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5.王都デリアにて

5.王都デリアにて


「改めて。ありがとうございました」

山を下り、デリア街道を王都へ向かいながら、メリスの姉は穏やかに言った。


ジャックはあれから姿を見せず、シロムと北国の姉妹の3人連れである。


「私はソフィア・グリルオール・メルフィ。

 セレ・マトス皇国の皇女です」

「皇女?」

思わずぞんざいな言い方で訊き返してしまってから、ばつの悪い気持ちになる。

そんなシロムにソフィアはひらひらと手を振って、

「良いんですよ。この国の方に敬われる理由もありませんから」


「あれ。てことは、メリスも?」

「あ、いえ。私は違います」

とメリスは肩をすくめた。

「私は皇家の血を継いでいませんから」

「メリスは養子なんですよ」

奇妙な程にあっけらかんと、ソフィアが教えてくれた。

「でも大切な妹です。とってもね」



血の繋がらない姉。

シロムの胸のどこかが、小さく痛んだ。

自分とユイエルの間柄も、あるいはそうなるはずだったのだろうか。


いつだったか、ユイエルが冗談めかして言ったことがある。

「ウチの住み込みにならない?」と。

「そうして一緒に住んだら、まるで家族だね」なんて言って。


彼女が本気だったのか、今となっては分からない。

少なくとも、その提案を断ったのはシロムだった。

その形の家族は、彼の失恋を意味していたから。そんな理由で。



「良い家族だな」

本心だった。

メリスはちょっと照れてから、また気真面目な顔になって、

「お姉さまが王都デリアに向かうので、護衛で来たのですが。

魔物に襲われて……不覚でした」

「仕方ないわ。ちょうど王都の親衛隊と落ち合うところだったのに」

「いえ、私がしっかりしていなかったから」


「セレ・マトスの皇族が、何故王都に?」

放っておくと永遠に落ち込んで行きそうなので、シロムは話題を振った。

するとソフィアはやはり柔和に笑って、

「ちょっとした用事……まあ外交の一環ですわ」

「私は、さっき言ったようにお姉さまの護衛と。ついでに見分を広めたくて」


どうやら姉妹の目的は異なるらしい。

皇族ともなれば、色々と事情があるのだろう。

シロムは詮索しないことにした。




そうしている内に、王都デリアの巨大な門が、目の前に見えていた。


王都デリア。

ベマ大山脈のふもと、サマリナ平原の玄関口に位置するこの町は、王の住居たる王城を最大の特徴とする、歴史ある城下町である。


町の外周は石造りの頑強な物見塔がぐるりと町を取り囲み、城壁のような様相を呈している。

その姿だけを見れば城塞都市さながらであるが、これはサマリナ平原を抜けて来る魔物や敵軍隊をいち早く見つけるための造りであり、実際には平原に繰り出しての迎撃戦がほぼ全てを占めるという。

