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竜族の子供達にかかる奇病

 呪いが空気に混ざっているだって!?


 それを聞いた俺達は、ヘンリクに向かい、


「呪いを遮断出来る魔法と、解呪する魔法はあるか?」


 そう訪ねた。


「任せて下さい!」


 ヘンリクはそう言うと、最初にホーリーフィールドを部屋全体に展開し、その後、症状の重い子供から解呪の魔法を掛けていった。


 すると、今まで全身を覆っていた鱗がはがれ落ち、元の肌が出てきたのだった。


 他の子供にも解呪の魔法を掛けていく事で、竜王の村の子供達は全員元の姿に戻る事が出来たのだった。


 症状の重かった子供達の呼吸も落ち着き、今は安定しているようだった。


 この現場を目の当たりにした母親達は歓喜に抱きしめていたが、俺達はそうも言ってられない。


「竜王殿、他の村にも同じ症状の子供達が居るのでは無いか?大至急ここへ集めて症状の重い子供の治療を行いたい。」


 今まで治す事が出来なかった病を、たちどころに治した事に呆気に取られていた竜王も正気を取り戻し、


「他の村にも同じ病で苦しむ子供達は多く居ます。至急伝令を出し、ここへ集めさせましょう。今日中には集まるかと思います。」


 しかしここでさっきの解呪の魔法を使っても、元を絶たねば元の木阿弥だ・・・。さっきニーニャが呪いの空気と言っていた。


 都に住むトトやリリはこんな病にはかかっていない・・・。


 ヒョッとして都まではこの呪いは、届いては居ないのでは無いだろうか?そんな事を考えていると、


「ねえ都に居る、トトやリリも竜族だよね?あの子達がこの奇病に掛かっていないって事は、都にこの子達を連れて行けば良いんじゃ無い?」


 ブリットはそう言って俺の考えていた事を肯定するように提案してくれた。


「なんか、この呪いって、東から吹く風に乗ってきてる感じ?」


 アプリコットは何かを察知したように俺達に教えてくれた。


「東から吹く風?・・・了解した。ここは呪いの風が吹いているようだ。奇病に掛かった子供達が全員集まったら、都へ子供達を移そう。」


「しかし、子供の数だけでも50人は居ますよ!?どうやって運ぶのですか!?それに受け入れ先についても!」


 竜王のティニエは俺の言ったあまりの突飛な提案に、自分の想像が追いついていないようだ。


「それには思い当たる場所がある。任せておいて欲しい。」


 そう言うと、遠話の魔法バッジでキュリーシアを呼び出した。


「あ!ヨーンさんですか?どうしました?」


「キュリーシア、緊急の用件が出来た!竜族の子供を50人ほど、寝かせられる部屋は用意出来るだろうか?」


「先日の件ですね?解りました!早速寝床と布団は用意しておきます。来るのは何時ぐらいになりますか?」


「今日中にはまとめて、ゲートで送る事になると思う。よろしく頼む。」


「解りました。至急準備に取りかかります!受け入れの用意ができ次第連絡しますね。」


「ああ、済まんがよろしく頼む。」


 ここまでのやり取りを、竜王のティニエは呆然として聞いているだけだった・・・。


「さあ!大至急子供達を集めてくれ。これは、症状の出ていない子供達も含めるぞ。!重病者はこの場で解呪してもらうが、そうで無いものは都の城の方で解呪を行う。」


 そこまで言うと、竜王のティニエは正気に戻り、各竜達に指示を飛ばした。


「大至急、各村に居る子供達を集めなさい!症状のある子供も、無い子供も関係なくです!」


「はっ!至急各村へ向かいます!」


 そう言って、部下の竜達は竜の姿に変身して各村へ散っていった。


 その間にも、俺達は段取りを決めていく。


「エステル、子供達全員が集まったらゲートで一気に城へ運ぶ。長時間のゲート開放だ。大丈夫か?


