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【完結】どすこい令嬢の華麗なる逆襲~全てのフラグをぶっ壊せ!~  作者: いづかあい
第5章 与えられた役割の中で

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ガーデンパーティー

前半あらすじ兼復習なので、飛ばして問題ありません。

この世界に来てから、春と、夏とすぎ、半年くらいだろうか?

私‥カサンドラ・グランシア、こと橋本真梨香22歳は、哀しいことに仕事中、若年性脳梗塞で倒れてしまい、そのまま還らぬ人になってしまった。


と、言っても私の死を悲しむような人間があちらにいないのは知っているので、気楽なもの…になるには少し時間がかかってしまったが、今では大分落ち着いたと思う。


そして、気が付いた時‥私は【ヘヴンス・ゲート】というタイトルの乙女ゲームにそっくりの世界にいた。

まるでゲームの中に迷い込んだみたい。

けれど、事態はそんな単純な物じゃなかった。


ゲームのヒロイン、ヴィヴィアン・ブラウナーの物語は、攻略対象となる7人の男性たちと彼女を中心に世界が回り、物語は進んでいく。


けれど私がなった【カサンドラ】というキャラクターは、ゲームには登場していない。


完全なイレギュラーの存在で、私は【来訪者】とよばれ、この世界の神様‥みたいな存在、【大いなる意志】とやらにある権利を与えられた。

それが【世界を破滅させる権利】というものらしい。


どすこい体系を気にしてか、もともと引きこもりがちだったカサンドラは、初めてできた友人ヴィヴィアンを最初は慕っていたのだけど…、どうやら彼女は自分の攻略対象であるヘルト・グランシア…カサンドラの兄に近づくために友人のふりをしていたようなのだ。


そして、カサンドラはヒロインヴィヴィアンによって、いらぬ罪を着せられて投獄され、処刑されてしまう運命となる。


そんな彼女を引き継ぐ形で私はこの世界にやってきた。

‥それが「公開裁判」イベントだ。


しかし、彼女を貶めたヒロインヴィヴィアンというのが、とても曲者だった。

なんと、そのヒロインは私と同じ【来訪者】のようなのだ。


それから、【大いなる意志】に仕える(?)神さまの端くれ、ラヴィと出会う。

彼曰く、自分たちは世界というシステムをサポートするための存在なのだそうだ。


そしてヘルトと出逢い、ノエルと出逢い、ユリウスに出逢い‥【世界】の破滅のキーとなる【シークレットフラグ】なるものをぶっ壊していく。


他の攻略対象者、バルク、レアルドとも出逢ったが‥彼らは、ヴィヴィアンのライバル(?)にある私をやたらと敵視していた。まあ、二人とも返り討ちにしてやったけど。


もう一人帽子屋と呼ばれるバックアップ擬人化システムがいるのだが、彼は色々あって私がアードラという【名前】を贈ったことで、その役割を降りて私と主従関係にある使い魔となった。


そうして‥バックアップ【保存】を担う役割が外れたことで、世界は形を変えた。


今度は新たな自称アップデートシステム、【片眼鏡の紳士】と遭遇した。しかもそいつは敵意むき出しで私を怪しげな【影】を獣に変化させる術を持っており、二回も襲われてしまう。


直接かかわりなくとも、一度は誘拐されて襲われたり、どうやら私はあまりこの世界に歓迎されていないようだ。


これもみんなと何とか対処したのだけど…その経緯で、最後の攻略対象者カシルと顔を合わせる。


カシルがまた面倒くさい奴で‥私とどうにかして婚約までこぎつけて出世したいらしく、意外と果敢にアタックをかましてきた。


そのおかげで私はユリウスと偽装婚約することとなる。

そんなこんなで、私の知らない間にユリウスとアードラが仲良くなったり、ラヴィがノエルと仲良くなったりと‥様々なことが起きた。


そして、ラヴィの家出から、10日ほどたって‥ついにフラムベルグ家の【ガーデンパーティー】当日なったのである。


ノエルやアードラのお陰で、どうやらカシルが片眼鏡の紳士ことファルケン・ビショップと結託して私に毒・媚薬(?)を盛ろうとするんじゃないかとの事前情報が手に入ったわけだが。


「お嬢様‥!!今日も素敵です!!」

「…ちょっとアリー、あまり華美にならなくてもいいって言ったのに‥」


いつの間にか敏腕ファッションコーディネイターと化したアリーをはじめとするうちの侍女たちがそろって満足げに笑ってハイタッチをしている。


本日のスタイルは、高い縦襟で肌を見せない造りのローブ・モンタントドレスと言う奴らしい。紫色の生地にレースがたっぷりと使用され、上品な造りは、マダム・ベルヴォンの十八番のデザインだ。


それに大きな花をあしらった帽子(ファシネーター)を装着すると、一丁上がりである。

おお、中世の絵画とかでよく見るスタイルだ。これで日傘を差したら完璧な令嬢スタイルね!


「サンドラね―様!」

「フェイリー。あら素敵!私とお揃いのデザインだね!」


フェイリーが楽しそうにこちらに向かって駆けだしてきた。今日は何と言ってもフェイリーもクレインも一緒なので、嬉しさ倍増だ。


「…さすが、お似合いね」

「!!‥タ、タリア様」


現れたのは、なんとフェイリーの母親、タリア公爵夫人だ。


(あ、しまった‥ここはお母様とか呼ぶべきだったろうか?)


