竜王の村に行く
俺達は旅の支度を調え、竜の住む山脈にある竜王の村を目指す為、翌日の早朝に馬車を出発させた。
今回キュリーシアはお城でお留守番だ。付いて行くと言っていたが、魔王様に止められた。
魔王領の都から、竜王の村は真北に存在するのだが、途中には中央の湖が存在していて直行する事が出来ない。
その為、東か西に経由して竜王の村を目指さなければならない。
最短のルートを利用するのであれば、西から目指すのが良いだろう。途中、西の湖と西の平原に挟まれる形で存在する西の街を経由する事になる。
そこまで一日半、そこから更に2日の道程となる。
俺達の使う馬車もチョコロールの魔改造が着々と進んでいる。チョコロールは暇を見付けては、俺達の知識を吸収し、それを馬車に取り入れているのだ。
最近は、油圧ブレーキを開発して、サイドブレーキを取り付けてくれていた。それまでは、馬車を止めておくには杭を打ち込み動かなくするようにしていたので大変便利になった。
それ以外にもこれは冬場の魔王領で馬車を使った時に発覚した事だったのだが、御者台にエアコンの効果が無かった事だ。
冬場の魔王領を移動した際の御者台は無茶苦茶寒かった!これも御者台までエアコンの効果が広がるように改造して貰った。
車内の方も改造が進んでいた。板張りだった座席と背もたれにクッションが取り付けられたのだ。
元々乗り心地は快適だったのだが、ここに来てクッションが取り付けられた事により、快適性はグンと向上したと言えるだろう。
チョコロールはこの馬車の魔改造に、何やら喜びを感じているように思える・・・。
今では、作業をする為にマイ作業着まで用意して、本格的になっているのだから恐れ入る。
まあ、本人も嫌々でやっているわけでも無いようだし、こちらとしても有難い事なので、その度に褒めてあげているのだが・・・。
「そうやって褒めるから、チョコちゃん頑張っちゃってるんでしょ?」
ブリットはそう言って、半眼でこちらを見てきた事があったが、
「良い事をしたら褒めてあげるのは当然の事だろう。何が行けないのか?」
そう訪ねると、ブリットは、
「はあぁぁ・・・朴念仁・・・」
と、ため息をつくばかりだった。
そして、久しぶりの御者の順番決めじゃんけんの開催となった。いつものように号令はブリットだ。
「それじゃあ行くよ!じゃ~ん・け~ん・・・ポン!!」
長いじゃんけん大会の末決まった順番は、エイナル、俺、ブリット、ヘンリク、エリックとなった。エステルはいつものように御者番にはなっていない。
馬車は早朝に出た事と、この馬車の性能のお陰で、その日のちょうど日が沈んだ頃に西の街に到着する事が出来た。
この街の主な住人はハーピィだそうだ。そのハーピィにも、亜人種と獣人種が居た。
それ以外にも犬や猫、狐などの獣人や亜人も多く暮らしている。
俺達は、宿を見付け、チェックインをすることにする。カウンターに立っているのは獣人種のハーピィだった。
言葉は通じるのだろうかと少し不安に感じたが、
「いらっしゃい!」
問題なく会話が出来た。どこから声が出ているのだろうかと不思議に思ってしまったが・・・。
「12名で一泊、大部屋を3部屋取れるかの?」
するとハーピィの受付は翼の先にある指先を器用に動かしながら、帳簿を確認して、
「大丈夫ですよ。2階の6~8号室をご利用下さい。」
そう言って鍵を渡してくれた。
一泊の予定で手続きを済ませた後、そのまま夕食のため、1階の食堂に席を移した。
夕食のメニューは、野ウサギや鹿肉の料理が中心だった。西の草原で取れる名物なのだろうか。
俺達はオススメメニューで注文を済ませ、竜王の村に着いてからの事を話した。
「取りあえず、竜王の村について子供の容態を見てみないと何とも言えないが、ヘンリクの治癒魔法が有効かどうかが肝心だな・・・」
俺がそう言うと、ヘンリクは、
