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ヴィヴィアンとユイナ

人物整理の為


カサンドラ→主人公、元は異世界の住人で色々あってこの世界のイベントフラグを壊し中


ユイナ→カサンドラと同じように、異世界の住人。色々あって憑依していたヒロインに内側で殺されかける


ヴィヴィアン→ユイナが憑依していたはずの正ヒロイン。


ヒューベルト(ラヴィ)→ヴィヴィアンの恋人、外見はカサンドラの友人の姿をしているが、中身が違う


ヘルト→カサンドラの兄、第三騎士団副隊長




↓↓↓ 


ざああ、と、激しい音を立てて、雨が降っている。

(怖くない)

あたしは、意を決して自分の家のベランダに出た。身を乗り出してみると、遥か下の方に冷たいコンクリートの地面が見える。


あたしはこの世界が嫌いだ。

父親が他に女を作って出て行ってしまってからというもの、母は心を病んでしまった。突然泣き出したり、急に怒り出したり…、気分がいいときはにこにこと笑っている癖に、突如豹変してあたしをまくしたてる。

なら、こんな世界、いてもしょうがないじゃない。


『そうだよ、私、まだ呼ばれていないだけだわ。だったら、早く迎えに来てもらわなきゃ』


ヘヴンス・ゲートは、きっと開かれる。そうすれば、きっと―――


そうして、次の瞬間、あたしは憧れていたこの世界にやってきた。

嵌りに嵌った、「ヘヴンス・ゲート」と酷似している世界。

不思議なことに、あたしの姿は主人公ヴィヴィアンの姿になっていて、不思議な力を持つ神の巫女として首都・アンリに到着したばかりだった。


夢がかなったみたいで、本当に嬉しかった。最初は戸惑ったけれど、皆私をちやほやしてくれるし、大事にしてくれている。


ゲームと同じようにストーリーが進行して、イベントだって起きて‥。選択肢や、会話までウィンドウで表示されるなんて、まるで夢のよう。


(これは、もう全員とエンディング迎えらえるんじゃない?!)


そんな風に思って、浮かれていたのは本当だった。

けれどもあの子に遭って、思い描いていたものが少しづつ歪み始めていく。


彼らは人間じゃない。どうせゲームの中の人間。

最初は本当にそう思っていたのに。


なのに、選択肢を選んで好感度を上げて…それを繰り返していく毎に、攻略対象者たちの様子がおかしくなっていくのだ。


彼らにも怒ったり悲しんだり、感情があるのに、私はそれを無視し続けた。

そう、しないと‥続けられなくなってきた。


所詮、ゲームだから。


そう思わないと、やっていられなかった。


だんだん自分のしてきたことが恐ろしくなってきて、疑心暗鬼になっていく。

好感度が上がる度に彼らは壊れ、存在が負担になり…私は精神的に徐々に追い詰められていく。


あたしは結奈なのか、ヴィヴィアンなのか。


その答えを、あの同じ顔したヒロインがあたしに突き付けた。


『あなたは物語を彩る【登場人物キャラクター】の一人にすぎない。主人公じゃないの。ほら、見て。このゲームを動かしているのは私よ。あなたではないじゃない』


つまり…あたしはヒロインの操る人形だった。

彼女の目的も分からぬまま、あたしは用済みだと、あの女に女神の剣で貫かれたのだった。


そして、今。

あの子に贈った手紙はちゃんと届いたみたい。

‥彼女があたしの名前を呼ぶと、あたしはあたしを取り戻せた。

赤い破片が散らばる中で目が覚めるが‥多分あたしは何も着ていない。


「こ、こっち見ないで!!」


恥かしさのあまりぎゅっと目を瞑ると、遠くでバキッとか、ガコッとか暴力的な音が聞こえた。

続いて何か布のようなものあたしにかかり、慌ててそれを身体に巻き付けた。


「あなた、崎本結奈さんね?」


そっと目を開けると、空色の瞳があたしを心配そうにみつめていた。


(あたしの名前‥)


あちらの世界で、私が生まれた時に母がつけてくれた私の…私だけの名前。

久しぶりに聞いたその響きが嬉しくて、涙が出た。


「助けて‥もう、帰りたい。帰りたいよ‥!」

「‥結奈‥」


本当に、声をあげて泣いたのはいつぶりだろう。

この場所で、出会えたのが貴方で良かった。


**


「…来ないわ」

「…」


約束の時間、約束の場所。

ヴィヴィアンが贈った手紙に書いた指定の時間になっても、カサンドラは現れなかった。


「ねえ、なんであの子は来ないのかしら」

「…さあ。君が思う通りに、言うほど物事はうまく進んでないのかもしれないよ、ヴィー」


平然とそう言う彼は、どこか嬉しそうに口元をほころばせた。


「ずいぶん、嬉しそうじゃない。ヒュー」

「そうかな?久しぶりに君とこうして光の中で歩けて、嬉しいだけだよ」

「‥それは、否定しないけれど」


ベンチに腰かけていると、ヴィヴィアンの頬を優しい風が撫でる。


「ああ。…でも、こういう空気は本当に久しぶり」


そっと頭を寄せると、彼は肩を抱きしめて微笑んだ。

それだけで、ヴィヴィアンは嬉しくなってしまう。


人が雑多にあふれる公園に融け込むように、二人はまるで恋人同士のように身を寄せ合った。

しかし、ざわざわと流れる雑音に紛れてその姿を見つめる鋭い視線に、二人はまるで気が付いていなかった。


「隊長?何かありましたか?ぼーっとしちゃって」

「‥いや」


青と白の勲章が太陽の光を反射すると、ひときわ強い風が吹き、ヘルトの髪を揺らした。


()()は、違う結果になるといいが」


その呟きは誰に聞こえることもなく空へ消えていった。





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