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会談そして・・・

 俺達が会談の席について少し遅れて、豪華な服に身を纏った中年で気の弱そうな男性と、20歳前後の青年が入ってきた。


 入ってくると同時に家臣とみられる者達は、全員席を立って出迎えた。国王と第一王子だろう。


「ルステーゼ王国、国王「クラウディス=ルステーゼ」様、並びに第一王子「ソリューシュ=ルステーゼ」なるぞ。」


 家臣がそう告げた。国王と、第一王子が席に着くと、家臣も皆席に戻った。


 それを見計らって、キュリーシアは席を立ち自己紹介をした。


「お初にお目に掛かります。この度、会談の席を設けて頂き感謝致します。わたくしは現魔王ギュレイドスの娘、キュリーシアと申します。」


 そう言って、キュリーシアは会釈した。だが、王国関係者は誰も反応を示さない。その反応にイラッとした俺はキュリーシアの自己紹介にワザと続いた。


「ワシは今回、冒険者ギルド本部の依頼で、キュリーシア王女の依頼と魔王領の視察を担当したヨーンだ。そして周りに居る者達はワシの仲間だ。」


 ワザと、キュリーシア王女、という部分を強調しつつも、横柄に自己紹介を済ませる。すると、国王の前で失礼だという反応が漏れ出した。


 そうなる事は想定済みだ。


「済まんのう。冒険者家業をしていると荒事ばかりで、上品な挨拶なんぞ知らんモンでな。」


 脇に居た進行役の冒険者ギルド本部ギルドマスターのマーリンは、胃を押さえている様子だったが知った事では無い。


 それでもマーリンは役目を果たすためと司会進行を始めて言った。


「まず、事の始まりは、こちらの世界には魔族が居ないと言われていたのに、そこにいらっしゃるキュリーシア王女が、突如王都に現れた事から始まります。そして、人族との共存を求めてきた事です。」


 そこまでマーリンが簡潔に説明すると、キュリーシアが続いた。


「はい。今の魔王領は人族と同じように、文化を育み種族の壁を越えて共存共栄しています。今の魔王領であれば、人族とも共存の道があるのでは無いかと思ったのです。」


 それに対して国王は何も答えない。代わりに家臣が答えたのだった。


「そうは言うが、2千年前に魔法王国と魔王領が100年にわたる大戦をした事実は変わるまい。共存というが、こちら側に魔王領が戻って来た時、同じだという確証は何処にも無いだろう。」


 今の魔王領を見ていないから言える事だ。見ていれば絶対にそんな、だろう発現は出来ない。しかしキュリーシアはきっぱりと断言した。


「今の魔王領に、他国へ侵攻する意思は一切ありません。今の私たちは、魔王領の皆と平穏に暮らして行ければそれで良いのです。それに今は、どちらの世界も精霊の弱まりにより、存亡の危機に瀕している事はご承知のはず。それをどうやって解決すると言うのですか?」


 肝心な所を付かれ、家臣達は言葉を濁す。俺はキュリーシアの援護射撃をすることにする。許可を貰い発言した。


「発言をしても良いかの?ワシ等は実際に魔王領を見てきた。そして今の魔王領は他国と戦争をする気概は無いと断定した。平和そのものだったぞ?その気があるなら一度行ってみると良い。王都とハレックの街の良い所を取ったような場所だったぞ。」


 俺がそう言うと、家臣達は一斉に反論を始めた。


「文献に載っている魔族は野蛮で文化など持つはずが無い!」


 俺は野蛮という言葉に反応した。そして、席を立ち扉に向かって歩き出した。そして勢いよく扉を開けると、そこには数十人の兵士が武器を構えて控えていた。


「野蛮というなら、どちらが野蛮なのかのう・・・さっきから扉の向こうから殺気がワンサカと漏れ出していたが、この所行は野蛮では無いのか?」


 何かあっても良いように、兵を扉の向こうに待機させているのだろう。流石に家臣もぐうの音も出なかった。


「しかし魔族と会談となれば警戒は必要だろう!」


 別の家臣はそれでも食い下がる。俺はそれに反論する。


「2千年前の話を今持ち出してどうする?ワシは言ったぞ?今の魔王領は平和そのものだと。それにキュリーシア王女も言っておったが、精霊の弱まりに対しては何か対策でも見つかったのかの?」