この塔を使っての防衛戦は歴史に無い。

それが王国の強さそのものの象徴であると、旅の誰かがうそぶいていた。


また近年ではアラデ・ミフの大運河を引き入れていて、流通都市としても名が広い。

そのせいでグレス大陸の港町のいくつかはすっかり寂れてしまったというが、それはまた別の話であろう。


なんにせよ昔も今も活発な町であることに違いはなく、そしてさらに今は、勇者歓迎で沸いていた。

またこのパターンかとうんざりするが、名を告げると、

「勇者殿、お待ちしてました!」

と門番が満面の笑みになるものだから、無下にも出来なかった。


「勇者だったんですか?」

メリスは目をぱちくりして、しばらく言葉を失った後、

「こ、光栄です」

と、ちぐはぐな感想を述べた。


姉のソフィアの方は「そうですか、あなたが」と思わせぶりに言葉を継いで、こちらもまた、

「助けて頂いて、良い経験になりましたわ」

などと、気の抜けた言葉を返してきた。



何はともあれ、まずは王城へ行かねばなるまい。

シロムは2人と別れて、王都の中央通りを歩き出した。


昼下がりの中央通りには簡素な柱と布屋根の露店が立ち並び、活気ある様子である。

どうやら港町サモンほどは、一般には勇者として顔が知られていないらしく、溢れる人々はシロムには目もくれず、露店を覗きながら歩いている。


シロムも実用的なものやそうでないものや、流石の流通都市と言わんばかりの品ぞろえを冷やかして歩いた。

目に留まるものは大抵、強めの色合いの髪飾りやブローチの類である。

ユイエルは赤目赤髪のくせに色素が薄くて、ともすれば地味に見える自らの外見を気にしていた。

だから身に着ける装飾品も濃い色のものを好んで、派手すぎるかな、似合うかな、としきりに訊いてきたものだった。


ああ、まったく。

シロムは溜息を吐いた。


何を見ても、どこへ行っても。

彼女との思い出以外、思い浮かぶものが無いなんて。


買ってあげたいな、と思っても、もう世界に存在しない彼女。


せりあがる何かを飲み下して、シロムは露店を離れた。

もうとても、楽しめそうにはなかった。




「ようこそいらっしゃいました、勇者シロム・エル殿」

と迎え入れられた王座の間には、意外な顔ぶれが待っていた。


黒いフードとマントを見にまとった小柄な男が、王座の横に影のように立っている。

いや、フードから覗く顔付きは、男と呼ぶには幼過ぎるか。

その少年こそ、シロムを勇者と言い定めた「占い師」であった。


会うのはこれで二度目である。

一度目の時も、王都からの占い師というのが、少年だったことには驚いた。

誰だって鉄仮面の男とか老婆とか、そういうのを想像するだろう?


「長旅お疲れさま」

皮肉のように、占い師はそう口を開いた。

見た目通りの、声変わり前の高い声色であった。


「ベマ山脈を越えて来たんでしょう? 見ていたよ」

見ていた、とは?

訊き返そうとしたが、

「なんと、山を越えて来たのか。それは大変だったな」

という王の言葉に遮られた。



国王――ラビ・ジュニス・12世。

でっぷりと蓄えた白い口髭が王族の貫禄とそれ相応の年齢を主張してくるが、体付きは案外小柄でひょろ長い印象を与える男である。


民の噂に王の人柄が流れることはほぼ無いが、概ね名君である、というのが通説だ。

なにしろこの王が即位してからというもの、魔法技術や様々な仕組みは飛躍的に進歩した。


魔力推進の船や馬車(洒落て魔車ましゃとも呼ばれる乗り物である)の登場もそうだし、様々な職業が「ギルド」と呼ばれる寄合を組み出したのも、ジュニス12世の統治下となってからである。


