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【完結】どすこい令嬢の華麗なる逆襲~全てのフラグをぶっ壊せ!~  作者: いづかあい
第5章 与えられた役割の中で

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夜のうたた寝は良いことがない

フェイリーの護衛という輝かしい任務を終えたノエルは帰路に就いた。

もう日はどっぷりと暮れ、そこかしこに夜の帳が下りている。ギルドにつくと、店内は忙しそうに動く従業員の姿が見えるが、どうやらラヴィの姿は見えないようだった。


(‥?勝手にさぼるような奴でもないと思っていたが)


「あ、お帰りなさいませ、頭領」

「…ラヴィの奴を知らないか?」

「ラヴィさんですか?‥そういえば、今日は見てないような」

「…そうか?」


部屋に戻ると、扉を開けた途端、なにやら甘ったるい花のような香りが充満していた。

思わず顔を顰めるが、そこにラヴィの姿がなかった。


「‥?」


ウサギの姿にでもなっているのかと確認するが、その姿も見当たらない。

首を傾げていると、コンコンと窓を叩く音がした。驚いてそちらを向くと、鷹の姿のアードラが怖い顔で睨んでいるようだ。

ただ事ではない様子だったので、早速窓を開けるとものすごい勢いで突っ込んできた。


「ラヴィがいなくなった!!!!」

「‥アードラ?落ち着け、どうしたっていうんだ」

「ラヴィがいないんだ!!…気配はするけど全くの別物っていうか、なんか気持ち悪いっていうか」

「気持ち悪いって…」


確かにラヴィがいない。

見れば、置手紙があるわけでもなく、どこに行ったのか見当もつかない。


「サンドラの所に帰ったんじゃ?」

「…いいや、戻ってみたけど、そういう感じはしなかった。ノエルはご主人様とさっきまで一緒にいたんだろう?」


帰り際、挨拶でもと思ったが、邸に到着した頃、グランシアの三姉弟は全員爆睡していた。

信頼しきっているのかもしれないが、それはそれでどうなんだろうかとも思う。どうやらヘルトも同じ思いだったようで、苦々しい表情をしていたのは気のせいではないだろう。


「‥確かに、爆睡していたけどなあ」

「嫌な予感がするんだ…」


印象的にいつも落ち着き払っているアードラがここまで動揺しているとなると、ただ事ではないのだろう。


「…とりあえず、一日待ってみよう。まだ、サンドラには言うなよ」

「‥ああ、わかっている」


そう言って飛び立つアードラを見送りながら、ノエルは再び周りを見渡した。


(この鼻を突くような香りは‥香水か?見知らぬ女の残り香なんて少しゾッとするな)


ふと、見るとテーブルには一輪の白い薔薇が置いてあった。


「薔薇‥そういえば、サンドラも持っていた事があったな」


(白い薔薇は故人を現す‥となると)


「もしかして‥あいつ…」


**


「ふぁああ…」


私はふと目が覚めると、自分がふわふわ宙に浮いているような気がして驚いた。


「よく眠っていらっしゃいましたね」

「!!!」


はっとなると、私はどうやらユリウスによって、俗にいうお姫様抱っこと言う奴で運ばれて言る最中だった。


「わ、わわわユリウス!!」

「ああ、動くと落ちますよ。」

「だ、大丈夫!一人で歩けますから?!」

「はは。何を今さら、さあもう部屋に着きますからご安心を」


ご安心、安心ってねえ?!

周りを見れば、確かにここはグランシア邸のようだ。

‥どうやら眠ってしまったらしい。あ、色々思い出してきた。

(無防備にもほどがあるでしょうに…はぁ、恥ずかしくて死んでしまいたい‥。)


そんな私の様子をアリーは何か言いたそうにこちらを見ている。言いたいことは分かる、わかるわアリー。でも、お願いそんな目で見ないで。


「お嬢様の部屋はこちらです」

「アリー‥」


確かにもうあと数歩で私の部屋のようだ。

(‥ユリウスにこうやって運ばれるのは二度目だ‥)

「も、もう!ここで!!ここまでで十分です!!」


一応私はこれでも花も恥じらう17歳なわけだし(中身は違うけど)部屋の入り口の前で辞退を申し出た。


「そうですか‥うーん、仕方がありませんね」


コイツ、入る気だったのか!!

すとん、床におろされると、すかさずアリーが傍に来て支えてくれた。


「‥カサンドラ様、一つお願いがあるのですが」

「お、お願い?」

「以前、貸した借り、覚えていますか?」

「借りって‥‥」


残念ながら、覚えている。そう、アレは仮面舞踏会の時。

いやもう色々あったじゃない?時効じゃない?!

すっとぼけてもよさそうな気もするが、ユリウスの笑顔がそれを許してくれなさそうな気がする‥。


「‥イヴェンター伯爵の時ですね」

「あ、忘れているかと思いましたが‥‥憶えていただいて光栄です。」


ぎょっとしてユリウスを見るが、彼はしてやったりとにやりと微笑んだ。

(くぁぁ~…こいつぅ…)


「こういうのは早めにした方がよろしいかと思いますので‥明日、私と出かけませんか?」

「‥あ、明日?明日は‥日曜日ですね、はい‥。えっとどちらへ?」


そうでした。今日は土曜日でした。


「…それは今はお教できません。‥でも、怪しいところではありませし‥ああ、それなら、アードラ君もどうでしょうか?」

「!!!!!」


そうか、知っているんだこの人!アードラの正体のこと!


