表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/89

休暇旅行に向けての準備そして出発

「トトとリリも連れて行こう!」


 エステルが意外な提案をしてきた。しかし素敵な提案だと思った。トトもリリも海を見たことは無いだろう。


「えっ!?俺達も一緒に言っても良いのか!?・・・ですか?」


 話を聞いていたトトは驚いて、素の喋りに戻りかけていたが、すぐに訂正して質問してきた。


「トトもリリも海は見たことが無いだろう?危険な冒険では無い、折角の旅行だ。旅行なら家族で出掛けるのは当然というものだろう?」


 俺はそう言って、トトの頭をガシガシと撫でて見せた。トトも心なしか嬉しそうだ。リリは旅行の意味が良く解っていないのかキョトンとしていた。


 ブリットが旅行の意味を教えているところが微笑ましい。そして、その意味を理解したのか、嬉しそうにブリットに抱きついていた。


「ならば、折角だし、ティニエ殿とキュリーシア王女にも声を掛けなければな。と言う事でティニエ殿は如何かな?」


 突然話を振られてキョトンとしていたティニエだったが、それが旅行の誘いだと理解すると、俺の所に駆け寄って自信の角を俺の頬へ擦り付けてくる。


「もちろんご一緒させて頂きますわ!」


 肌触りの良い角を頬に当てられるのは心地よかったが、いつまでも放っておくと離れてくれそうに無いので強引に引き離す。


 後はキュリーシアだが、流石に公務もあることから参加は難しいだろう。しかし誘われなかったと後で知ったら泣くかも知れないので、一応声だけでも掛けておこうと言う事になった。


 その前にスケジュールを確認しておこう。魔王都から西の街まではゲートを利用出来るから、北の港街までは実質3日間の移動だ。現地に4日間滞在して、帰りはゲートを利用すれば、あっという間に帰ってくることが出来る。そうすると約7日間の旅行となる訳だ。


 出発日だが、俺は海釣りをしたいと思っている。しかし海釣り用の竿が無い・・・。今からカヌレ博士の研究所で一から作るとして、竿、リール、糸、針を揃えるには2~3日は必要だろう。


