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空き巣

作者: 二堂至

感想書いていただけたら嬉しいです。なんでもお待ちしております。(あらすじを書くコツも知りたいです。。)



両親が共働きでいわゆる鍵っ子だった。親は勉強しろ勉強しろと口うるさくて、仕事から帰ってくると用意しておいた課題をチェックし、納得がいかないようならくそみそに俺を怒鳴りつけた。それが嫌でしょうがなかったが、親というものは家主という点で絶対的であるため肯首(こうしゅ)するしかなかった。そのため友人と遊んだ記憶がほとんどない。


両親は昔、バンドマンとして売れることを目指していたらしいが、夢破れて今の職に就いている。大学に行ってなかったせいで給料は安く、共働きをしないと生活が回らない。俺も音楽に興味があったのだが、親は「無理だからあきらめろ。」「大学に行ってお金を稼ぎなさい」と俺を高給取りにしたいらしい。

蛙の子は蛙だっていうのに。


ある日学校から家に帰ると、リビングのほうから物音がする。用心深かった俺は、それが偶然によって出た音なのか、必然によって出た音なのか見極めるために取ってに手をかけつつ息をひそめた。重い沈黙が長い間続いた。永遠に続くと錯覚してしまいそうな静寂だった。いくら待っても二度目の物音は起きないためさっきの物音は偶然だと決めたものの、緊張感を緩めず警戒してリビングのドアを開けた。シュレディンガーの空き巣。正解は必然!部屋には男がが鎮座していた。驚いた私は腰を砕きしりもちをついてガタガタ震えた。


男は黒いニット帽を被り黒い服を着て皮の黒手袋をしている。カーテンからの薄光(はっこう)だけが頼りの薄暗い部屋とその薄光を背にして座る男の黒い服装がマッチしている。男が1つのインテリアとなり、人生の中で一番美しいリビングを作り上げていたのを今でも鮮明に覚えている。


男は普段俺が使う椅子に座り足を組んだまま動く気配無く俺を見つめている。その眼も鈍い黒さを孕ませているが、俺のことを睨んでいるのではなく、かえって優しさすら感じさせる眼差しだった。その優しき眼差しに気が付いた瞬間恐怖はかなぐり捨てられ怒りがふつふつと沸き上がった。こいつは何様のつもりで俺の家にいるんだ?



「落ち着けよ。そう睨むなって。」男はそう言って足を組み替えた。俺の怒りは頂点に達した。「お前は..お前は...!」言葉にならない怒りが絶え間なく俺を襲う。「まあまあ落ち着けって、そんな怖がらなくてもいい。」感情を読み取られていないのが唯一の救いだった。黙りこむ俺を横目に男は続ける。「怖がりたいのは俺のほうだぜ、あんたを黙らすために殺すのも悪手だしなぁ。俺はちょっと小銭を稼ぐために空き巣やってんのに捕まったら元も子もないじゃないか!!」  


怒りの頂点を越え呆れてきた。空き巣がバレたって言うのに悪びれる様子もなく人の家に蟠踞(ばんきょ)し俺の椅子に座って、まるで家主が客人をもてなすように俺のことを扱って(なだ)めてくる。挙げ句の果てに勝手にテンションを上げて独り言をデカい声で言ってやがるこいつはなんなんだ?この男の余裕とやらを奪ってやろう。



俺はゆっくりと立ち上がり「警察に通報する。」と言って相手によく見えるよう大げさに携帯を耳に当てた。すると男は少々狼狽して組んでいた足をほどき「ちょっと待って!」と叫んだ。俺が見せつけるようにゆっくりと携帯を降すと男は「まだなにも奪ってない!話をしよう!」と言ってきた。


男はポケットやショルダーバッグを逆さまにして、何も盗んでいないことを証明しようとしたが、俺はそれを無視して「警察に通報する」と死刑を言い渡す裁判官のように言い放った。迫真の演技だったと手前味噌だがそう思う。


「話だけでも聞いてくれ!」男は地球が割れるような音量で叫ぶ。「自由に生きたいんだ!」


おもちゃにして最後は通報で終わりにするつもりだったが、男の自由と言う言葉に惹かれ話に付き合うことにした。「何が言いたいんだ?」「俺にとって空き巣は自由の表現方法だってことさ。」「表現方法?見つからず証拠も残さずが正道の空き巣が表現方法って本気で言ってんのか?」「誰かに対して自分自身が自由であることを表現したいんじゃない。そんなことをする奴は自由からもっとも遠い生き物だぜ。俺が自由を表現したいのは自分自身だ、常にそれを心掛けなきゃ人間が腐っちまう。」


自分が自由であることを行動で自分に証明する。そうしなければ人間が腐る、か。

俺は今まで自分が自由だと思っていればいいと思ってた。今の現状もはたから見たら自由とは程遠く見えるだろうが、自分は自由なんだと呻吟しながら言い聞かせてきた。でもそれじゃだめらしい。行動を起こして自由にならなければ!


「その考え方の支援者に俺の名前を入れておいてくれ。そして、俺の自由の表現はそんな高尚(こうしょう)な考え方を教えてくれたお前を牢屋にぶち込むことさ。」水戸黄門が印籠(いんろう)を見せるように携帯を掲げた。男は勇気に満ち溢れた青年の眼を見てにやっと笑い「高尚でもなんでもねぇが、そういうことなら反論の余地なしだな。とんずらさせてもらう!」と言って姿を消した。


携帯を投げ捨て朝と何一つ変わらないリビングを見つめる。「ぐちゃぐちゃに荒らしやがって..」俺はそう呟いて教科書を破り捨てた。














文章力を向上させたい!


前回感想をかいてくださった方へ。返信しようと思ったらアカウントが消えていて返信できなかったのでこの場でお礼申し上げます。励みに、そして参考になる内容でした!本当にありがとうございました。

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