似顔絵の類も出回っていないので、シロムも王の顔を見るのは初めてだった。

ひょろ長く、どこか神経質なその灰色の瞳は、大きな爬虫類を思わせた。

少なくとも、自国の王を想像してみろと言われて、この顔にはならないだろう。

そんな風貌をしていた。



シロムの視線を気にも留めず、王は占い師に声を掛けた。

「トウマよ。勇者に告げることはあるか?」


占い師――トウマと呼ばれた少年は静かに首を振って、自分はシロムに向き直った。

「僕の言葉は変わりませんよ。

魔王を倒し、世界をヒトの手に取り戻す。その使命は選ばれし戦士に託されている。

すなわち、勇者たるキミに」

「……光栄です」

何と言うべきか迷って、結局それだけを答えた。


――彼女を失ってからというもの、負け続けているような気がする。

その有様で「選ばれし戦士」と言われても。


そんな焦燥は気取られないように、ぺこりと頭を下げた。


「なんにせよ、時は来た」

上機嫌に王が言った。

「トウマの言うことに間違いは無い。

さあ、勇者の旅立ちを祝福しようではないか」


シロムの前に、ずしりと重い麻製の袋が差し出された。

固結びの紐を開けて中を覗くと、眩いばかりに磨かれた金貨が詰まっている。

「少ないが、金貨200枚だ。

王都のギルドで準備を整えて行くが良い」

「少ない、ですか……」

苦笑する。


金貨200枚といえば、庶民が1年働いてやっと手に入れられるくらいの金額である。

ギルド所属の剣士はあれで薄給であるから、これまでの人生で縁の無い財産だ。

流石に王サマともなれば、金銭感覚は浮世離れしなすっている。


そういえば、ユイエルは大手商家の娘のくせに質素で堅実な性質であった。

その辺は王族と商人の違いだろうか。


「まずはギルド街へ行くと良い。

剣士、魔導士、僧侶、魔物使い(テイマー)……王都なら大抵の人材は揃うだろう」

「そうしたら今日はゆっくり休んで、それからバーパスの迷宮跡を目指して欲しい」

トウマが言葉を引き取った。

「バーパスの迷宮跡には勇者の剣がある。

今まで行方が分からなかったんだけれど、お告げがあったんだ」

「お告げ?」

「神のお告げさ、もちろん」


トウマはフードの中に顔をうずめて、大きな笑い声をあげた。

布にこもったその声は、不思議と辺りに反響した。

「勇者の名も。勇者の剣の存在も。

僕に囁いたのはこの世界の神々の声さ」


「さあ行け勇者よ」

さながら舞台に上がる役者のように。決められた台詞のように。

最後に厳かに、王が告げる。


「汝、シロム・エルに。女神メラヴィラスの御加護があらんことを」



シロムは王城をあとにした。

肩にかけた袋が妙に重たいのは、中身の金貨に価値があるからだろうか。


王の言葉を聞いた瞬間に、使い道は決意した。

相場に自信は無いが、金貨200枚があれば、足りないということは無いだろう。


だが、まずは腹ごしらえだ。

剣士ギルドをはじめ、種々多様のギルドが固まっている通りで飯処を見つけて中へ入る。

店員らしいふくよかな婦人が寄って来て、

「いらっしゃい。ちょうど新鮮な赤魚が入っているよ。

定食で銀貨1枚。安いよ!」

と言うのでそれにした。


手近な席に腰を下ろす。

と、座るや否やすぐそばに寄って来る人があった。

店は昼時だからだろうか、それなりに込み合っている。

相席も止む無しかと身を詰めると、相手はひょいとこちらを覗き込んだ。

「入るのが見えたので」

メリスだった。


「もう少し、話してみたかったんです。隣、いいですか?」

「いいも何も、もう座っているだろう」

「えへへ、そうですね」

と、彼女は悪戯っぽく笑ってみせた。


「勇者ってことは、王城へ行くんですか?」

「それはさっき行ってきた」

「あら、いいなあ。私、行ったことないんですよ」


店員が赤魚の定食を持ってきた。

赤魚というのは手のひらくらいの大きさの、淡白な感じの魚である。

港町サモンでは珍しいものではないが、食べ慣れたものとは味付けが違う。

ベマ山脈を隔てれば、多少は文化が変わるらしい。


メリスは「同じのください」と注文してから、

「姉さまは他国の城に、私を連れて行ってはくれないんです」

と唇を尖らせた。

「皇族に秘密が多いのは、セレ・マトスだけの慣習かも知れませんが」


「秘密は嫌いか?」

尋ねると、彼女は目をしばたいた。

「好き嫌いで語る人は初めて見ましたね。

仕方のないことだ、とあやしてくる人とは、星の数ほど出会いましたが」


嫌い、嫌いかあ、と、彼女は楽しそうに、言葉を舌の中で転がした。

「そうですね。嫌いかも知れません」


「セレ・マトス皇国ってのは雪国なんだろう?」

「そうですよ。もっとも、1年中ってわけではないですが」

「俺も雪を見たことはない」

港町サモンは温暖なのだ。

「だから、雪を見てみたいと思う。

けど見なくても、生きられないということはない。大抵のことは、そういうもんだろ」


メリスは不思議そうに目をしばたいた。

「あなた、剣士なんですよね? 商人みたいな考え方ですが」

「そうか?」

「この国ではどうだか……セレ・マトスの商人は現実的ですよ。とてもね」

「似たようなもんだよ」

シロムは肩をすくめた。

「俺には家族が居ないから。商人と一緒に育ったからってのは、そうだろうな」


誰のことかは、考えるまでもない。


「何を選べば得かをちゃんと分かっていて、それでも損を捨てずにいる。

そんな人が居て、俺は彼女に、人生をもらったんだ」

「ふうん。私にとってのお姉さまも、そうなのかも」

彼女は少しだけ、濁すような言い方をした。


「私の家族は、魔物に殺されたので」

飯時に似合わない話題だが、シロムは思わず顔を上げた。

「お姉さまが居なければ、きっと魔物を憎むだけで生きていました。

いえ、魔物は憎いんですけれど」

だから、と今度は低い声で、

「あなたが魔物を連れていることが、理解できません」

「俺だって出来ないよ」

魔物への憎しみは強く、消えることのない気持ちである。

きっと隣の彼女がそうであるように。


「あの魔物とはどういう関係なんです?

