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会談の日程決まる

 マーリンと会って、ルステーゼ王とキュリーシア王女との会談の場を設ける依頼をした日から、4日が経過した。


 マーリンから何時呼び出しが掛かるか解らなかった俺は、常に宿の大部屋の自室で待機していた。


 その間、他の皆はそれぞれのメイドゴーレム達を連れて、観光やショッピングを楽しんでいるようだった。


 チョコロールも当然俺の側から離れない。何やら俺の盾をいじっているようだった。


「チョコロール。他の皆と一緒に行動しても良いんだぞ?」


「え・・・あ・・・いえ・・・この時間を使ってヨーン様の盾を改造させて貰っていますから・・・」


 盾を改造!?一体何をしようというのだ!?


「・・・な、何を改造しているのだ?」


 どもってしまった・・・が、何を改造しようとしているのか気になる・・・。


「え・・・あ・・・ちょうど今完成した所です。この盾に魔力を流すと、その周囲に不可視の防御障壁が展開出来るようにしました。」


 そう言って、その盾を俺に渡してくれる。魔力を使った事は無いが、うまく扱えるものだろうか?そう心配をしながらも、盾に力を込めてみる。


 すると、盾を中心にうっすらと光る、光の盾が自分の盾を中心に広がった。範囲は元の盾を倍にしたぐらいだろうか?


「ま・・・魔力を込める量によって、その不可視の盾の大きさが変わります。強度はそのラージシールドと同等なので、お役に立つかと思いまして・・・。」


 いやはや、チョコロールは宿に滞在していた時間を使って、魔法の防具を作ってしまったというのか・・・。


 それよりも、役に立とうとするその姿勢に、俺自身チョコロールを愛しいと感じてしまった・・・。


「チョコロール。この盾は大事に使わせて貰うぞ。ありがとう。」


 そう言って、つい頭を撫でてしまった。


「あ・・・いえ・・・お役に立てて光栄です・・・。」


 チョコロールは顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。端から見れば似た身長のドワーフと若い娘だ。怪しい事この上ない。


 そんな、端から見れば怪しさMAXで、イチャ付いているようにしか見えない現場を目撃していた人物がいた。いつの間にか扉は開いていた。


「んっ!・・・んんっっっ!ゴーレムとイチャ付いてるとこ申し訳ないんだが、そろそろこっちに気付いて貰えないだろうか?」


 そう言って声を掛けてきたのはマーリンだった。


「可愛い娘が良い事をしたんじゃ。褒めて当然だろう?」


 まさか、現場を目撃される事があろうとは思いもしなかった俺は、内心焦っていたが、バレないように気を付けて言葉を発した。


「まあそれは良いさ。それより国王との会談の日程が決まったよ。10日後だそうだ。」


「そりゃあまたずいぶん待たせるな・・・国王の腹は決まったのかの?」


「いや、ただ、ヨーンのもたらした情報のお陰で、魔王領の復活容認派が出てきたのは間違いない。まだ少数だが、このまま他国の領土が荒廃していけば、自国の風当たりが強くなる。それよりも文化を持った魔王領を認めてしまえば、これ以上の問題は解決するだろうって意見だ。」


「と言う事は、反対派はワシの言葉は信じられぬと言う事か・・・。」


「まあそうなるね。」


「その会談には、ワシ達も実際に魔王領を見てきた者として、参加させて貰えるのか?」


「必要とあれば席は用意するよ。」


「では、そのように頼む。」


「マーリン殿はどうするのだ?」


 俺はマーリンの・・・と言うより冒険者ギルドとしての立ち位置が気になった。


「私は司会進行役さね・・・」


 嫌だけど仕方が無いと、付け加えた。


「当日は迎えの馬車が来るはずだ。」


「10日も待たされるのなら、色々準備した方が良さそうだのう・・・。」


 俺は髭の無い顎を擦りながら考えを巡らせる。


「なんだい?何かヤバい事を考えてやしないだろうね・・・?」


 マーリンは疑いの目をこちらに向けてきた。


「いや、10日も待たされるのであれば、お相手も何かと準備をしとると思うてな?だったらこちらも、準備をしておいた方が失礼が無いかと思うてな。冒険者に出来る準備など、たかが知れとる。心配するな。」


