遅刻確定
俺の頬に触れる謎の感触で目が覚めた。
「光、おはよう」
「お、おはよう……」
光の手が俺の頬をグサリと刺したまま固まっている。
「ところで、なんで俺の頬に指を刺しているんだい?」
「え、その、コウが可愛くてほっぺたつんつんしたくて、その欲望に負けてしまいました……」
正直に自白すると、指を動かしてつんつんしてくる光。
「これ……楽しい?」
「楽しいし……可愛い」
優しげな表情で頬をつんつんし、更に頭を撫で始めた光。
幸せなのでしばらくされるがままにしておく。
―――
通学中。光が申し訳なさそうに謝ってきた。
「……朝は悪かったわね」
「ん?何が?」
「その、いじくり回して」
「いいよ別に。嫌じゃないから。むしろ幸せだし」
「え、なら、毎朝……」
「でも今日みたいに遅刻確定はちょっとまずいから、ほどほどにして欲しいかな」
「ごめんっ!」
遅刻ラインが8時30分で現在時刻は8時15分。自宅から学校までは徒歩で15分。予定通りに行っても遅刻確定だ。
「朝満足出来なかったら帰ってからに回していいから」
「……ごくっ」
「何故に唾を飲み込んだ?」
「え、あー……遅刻しそうでまずいなって思っただけよ?」
「……ふーん」
「……ふーんって何よ」
「もしかして光ってもっと、その、もっとベタベタしてもいい感じなの?」
「……ベタベタしたいしされたいわよ。当たり前じゃない彼氏なんだから……」
顔を真っ赤にさせて呟く光。
ぐはっ!
「……そうなんだ……」
「な、なんか言いたいことあるなら言いなさいよ!」
「……いや、ならもっと躊躇なくベタベタできるなと思って」
「……早速手を繋いでもらおうか!?」
ばっ、と手を差し出してきた光。
「なんか喋り方変わってるし」
「そうでもしないと色々とどうにかなりそうなの!」
「くっ……」
思わず笑ってしまう。
「何笑って、ひゃっ」
光の手を握る。……柔らかくて小さい。俺の手と光の手では指の付け根1個分位差があった。
「可愛いなぁ、もう……」
愛しさが溢れてくる。
「コ、コウの手ってほんと大きいのね」
「ぐはっ!」
上目遣いでそんな事を言われてしまい、膝から崩れ落ちそうになる。
「コウ」
「な、なに?」
「私達、遅刻って事忘れてない?」
「あっ」