 その後も、お互いに意見の溝は塞がらず無闇に時間だけが過ぎていった。


 それでも家臣達は何か反論しようと家臣達は口をパクパクさせていたが、ここでやっと国王が口を開いた。


「魔法王国の末裔として、魔王領の復活には賛成出来ぬ。それがたとえ世界の滅亡に繋がろうとも・・・。最後の最後まで精霊を復活させる方法を見つけ出してみせる!」


 俺はマーリンに振り向いた。マーリンは知らん顔をしている。どうやら末裔では無いと言うカードは切らなかったようだ。


 俺はこれ以上出しゃばっても良いものかと考えていたが、ここでキュリーシアが反論した。


「我が魔王領でもその方法を、500年も前から探し続けました。しかし精霊王が分割されてしまっている今、1つに戻すしか方法が無いと、結論が出ているのです。こちらでは、精霊の弱まりを確認したのはまだ最近だと聞きます。今から探してもその前に世界が崩壊してしまいます。」


 国王は驚いていた。


「500年も前からこの問題が解っていたというのか・・・。」


 キュリーシアは追随する。


「そうです。魔王領では魔法研究が盛んでした。何故かと言えば、魔王領をどうやったら、こちらの世界に戻せるか研究するためです。そして、個人で行き来出来る次元転移の魔法を開発したのです。最近知ったことですが、その次元転移の魔法の大規模魔法が、2千年前の魔王領をこちらの次元から切り離す魔法だったようです。」


 ここまで大人しく話を聞いていた第一王子ソリューシュが、ここで会話に参加してきた。お飾りだと思っていたがそうでは無かったらしい。


「父上、私は魔王領の復活を認めても良いのでは無いかと思います。今ここでキュリーシア王女が話をされている時も、理性的に我々にわかりやすく説明されていた。返ってこちらの方が感情論で反対しているようにしか思えなかった。何より妹クリスティーナが嫁いだリスタニア王国は、未だ砂漠化が進行しているのです。ここは魔王領を認めて元あるべき状態に戻すべきです。」


 第一王子がここまで言っても、国王は首を縦には振ろうとはしなかった。


「我が先祖が成したことを、我が代で終わらせるわけには行かぬ・・・。」


 俺はジョーカーを切るべきか悩んだ。そしてマーリンを見た。マーリンはこちらを見ようともしない。


「申し訳ないが、これは確認じゃ。不敬罪と問われても困るのだが・・・。」


そこまで言うと、家臣達が訝しげに先を促した。


「王家は本当に魔法王国の末裔かの?もし末裔なのだったら、今回の事は知っておって当然だったはずなんだが・・・」


 そう言って水晶玉を取り出す。取り出している間も案の定、家臣達に不敬罪だの極刑だのと文句を言われたが仕方があるまい・・・。


 この水晶玉にはカヌレ博士の伝言メッセージが録画されている。10日も有れば色々準備は出来るものだ。レベル上げをした後にカヌレ博士の研究所に行って録画してきたのだ。


「すまんがこっちには証拠がある。これは古代魔法大国期のカヌレ博士が残した伝言メッセージだ。2千年前には、今回の問題が起こることを既に予見しておった。こんな大事なことを、何故魔法王国の末裔という王家の者が、誰一人知らんかったのか疑問に思うがの?」