「わ、わかりました…」

「良かった。それでは、明日お迎えに上がりますね‥もし叶うのであれば、お弁当も用意していただけませんか?それで貸し借り話にしましょう」

「‥それ位なら貸し借り関係なく準備はします。…そんなに心配なさらなくても大丈夫ですよ?」

「‥‥」


一瞬、面食らったような表情を見せたユリウスだったが、すぐにほっとしたように笑った。

別にユリウスが嫌いなわけではなし。そんな顔をされるとなんだか、こちらが申し訳なくなってしまう。


(警戒‥し過ぎかもなあ)


「良かった…、では明日、楽しみにしていますね」


そう言うと、ユリウスは何気ない動作ですっとかがむと、そのまま私の額にキスをしてきた。


「!!!」

「ふふ、では、また明日」


それ見たことか。

だめ!やっぱコイツ油断ならないわ!!

ため息交じりで部屋に戻ると、アリーに着替えを手伝ってもらった。


「油断なりませんね‥フォスターチ卿…!」

「いたい、痛いからアリー、もう少し優しく髪ほどいて」


本当に、アリーは一生懸命だなあ。


「あ、そう言えばお嬢様、お手紙が来ていましたよ!」

「手紙?‥必要じゃない限り当分夜会だのパーティー系には出たくないわ」


そういうイベントごとに出ると必ず何かしら起こるもの。

わたしだってできれば何事もなく平和に過ごしたいのだ。


「うーん、そういう招待状は必要じゃない限りトーマスさんが処分されていると思うので‥これは個人からの手紙のようです」


そう言って、アリーが手渡してくれた手紙の差出人を見ると‥そこには日本語で「崎本結奈」と書いてあった。


(日本語…これってもしかして)


「不思議な文字ですね。外国の方ですか?」

「これ、読めないのね」

「?はい、すみません、私は学が浅くて‥」

「‥大丈夫よ、この文字は読めなくたって無理はない」


この世界の公用語は【英語】だ。

【日本】という国が実際にあるとも思えないので、これはおそらくヴィヴィアン‥もとい、私と同じ場所から来たかもしれない、あの子のものじゃないだろうか。

中を開けると、同様に日本語で場所と日時が指定されていた。


(手間が省けた。‥私も聞きたいことがあるもの)


なら、今日そう伝えてくれればよかったのに、とも思うのだが…何か話したそうにしていたのはこのことだろうか?


パーティー会場に戻った後、いくら探しても彼女の姿はどこにも見当たらなかった。


(せめて名前だけでも聞いておけばよかった)


寝室に戻ると、アードラがどこか落ち込んだ様子で私の寝台に寝転がっていた。


「そこ、私の寝るところなんだけど」

「いいじゃない、ご主人様。一緒に寝ようよ」

「あんたには前科があるでしょう」


仕方ないので長椅子に座り、アードラを見る。

ぱっと見では異常を感じないのだが、その様子はどこかおかしい。


(落ち込んでるというか‥なんだろ、元気ない?)


今日の一件で魔力とやらを使いすぎてしまったのだろうか。そんな心配をしてしまう。


「‥こっち来る?」

「いいの?隣に行って」

「何もしないなら。‥そういえば、ヴィヴィアンから手紙が来たよ」

「ヴィヴィアン?…なんでまた」

「話したいことがあるみたい。…彼女と仲良くなれるかどうかは‥ちょっと複雑だけど。話すのはいいかな」


アードラは何気なくすっと手を伸ばすと、その手紙を手にとって見た。


「…これ、なんて字?」

「日本語。…私の元居た場所の言葉よ」

「へえ―‥」

「そう言えば、アードラ、明日ユリウスが一緒に出掛けないかって」


私がそう言うと、アードラは一瞬固まってしまった。


「え…何。僕?ご主人様でなくて?」

「正確に言うと、誘われたのは私だけど…アードラも一緒に来ないかって」

「いや、断る理由はないけどさ‥」

「……行かないの?」

「も、勿論行く」

「ほんと?‥良かったー」


正直に言うと、今ユリウスと二人きりになるのはなんというか、気まずい。

いや、気まずいというか、何かを押し切られそうで怖いというのは本音だろうか。


(あ、そういえば。ということは、人型の場合は兄と弟が二人並ぶってことよね?…そ、それはそれで怖いかも)


「‥い、いいや明日のことは明日考える。よし、もう寝よう!」

「あ、じゃあ僕も」

「人型以外の動物だったら赦すわ」

「…じゃあ、猫でいい?」

「よし」


そして、私は早々に床に就いたのだが‥ここで問題が。


(‥さっき思う存分寝たから、あまり眠たくない…)


見れば、猫のアードラはベッドにもぐりこむなりぐっすりと眠ってしまったようだ。

やっぱり、無理をさせてしまったのかもしれないなあ。

目を閉じると、今日起きた様々な出来事が頭をぐるぐる回る。


カシルのこと、レイヴンのこと‥ヴィヴィアンのこと。そして、ヘルトのこと。

レイヴンとのやりとりの最中で、まるで何が起こるか最初から分かっていたかのようにヘルトは行動していた。


(まさか‥アードラの逆戻しの力の影響を受けない、とかそう言うこと?‥それとも)


それに、レイヴンが正気に戻り、レアルドも正気に戻ったって言うなら、【シークレット・フラグ】は全て壊れたということだろうか。

これも確認する方法もないので、結局のところ分からない。


そうして、私の脳内で明確な回答など得るわけもなく‥いつの間にか眠ってしまった。



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