魔王領とルステーゼ王国の交易路の開拓⑥
ゲートトンネルの設置はそれぞれの準備が整いしだい設置することで決まった。通行許可証もその時に渡すことになるので、それまでは屋敷の蔵に保管することになる。
問題は、マーリンも話していた山脈を貫くトンネルの建設だ。出来ればゲートトンネルの開通の合わせて開通させたいと思うのだが、そんな簡単にトンネル工事って出来るのだろうか?
いくらエリックの精霊魔法を利用する予定とは言っても、魔法に見識の無い俺からすると、不安はぬぐうことは出来ないでいる。
当初の予定では標高1500m辺りにトンネルを開けるつもりでいたのだが、それでは馬車が上ることが出来ないかも知れない。
それに、山脈にたどり着くまでに広がる樹海もある。樹海があれば、魔物や魔獣もいるだろう。
その討伐もトンネル工事と同時に行う必要がでてきそうである・・・。
マーリンからの期待の目を逸らしながら、俺は瞬間的にそこまでのことを考えていた・・・。
「マーリン殿、トンネルはおそらく、第3号遺跡か第2号遺跡の近くに開けることになると思う。まあ、やってみなければ解らんが出来るだけ早く着手するように努力する・・・。」
「それでしたら魔王領側はここから南にあるダークエルフの村を利用しても良いかもしれませんね。」
キュリーシアはそう言って話に乗ってきた。マーリンも、
「もしトンネルが出来ると、どの位の日数でこの魔王都と王都を行き来出来ぬのかね?」
「それはやってみんと解らんが、一週間ぐらいと言ったところでは無いか?」
「それは楽しみだね!魔王都の品も一部の貴族には人気が高いんだが、何せ値段が高いからね・・・。庶民にも食べられればもっと魔王領との交流も深まりそうだね。」
・・・プレッシャーがストップ高だ!
「まあ、それは喜ばしいことだが、魔王領にはまだ、魔物や魔獣もいるからな。トンネルの建設と同時進行で、討伐もしていかなければならん。厄介事がまだまだあるぞ?」
俺がマーリンに期待をするなオーラを発していると、
「それでしたら、魔王領の方で、南の樹海の魔物と魔獣の討伐依頼を出しておきましょう。そうすれば、ヨーンさん達も気兼ねなく、トンネル作業に従事出来ますわ!あと、南のダークエルフの村には協力要請の親書を出しておきます。」
キュリーシアが追い打ちを掛けてきた・・・。
俺はもう後には引けないと、腹をくくる他無かった。そこからの段取りは早かった。
2日後に俺達は南のダークエルフの村へ向かう準備を整えて馬車で向かった。
道中野営を挟んでの行軍だったが、既に親書は届いており、村では魔王都からの使者として歓迎されたのだった。
翌朝には山脈を調査するために樹海に入り、山脈を目指した。
その場所から樹海を通して見上げる山脈は、なだらかな登りが続いていたが、急速にその勾配が増していて、当初の予定の標高に馬車で上がることは不可能だと判明したため、無理の無い標高でトンネルを掘ることを余儀なくされた。
こうなっては、エリックに頑張ってもらう他無いだろう。
樹海を通り抜け山脈の岩肌に到着すると、第3号遺跡方面に向けエリックが土の精霊王にお願いして、かまぼこ上のトンネルの掘削作業に当たった。
一応は、破砕帯や水脈の通っている場所を避けるため、エリックの精霊魔法を駆使して該当する場所を避けつつ、ルステーゼ王国まで結ぶことの出来る地点を模索した。
ダークエルフの村からは少し離れてしまったが、丁度良い場所を発見したことで、作業が開始されることになった。
その作業は硬質、軟弱地盤など物ともせず、一直線にトンネルが彫り上げられると同時に、その壁は石造りの硬質な物に変貌していた。これも精霊王の力の片鱗なのだろうか?
