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国家転覆を目論む者①

 魔物200体とは言っても所詮は烏合の衆。俺達の敵では無かった。手加減をする必要が無かった分だけ、こちらの方が楽な戦闘だったと言えよう。


 一人当たり15体前後と言ったところか?レベル差や技量を考えると、たいしたことは無かった。それに、エステルの魔法がかなり無双してたしな・・・。


 全ての魔物を討伐し終えた後、俺は首領に近付き、一発殴り飛ばす。


「さてと、お前ら何を企んでいる?」


 吹っ飛ばされた首領の胸ぐらを掴み、顔を近づけて相手の目を睨み付ける。首領は自信があった魔物が、いともアッサリと片付けられた事が信じられ無いのか、がくがくと震えていた。


「ひいっ!な・・・何も企んでなんか無い!」


「そんな訳が無かろう?こんな大規模な事を、5年掛かりでやってたんだろ・・・。?そんな事、お前らだけで出来る事ではあるまい?それにさっき国家転覆の生け贄になれと言っていたな?」


「うあっ・・・そ・・・それは・・・」


 白狐族の首領の目は泳ぎまくっている。


「他にもお前ら種族は、とんでもない種族を敵に回した事に気付いていないようだな?ここには元竜王もいるんだぞ?瘴気に捕らわれた竜種の者は、ハッキリとお前達に騙されたと言った。これで竜種は間違いなくお前達の種族を敵認定するだろう・・・。なあ、ティニエ殿。」


「私もしっかりとその者の話は聞かせて貰った。この代償は高く付くぞ?」


 ティニエもノリノリで白狐族の首領へ、脅しにかかった。


「うっ・・・」


「それでも、そんなに言いたくないのなら、もっと痛い目に会って貰うしか無いようだな?」


 そう言って、俺はバトルアックスを構えて、振り上げる素振りを見せた。


「さて、切り落とすのは足が良いか?それとも腕が良いか?」


 もちろんハッタリだが、ここまで追い込まれれば効果は覿面だったようだ。


「やっ・・・止めてくれ!言う!全て話すから勘弁してくれ!」


「で?誰に頼まれてここまで大がかりな画策を講じた?」


「そ・・・それは・・・」


「まだ言えないようだな!」


 と、そう言って俺は、バトルアックスを素早く振り上げて右腕目掛けて振り下ろした。


「ヒィイイ!!」


「おっと!手元が狂ったようだ・・・。」


 バトルアックスの刃先は右腕の直ぐ側にめり込んだ。


「東の街の領主だ!ヴェルバーン殿に頼まれてやった!我々白狐族は東の街の庇護下にあった!逆らえなかったんだ!」


「ふん!そう言う事は魔王城で白状するんだな!」


 俺はそう言うと首領を縛り上げた。他の獣人や亜人も既に縛り上げられている。俺はキュリーシアに遠話の魔法バッジを使って連絡を取った。


「キュリーシア殿か?ヨーンだが今大丈夫か?」


「はい。大丈夫ですよ。父の依頼の件ですか?」


「話が早くて助かる。今回の首謀者とその一味を捕まえた。もう少ししたらゲートでそちらに送る。受け入れ体勢を取って置いてくれ。一味の人数は70名ほどだ。あとクシュラーダ殿の村の南に30分ほど行った丘で、魔物を200体ほど討伐した。腐敗が進むと厄介だ。丘の一部を崩して魔物の死体を埋める許可を貰いたい。」


「解りました。確認してきますので、一度折り返します。」


 折り返しを待つ間に、獣人や亜人をひとまとめにしておいた。外へ逃げ出した者はいなかったようだった。


 そこまで片付けてから、クシュラーダとクシュラーデを中に招いた。奥の方にあった魔物の死体を目の当たりにした時には、驚きの顔をしていたが今はそれどころでは無かった。


 クシュラーデにヴェルバーンの事について聞いてみた。


「クシュラーデ殿、今回の首謀者が解った。」


「ここにいる者達では無いのですか?」


「いや、ここにいる者達は協力者だ。真の首謀者は東の街の領主、ヴェルバーンと言うらしい。狙いは国家転覆だそうだ。」


「!!ヴェルバーン殿と言えば穏健派の筆頭です!国家転覆を画策するような御仁では無い!」


「そうは言うが、そこにいる白狐族の者がそう言っておった。」


 クシュラーデは信じられ無いと言わんばかりに、驚きを隠せないようだった。そうこうしている内にキュリーシアから連絡が入った。


「受け入れの準備が整いました。それと丘の爆破の件ですが、そちらもヨーン様にお任せしますとの事です。」


「解った。任されるとしよう。キュリーシア殿には申し訳ないがゲートが開いたらこちらに来て貰えないだろうか?少し確認したい事がある。」


「え?構いませんが・・・」


 そんな会話を遠話の魔法バッジでしている間に、エステルは手早くゲートの魔法で王城と繋いだのだった。


 俺は一端王城へ行き、何人かの兵士を連れて戻ってくる。犯人を引き渡し、王城へ連れて行って貰う。首領はしっかりと特定させて、今後の取り調べを行うように指示をしておいた。


 キュリーシアが西の樹海に顔を出したので、先ほどの件を確認した。


「今回の瘴気の発生の原因の根幹は国家転覆を狙ったものらしい・・・。そしてその主犯は東の街の領主、ヴェルバーンという者らしい。」


「!ヴェルバーン様は穏健派筆頭だったはず・・・。何かあるのでは?」


 キュリーシアも信じられ無いとばかりに驚いている。あの白狐族の首領が嘘をついているのだろうか?


