国家転覆を目論む者・決着そして・・・②
「さて、折角だし少し散策でもしようかの?屋敷に向かうのは、その後でも良かろう?」
そう言うと、東の街のお土産物屋などに顔を出す事にした。ここの名物はすぐ北側にある東の湖の魚を甘露煮にした保存食だそうだ。
一袋買い求め、皆で分けて食べてみる。甘辛く味付けされた甘露煮は、ご飯のお供に持って来いだろう。俺はついついお土産に3袋買い求めた。
東の湖にも行ってみたが、とても広く対岸が見えなかった。一見、海と見間違えるほどの面積だろう。所々船が浮かんでおり、漁を行っている姿が見える。
この先に東の湿原があるとは思えない・・・。
戦争の噂が立ってしまい、今はこの街も閑散としてしまっているが、これも収まればまた元の賑やかさが戻って来るだろう。
俺達は湖の見学をした後、宿に戻り馬車を回収し、ヴェルバーン家の屋敷に迎えに行った。するとウィル氏もちょうど屋敷から姿を現して来た。
ウィル氏を馬車の席に案内すると、エステルのゲートの魔法で魔王都の王城へ繋げて貰った。
ウィル氏はゲートの魔法は初体験だったようで、一瞬で見知った王城に着いた事に大層驚いていた。王城に到着すると、キュリーシアが出迎えてくれた。
「皆さんお疲れ様でした。父も執務室でお待ちですよ。」
「キュリーシアもお疲れだったな。」
俺がそう言うと、
「いえ。久しぶりの馬車の旅、楽しかったです。」
キュリーシアはそう返してきた。そんな会話を弾ませていると、ウィル氏が馬車から降りてきた。
「ヴェルバーン様・・・ヨーン様の馬車に同乗されてきたのですか?」
「はっ!今回息子のしでかした不祥事を一刻も早く魔王様に謝罪したく、ヨーン殿にお願いして同乗させて頂きました。」
「解りました。父にはヴェルバーン様がいらした事をお伝えします。」
キュリーシアはそう言って、待合室で待つように言い伝えた。
そして、俺達を魔王の待つ執務室へ案内してくれた。執務室へ向かう道すがらキュリーシアは、
「何となくこんな事になるんじゃ無いかと思っていました・・・。多分嘆願ですよね?」
「ウィル殿は諦めておる。ただ、家族としてどうなるかは解ってはいても、放ってはおけんと言う結論のようだ。」
「まあ、気持ちは解ります。父も懇意にしているヴェルバーン家の次男が、国家転覆を謀ったとは思いたくないでしょうし・・・。」
「まあその辺は魔王殿とウィル氏で旨くやってくれとしか言いようが無いな・・・。」
「はあ・・・、気が重いです・・・。」
キュリーシアはこの後の事を考えているのか、気の重そうなため息をついた。
俺達が執務室に入ると、メイドゴーレム達は別室に案内される事になった。もうここまで来ると、メイドゴーレム達も異論を言う者はいない。
「おお!今回は西の樹海の件から始まって、国家転覆に関する件まで色々と済まなかったな。ヨーン殿達のお陰で大事にならずに済んで助かった!」
「いや、成り行き上そうなったまでで、途中で降りる訳にも行くまい。しかし未然に防げた事は何よりだった。」
「そうだな。しかしあの魔術師の男は一体何が目的で、国家転覆を謀ったというのだ?」
「それはワシにも解らん。取り調べていく内に解る事だろう・・・。」
ん?ルーク・ヴェルバーンの話が出なかったな?ワザと逸らしたか?俺はチラリと魔王の目を見たら、ツツツ・・・ッと視線を逸らした。
ああ、これはワザとだ。何か考えがあるのだろう。俺はあえてその事には触れない事にした。
「そうそう、報酬などは何時ものように冒険者ギルドに預けてある。また時間のある時にでも受け取ってくれ。スマンな次を待たせてしまっているのでな。また時間のある時にゆっくり話をしよう。」
魔王はそう言うと、慌てたように席を立った。俺も何も気が付かなかったような素振りで、
