国家転覆を目論む者・決着そして・・・①
俺達は邪魔する衛兵達を片っ端から片付けていった。それらに掛かる時間はそれほどでも無かった。
ちょうど決着が付いたところで、エイナル達が裏山から下りてきた。そこには5人の獣人も一緒だ。
一番年寄りっぽい獣人は、キュリーシアを見付けると、もの凄い勢いで走って来て、その勢いのままに土下座した。
「キュリーシア様!この度はワシの監督不行き届きで、愚息が魔王様にご迷惑をおかけし、申し訳ございません!!」
スライディング土下座とでも言えば良いのだろうか・・・。キュリーシアも引き気味だったが、
「いえ、今回の事は未然に防ぐことが出来ましたから・・・。しかし、ルーク殿の犯した罪は罪です。それはしっかり受け止めて貰わねばなりません・・・。」
「・・・解っております。私が至らぬばかりに、このような戯れ言に乗せられた息子が悪いのです・・・。」
キュリーシアとウィルが話をしている間も、俺達は、魔術師の男とルークを縛り上げていた。
すると魔術師の男は、
「西の樹海の魔獣は、魔王都を攻めるんだ!ハハハハハッッ!!!」
と、ざまあ見ろと言わんばかりに、笑い飛ばしていたのだが、俺が、
「ああ、それ、デマだから。ワシ等で竜種に取り付いた石は取り除いて、封印してやったわい!」
「ハハハハ・・・ア?」
魔術師の男は笑い顔が引きつっていた。
「お前の企みは、全てワシ等で潰したと言う事だ。」
俺が魔術師の男の企てを全て潰したことを教えると、
「アンタの言葉で言うならそれこそ、ざまあ見ろね!」
と、ブリットが言い返してやると言わんばかりに、「ざまあ!」と連呼していた。
「さて、この魔術師の男が主犯というなら逃げられては叶わん。エステル、ゲートで王城と繋げられるかの?」
「ん。大丈夫。キュリーシアも戻る?」
「そうですね。やるべき事はやりましたし、皆さんも馬車と合流したらゲートで王城へ戻るんですよね。」
「ああ。そうさせて貰う予定だ。では早速ここにいる謀反人達を送ってしまうとしようかの。」
そう言って、エステルのゲートの魔法でここと王城と繋げると、ひょっこりとクシュラーデが顔を出してきた。
「ヨーン殿達だったんですね。突然私の目の前にゲートが開くから、ビックリしました。」
「おお!ちょうど良かった。東の街の件、首謀者達を捕らえたから、そっちに送るぞ。受け取ったら全員牢屋にぶち込んでやれ。」
そう言って魔術師の男をクシュラーデに引き渡す。
「こいつが主犯だ。念入りに取り調べるようにな。」
引き渡されたクシュラーデも、何が何やらと言った風で混乱していたが、主犯という言葉を聞いて、今回の事件の主犯であることを自覚したようだ。
「了解しました。こいつには洗いざらい何を企んでいたのか、吐いて貰いましょう!」
そう言うと、力任せに魔術師の男を引きずっていった。
キュリーシアもゲートを潜って王城へ戻ろうとすると、ウィル・ヴェルバーンは、
「今回の事はまた改めて王城へお伺いさせて頂きます。」
「解りました。父にもその旨をお伝えしておきましょう。」
そう言って、キュリーシアはゲートを潜っていった。
俺達もこの屋敷でする事は全て終えたので撤収しようとした所、ウィル・ヴェルバーンに引き留められた。
「今回の事、大事になる前に止めて下さり大変感謝します。」
「いや、魔王殿に頼まれては断ることも出来まい。」
「皆さん何やら見慣れぬ風体ですが、どちらからいらっしゃったのですか?」
「ああ、ウィル殿は監禁されていたから、知らんのかもしれんが、魔王領は今、元の世界と一緒の世界におる。2千年の隔離から解放されておるんだ。」
「何と!それでは、皆さんは他の国からいらっしゃったと言う事ですか!?」
「まあ、そう言う事になる。」
俺達が解放したと言ったら、大事になりそうだったので、ここでは言わないことにしよう・・・。
「魔王様に頼まれたと言われましたが、魔王様の魔力欠乏症の病は改善されてきているのですかな?」
ああ・・・そんな事もあったな・・・。
「ああ、魔王殿の魔力欠乏状の病は、今では完全に完治しておる。今では元気に公務をこなしておるよ。」
これも俺達が治る切っ掛けを与えたことは黙っていよう・・・。
「なな何と!もう絶望的だと言われていたのに、完治しておるとは!こうしてはおられん!快気祝いに伺わねば!!」
う~ん・・・このウィルという人物は、魔王のことに関しては人一倍熱心な方のようだ。
「父上、魔王様の件は解りますが、それよりも弟のルークをどうするのかを考える必要があるでしょう・・・。」
一緒に山から下りてきた、若者の狼牙族の青年がそう言ってきた。きっと長男なのだろう。狼牙族の女性も、涙目でウィルを見ている。母親だろうか?
