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【完結】どすこい令嬢の華麗なる逆襲~全てのフラグをぶっ壊せ!~  作者: いづかあい
第3章 攻略対象者、全員登場

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崎本結奈①~ヴィヴィアン・ブラウナ―~

『結奈、君とはやっぱり付き合えない』

『ど、どうしてよ!私の何が悪いっていうの?』

『そう言うとこ。お前すげーわがままなんだもん。いつも自分は悪くないと思ってる』


遠い、遠い灰色の空の下の世界で、あたしは彼氏と別れるとき、いつもそうやって言われてきた。


わがまま?なによそれ。

男の人は、付き合ってるコを大事にして、言うことを何でも聞いてくれるもんでしょ?乙女ゲームの主人公たちは、皆あたしをちやほやしてくれた。


(なのにどうして?)


あたしを愛するだけの存在なのに、どうしてあたしが嫌がることをするの?

力強く掴まれた腕が痛い。なのに、どうしてみんな見ているだけなの?!ここは‥あたし(ヒロイン)が中心の世界じゃないの?!


「嫌‥誰か助け…!」

「うわぁっ!」


ぎゅっと目を瞑ると、ガシャン!!と派手な音が聞こえると同時に、苦しそうなうめき声だけが聞こえた。と、同時に、強く握られていた腕が楽になった。


「大丈夫?」

「あなたは…」


目の前に現れたのは、最新の流行を追ったサマードレスに、真っ白い帽子を身に着け、凛と立つ一人の女性。‥あの子だ。

カサンドラはちらりこちらを見ると、あたしを後ろに下がらせた。脇で転がっているバルクに手を貸して立ち上がらせると、バルクも下がらせた。


(…良かった、バルクに怪我はないみたい)


ほっとしたのもつかの間、うめき声をあげながら今度はレアルドも立ち上がり、こちらをにらんでいる。思わず一歩下がると、すっと、あたしの前にカサンドラが立ちはだかった。


パン!と扇子を開いて優雅にほほ笑む姿は、不本意だけど…格好よく見えた。


「あら、ごきげんよう、レアルド皇太子殿下。お取込み中でしたかしら」

「‥‥カサンドラ・グランシア!!」


まるで仇敵を見つけたかのようなものすごい形相でこちらを見ているが、カサンドラは全く気にするそぶりは見せない。…至って平気そうな顔で、ぱたぱたと扇子で扇ぎながらため息をつく。

ど、どういう神経してるのよ、この子…。


「殿下ともあろうものが、一人の女性にそっぽ向かれたからって…みっともないと思いません?」

「なんだと?!この私のどこがみっともないというのだ!」


レアルドはわなわなと震えながら言い放ち、カサンドラに向かって剣を抜いた。


「‥ッ!!」


咄嗟に息をのんだ。けれども、剣を向けられたカサンドラ本人は動じることなく真っすぐ突進するレアルドを見つめている。そして、妖美に微笑んだ。


「これは正当防衛というものですわね。殿下。先に手を出したのはそちらですわ」


美しい王家の紋章が入った装飾の柄がきらりと輝く。

突剣を切っ先をひらりとかわすと、そのまま扇子でレアルドの手首を叩いた。


「うっ?!」


レアルドはバランスを崩してよろけるが、転ぶのだけは辛うじて避けたようだ。‥皇太子としてのプライドだろうか?そのままくるりと勢いよく振り返るが、カサンドラが扇子で首元を抑え込んだ。


「!」

「まぁ、なんということでしょう。嘗ては天使様のごときお美しい顔立ちでいらっしゃったのに、今は顔色も悪いし、目の下はくまだらけ。随分と凶悪な人相になられましたわねえ。ああ、恋って恐ろしい!人間をこうも変えてしまうなんて」


