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もしも

【新人警官視点】


 朝の7時。交番に電話がかかってきた。


 刃物を持った怪しい人物を目撃したとの事で新人警官である俺は、先輩警官の皆川さんと一緒に目撃された場所にパトカーで向かっていた。


「先輩。こういう通報ってよくあるんですか?」


「あぁ。まぁ、怪しい奴なんてのは沢山いるしな。……でも刃物を持ってる怪しい奴なんてのはあんまり無いな。……もしもの事があるかも知れないから、気をつけろよ」


「はい!」




 目撃場所の歩道橋近くに来た。朝の通勤・通学の時間帯のため人の通りも多い。こんな所に刃物を持った奴なんて……と思っていたら新島先輩がいきなり車を降りて、交差点に向かって走り出した。


「先輩!?」


 俺も車を道の端に止めて降り、先輩を追いかけようとした。その時だった、


「止まれぇぇぇぇぇぇ!」


「危ないっ!」


 先輩のドスの聞いた声と、もう1人、誰かの声が聞こえた。


 先輩が突進している先を見ると、刃物を持った男が信号待ちをしていた女子高生を刺そうとしていた瞬間だった。


「うぐぁっ!」


 先輩が男にタックルをかます。その衝撃で男が刃物を手放し、刃物が地面に転がった。


 俺は急いで先輩の元へ走った。



 ―――







 朝、学校は大騒ぎだった。この高校の2年の女子が男に殺されかけたらしい。ギリギリの所で警察官に取り押さえられ、その女子は無事だったという話だ。


「コウ、大丈夫?」


「……ありがとう。ごめん、光」


「思い出したんでしょ。もう大丈夫だから」


 光が心配そうに背中をさすってくれる。



 事件の瞬間。


 警察官……光のお父さんが犯人を取り押さえた時。あのままだと、女子生徒は刺されてしまっていた。


 刃物が刺さらないように光が反対側に女子生徒を伏せさせてくれたのだ。


 ……俺はと言えば事件の光景がフラッシュバックしてしまい、吐いていた。


 本当に情けない。


 そして、結局光を事件現場に行かせてしまった。


 誰かが殺されるかもしれないと、居てもたってもいられ無かった光を止められなかったのだ。


「結局、光を危ない目に会わせてしまったし……」


「大丈夫だったし、気にしないで」


「……もしも、光が刺され、」


 その時、光が俺の顔を動かして真っ直ぐに見てくる。


「もしもなんて無いわよ。コウも私も生きてるし、あの先輩だって生きてる。警察……お父さんも何も怪我してないわ」


「……うん」


「コウの夢のおかげで誰も不幸にならずに済んだ。それでいいじゃない」


「……ありがとう」


「どういたしまして。ほら、1時間目が始まるわよ」


 最後に俺の頭をぽんぽんとして、自分の席に戻った光。



 今の女々しい自分と、止められなかった情けない自分と、何より光が刺されずに良かったという安堵で何も考えられなかった。







遅れてすみません

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