精霊王の力を借りて作っているトンネルは、幅5m高さ3mもある立派なものになっている。これは将来、互いに馬車が行き来出来るようにするための処置だ。
しかしなにぶん距離があり、1日では作業は完了することは出来なかった。
進捗状況は、カヌレ博士の研究所からエステルが監視をしていたが、1日で進んだ距離は全体の15%程だと言う。それ以外にエステルのはあるものを製作して貰っている。
順調に進めば1週間ほどで開通出来るだろう。
流石にエリックは今日一日の進捗を聞いて愕然となっていた。
「これ、あと1週間続けるんですか!?」
「魔石のキューブがあるからしんどい時は使ってくれ・・・。」
俺にはそれしか言えなかった・・・。
その間、俺達前衛組に出来る事は無い。その為、キュリーシアが魔王領からの依頼として、冒険者ギルドへ依頼されていた樹海の魔物と魔獣の討伐に来ていた冒険者と一緒に討伐に当たっていた。
今では魔獣から取れる魔石が買い取りされることも周知されているため、冒険者も率先して魔獣の討伐に当たっている。
数日が過ぎると、魔王領から樹海を切り開いて、道を作るための部隊が派遣されてきた。
よく見るとその陣頭指揮を執っているのはキュリーシアだった。その隣には近衛騎士長のクシュラーデも同行している。
「皆さんお疲れ様です!私も何かしていないと落ち着かなくて、こっちに来ちゃいました。」
「お前さん、冒険者ギルドの裏に倉庫を作るという話はもう大丈夫なのか?」
「そちらは問題なく着手されています。それよりも、トンネルの入口に検問所を建設しないといけませんね?
あ!だけど樹海で一晩過ごすことになるかも知れないことを考えると、トンネルの周辺に安全地帯を確保する必要があるかも知れません・・・。
まずそれらを樹海で伐採した木を使って作りましょう。」
「あ・・・ああ。そちらは任せるとしよう。今エリックが頑張ってトンネルの掘削作業を行っておる。あと数日もすればルステーゼ王国の第3号遺跡の近くに開通する予定だ。」
そんな会話をしていると、討伐部隊から、比較的大きな魔物の巣を発見したとの報告が入った。
俺やブリット、エイナルはそちらに向かい魔物の討伐に当たることにする。
「キュリーシアもあまり無理をするなよ。」
俺はそう言ってキュリーシアから離れたのだった。
それから数日後、丁度エリックがトンネルを掘り始めて一週間が経った時、遂に魔王領とルステーゼ王国が結ばれたのだった。
しかし長いトンネルだ。開通したとの報告も、エリックからの遠話の魔法バッジからのものだったし、魔王領からトンネルをのぞき見てもルステーゼ王国側の出口がまるで見えない・・・。
歩いて通り抜けようとしたら、半日以上は掛かるのでは無いだろうか?トンネルの中は暗闇になってしまっている。
と、そんな時にエステルが俺の隣にやって来た。
「これ、言われていた魔法装置。」
そう言って、同行していたパンナコッタが大量に同じものを出してきた。それはトンネル内の照明器具だった。
トンネルが長くなることは予想出来たので、照明が必要では無いかと俺は考えたのだ。
それをトンネルの真ん中に仮設置する。そして、それをいくつか順に並べていった。そして魔力バッテリーを使って点灯してみる。うん。十分な明るさだ。
俺は、キュリーシアに、この照明の設置をするための人員を割いて欲しいとお願いして、作業に当たって貰った。この設置が完了したら、このトンネルは完成となる。
数日後、その照明の設置が完了したとの報告が上がった。それまで俺達は、南のダークエルフの村に厄介になっていた。キュリーシアも基本ここで陣頭指揮を執っていた。
樹海の道もしっかり切り開かれ、周辺の魔物も、粗方刈り尽くしたと言えるだろう。
ルステーゼ王国側の森は、第3号遺跡まで現在進行形で切り開かれているはずだ。
今回はエリックとエステルの魔法組のお陰で、無事にトンネルを繋げることが出来た。
俺達前衛組は、魔物や魔獣の討伐ぐらいにしか役に立てなかった。適材適所とはよく言った物だ。
これからのルステーゼ王国と魔王領との国交は、それこそキュリーシアにしか出来ないことだろう。
最初の話し合いから丁度1ヶ月、遂に、ゲートトンネルを使った交易が開始された。
魔王都は新たな交易路の開始に、街全体がお祭り騒ぎとなっていた。
ルステーゼ王国から届いた品は、一端冒険者ギルド魔王領支部の裏手にある倉庫に仕舞われたが、商人達がこぞって取引を行っている姿を見ることが出来た。
それと同時に、山脈に出来たトンネルも解放された。魔王領側から出国出来る者はまだ限定されているが、それも遠くない未来に解放されることを心から願う。




