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 そうか、アリアン嬢はあいつらがどのくらいの強さなのかを知らないのか。

 俺は彼女の頭に手を置き、安心させるように少しだけ撫でた。


「アリアン嬢、俺の『鑑定屋(エエモンモロタノウ)』が見た、あいつらの能力を伝えておくぞ」


 俺が見た彼らのステータス、そしてスキルはこうなっていた。


デイブ・ストーン【土属性】 レベル:16


攻撃:40(長剣+8)

防御:35(鋼板鎧+12)

速度:12

精度:15

抵抗:15

運:16


【スキル1】土くれの霧(メカクシバスター)

敵一体に攻撃を行い、15%の確率で対象の精度を少しの間下げる。


【スキル2】土の盾(ソイルシールド)

次の行動まで、敵の攻撃を受けた際、30%の確率でダメージを75%軽減する。





ロズ・バトラム【金属性】 レベル:15


攻撃:35(木製の棍棒+5)

防御:21(軽装鎧+7)

速度:14

精度:18

抵抗:14

運:12


【スキル1】バットの一撃(マジカルバウンス)

敵一体に攻撃を行い、30%の確率で対象の抵抗を少しの間下げる。


【スキル2】金の切れ目(カットオフポイント)

敵一体に攻撃を行い、50%の確率で対象の防御を少しの間下げる。





ドミニク・デュバリー【火属性】 レベル:18


攻撃:46(大槍:十五号丸+15)

防御:38(鋼板重装鎧+15)

速度:12

精度:20

抵抗:15

運:10


【スキル1】燃えよ剣(ファイヤエンチャント)

敵一体に攻撃を行い、50%の確率で対象に炎の追加ダメージを与える。


【スキル2】ファイヤーダンス(ナツガモエテル)

敵全体に攻撃を行い、30%の確率で対象に炎の追加ダメージを与える。



 ちなみに、割と顔立ちのよかったのがデイブ・ストーンである。


「あの時募集を欠けていたのは、どうやらストーンとバトラムのようだな」

「ていうか3人目、全体攻撃持ちじゃないですか。なんでまだ私に声をかけてくるんですかね」

「全体攻撃持ちは何人いてもいいからな。いればいるほど効率アップだ」

「なんか、部品扱いされてるみたいでいやですね」

「俺たちはみんな、社会の歯車なのさ……」

「全然うまくないですよ」


 相手のスキルとレベルを知り、安心したのか、アリアン嬢が軽口を返してくる。

 苦笑いで返事しながら、彼女の頭から手を離した。


「ドミニク・デュバリーにだけ注意しないといけないが……開幕からいつもの戦い方で行こう。それで勝てるはずだ」

「はい!」


----------------------------------------------------------------


「それでは、両パーティーのメンバーは、中央のクリスタルに手を触れてください」


 ギルド地下にある闘技場で、「夜のメンフクロウ」と「戦斧」の間にコリンさんが立ち、厳かに宣誓する。

 直径およそ60メートル。円形のフィールドを取り囲むように2メートルほどの壁があり、その向こう側に観客席が用意してある。皇帝が決闘を見に来ることもあるため、帝都プルリンにあるこのギルドは、他より豪華なしつらえになっている。

 懐かしいな。「夜の牙」が決闘をしていた頃、俺たちのホームグラウンドは王国でも辺境の町だったが、フィールドもこの半分もなければ、フェンスの向こうに席などなく、皆立ち見だった。


 ここの闘技場は、全部で3000席くらいはありそうだが、今はその10分の1程が埋まっていた。見たこともないパーティーが何組もいる。皆娯楽に飢えているのだろう。

 コリンさんが休みの時、代わりに対応してくれた受付の人が、遠くで「勝パーティー投票券」を売っているのが見えた。商魂たくましい。

 アリアン嬢は、闘技場の異様な雰囲気に押されているのか、左手でクリスタルに触れながらも、右手で俺の袖を掴んでいた。

 デイブ・ストーンが、殺さんばかりの視線で俺たちを睨みつけてくる。

 

