや、わからん」

「ははは。怪我を負って動けなかったとかでもないのに、睡眠魔法にかかる奴なんて鈍臭い奴しかいないだろ〜」


 いやそれは街の住民たちが俺を取り押さえたからで…と言おうと思ったが言い訳しても意味はないと思い口には出さなかった。


「そういうことか」

「うん。そういうこと〜」


 俺は獅子童の言い草に少し腹を立てて、再び鉄格子を蹴った。

 鉄格子は相変わらずびくともしない。


 鉄格子を壊すのは諦めるか…

 でも他に案はないし…はぁ…コイツと話でもするか。

 話しているうちに何か思いつくかもしれないし。


「そういうお前こそなんで捕まっているんだ?」


 俺はその場であぐらをかき聞いた。


「ん?僕かい?僕はね〜十文字組の屋敷の周りをうろうろしていたらいきなり捕まったんだ」

「なんだそれ?全裸になって歩いてたりでもしていたのか?」

「ははは、内海君は面白いこと言うね〜。ちゃんと服は着ていたよ」

「だったらなんで?」

「さぁ?僕もさっぱりわからないさ。でも、十文字組の屋敷に入りたかったからちょうどよかったけど」

「なんで?」

「そりゃあ、十文字組をぶっ潰すためにね」


 獅子童の声のトーンが低くなった。


 十文字組をぶっ潰すか〜…俺にとっても好都合だな。

 もう少し詳しく聞こ。


「十文字組に恨みでもあるんか?」

「ないんだな〜それが。ちょっと僕の上司みたいな人に頼まれてね〜。「最近、十文字組の成長が著しいわ。いずれ私たちの敵になりうるかもしれない…早いうちにその芽を摘んでおいて」ってね。全く、パワハラだよパワハラ!」


 獅子童は途中声を高くして言った。

 おそらく上司みたいな人のモノマネでもしたのだろう。

 俺が知らない人のモノマネするのはやめて欲しい。


「上司みたいな人って、どっかの組織にでも所属しているのか?」

「う〜ん。一応組織なのかな〜。詳しくは言えないけど」


 言ったところで多分俺が知らない名前が出てくるだけだろうからどうでもいいけど。


「ちなみに今この状況から十文字組を潰すことはできるのか?」

「できるよ〜」

「…まぁ、口ではなんとでも言えるわな。でもそれってお前には今、脱獄する方法があるってことになるよな」

「おっ鋭いね〜。当たり」


 つまり、獅子童はさっき嘘をついたということだな。

 嫌なやつだ。

 だが、今はそれのことについて指摘している暇はない。


「よし!俺も十文字組を潰すのに協力しよう。だから今すぐ脱獄する方法を教えてくれ」

「え〜いいよ〜。内海君弱いし」


 くそ〜…獅子童が思い描いているほど弱くはないのに…そうだ!


「あまり言いたくないが俺はあの『オルスト』に所属していた。強いとは言えないが決して弱くはない」

「へ〜()()()()()()ね〜。オルストって辞めるときその場で殺されるはずなんだけど…内海君、嘘をつくのはよくないな〜」


 嘘ではない。

 でも本当のことを言うと俺たちがオルストを半壊させて、さらにジンを倒したことを獅子童に知られてしまう。

 獅子童はなんらかの組織に所属している。

 仮にその組織が玉集めをしていたら、ジンから玉を入手した俺が獅子童の敵になるかもしれん。

 いったいどうしたら信じてもらえるんだー……そうだ!


「二次成長!俺は能力が二次成長を遂げている」

「へ〜」

「能力は棒を生成するで、一次成長がその棒に切れ味を与えて、二次成長が棒に炎を纏わせることができるようになるだ」


 俺は少し早口になって言った。


「ははは。内海君はほんと嘘つきだな〜。一次成長と二次成長が結びついていないじゃないか」

「ははは、俺の師匠も似たようなことを言っていたがその知識は間違っている。現に俺の師匠は俺の成長を目の当たりにして認めたぞ」


 実際、まだ白火に二次成長は見せていないが少しくらい嘘をついてもいいだろう。


「ふ〜ん。じゃあ僕にもそれを見せてもらおうかな。ちょっと待ってて」


 獅子童に言われた通り待っていると鉄格子の向こう側に獅子童が現れた。


 ん?どっかで見たことがある顔だな〜……って!


 俺は獅子童を見て驚いた。

 獅子童は鬱陶しくないほどのボサボサの緑髪で整った顔をしていて、片耳には派手なピアスをしている。


「お、お前その顔、オルストから指名手配されてた」

「え?まだ指名手配されてたの僕。はぁ〜だから十文字組の奴らは僕を捕らえたのか〜」


 獅子童龍。

TIME (タイム)TRAVELER(トラベラー)』にあった掲示板に指名手配書として貼られていた男。

 そして咲夜が言うには元オルストNo.2の男だ。


「そんなことより、内海君の一次成長と二次成長を見せてもらうよっと」


 獅子童が目の前にある鉄格子に触れた。

 すると次の瞬間、目の前にあったはずの鉄格子が無くなった。


「は?」


 どういうこと?

 俺は幻覚でも見ているのか?


 次に獅子童は俺の前にしゃがみ俺の手に巻かれている鎖に触れた途端、鎖もなくなった。


「はい。さっさと見せてちょーだい」

「いや、その前になんだその能力!」

「ははは、すごい驚きようだね〜。僕の能力はね〜触れたものを何でも吸収するんだ。あ、人は無理だけど」

「…いったいどういう死に方を」

「内緒〜」


 白火と同じこと言うなよ!

 何でチート級の能力を持っている奴は死因を言いたがらねぇんだよ!

 気になるじゃねぇか!


「それより次は内海君の番だよ。早く見せてよ〜」

「あ、あぁ」


 俺は棒を生成し、獅子童に一次成長と二次成長を披露した。


「お〜本当だったんだ」


 白火といい見たことないんだったらもっと驚いてもいいじゃないか?

 別にいいけど。


「ところで内海君。僕の能力を見て何か感じたことはない?」

「チート級だなと」

「それだけ…」

「どういう死に方したんだろうと」

「内緒〜」


 なんだこのやりとり。


 すると獅子童は腕を組み目を瞑った。

 そして目が開き


「まぁ、いっか。さぁ内海君、一緒に十文字組を倒しに行くぞー」


 腕を天に挙げ言った。


「お、おう。ところでずっとこの地下牢にいたらしいけど何ですぐに脱獄しなかったんだ?」

「ん?あ〜単なる気まぐれだよ」


 どうやら俺はその気まぐれのおかげで救われたようだ。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