大げさな程身振り手振りを添えて、カサンドラはレアルドをあざけ笑う。

ざわざわと周りが騒ぎ出し、皆レアルドの方を憐れむように見た。


「き‥様!!王族不敬罪で処…」

「あら殿下。()()確たる証拠もなく、あなたの独断と偏見と権力でこの私にご裁可を下すおつもりですか?」


あたしは、二人のやり取りをハラハラしながら見ていた。

カサンドラが言う()()というのは、恐らく以前起こった公開裁判のことを言っているのだろうと思うと、背中に冷や汗が落ちる。

案の定、レアルドもそれを察したらしく、ぐっと黙り込んだ。


「残念ですけど、これだけの目撃者がいます。‥どう考えても、嫌がる女性を無理やり連れて行こうとした挙句、女性に剣を向けた殿下の方が分が悪いですわよ?」


そう言うと、再びバッと扇子を開いて微笑んだ。と、同時に彼女の後ろから複数の騎士たちがこちらに向かって走って来るのが見える。

それを確認してか、レアルドは不敵に笑った。


「フン、いくら高名な貴族とはいえ、吠え面をかくのはどちらかな?」

「あら、それならご自分の顔を鏡で確認したらいかがです?ああ、見たことがないのなら私がお見せしましょうか?」


カサンドラはそう言って持っていたハンドバックから手紙を取り出した。

キラッと太陽に光を受けて反射した光は、容赦なくレアルドの顔を映し出す。


「うっ?!」

「さ、逃げるわよ。」

「え?!」


グイっと手を握られると、そそくさとその場から走り出した。


「バルク―!あんたも王族不敬罪になりたくなければさっさと私についてきなさい!!」

「あ ちょ 待てよ!!」

「アードラ、あいつ追ってこないか見といて!」

「了解、ご主人様」


カサンドラについてきていた黒い鳥はそのままパタパタと街の方へ戻っていく。そうして、カサンドラとあたしとバルクは、あの状況から見事に逃げおおせることが出来た。




人ごみを抜け出し、複雑な路地裏をずんずんとカサンドラは走っていく。

どれくらい走っただろうか。後ろからバルクが息も絶え絶えにこちらに向かって一生懸命走って来るのが見えた。


「ちょ、ちょっと待って…早…」


あたしは肩で息をしながら、ちらりと後ろの方を向いた。バルクもヘロヘロになりながらもやっとの思いでこちらに合流したのを見て、安堵する。


「あら、優しいのね。バルクのこと、気にかけていたんでしょ?」

「‥‥助けて、貰ったから」

「か、カサンドラ‥!お前、化け物かよ!なん…で!息‥一つ、乱れてないんだ!」


あたし以上に肩で息をして、地面にへたりこむバルクを見て少し苦笑してしまう。とはいえ、守ってくれたのは本当だし…決まり切らなかっただけで。


「鍛え方が違うのよ、鍛え方が」


カサンドラは、やや乱れた髪を直しながら答えた。

呼吸も落ち着いてきたので、あたしは周りを見てみると、‥先ほどの場所のように人の気配はあまり感じられない。ここは何か‥教会のようなものの廃墟だろうか?


「追手が来ても嫌だし、中に入りましょう?そう言えばやるじゃない、バルク。少し見直したわ」

「…お前に言われても嬉しくない。この体力バカ女め」


やがて、街の方角から先ほどの黒い鳥がこちらに向かって飛んできて、彼女の肩に止まる。何かこそこそ耳元で話しているようにも見えるが、まさか鳥が喋るとは思えない。

鳥が合流したことで、あたし達は廃屋の中に入り込んだ。


教会の中は天井も高く、かつては青く美しい色だったのだろうか?ところどころ剥げてはいるものの、青色がのぞいている。

天使の像や神と思しき像は見当たらないが、現代で見る教会と同じようなつくりをしているようだ。今は原型をとどめていないが、祭壇の中央には半壊した石の台がひっそりと建っていた。


ステンドグラスはところどころ割れたりなくなっていたりしているけれど、半分以上は原型をとどめて残っている。‥さぞかし立派なものだったのだろう、色とりどりの模様が確認できる。

日の光を透して落ちる鮮やかな光に、すこしだけ目を細めた。


「…‥さて。あのレアルド殿下はどういうこと?ヴィヴィアン、あなた彼に何か薬でも盛った?」

「わ、私は何もしてない!…その、ちょっと‥‥最近冷たくしていたのは認めるけど」

「冷たく、ねえ。ヤク中の末期症状みたいになってるじゃない。どうするのアレ?」

「‥‥そんなこと、言われても…!」


あたしは何も答えられない。

ただ、この世界に来て、満足だった。‥満足がゆえに、ありのまま、何もせずに時間を過ごしてきたのだ。ただ、普通に恋愛ゲームみたく攻略対象者を攻略して、デートしてイベントをして‥本当にそれだけだった。


「ヴィヴィアン、あんたはもう少し現実を把握したほうがいいわ。…そう言えばバルクはまだまともそうね」

急に話を振られて、少しバルクは驚いたように見える。

「え?‥まともって…何のことだよ」

「知らないならその方が幸せじゃない?…さて、私は用事ができたから戻るわね。後は二人で何とかしなさい。行くわよアードラ」


彼女の掛け声に黒い鳥はまるで使い魔のように従いながらついていく。

くるりと踵を返して去っていく後姿に、何か言わなければ、と少し焦ってしまった。


「ま、待って!!」

「なあに?」

「た、助けてくれて…ありが、とう」


つたないあたしの言葉に、二ッと口の端をあげてカサンドラは微笑んだ。


「あら、感謝の言葉を知ってるのね。関心関心。」

「‥‥フ、フン!」


ひらひらと手を振りながら歩いていく彼女を見送った後、あたしは辛うじて壊れていないベンチの上にすわろうとした。すると、あわててバルクは自分の上着を脱いでそこに敷いてくれた。


「…ごめん、バルク。助けてくれて、ありがとう」

「い、いいよ別に。‥それより、あまり役に立てなくて、ごめん」


申し訳なさそうなバルクの言葉に、ずきりと胸が痛んだ。

先日、仮面舞踏会でカサンドラに言われた言葉が突然脳裏に浮かぶ。


(…確かに、この人たちは人間だわ。‥感情があって、心がある。なのに、あたしは)


今まで自分がしてきたことを思い出すと、何故かボロボロと涙が零れた。

それを見て、バルクは大いに動揺した。


「あ!えッ‥あ、あの、な、なな泣かないで!ヴィヴィアン!‥ほ、ほら!」


そう言って慌ててハンカチを取り出して、あたしに手渡した。

白いハンカチに、赤い文字のイニシャル。‥これは、かつて自分があげたものじゃないだろうか?


「これ…」

「あ!!!いや、あの!!‥きみにもらったけど、使ってないか‥あ、いや、使いたくないんじゃなくて使えないというか勿体ないというか!」


随分と顔が真っ赤で、まるでゆでだこのように見える。

とめどなく涙はあふれてくるけど、なんだか少し笑ってしまう。そのままそっとバルクの肩に頭を置いた。


「…女性が泣いているとき、隣の異性は胸を貸してあげるものよ」

「う、うん‥」


ぎこちなくそっと背中を撫でる手はとてもやさしい。その優しさに、また涙があふれてしまう。

(ごめん、バルク…あたしは君に、いつも残酷なことをしていたんだわ)


浮気現場に踏み込んだと思ったら、元カノ(?)の乱入で昔の仕返しをされ、返り討ちに遭う、の巻

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