まさか仲間だ友達だなんて言いませんよね」

ただあいつがついて来るだけだ、という言葉を、すんでの所で飲み込んだ。

それは心の中身と、余りにも違う答えだった。


俺が一緒に居たがっているから。

奇妙なことに、そして何より忌々しいことに、どうやらそんな言葉がふさわしそうだ。


だがそれを口にするのもまた憚られて、シロムはかぶりを振った。

「俺にだって分かんないんだ。

 あいつを見てると……とんでもないこと、考えそうになる」

「とんでもないこと?」

シロムはしばし黙り込んで、それから、すいと立ち上がった。

2人の目の前の食器たちは、すっかり空になっていた。


「行くところがある」

「ギルド本部? ですか?」

「そこもだけど、その前に」



店を出ると、メリスもついてきた。

「そういえば、あんたは何をしに王都へ来たんだ?」

「見聞を広めに来たんです」

彼女はそう言う時だけ、ぐいと胸を張った。

「だから、あなたについて行きます」


「何が、だから、なんだ」

言いながら、古びた建物の前に立つ。

入口には小さな表札が掛かっていて、「やみギルド」と冗談のようなことが、可愛らしい字面で記してあった。

「ここですか?」

怯えたメリスの声に構わず、シロムはずんずん中に入って行く。


中は薄暗く、どうにも埃っぽい。

入口にひと気は無く、先の見えない長い廊下がぐるぐると曲がりくねって、奥へ奥へと延びていた。


「ここはどういう所なんです?」

たまらずメリスが訊くと、

「普通は情報屋とか売買所とかいう言う方をしているんだけどな。

王都では『やみギルド』と名乗っているらしい」

「情報屋……」

「ま、どこにでもある、後ろ暗い商店だよ。

なんでも売ってるし、なんでも買ってくれる」

港町サモンにもそんなところがあって、彼女、ユイエルと出会う前はよく通ったものだ。



方向感覚もいよいよおかしくなる頃、やがてカウンター台の置かれた空間に行き当たった。

だがそれも部屋と呼べる代物ではなく、ただ廊下の突き当りに物を並べただけの、取って付けたような受付であった。

声を掛けるまでもなく、雑多な紙束やら積み上げられた箱やらの向こうから、鼻眼鏡の男が顔を出した。


「いらっしゃい」

と目を細めて男が言う。

「ご用件は?」

「テイマーという職業について訊きたい」

「へえ……旅の仲間をお探しなら、ここは違いますぜ」

「そんなことは知っている」

つっけんどんにシロムは言った。


「いくら出せば、テイマーに成れるのか。そういうことを訊きたい」

男の瞳がぎらっと光った。

「難しい職業ですぜ。ただ、安心してください。

資格自体は珍しいものじゃない」

男は何やら紙に数字の羅列を書き付けた。

「ご予算は?」

「金貨170枚」

「結構、結構」

結局相場は分からなかったが、男は満足そうに頷いて、さらに奥へと姿を消した。


カウンター台の周りには何がしかの商品なのか、それとも単に店主の趣味なのか、色とりどりの木彫りの人形が並べられていた。

シロムが男と話している間中、メリスはそれらを興味深げに眺めていたが、ふいに気付いてシロムを見た。

「もしかして、職業資格を偽造しようとしてます?」


「もしかして、も何も」

シロムは笑ってやった。

「正規の手段のはずがないだろう」

「テイマーって、魔物使いですよね?」

頷いて、

