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魔王領とルステーゼ王国の交易路の開拓⑤

「お!マーリンか?丁度良いところに来たな?」


 俺がそんな事を言うと、マーリンは嫌そうな顔をして、


「何だい?ヨーンの機嫌がいい顔を見ると、不安しか浮かばないよ・・・。」


「失礼な・・・。そんな事は無いぞ?ついさっき、エステルが『ゲートトンネル』を完成させたもんでな。」


 俺はそう言って、庭に案内をした。そこにはアーチ状の『ゲートトンネルが』そびえていた。対になるゲートはそれぞれ5mほど離して設置してある。


 案内されたマーリンもその立派なアーチ状のゲートを見ると、


「へ~・・・これがウワサの交易路に使う魔法装置かい?こっちも丁度、各役所を回ってお偉方の確約を取り付けた、親書を持ってきたところだ。」


 そう言って、マーリンは一通の封書をヒラヒラとこちらに見せてきた。


「そう言う事なら、今回の話の発起人にもなっている、キュリーシア王女を呼んだ方が良さそうだな。」


 俺がそう言うと、


「おいおい、王女を呼びつけるって・・・」


 そう言ってきた。まあ確かに、本来なら呼ぶよりもこちらから出向くのが筋だろう。しかし、『ゲートトンネル』もある。これを城まで運んで設置するのであれば、来て貰って確かめて貰った方が早いだろう。


「まあ、『ゲートトンネル』の事もあるからな・・・。直接来て貰った方が早かろう。」


 俺はそう言うと、早速、遠話の魔法バッジでキュリーシアと繋いだ。


「はいはい、ヨーンさんですか?」


 キュリーシアから、気さくな感じで反応が返ってくる。


「キュリーシアよ。今大丈夫か?」


「チョット待って下さいね・・・」


 キュリーシアからの返事と共に、パタパタと言った音が聞こえてくる。何か作業でもしていたのだろうか?


「あ、お待たせしました。どうしましたか?」


「キュリーシアが希望した、交易路を繋ぐ魔法装置が完成したのでその報告と、ちょうど今、ルステーゼ王国からの親書が届いたところだ。今からこっちに来られるか?」


「えっ!?もう完成したんですか!しかも親書も届いたというのは!?取りあえず今すぐそちらに向かいます!!」


 そんな会話と共に奥の方から「ガシャーンッ!」と何かが壊れるような音と共に、キュリーシアの悲鳴が聞こえてきた。


 キュリーシアも突然のことで、相当驚いたのだろう。少しすると、庭先の空間が歪み、キュリーシアが現れた。城と屋敷はすぐ近くだというのに、ゲートの魔法まで使うとは・・・。


 そして現れた時のその姿は何時もの格好では無く、エプロン姿に、粉まみれとなったの姿だった・・・。


「キュリーシア・・・、その姿は一体・・・?」


「え!?あっ!す・・・すみません!気分転換にルステーゼの焼き菓子を作っていたもので・・・。」


 キュリーシアはそう言うと、慌ててエプロンを脱いで魔法鞄に仕舞った。それでも顔に着いた粉は拭えていない・・・。


「キュリーシア・・・取りあえずこっち来て!」


 ブリットはそう言うと屋敷の中へ招き入れた。たぶん顔に着いた粉や髪の乱れを直すのだろう。


 暫くすると、ブリットと一緒に、何事も無かったかのように、何時ものキュリーシアが現れたのだった。


「先ほどは、申し訳ありません。あまりに突然のことで、舞い上がってしまいまして・・・。これは、さっき作った、ルステーゼの焼き菓子です。皆さんで、食べて下さい。」


 そう言うと、キュリーシアは俺に、焼き菓子の入った袋を渡して聞いた。

 