とはいえ、そういうわけにはいかないよね。なんにしても、滅多にこの本邸に来ることはないのに…やっぱり、フェイリーが心配だからかもしれない。

正式な夜会ではないとはいえ、れっきとした社交界デビューの一端だもの。


すると、後ろから得意げ表情のクレインがやってきた。


「お母様!今日は僕がしっかり、フェイリーをエスコートしますから、任せてください!」

「‥クレイン、あまり調子に乗らないようにと教えてきたでしょう。頼れるところは大人に任せること。いいわね?」

「は、はあい」


さ、さすが。あのクレインが一発で大人しくなった。

夫人はさらにくるりと振り返ると、私に向かって毅然と礼をして去っていった。


「‥相変わらずだな、母上は」

「ヘルト。…こればっかりはしょうがないってことなんでしょう、きっと」


うう、ホントはもう少し仲良くなりたいけど‥母親への接し方なんて全く分からない。


「‥ユリウスもノエルも来たようだ。そろそろ行こう」


そう言うと、今日は護衛任務ということで、騎士団の礼服姿のヘルトがすっと片手を差し出してくれた。


「‥…」

「どうした?」

「いいえ、なんでも!」


(あ、あまりにも自然な動作で驚愕したわ!!騎士ってほんっと、様になるわぁ)


これが兄でなければうっかりときめいてしまいそうだ。

おずおずと手を取ると、負けじと片方の手をクレインが握った。


「僕もいますよ!姉さま!」

「わたしも!」


つい、ふっと笑みがこぼれる。

この子たち、天使なの?

見てるだけでほっこり癒され、ヘルトに対しての気恥ずかしさもどこかへすっ飛んでいってしまった。


**


「ヴィヴィアン様、レイヴン様がお迎えに上がりましたよ」


メイドのギネリーが恭しく礼をすると、結奈(ヴィヴィアン)は立ち上がった。


「‥今行きます。」

「‥あの、ヴィヴィアン様、お顔の色がすぐれないようですが…」


改めて自分の顔を鏡で見ると、目の下は隈ができ、頬も少し陰りが見える。

ここ数日、結奈はあまり眠れていないのだ。


「大丈夫よ、いつもありがとう、ギネリーさん」

「‥お気をつけてくださいませね」


(…毎晩、あの夢を見る)


過去、自分がいた部屋に瞳の色だけが違うあの女が我が物顔で座り、ゲームをしているのだ。

何度も呼び掛けても全く応じる気配がなく、ただただ時間だけが過ぎていく。

…そんな夢。


(こんなの、悪夢だわ)


出迎えてくれたのは、頬もげっそりとこけ、似たような表情のレイヴンだった。

どこかぼーっとしていて、まるで廃人だ。


「やあ、待っていたよ。さあ、一緒に行こう」

「…ええ‥痛ッ」


飽きもせずよく毎回薔薇を持ってくるな、などと考えていると、取り忘れたのだろうか?薔薇の棘に指が刺さってしまう。


「!!!ああ、大丈夫かい?ヴィー!」

「だ、大丈夫」


今にも死にそうな表情のレイヴンを何とかなだめ、二人で馬車に乗って街の中心部にあるというフラムベルグのタウンハウスへ向かう。


馬車に乗っている間中、レイヴンはぺらぺらと何かと話しかけてきたのだが、そんな気分にもなれないので返事をしなかった。

そうしているうちに、あちらも話すのをやめたので、車内に気まずい沈黙が下りた。


「到着いたしました」


馬丁(コーチマン)がそう言うと、扉を開けてくれた。

拷問のような気まずさからやっと解放され、ほっと胸をなでおろすと、ちょうど向こうから立派な二頭立ての馬車がやってくるのが見えた。


「…ちっあいつら」


珍しくレイヴンが舌打ちをする。それにも驚いたのだが、もっと驚いたのはその馬車から降りてきた人物である。


(あれは‥まさか)


馬車からまず最初に降りたのは、騎士団の礼服を着ているようだが、間違いない。髪をバッサリと切ったユリウスだった。


「本当に‥ユリウス卿は神殿から除籍されたのか‥」


レイヴンがそう言うと、ユリウスはこちらを振り返り、妖美に微笑んだ。

その表情にレイヴンはたじろいだ。

続けざま、ユリウスの手を借りて降りてきた令嬢に、思わず結奈は目を見開く。


「!ヴィヴィアン」

「‥カ、カサンドラ」


結奈の目の前に立っているのは、華やかさと美しさを兼ね備えた一人の令嬢。そしてそれに付き従うように寄り添うのは攻略対象者であるユリウスなのだ。


(本来なら‥本来なら‥貴女の今いる場所はあたしのものだったのに‥)


ぶるぶると震える手を握りしめると、レイヴンが何故か前に出た。


「お初にお目にかかる。…レイヴン・クロムだ」

「‥ああ、あなたがレイヴン…」

「行きましょう、カサンドラ。‥相手にする必要はありません」

「そうね、‥では、失礼」


全く相手にもされず、結奈は惨めに思えた。

今まで持っていたものが瓦解していくような。そんな思いだった。

そして、同時に、ある一つの可能性が頭をよぎる。


(‥そういえば、いつだったか、帽子屋は世界を壊す者がいれば、修正しようとする者もいるって)


もし、カサンドラが壊す者だとしたら。


「私を‥助けてくれる?」



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