「回復魔法であれば既に試みているのでは?100年も前からこの奇病が蔓延しているとなると、ただの病気とは思えません・・・。」
ヘンリクは両腕を組み他のアプローチも考えてみるべきだと提案してきた。
するとガトーショコラが、
「病気って線じゃ無くても、呪いって線も考えるべきじゃ無いの?」
病気にこだわる必要は無いと言わんばかりに言ってきた。
「でもでも~、子供に限定した呪いなんて~、手の込んだものを~、100年も続けるなんて~、どう言う意図があるんだろう~?」
パンナコッタは呪いの線に疑問を感じているようだ。しかし、ガトーショコラの言っている事は一理あると俺も思う。
「確かに・・・。その線も考えられるな。子供達だけが掛かる奇病というのが気には掛かるが、明日は一度野営をしてそれから竜王の村に到着する。到着したら早速子供達の容態を見せて貰うとしよう。」
俺がそう言って話を締め括ろうとすると、
「結婚式の準備まで出来てたりして・・・」
ブリットの冷やかしが始まった。
「そうは言うが、あれは不可抗力で・・・」
俺はどうにかその話題には触れないようにしていたのだが、ブリットとしては放ってはおけない最新ネタだ。
「とは言え竜王様も満更じゃ無かったようだし、一足先に帰って準備をしていてもおかしくないんじゃ無い?」
俺の足を遠のかせるネタだ・・・。
「いくらそうだとしても、村の子供達が危機に瀕しているというのに、そんな浮かれた事をするとは思えんがの?それに、村の者も部外者のワシが竜王を嫁に貰うという話が持ち上がったとしても誰も認めまい・・・。」
・・・そうであって欲しい。これは俺の願望だった。
「まあ、そうでしょうね。ただ念の為、覚悟はしておいた方が良いかもよ?」
そう言ってブリットはニヤリと笑った・・・。俺の背筋をゾクリとしたものが伝わってきた・・・。
翌日は予定通り出発して、道中野営を行う事になる。
今回初めて使う野営グッズがある。それは、魔法のログハウスだ。見た目は大型のテントだが、中に入ると、6人部屋を3部屋完備した3LDKの異空間設備となっていた。
今回使う前に、試しに利用していたのだが、快適この上ない。中に入ると室内は一定の温度に保たれており、キッチンで料理も可能だ。ダイニングは最大18人が食事を取る事も出来る。至れり尽くせりのテントだった。
俺達は事前に用意してあった、食材を調理し食事を取っていく。料理は、ブリットとエステルの担当に固定してしまった感があるが、たまには男料理を振る舞う事もある。
何でも美味しく出来る魔法のナイフを使わせて貰うのだが、女性陣からはあまり良い反応は得られていない・・・。
明日からは忙しくなる事を想定して、早めの就寝を取る事にした。竜王の村には翌日の昼頃には到着出来るだろう。
そして翌日予定通り昼過ぎには竜王の村に到着した。俺達の馬車が到着すると、
「旦那様!お待ちしておりました!」
そう言って、竜王が駆けつけてきた。
「「「旦那様!?」」」
周りの視線が俺に向かって突き刺さる・・・。
「竜王殿、その話は置いておいて、子供達の奇病を見せて貰えるかの?」
俺は周りの痛い視線を振り払い、奇病に掛かっているという子供達が収容されている家へ案内された。
「ヨーン様のいけず・・・」
と言われながらも、竜王は子供達の収容されている家へと案内してくれたのだった。
そこで見た子供達の姿は、確かに人の姿のままで症状の軽い者でも両腕や両足を自らの鱗で包まれており、その体を自由に動かす事もままならない様子だった。
症状の酷い子供に至っては既に全身に鱗が覆われており、呼吸も浅く、余命幾ばくも無いと言った感じだった。
その傍らには母親であろう竜族の女性が、必死に子供達の看病に当たっている。
すると、新米女神のニーニャが、
「これ呪いの空気が混ざっているね・・・」
そう言ってきた。ガトーショコラの言っていた事が、当たってしまったようだった・・・。