「Fランク風情が。てめえは一生そこで這いつくばっていろ」


 俺はため息をつくと、かぶりを振った。


「実力差がわからないって、不幸なことだよな」

「ああ?」

「二人とも、クリスタルに意識を集中してください」


 コリンさんに言われ、俺もストーンもクリスタルに意識を集中する。

 次の瞬間、視界が白く染まり、目が慣れてくると、闘技場の端から中央を眺めていることに気が付く。

 クリスタルの周りにいる俺たちの身体を、ギルド職員が運び出そうとしていた。


「ど、どうなってるんですかこれ!なんで私があそこにいるんですか?」


 隣から、アリアン嬢の慌てた声が聞こえてくる。

 そこにいるのは、木で作られた等身大の人形だ。各関節には球体がはめ込まれており、スムーズに動作するようになっている。

 アリアン嬢は自分が人形になっていることにうろたえている。人形には顔がないにもかかわらず、その狼狽ぶりがはっきりと伝わってきた。


「アリアン嬢、ギルドが準備した魔導人形の中に入っただけだ。心配するな」

「魔導人形ですか?」

「決闘で相手を殺すことは、ギルドにとって損失だ。だからこの人形に意識だけを移し、戦わせるのさ。死んでも意識は元の体に戻り、壊れるのは人形だけ」

「ははあ、なるほど」

「さすがのアリアン嬢も、人間相手に命のやり取りは嫌だろ?」

「え?別に構いませんが。ていうか今後付きまとわれないように、事故に見せかけて殺っといた方が良くないですかね?」

「辛辣」

「で、これって、スキルとか身体能力とかは、私の身体のままなんですか?」


 肩や腕をまわしながら、そう尋ねてくる。

 スキルを試し打ちすれば、相手に手の内を明かすことになるため、聞いてくれるのは有難い。


「そう、能力はそのまま引き継がれる。それがこの人形のすごいところなんだ」

「どういう仕組みになってるんですかね」

「なんか、ギルドにだけ伝わるロストテクノロジーらしいぞ。神が直接ギルドの創設者に天啓を与えたとか何とか」

「神ですか」

「ゴーツ・ゴシューギとかいう神らしい。俺も聞いただけなんでよくわからん。そう伝えられてる、ってだけで」

「そんな神様聞いたことないです」


 肩を内側に入れるストレッチを行いながら、アリアン嬢人形がそう言う。


「しかし、人形に表情がなくても、なんとなく伝わるもんだな。今、ちょっと微笑んでる感じだろ?」

「え!どうして?やっぱあれですかね、絆ってやつですかね」

「いや、なんだろうな。声の感じかな」

「……今はちょっとむくれてます」


 反対側の端では、三体の人形が中央に向けて歩いていくところだった。ギルド職員はすでに俺たちの身体を片づけ終わり、中央のクリスタルを台に乗せて下げている。

 俺たちも少し遅れて中央へと向かう。

 コリンさんが、両パーティーの人形に問題がないかをチェックし、厳かに告げた。


「それでは、これより『戦斧(バトルアックス)』と、『黒いメンフクロウダーク・バーン・オウル』との決闘を執り行います!」


 俺とストーンが頷く。


「『戦斧』が勝った場合、『黒いメンフクロウ』からアリアン・ブラックが移籍します。『黒いメンフクロウ』が勝った場合、『戦斧』は解散となります。この場合、以後同じメンバーを含むパーティーを組むことはできません。よろしいですね」

「ああ」

「もちろんだ。早く始めようぜ。アリアンが移籍を待ちきれないって顔してるからさ」


 ちらりと横を見ると、声も出さず、表情も変わらない人形だというのに、今にも吐きそうなしかめっ面をしているのがはっきりと伝わってきた。なるほどこれが絆か。

 コリンさんが右手をあげて高らかに叫ぶ。


「ーー『決闘』、開始!!」


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