 準備期間を含めて出発日は4日後と行った所だろうか?そこまで脳内をフル回転させていると、ブリットも現実に戻って来た。そして開口一番、


「ねえ!出発はいつにするの?」


「ん?4日後くらいにしようと思っていたんだが?」


「ん~~~~っっっ!4日かぁ~~っ!ちょっとエステル、相談があるんだけど!?」


 ブリットはエステルに何やら耳打ちをしているが、何を離しているのかは聞き取れなかった。しかし・・・、


「大丈夫!そう言う事なら任せて!期間内に仕上げてみせるから!ただ人手が足りないかも知れないからブリットも手伝って。」


「流石エステル!手伝いなら任せてちょうだい!信じてるよ!」


 何やら相談は纏まったようだった。


 出発日も決まり、キュリーシアにも声を掛けることにしたのだが、ダメ元だったにもかかわらず、参加を希望してきた。


 本人は一週間分の仕事を3日で仕上げてでも参加すると言って、父親でもある魔王も説得すると言っていた。


 後で魔王殿から、苦情の呼び出しが来ないことを祈るばかりである。と危惧していたら案の定、魔王から呼び出しの連絡が入ったのだった。


 知らん顔をする訳にも行かず、素直に魔王城へ赴くと、近衛騎士長のクシュラーデが出迎えてくれた。しかし、通された先は謁見の間では無く、応接室だった。


 応接室のソファーに腰を掛けて暫く待つと、魔王は友人に挨拶するような調子で入ってきた。そして一言、


「急に呼び立ててスマンな。今度のバカンスに娘も誘ってくれて感謝する。本人もとても喜んでおったぞ。」


 魔王に礼を言われてしまった。叱責されるかと思っていたものだから、拍子抜けだった。


「正直に言うと、キュリーシア王女は公務も忙しいだろうし、参加出来ないだろうと踏んでいたんだ。」


 俺はそう素直に白状すると、


「ハハハッ!今はこの旅行に参加するために、鬼の形相で執務をこなしているぞ。今更冗談でした。と言われたら、それこそ暫く寝込んでしまうだろうな。」


「出掛けるのは確定事項だから安心して欲しい。ただキュリーシア王女がその前に倒れないように気を付けて貰わないとな・・・。」


「なに、その程度のことで倒れる様なら、とっくに寝込んでいるだろう。それよりもだ、ヨーン殿の耳に入れておきたい情報があってな・・・。」


 何か嫌な予感がする・・・。


「その情報は聞かなくてはならんもんか?出来れば断れと、俺のカンが囁いているぞ?」


 すると魔王はニヤリと笑い、


「流石はヨーン殿。良い勘を持っているようだ。ただ、この情報は遅かれ早かれおぬし達の耳に入ることになる。ならば、早いほうが良いと思ってな・・・。」


 と言う事は今回の旅行先に絡む事案と言う事になる。ならば早めに情報を聞いておいて対策をしておいた方が得策かも知れない。


「解った。どうせ北の港街に絡む案件だろう。話を聞かせて貰おう。」


 魔王は少し驚いた風な顔をしたが、


「その通り、北の港街に絡む案件だ。この街は漁で生計を立てている街なのだが、最近その漁場に巨大なイカの化け物が出現するようになったというのだ。

 実際に被害も出ているようで、領主もこの巨大イカの討伐に乗り出したのだが、見事に船を沈められてしまったと言うのだ。

 今は安全を第一に考えて、領民へは一時的に禁漁を宣言しているようだが、いつまでも禁漁を続ける訳には行くまい。

 もし、バカンスをしている期間中に、この巨大イカと遭遇することがあれば領主の力になってやって欲しい。」


 う~ん・・・見事に巨大イカとの遭遇フラグを立てられてしまったような気がするが、仕方あるまい。それに釣りを楽しみにしている俺としても、そんな厄介なイカは邪魔でしか無い。さっさと釣り上げてスルメにしてやる。


「解った。滞在中に遭遇することがあったら俺達で対処しよう。・・・で、その場合は冒険者ギルドへの報告で良いのかな?」


 魔王は一瞬キョトンとした顔になったが、


「・・・解った。その辺はいつも通り手配しておこう。ヨーン殿は抜かりが無いな・・・」


 冒険者ギルドを通ていない討伐は、モグリの仕事になってしまう。こう言った場合、発覚した時に1ヶ月間討伐クエストを受ける事が出来なくなる、などのペナルティが発生する場合があるため、気を付ける必要がある。



 魔王との会談も終わり、屋敷に戻ってくると、チョコロールが馬車のメンテナンスを行っていた。


 しかし、馬車のマイナーチェンジがここに来て早速有効活用されることになるとは、思ってもみなかった。


 今までの馬車の乗車定員は3人(普段は2人)×5列で15名だったのだが、マイナーチェンジ後の馬車の乗車定員は5人(普段は4人)×6列で30名にアップしている。


 また、シートが回転するようになっているので、車内でテーブルをセットすれば簡単なリビングを展開することも可能となった。


 これは、魔法のログハウスなど空間拡張魔法の応用を、馬車に組み込んだためだ。見た目以上に車内が広くなっている。


 それによる差席数の追加と、シートピッチの拡張が行われた。他にも左側面に出入り口を設けたりもした。


 トドメは、それらに必要な魔力を補うために、ゲートトンネルにも使用されている魔力バッテリーを搭載したことだ。バッテリーに補充される魔力は馬車の車輪を通じて随時補給されるという。


 ちなみにここまでの改造を施したのは、言うまでもなくチョコロールである。俺もここまでの改造を、事後報告で聞いたものだから呆れてしまったが、もはや原形をとどめていないその姿を、遠くハレックにいるヤンの親父さんにどう説明したものかと遠くに思いを馳せてしまうのだった・・・。



 その後、各自4日後の北の港街への旅行へ向けて準備が行われた。とりわけ大騒ぎになっていたのは、ブリット率いる女性陣である。これはリリやメイドゴーレム達も含まれていたのだが、どうやら何やら採寸をしているようだった。


 何を始めようとしているのかと聞いてみたのだが、「ヒミツ!」と言って教えてはくれなかった。


 教えてくれないものは仕方あるまい。俺は俺で、チョコロールを連れて、カヌレ博士の研究所へ向かい、海釣り用の竿、リール、糸、釣り針の作成に取りかかった。もちろん予備を含めて2セットの作成である。


 素材はオリハルコンだ。竿に関しては100%オリハルコンと言う訳には行かないので、複合素材を用いることにした。


 チョコロールに手伝って貰いながら、必要素材を水槽に投入し、後は完成を待つばかりである。早ければ明日にでもお目に掛かることが出来るだろう。今から楽しみだ。


 その後は着くにすることも無かったため、翌日の昼過ぎ釣り竿が完成していないか確認する為に、カヌレ博士の研究所へ赴いた。


 水槽の中では前日に設計していた通りの道具一式が完成しており、いつでも取り出せる状態になっていた。


 俺はチョコロールに水槽を操作して貰い、釣り竿一式を取り出した。竿の重さもしなりも丁度良い。


 リールにオリハルコン製の釣り糸を巻き付け、竿にセットすると、何度か素振りをしてみる。


 うん、申し分ない仕上がりだ。これで北の港街での釣りが格段に楽しみになってきた!


 そして4日目の朝、各自がそれぞれ準備を進めて、屋敷に全員が集合した。


 男性陣は俺以外、特にこれと言った準備はしていないのだが、女性陣が何やら忙しかったようだったので、馬車の準備や野営用の食材(野菜関係)や調味料、酒類等の買い出しは男性陣が行うことになった。


 エステルの準備は今朝方まで掛かったようだ。フラフラになったその目には、酷いクマが出来ていた。きっと4徹したのだろう・・・。


 それを手伝ったブリットも、エステルほどでは無いが、うっすらと目にクマが見て取れる。


 そして、屋敷にやって来たキュリーシア王女もフラフラだった。


「1週間分の仕事をやりきって見せました・・・。これで心置きなくバカンスを堪能出来ます・・・。」


 何はともあれ北の港街へ出発だ。しかし旅行の準備は女性の方が時間が掛かるというのは、これも含まれることなのか?


 そんな事を考えながら、御者当番は男性陣だけでやることを決めたのだった・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