「では、報酬は冒険者ギルド魔王領支部で受け取らせて貰おう。またゆっくりと話を聞かせて欲しい。」
そう言って、席を立ったのだった。
その後の話だが、ルーク・ヴェルバーンは、父親のウィル氏の陳情と、魔王の温情により、極刑は免れる事は出来たそうだ。
しかし、しでかした事がしでかした事だ。1年間の牢獄送りと再教育、その後、自宅謹慎3年、家督相続の放棄というおまけ付きだ。
まあ、命が繋がっただけでも儲けものだろう。他の者達はどうなったは聞かない事にした・・・。
さて、問題はこの後だ・・・。正直気が重い・・・。
俺達が屋敷に戻ると、女中頭が出迎えてくれた。俺は、トトとリリを居間に連れてくるように指示を出し、俺達も居間に向かった。
そして俺の魔法鞄から鞘に収まった一本の剣と、数珠を取り出し、テーブルの上に置き、トトとリリがやって来るのを待った。
暫くすると、トトとリリがやって来た。
「「皆さんお帰りなさい。長旅ご苦労様でした」」
二人は行儀見習いをしっかりやっていたようだ。まだまだぎこちない挨拶ではあるが、出会ったばかりの頃と、比べるまでも無く成長している。
「二人とも、大事な話がある。」
俺はそう言って席に着くよう促した。そして、席に着いたトトには剣を、リリには数珠を渡した。
二人は何故これらを渡されたのか、理解が出来なかったようだ。
「二人とも、良く聞いて欲しい。今回の旅でトトとリリの父親に出会った。」
「「えっ!!」」
二人は驚いていた。
「お前達の父親は5年間、一人で西の樹海の瘴気と戦っていた。しかしワシ達が到着した時はもう間に合わなかった・・・。体を乗っ取られ、ワシ等と戦闘になった。それは強くてな・・・。ワシ等もギリギリの戦いだった・・・。」
「そ・・・それで父ちゃんは!?」
「スマン・・・お前達の父親を倒す他に、助ける方法が無かった・・・。」
その言葉の意味を悟ったトトとリリは黙り込んでしまった・・・。
俺は魔法鞄から封印された「竜帝の嘆き」を取り出して、トトとリリに見せた。
「この石は「竜帝の嘆き」という石だ。これに取り付かれれば一瞬にして自我を失う。お前達の父親はそれと5年間ずっと戦っていた。これはこの後ティニエ殿が竜の住む山脈の封印の間で厳重に保管される。」
二人は黙ったままだったが、俺は話を続けた。
「お前達の父親は、剣をトトに、数珠をリリに渡して欲しいと言っておった。そして最後に・・・、お前達に会いたかったと言っておった・・・。」
それを聞いた瞬間に、二人は嗚咽を漏らし涙を流し始めた。俺達は何も言わずしばらくの間、黙ってそれを見守った。
暫くするとトトは涙をぬぐい取り、俺に尋ねてきた。
「父ちゃんは強かったんですか?」
「ああ・・・、それはとても強かった。ワシが戦ってきた相手の中で一番だった。」
トトは父親の形見でもある剣をぎゅっと握りしめて、
「オレ、もっともっと修行して、父ちゃんよりも強くなります!そして、「竜帝の嘆き」に飲み込まれないような剣士になります!」
トトがそう言うと、リリも、
「私も!魔法を習得したいです!そして兄の後ろに隠れるんじゃ無くて、兄を助ける事が出来るようになりたい!」
今まで自分の意思をハッキリ言う事の無かったリリまでもが自分の気持ちを表に出したのだった。
「解った。お前達の父親には、よろしく頼むと頼まれておる。一人前の剣士と魔法使いになるように、みっちり鍛えてやる!覚悟しておけ。」
「「よろしくお願いします!!」」
「魔法の修行は私に任せて!」
エステルも協力的に言ってくれた。
剣術は、剣以外にも必要でしょう!そう言うと、俺やブリット達以外に、メイドゴーレム達も協力を惜しまなかった。
そして、将来「魔王領の救世主」の弟子として、竜種最強の剣士と魔法使いが誕生し活躍するのは、もう少し先のお話だ。