「取りあえず、先ほど引き渡した白狐族の首領から、詳しく話を聞いておいてくれ。そのヴェルバーンと言う人物の事はワシ等には良く解らん。ワシ等もここを爆破したら一度魔王領に戻る。そこで、どう対策をするかもう一度考えよう。取りあえず、西の樹海の瘴気の問題はこれで解決はした。後で魔王様にもワシの方から報告に伺うと伝えておいてくれ。」


「解りましたわ。それでは後ほどお会いしましょう。」


 そう言ってキュリーシアはゲートで魔王都へ戻っていった。


 その後、この丘の洞窟はエステルの特大ファイヤーボールで吹き飛ばし、中に残った魔物の死体をそのまま埋めたのだった・・・。エステルのすっきりした顔が印象的だったが、彼女もトトとリリの父親の件については、思うところがあったのだろう。あんな大きなファイヤーボールは初めて見た・・・。


 クシュラーダの村に戻ると別れの挨拶を済まし、急いで王城に向かう事にしたのだったが、ここではエリックが主役となっていた。


「エリック殿!西の樹海にいらっしゃる時には是非この村をおたずね下さい!」


 とか、


「エリック様は、まだお一人で?」


 など・・・かなりモテモテであった。精霊王と契約を結ぶ精霊使いとはかくも偉大な存在と言う事か?


「エリック大人気だね!何ならここに残っていく?」


 と突っ込みを入れるのは、言わずと知れたブリットだ。こういう時は何時ものようにニヤニヤしている・・・。


「ブリットさん!からかわないで下さいよ~・・・。僕も一緒に帰ります!」


 一通りのやり取りから、エリックも馬車に乗り込んだ。そしてエステルのゲートの魔法を掛けて貰う。行き先は魔王都の王城だ。屋敷にはまだ戻れない・・・。


 王城に着くと、キュリーシアが駆けつけてきた。


「西の樹海で起こった瘴気の件はお疲れ様でした。国家転覆の件について話があると、父が執務室でお待ちです。」


 キュリーシアはそう言って、魔王の待つ執務室へ案内してくれた。キュリーシアもその席に同席する。メイドゴーレム達が執務室に入るとどうしても狭くなってしまう。今回は流石に別室で待って貰う事にした。


「ヨーン殿、西の樹海で起こっていた、異常な濃度の瘴気の発生を防いでくれて感謝する。」


「いや、アレはもう行き当たりバッタリだった・・・。何の戦略も無かったわい・・・。」


「それでも防いでくれるというのが憎たらしいな・・・。それで、原因は何だったのかわかったのか?」


「ああ、元々瘴気を発生させる元となっていた石があったのだが、それが「竜帝の嘆き」という物だったらしい。それを竜種の一人が騙されて取り付かれてしまったのが原因だったようだ。5年間瘴気の発生を抑えていたようだが、それも限界を迎えていたようだった・・・。」


 そう言って、魔法鞄から封印された竜帝の嘆きを取り出して、魔王の前に置いて見せた。


「これがヨーン殿が言っていた「竜帝の嘆き」と言う品か?」


「ああ、それが、竜種の胸に癒着して体を乗っ取っておった。手強い相手だった・・・。」


「ヨーン殿にそこまで言わせるとは余程、腕の立つ者が乗っ取られていたのだったのだな・・・。」


「ああ、間違いなく腕の立つ剣士だった・・・。それよりも国家転覆を企んでおると言う、ヴェルバーンという人物と白狐族の首領との繋がりは解りそうか?」


「その話なのだが、私の知る、ウィル・ヴェルバーンは狼牙族の獣人だが、穏健派の筆頭なのだ。多くの好戦派を押さえ込んできた実績もある人物だ・・・。そのウィルが国家転覆を企むなど考えられん・・・。」


「その口ぶりだと、魔王殿ともかなり親しい間柄の様子だが?」


「ああ、ワシが病床に着いていた時にも、良く見舞いに来て励ましてくれたよ・・・。」


 う~ん・・・どういう事だ?誰かに体を乗っ取られているとか?何か脅されてやむを得ず従っていると言う事か?


「何かそんな話を聞くと、別人に思えちゃうね・・・。」


 エステルがふとそんな事を呟いた。


 ん?別人?見舞いに来たんだよな?俺は気になった事を魔王に確認する事にした。


「魔王殿、そのウィルという方は魔王殿が回復されてから、快気祝いとかには来られたのか?」


「あ・・・いや、来ていないな・・・。彼なら真っ先に来てもおかしくは無い。東の街で何かあったのかも知れん!」


「魔王殿、彼と会っていないのはどの位経つだろうか?


「どうだろうな・・・。かれこれ3年くらいだろうか?」


「う~ん・・・今、白狐族の首領の取り調べは行っているのか?」


「ああ、今取り調べをしている最中だ。」


「スマンが彼に質問をさせて貰えんかの?」


「構わんが、どうするつもりだ?」


「いや、今回の国家転覆を狙う者が、どうもワシ等が考えている人物では無い気がしての・・・。」


「違うとは一体・・・解った。取調室へ案内させよう。クシュラーデ頼めるか?」


「解りました。・・・こちらです。」


 クシュラーデはそう言って、取調室へ案内してくれた。俺が考えるのは、ヴェルバーンの身内の仕業かも知れないと言う事だ。

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