妹思いなお兄ちゃん。
2023年8月8日。ほとんどの人間にはなんともない日だったであろう。まだまだ暑いなーとかセミうるせぇなーとかだろう。俺もその1人だったというのに・・・。
平穏とは築きあげるのは困難であっても、平穏が崩れ去るのは一瞬の出来事である。俺は今日それを体験した。
何があったと思う?
政府の財政破綻?違う。
彼女に振られた?違う。そんなもの元々いなかったし。
学校にテロリストでも攻めてきた?違う。そんな厨二じみた妄想はしない。
今日初めて人が死ぬのを見てしまった。ただそれだけである。俺は実感した。人は無力だと、所詮トラックなどの自動車に轢かれてしまえばぺしゃんこになってしまうのだと。
その娘は別にぺしゃんこになったわけじゃないが。
誰が死んだか?答えようじゃないか。
妹が死んだ。
兄でも姉でも妹でも弟でも涙ない。
妹が死んだ。特に仲が良いという訳ではなかった。
普通の兄妹だったんだ。
やはりずっと身近にいたからだろうか、断言しよう。
妹が死んだことが今までの人生で経験した中で1番
悲しかった。哀しかった。かなしかった。カナシカッタ。
俺は天に願った。どうか妹を救って下さいと。私の命なら捧げますと願った。無駄だと思っていた。その瞬間が来るまでは。
目眩がした気がした。ずっと病院にいる訳だし。気も滅入るよな。
「もう涙も出し尽くしたみたいだ。」瞬きをした。すると目の前に現れたんだ。
「あっ私、神ですけど。どうします?いや、どうしたいです?」
理解できなかった。さっきまで人はいなかったし、近くの窓だって空いてるけどここは6階だぞ?人が急に現れたのか?
「そうか・・・もしかしてさっきお祈りしたから。」
「その通り!君の願いを聞きつけて来たよ!キラーん!」
もしかしたら本当に神様が来たのかもしれない、そんな期待を胸に抱いていた。俺の妹への思いが神様に伝わったのだ。
嬉しくないはずは無い。
「い、妹は生き返るのでしょうか。」少し気が動転していた。無理もない、目の前にいきなり『神』が現れたのだから。信じる信じないではない。信じたいのだ。
「そうだね〜妹さんは外傷は少ないけど、頭がやられちゃってるね。それが原因で死んでる。でもまぁ大丈夫だよ私、神だからね!キラーん!」
その男とも女とも捉えることのできない中性的な外見をした『神様』は妹を治せるらしい。
「是非ともお願い致します!」俺は笑顔でそう答えた。
「いや〜できないことはないけどね、意味が無いんだよ意味が。」
「それはどういう意味ですか?なんですか詐欺師ですか?警察呼びますよ?」
イラついた。治ると言われたのに治らない。きっと神じゃないのだろう。ただの一般人にからかわれていたのだろう。
「あぁ〜ん。そんなにイラつかないでよ。その目、疑ってるんでしょ?僕は本当に『神様』だからね。」
そう言うと『神様』は翼を生やし浮いて見せた。
この人本当に『神様』らしい。
「本物、なんですね…。じゃあ妹を救ってください。」今の自分は掌返しの達人だ。手首が捻じきれんばかりの見事な掌返しだ。
「いいけど、さっき言ったみたいに今復活させても、意味が無いんだよ。」
「どういうことですか?」
「条件があるんだ。『神様』だってタダ働きはしないよ。」
「その、条件とは?」ゴクリと唾を呑んだ。どんな条件がくるんだと身構えてしまう。
「それは〜ね〜」満面の笑みでこちらに顔を向けてくる。
「とりあえず君の名前は?」
「鳥飼 隼です…。」条件言えよ!と言いたかったがこらえた。
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