「んっ!任せといてっ!」


「向こうで部屋へ運び込む人員を用意して貰うよう頼んでおく。」


「ヘンリクは治療班として同行してくれ。人数が多いから魔力補給用にキューブを1つ持って行ってくれ。大変だが、治療が終わりしだい、こちらに戻って来て欲しい。」


 そこまでの段取りが進んだ頃には、近い村から徐々に子供達が集まりだした。その頃にはキュリーシアからも連絡が入った。


「こちらの受け入れの準備は整いました。いつでも対応可能です。」


「了解した。こちらは随時子供達が集まってきている。全員集まるには、もう少し掛かるだろう。全員集まったらエステルのゲートでそちらと繋ぐ。済まんがもう少し待って欲しい。」


「了解しました。用意でき次第、連絡を下さい。」


 そう言って通信を切った。


 暫くすると、一番遠くの村の子供達も、竜王の村に連れてこられた。


 その間もヘンリクは重篤の患者に解呪の魔法を唱えていた。最後に到着した村の子供にも重篤な患者はいた。


 ヘンリクも相当魔力を消費していると思われるのに、そんな素振りも見せずに治療に当たっている。


 子供達は全部で47人居た。これからゲートで都の王城へ運ぶ事になる。親も同行しているので運び込むのには問題ないだろう。


 俺はキュリーシアに連絡を入れ、こちらの準備が整った事を伝えた。早速エステルの魔法でゲートを開き都の王城へ繋いだ。


 ゲート特有の黒い空間に竜族の親は抵抗感を示したが、最初にエステルが中に入り、そこから手招きして誘導していく。


 それに覚悟を決めたのか、子供を抱えた親は中へ入って王城へ向かっていった。ヘンリクもキューブを念の為2つ持ってゲートをくぐった。


 今頃キュリーシアの誘導で、部屋に案内されている事だろう。


 王城の方では、奇病に掛かっていた子供達に、解呪の魔法をヘンリクが唱えていた。


 その魔法の効果が劇的で、鱗の剥がれ落ちて元の姿に戻った子供達は元気を取り戻していったという。


 全員に解呪の魔法を唱え終わり、見た目では、奇病に掛かっていないと思われた子供にも解呪の魔法を唱えていった。


 解呪の魔法を唱え終わると、ヘンリクは魔法の行使のしすぎでふらつきながらも、親御さんに今後の事を伝える事は怠らなかった。


「皆さん、子供さんの呪いはこれで解呪されました。もう安心でしょう。しかし、竜の住む山脈では、今もまだ呪いの風が吹いているようです。この呪いを受けるとまた元に戻ってしまう恐れがあります。今私の仲間達が原因を探るべく調査を行っています。それまではこちらで安静にされるようお願いします。」


 どちらにせよ、床に伏せっていた間、子供達は体力を奪われてしまっていたため、しばらくは安静にするべきだとヘンリクは子供達の親に伝えた。


 そして、後の事をキュリーシアに任せ、エステルのゲートで竜王の村へ戻ってきたのだった。



 俺達は、ヘンリクが王城で子供達の治療をしている間に、聞き込みを行っていた。


 竜王のティニエからは100年ほど前から、奇病が始まったと聞いていたが、それしか知っていなかった。


 村人からも細かな事を聞いてみなければ解らない事もあるだろう。


 そう思い、村人に尋ねようとするのだが、村人の男性の、俺に対する対応が冷たい・・・。エリックやエイナルが尋ねると普通に応対しているのだが・・・


 その代わり、竜族の女性陣が俺に近寄ってきては尋ねてくる。


「ねえ!あの竜王様の角に触れたって本当なの!?」


「あの竜王様の角に触れるなんて、この村の男衆は皆アタックして、みんな返り討ちに遭って諦めていたって言うのに・・・」


「この村の憧れの的だった竜王様を射止めてしまうなんて凄いわ!」


 などなど・・・なるほど俺に対する男達の対応には、そう言う理由がある訳か・・・


 こうなると、情報収集は皆に任せるしかあるまい。男達からは怨嗟の念、女達からはスキャンダルの興味・・・。


 こりゃ参った。仕方が無いので、広場の石の上に腰を落ち着かせて、ぼ~・・・とする事にした。


 すると、俺は背後から不意を突かれ抱きつかれた!全く気配を感じなかったので驚いて振り向きざまにその相手を振り払おうとした。


 そして手で相手を掴むと正面に向き合う格好となったのだが、ここでもやらかしてしまったのだった。


 相手は竜王のティニエ・・・。掴んでいるのは、そのティニエの角だった・・・。

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