「魔物を手懐けて、使役して戦う戦士だそうだ。俺は会ったことは無いが」


テイマーが珍しいのは、その適正自体が珍しいのもそうだが、使役に適する魔物を探して訓練する、という過程が倦厭されるからだ。

そんな時間があるのなら、普通は己の剣なり魔法なりの腕を磨く。


「さっき王城で聞いて、思い付いた。

テイマーの資格があれば、魔物を連れ歩いても何も不思議じゃないだろう?」

「あの魔物と一緒にいるために、ですか? 呆れます」

メリスは両手を広げる仕草を取った。

「それでよく、魔物を殺すだなんだのと言えましたね」

「嘘ではないさ。魔物は敵だ」


彼女はまた「理解できません」と呟いてから、

「それにしても、よくこんな場所を知っていましたね」

「子供の頃に。港町サモンの売買所に、よく行ってたんだ」


おおよそ子供の来るような場所ではない。が、

「何のツテも無い裏通りの孤児にとって、盗品を売る場所と言ったらここしかなかった」

今にして思えばだいぶ買い叩かれていたが。

シロムは苦笑した。

「ほんの子供の頃だよ。

 他人から奪うことでしか、誰かを騙すことでしか、生きていけないと思っていた頃だ」


ユイエルに出会う前の。


メリスは、シロムの乾いた笑いを黙って見ていた。

冷ややかでもなく、憐れむでもなく。

その視線の意味を測れないまま、鼻眼鏡の男が戻ってきた。


「はい。これであなたも今日からテイマーです」

柔らかいガラス材のような透明のケースに収まった、手のひらサイズのカードがカウンター台に載せられた。

何やら細かい規約のようなものが書かれているが、つまるところ、これを提示すれば周囲には「テイマー」として認識される。

シロムにはそれで充分だった。


「さ、次はギルド本部に行く」

あんたはどうするんだ、と振り返ると、メリスはやはり複雑そうな顔をしていた。

「ひとつだけ、聞かせてください」

「なんだ」

「そうまでして……あの魔物が、もう居なくなっていたら、どうするんです?

だって、逃げたじゃないですか……。探すんですか?」


その時はその時で、仕方ないと思うよ。

ふいにユイエルの声が聞こえた気がした。


「そうじゃないことを、願いたい、かな」

「答えになってます? それ?」

そう言って、メリスはふっと笑った。


「私も行きます」

「行くって、どこへ?」

「決まってます、勇者サマの魔王討伐の旅ですよ」

「……本気か?」

「本気です。それとも、私では役者不足ですか?」


シロムは顎に手を当てて、悩むふりをした。

旅のパーティを組む時は、4~5人というのが定石だ。

戦闘バランスを考えて組みたいが、とはいえあまり大所帯だと旅自体に小回りが利かなくなる。


自分が剣士であるのなら、相方は魔導士か、盾役を出来る重騎士が相応だろう。

だがシロムはパーティの1人は剣士にしようと決めていた。

戦闘で息を合わせ、2本の剣が空を裂く――その瞬間が、シロムは好きだった。


魔法面での補助も出来る、魔剣使いならなおよし、だ。



「セレ・マトス皇国の魔剣剣士なら、願ってもない」

素直に言った。

「けど、どうして俺と……?」

メリスは表情を迷うように一瞬間をおいて、それからおどけたように、

「ただの興味です」

と笑ってみせた。


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