精霊王の欠片の回収に行きました
次の会談の日取りの通達がマーリンによって届いたのは、翌日の昼だった。日程も早めで、2日後には詳細を詰めたいとのことだった。
「昨日の会談は胃が痛くてヤバかったよ・・・」
「そんな危ない橋を渡った覚えは無いが?」
俺はシラを切った。
「王家に向かって真っ向から、魔法王国の末裔じゃ無いって、啖呵を切ったのは後にも先にもアンタだけだよ・・・。」
「そう言われてもな・・・。知ってしまった真実は、告げてやるのが親切というものだろ?」
「それは事と次第に寄るだろ?国王なんて一気に老け込んじまったじゃ無いか・・・。」
まあ確かに、あの真実を知った時の国王の老け込みようと来たら、見ていて可哀想だったが・・・。しかし、第一王子の肝の座り用は大したものだった。それが気になりマーリンに尋ねる。
「第一王子は魔王領の復活容認派だったのか?」
「ん?ああ、そうだな。第一王子は古いことに捕らわれず、新しいことに挑戦する気概のある方だよ。」
「それでか・・・。」
「ん?なんだい?気になることでもあったかい?」
「いや、キュリーシア王女にも色々と魔王領について聞いていたからな。今度の会談は旨くすれば、色々と話が進みそうな気がしてな。」
「ああ、それなら王子も色々と考えがあるようだったよ。」
文化交流の話などが進めば良いものだと思う。
夕食時には皆が揃うので、そこで次回の会談の日取りを報告した。キュリーシアも前回と違い、次回の会談が早い日取りの決定だったのに戸惑いを見せていたが、やる気は十分のようである。
2日後、迎えの馬車に乗り込み王宮へ向かった、この時も俺達の装備は一般的な装備にしてある。
王宮に着くと前回と同じ待合室へ通された。暫くするとメイドがお茶を入れてくれた。
お茶を飲みながら談笑をしていると執事が扉をノックして入ってくる。先日よりも早い出迎えだ。
「お待たせ致しました。会談の準備が整いましたので、キュリーシア王女殿下、ヨーン様御一行様、会談の間へご案内させて頂きます。」
今回は王女殿下が付いたな・・・。そう言って誘導されたのは、先日と同じ会談の間だった。
そして、会談の間に入ると、そこには既に国王と第一王子も席に着いていた。今回は完全にこちらが国賓の扱いのようだ。
俺達が席に着くと、話は精霊王の解放の日取りについてから始まった。俺はその段取りについて簡単に説明した。
「まず、ワシ等がここにいるメイドゴーレム達を使って精霊王の欠片を回収する。それを地上の神殿とやらに行って、解放する段取りになるな。」
すると家臣達は地上の神殿という場所に興味を持ったようだ。
「その地上の神殿という場所には心当たりがあるのですかな?」
「おおよその見当は付いている。そこは、メイドゴーレム達にも確認を取っているから間違いは無いだろう。」
「それで、精霊王の欠片を回収するのには、どの位の日数が必要になりますか?」
これは第一王子からの質問だった。
「既に30階層の転移ポータルは登録してある。第3号遺跡から順に回収するとして1週間もあれば回収出来よう。」
「30階層を踏破していると言う事は皆さんのレベルは60を超えていると言う事ですか!?」
まあ、レベルはカンストしているが、それは言わぬが花だろう・・・。
「まあ、30階層に行けるほどにはレベルを上げておる。」
すると、家臣達は話し合いを始める。そして話がまとまったのか、こちらに提案をしてきた。
「では、精霊王の欠片の回収の期間と地上の神殿での準備を会わせて、10日から2週間ほどで精霊王の解放を行うと言う事でよろしいでしょうか?その際の段取りはお任せしても?」
「構わないが、解放の立会人ぐらいは付けた方が良いのでは無いか?精霊王の欠片を回収したら一度王都に戻ることとしよう。そこで立会人を連れて地上の神殿に向かうと言うのはどうだろうか?」
「解りました。こちらもそれで異存はありません。立会人はこちらで責任のあるものを用意させましょう。」
こうして、精霊王の解放 についての話は終わった。続いて、その後のことについての話し合いだった。
これは第一王子であるソリューシュたっての希望と言う事もあり、議題となったものだった。
それは、ルステーゼ王国と魔王領との文化交流の話だった。その話にはキュリーシアも喜んだが細かな点に問題が山積していた。そして、これも俺が問題定義をする事になった。
「文化交流の話は良い事だと思うが、もしやるのであれば、まず最初に魔王領に冒険者ギルドを設立した方が良いと思うのだが。」
すると司会進行をしていたマーリンが食いついた。
「ほう・・・それはどう言う意味で必要と考えられるのでしょう?」
いつもと違うマーリンの口調にビクリとするが、
「まず、一般の人族が北の山脈を越えて魔王領へ向かうことは困難だと考える。これは魔王領からルステーゼ王国に来る場合も同じだ。今行き来する方法はゲートという魔法を使ってのみだが、これは一度行ったことのある者にしか使えん。そうすると一番手っ取り早い魔法は転移ポータルの設置と言う事になる。」
「なるほど、その転移ポータルの設置場所を、冒険者ギルドに置くと言う事ですね。」
マーリンの敬語は耳が慣れない・・・。
「それに、貨幣通貨の違いもある。どちらの国も金銀銅鉄を硬貨として使っておったが、その重さも違う。両替というシステムも必要になってくるだろう。まあそれは追々として考える事かも知れんが・・・。」