 そう言って水晶を再生させた。そこに映ったのは、初めてカヌレ博士の研究所へ行った時の伝言メッセージだった。


 家臣達はその映像を食い入るように見続けた。そしてメッセージが終わると力を失ったように椅子へもたれ掛かってしまった。


 それでも一部の家臣は、作り話だとか、でっち上げだと言う者もいたが、俺はその言葉とは裏腹に、トドメとばかりに一冊の本を取り出した。


「申し訳ないがまだ証拠はある。この本は魔法王国の図書館に収蔵されていた歴代魔法王国の代表者のリストだ。ここにある通り、魔法王国は国王政では無く代表制だったと言う事だ。」


 そしてその名簿の最後に記された名前はカヌレ博士だった。


 国王はこの2つの証拠を突きつけられ、廃人同様と化していた・・・。「先祖からの口伝は一体・・・」とか「王家はこの先どうしたら・・・」とか。可哀想にも思えたが仕方があるまい。


 第一王子はショックを受けてはいるようだが国王ほどのことは無かった。


「王家が魔法王国の末裔では無かったとは・・・。しかしこれで魔族との因縁も薄れたというもの。国王には申し訳ないが、皆はどう思う?今まで頑なに魔王領の復活を反対してきた理由は、魔法王国との因縁が主たる原因。それが払拭されるとならば、我が国も世界の救済を最優先にするべきでは無いだろうか?」


 家臣達は未だに呆然としている。第一王子の話は頭に届いたのだろうか?仕方なく俺はフォローするべく話を続けた。


「この証拠はあくまでも、ここにいる家臣の皆しか知らんことじゃ。もし必要であればワシ等の魔術師が記憶消去の魔法を掛けてやるぞ?」


 すると第一王子はそれを制止した。


「大丈夫です。我が家臣団はそのようなことで、忠義に背くものはおりません。今はまだ、事の重大性に付いてゆけぬのでしょう・・・。」


 仕方なく国王や家臣達が、正気に戻るのを待つことにした。


 皆が正気に戻るのを待っている間、第一王子がキュリーシアに質問をしていた。魔王領とはどんな所なのかとか、どの程度文化が発達しているのかとか、和やかな雰囲気で会話は進んでいた。


 お互いに文化交流をしようという話にもなっていた。どうやら第一王子は魔王領に興味を持ってくれたようだ。


 国王と家臣達が正気に戻ってからは話はとんとん拍子で進んで行った。


 しかし問題もあった。精霊王を解放した場合、季候はどうなってしまうのか?今のまま維持されるのか?それとも全く違う季候になってしまうのか?


 確かに不安になるだろう。しかしこれも調べてある。


 精霊王が解放されたからと言って、精霊が移動してしまうわけでは無い。数百年単位での、緩やかな変動はあるかも知れないが、気にするレベルでは無いと言うこと。


 ここ最近急激に変化してしまった場所は、精霊が戻って来るので数年以内には元に戻ると言うことを家臣達に伝えた。


 その情報を聞き、家臣達も国王も安心した様子だ。精霊王の解放の日取りなど細かな日程は、後日改めると言う事になった。


 そして、俺は、水晶と、本を国王に渡した。もちろん本はコピーだ。原本は図書館に保管されている。


 もしこれで手のひらを返すようであれば強行突破だ。しかしマーリンもあの場にはいた。第一王子のキュリーシア王女への印象も、良いと言えるだろう。大丈夫だと思いたい。


 そうして俺達は帰りも馬車で送られて宿に戻ってきた。次の会談の日取りはマーリンを通じて早い内に連絡をくれることになった。


 宿に着くとキュリーシアは、半泣きで俺達にお礼を言ってきた。


「今回は本当にありがとうございました!私一人ではこのような結果を招くことは出来なかったでしょう。」


「半分脅しみたいな感じだったけどね~」


 ブリットが冷やかす。


「何を言う。これは大事な交渉カードだっただけだ。」


 俺は我関せずと言いたげに、しらばっくれた。


「まあ、これで一件落着だね~。」


 ブリットがまた要らぬフラグを立てたような気がする・・・


「「「「「ブリット・・・それフラグ・・・」」」」」


「え?私またやっちゃった?」


 さて、最後まで穏便に精霊王の解放へ向かえるのか不安だ・・・。

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