「うむ、そうだった・・・。とは言っても、国家転覆を企んだ身・・・いかに身内と言えども庇うことは難しい・・・。本当に愚かなヤツだ・・・。」
「とは言えルークも騙されて行った行為、魔王様にお願いして、減刑を求めては如何でしょう?」
なおも食い下がる長男と、涙目の女性に流石のウィルも、次男のしでかした事を少しでも減刑して貰えるように、嘆願する決心を固めたようだった。
「解った。先ずは魔王様に快気祝いを兼ねて嘆願してみよう。しかし、事が事だ。願いが叶わない場合は諦めてくれ・・・。」
確かに国家転覆剤は極刑ものの重罪だ。たとえ騙されていたとしても、地位を持つ物がそれを企てたとなれば、たとえ魔王と親しい間と言っても返って立場がそれを許さないかも知れない。
「それは覚悟の上です。しかし何もやらずに、家がルークを見放して極刑となれば、弟も浮かばれ無いと思います・・・。」
長男もそれは覚悟の上のようだった。それでも嘆願して欲しいと言ってきたのは、弟が家から完全に見放されたと、思って貰いたくないという長男としての気持ちなのだろう・・・。
「快気祝いを兼ねるのであれば、ワシ等の馬車でウィル殿も一緒に王城へ向かうか?ワシ等の馬車は宿屋に預けっぱなしだ。それを取りに行っている間に決めて欲しい。」
俺は一瞬トトとリリのことが頭によぎったが、それとこれとは別物と、無理矢理割り切って考えるようにした。
「ここからの道中は2日は掛かる・・・。それではご迷惑にならんか?」
「なに、ゲートの魔法を使うから王城までは一瞬だ。暫く魔王殿にも会っていないのだろう?積もる話もあると思うし、迎えはそちらから出せば良かろう。それに嘆願するのも早いに越したことは無い・・・。」
俺の提案に一瞬戸惑いも見せたが、それは本当に一瞬だった。
「それではお言葉に甘えさせて頂いても宜しいですか?馬車をこちらに持ってきて下さるのであれば、私もその間に支度を済ませるように致します。」
「解った。それでは、この屋敷で落ち合うとしよう。宿に荷物が散らかっておる状態だ。こちらに到着するには相応の時間が掛かると思う。」
「お心遣い感謝する・・・。」
そう言って俺達は一端宿に向かったのだった。俺の言わんとする事もウィル氏は理解したようだった。
宿までの道中はワザとゆっくりと向かうことにした。支度と言っても、何年も監禁されてきたのだ。支度にも時間が掛かるだろう。
「まったく、ヨーンのお人好しには呆れるわ・・・。」
ブリットは本当に呆れ顔に半眼で俺を見つめてきた・・・。
「そう言わんでくれ・・・ワシも今回の企みには腹が立っておる。しかし、あの長男と母親らしき女性を見ていたら、放って置くのも可哀想な気がしてな・・・」
俺は正直な感想を漏らした。
「む~・・・、ヨーンってばズッコイ・・・!」
どうすればそう言う結論になる?
と俺は疑問に思って、ブリットの方に顔を向けたのだが、ブリットはそっぽを向けてしまっていた。