「有難く後で頂くとしようか。先ずはキュリーシア、エステルの力作を試してみるが良い。」


 俺はそう言って、『ゲートトンネル』の使い方を教えて、通行許可証を握らせる。


 キュリーシアは通行許可証を握りしめ、ゴクリと息を飲んだ。そして、『ゲートトンネル』を潜る。


 すると、出口では鐘が1つ鳴ると同時にキュリーシアが現れた。ギルドマスターのマーリンもその光景を目の当たりにして息を飲んでいた。


「これが、魔王領とルステーゼ王国を繋げば、一瞬にして商品の輸送が可能となる。物流の革命だな・・・。」


 俺は改めて、そんな感想を漏らした。


「これがお互いの国に結ばれれば、確かに日持ちのしない物でも、届けることが出来ます!エステルさん!こんなに素晴らしいものを作って下さり、ありがとうございます!」


「私も作るのは楽しかったよ。あ・・・あと、魔力の都合で、馬車は一度に5台までが限度にしてあるからね。それ以上必要な場合は、再調整が必要だからその時は言ってね。」


 エステルはそこまで言うと、力尽きたように居間で寝てしまった。アプリコットは慌てて毛布を持ってきて、エステルに掛けている。


「さて、実験が完了したし後は、マーリンの持ってきた親書の内容をキュリーシアが確認する番だな。」


「なに、そんなに難しい事なんて書いちゃいないよ。私も立ち会ってるからその辺は抜かりないさね。」


 マーリンは『ゲートトンネル』の驚きから、自身を現実に引き戻して、話を進めた。


 何となくこの屋敷がそのまま会談の場になってしまったが、それで良いのかと思いつつも、両者が何も言わなかったので、そのまま居間を使わせることにした。


 俺達は邪魔になってはいけないと思い、席を外そうとしたのだが、マーリンに、


「第三者の立ち会いについて欲しい。」


 と、進言されたので、同席することになってしまった。キュリーシアは、ルステーゼ王国からの親書を一読して、マーリンに確認をしていく。


 そのテキパキした姿を見ていると、やはり魔王領の王女なんだなと、改めさせられる思いだった。


 俺達はその姿を見ながら、先ほどキュリーシアが持ってきてくれた焼き菓子を食べながら、お茶を啜っている。うん、うまい。


 そして最終的に決まったのは、この『ゲートトンネル』を使う行商は、国が管理すると言う事。


 また、下ろし問屋を用意して、それぞれの国にある小売店への販売を行い、収益は国に納めると言う事に決まった。


 他には、その下ろし問屋の運営に関しては、それぞれの冒険者ギルドが行うことになった。


 これは、今現在、各国を行き来出来るのは限られた冒険者に限定されることが理由の1つだが、実際の所は面倒事をルステーゼ王国に押しつけられたというのが、本当のところだろう。


 他にも、細々としたことが決まっていったが、大まかに言えばそんなところだろう。


 運用開始は準備期間を含め1ヶ月後と決まった。それまでに更なる細かな調整を行うことになると言う事だったが、キュリーシアはやる気満々だ。


「冒険者ギルド魔王領支部の裏手が空いていましたね。そこに倉庫を建設してルステーゼ王国の商品を保管しましょう!」


 そんな事を言っていた。この調子では馬車5台をフル活用してルステーゼ王国の品々を輸入しまくることになりそうだ。


 マーリンも、


「冒険者ギルド本部の近くに、倉庫があるからそこを借りて試験運用してみる。」


 とのことだった。


 そこまで話がまとまったところで、今度はこちらにマーリンから話が振られることになった。


「そう言えばルステーゼ王国と魔王領を繋ぐトンネルの計画はどうなっているんだい?」


「ん?まだなにも決まってはいないが?」


 俺がそう答えると、


「トンネル建設の計画は、ルステーゼ王国としても、良い意味でも悪い意味でも、関心の対象になっている。」


「と言うと?」


 俺が訝しむ顔をしていると、


「ルステーゼ王国でも、魔王領への恐怖心は薄れてきている。その魔王領との国交が結べると言う事は、国としても有益だと言う事だ。まだまだリスクを訴える輩はいるが、何せ今のルステーゼ王国と国交を結んでいるのは、隣のリスタニア王国だけだからな。」


 なるほど、魔法装置での交易のみならず、人の交流も活性化させたいと考える派閥がいると言う事か・・・。


「解った。そちらはキュリーシア王女と相談して出来るだけ早く開通させるよう努力してみよう。」


 俺がそう答えると、


「そんな簡単に返答して大丈夫なのか?あの山脈に穴を開けるのだろう!?」


「まあ、やって見んことには解らんさ。」


 そう軽く返事をしたのだった。

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