「確かに冒険者ギルドは必要なようですね。そう言えば、魔王領には冒険者はいるのですか?」
これはキュリーシアが答えた。
「魔王領には冒険者はおりません。しかし冒険者ギルドが出来れば冒険者になろうとする者も現れるでしょう。」
話が精霊王の復活が前提となってしまっているが、まだその精霊王は復活させていないのだ。脱線してしまっている感が否めないので話を本題に戻した。
「まあ、文化交流の話から広がってしまったが、まずは精霊王の復活を無事に成し遂げねば話は進まん。文化交流の話もその後でも構うまい。精霊王の欠片の回収はいつから始めれば良いかの?」
すると第一王子が家臣達を見渡し、結論を出す。
「2、3日の内に出発してもらえますか?そうすれば、皆さんが戻ってくるまでに立会人の選定を終わらせておきます。」
「了解した。出発する際には一度マーリン氏に報告をさせて貰おう。」
そう言って今回の話は終わる事となった。俺は退室する際にマーリンに目で合図を送った。
帰りは王宮の馬車で送って貰い、俺は皆に話をすることにした。
「急な話だが明日から各遺跡を巡らんか?」
「どうしたの?本当に急な話だね。」
「いや・・・、せっかく各遺跡に行くのなら、ついでに50階層まで行って宝箱の回収をな・・・」
「纏めてやっちゃおうと?」
ブリットがニヤリと笑った。
「二人揃って悪い顔をしてる・・・。」
珍しくガトーショコラに突っ込まれた・・・。
「まあ、それにはゲートの使える二人の協力は必要不可欠なんだが・・・。」
そう言うと、エステルとキュリーシアは揃って
「「はあぁ・・・仕方が無い(ですね)。」」
と、半分あきれ顔で納得して貰った。他の皆も二度手間になるなら、纏めてやってしまった方が良いと言う事で、納得してくれた。
そんな話をしていると、マーリンがやってきた。
「何か用事があるみたいだから寄ってみたが、何かあったのかい?」
「おお!ちょうど良かった。ワシ等は明日、カヌレ博士の研究所へ行ってくる。各遺跡にはその足で精霊王の欠片を回収するから承知しておいてくれ。」
「そりゃあまた急だね。準備もあるだろうし、解ったよ。」
「すまんな。よろしく頼む。」
これで全ての準備は整った。マーリンが帰った後、皆に振り向き、
「では、明日から1週間の日程で出来る限り50階層も目指すという段取りで頼む。」
そう言って、その日は自由解散とした。と言っても、夕食には全員揃ってしまうのだが・・・。
夕食の席でブリットが、
「出来れば全部の遺跡をフルコンプしたいよね~!」
と言ってきた。第4号遺跡は50階層まで行っている。残りは5つの遺跡だ。出来る事ならそうしたいが、日程的には結構ギリギリだ。最悪は第5号遺跡辺りは後日になるだろう。
翌日は予定通りエステルのゲートの魔法で出発した。馬車は宿に預けたままにした。装備もいつもの物に戻してある。目的地は第3号遺跡だ。
第3号遺跡に到着すると、転移ポータルで30階層に向かった。そこにある隠し扉に侵入し、精霊王の欠片を確認する。ここの属性は水の精霊だ。パンナコッタが中に入る。パートナーであるエステルも心配なのだろう、手を握っていた。
パンナコッタが精霊王の欠片の前に立つと、一際欠片が輝いた。そしてパンナコッタの動力炉があるであろう、心臓の辺りも輝いている。そこでエリックがパンナコッタに囁いた。
「無理に受け入れようとしないで下さい。ゆっくりで良いです・・・。ゆっくり自然と体に浸透していくように、受け入れていって下さい。」
そう言って、強引に吸収させるのでは無く、パンナコッタの体に馴染ませるように精霊王の欠片を吸収させていった。
その間およそ1時間ぐらい掛かっただろうか?精霊王の欠片は完全にパンナコッタの動力炉に吸収された。
「無事に回収出来たようじゃな・・・。パンナコッタ、体の具合はどうだ?」
俺が念の為確認してみると、
「ん~・・・特に問題は無いかなあ~・・・」
間延びした声で変調は無いとの回答を得た。
「よし、では50階層まで攻略しようかの?」
「「「「「おうっっ!」」」」」
そこからの段取りはいつも通りだ。エステルの魔物よけの魔法でフロアのモンスターを排除し、一気に40階層と50階層のボスモンスターを攻略する。35階層と45階層の魔鉱石の回収も忘れない。これを1日でこなして見せた。
翌日も、第2号遺跡での段取りは同様だった。流石のブリットも今回はフラグを立てなかった。30階層で精霊王の欠片を無事に回収し終えると、ブリットは安心したのかモンブランを抱きしめていた。その後は50階層までの強行軍だ。
それ以降も順調に、精霊王の欠片の回収と、魔鉱石と宝箱の回収を、進めていった。
第4号遺跡では精霊王の欠片の回収のみとなる。チョコロールがエリックのサポートを受けつつ、無事に地の精霊王の欠片を回収するのを見届けると皆で地上へ戻った。
地上へ戻るとゲートの魔法で第5号遺跡を目指した。
「さて、ここでラストじゃ。第5号遺跡での精霊王の欠片と宝箱などを回収したら、カヌレ博士の研究所に荷物を置いて王都ルステーゼへ戻るとしよう。」
「なら、ハレックの街に寄ってかない?最近ご無沙汰しちゃってるでしょ?」
ブリットが懐かしい目をしてそう言った。確かにヤンの武具店の親父さんにも1ヶ月くらいと行っておきながらそれ以上ハレックの街を離れていたことになる。顔を出しておきたい。
「確かにな・・・じゃあ、そうしようかの。」
そう皆と確認を取って、最後のダンジョンに挑んだのだった。