「あんたが言うと、何かしでかしそうで怖いんだよ。」


「失礼な。ワシは基本、平和主義者だ。」


 そう言って、話を終わらせた。



 夕方にはパーティ全員が宿に戻って来た。夕食の席で俺は、昼間マーリンから会談の日程が決まった事を報告した。


「キュリーシアがここに居る事を知っているはずなのに、2週間も待たせるって・・・。」


「まあまあ、こうして皆さんのおかげで会談の場を作って貰えただけでも僥倖な事ですから。」


 ブリットは憤慨している。他の皆も同様のようだった。それでもキュリーシアは会談の場が作られた事を喜んでいた。


「それにはワシも皆に同感じゃ。・・・でじゃ、10日も待たされるのであれば、こちらもその間に出来る事をしようと思うのだが、どうだろう?」


 俺は1つの提案をしてみる。


「むーっ!ヨーンがまた何か企んでる・・・。」


ブリットは半眼でこちらを見るが、俺はおどけて見せた。


「いや何、鍛錬じゃ鍛錬。当日何があっても良いように、少しでもレベルを上げておこうと思っての?第4号遺跡辺りで、50階層を目指すのも良いのでは無いかと思ってな?」


「な!?それってレベルをカンストさせようって事!?」


 皆驚きを隠せないようだった。まあ当然だろう。


 しかし、世界が危機に瀕しているというのにもかかわらず、未だに会うのに10日も待たせる意味が解らない。


 ならば、護衛対象であるキュリーシアを、しっかり守れるようにしておく必要がある。それと・・・、1つの思いつきをエステルに聞いてみる。


「その魔法ならあるよ。必要なら覚えておく。」


 ナイスだ!エステルからお墨付きを頂けた。これで準備は整えられる。


 こうして俺達は10日後の会談に向けて、準備を着々と進めていったのだった。


 まず手始めに第4号遺跡で50階層を目指した。大立ち回りで2日間で制覇してのけた。


 もちろん、35階層と45階層の魔鉱石は回収済みだ。


 また40階層と50階層のボスモンスターは地属性のドラゴンだった。サイズは40階層が7mほど、50階層は10mはあっただろうか・・・。


 しかし俺達の戦い方は相変わらずだった。弱点属性の魔法を放ち、弱らせた所を前衛が袋叩きにする。申し訳ないと思えるほど戦力差が圧倒していた。


 また、40階層と50階層には宝箱が隠されていた。中身は古代魔法大国期の金貨やマジックアイテムなどだった。


 今回は冒険者ギルドには報告せず、持ち帰る事にした。なぜなら、エステルが鑑定の魔法を覚えたからだ。これで国に訳もわからず没収される恐れは無くなった。


 また、俺の魔法鞄も限界があるが、こんな時エステルの異空間収納が役に立った。時間がある時に、カヌレ博士の研究所でエステルに鑑定をしてもらおうと思う。


 その後は、カヌレ博士の研究所へ向かった。魔法鞄に収めていた魔鉱石を下ろすことと、エステルが預かっていた宝箱を下ろす必要があったからだ。


 他にもやるべき事があった。皆の武具の性能向上を図る改造をすることだ。


 先日、チョコロールが俺の盾に施したような魔力を消費して効果を発揮する改造をメイドゴーレム達に頼んだのだ。


 防具に関しては、魔力消費による追加効果を防御力・魔法抵抗力アップにしてもらった。


 武器には俺や、エリック、エイナルは装甲無視攻撃を、ブリットは装甲無視に加えて火属性を(これはモンブランとお揃いにする為だろう・・・)、エリックの弓矢には任意の属性の矢を自動装填出来るように、ヘンリクのメイスはインパクト時重量が5倍になるように、エステルは魔法の無詠唱発動と言った具合に魔改造を施した。


 これらは魔力を消費するため、魔鉱石から抽出された魔石でその必要な魔力を補うよう改造された。ここまでで8日経過している。


 メイドゴーレム達が頑張ってくれている間に俺達もここで、王族と交渉するための材料を揃えていった。


 そして10日後、予定通り宿に王宮からの馬車が向かえに来た。全部で13名も居るため迎えの馬車も3台で来たのだった。


 キュリーシアは正装に着替え迎えの馬車に乗り込んだ。俺達はいつもの装備では無く、ごく在り来たりな鋼のプレートメールや革の鎧に普通の武器を装備しての出で立ちだった。


 どうせ王宮に行けば武器は預かられてしまう事になるだろう。そこに大事なオリハルコン製の武具を持ち込むのは、場合によっては国に没収される恐れがある。それを避けるための対策だ。


 馬車に揺られる事30分くらいだろうか?王宮に到着し、待合室へ案内された。案の定、中に入る前に武器は預かると言われ没収された。


 広い待合室には人数分の席が用意されていた。中は広く白を基調とした部屋だった。


 一見豪華に見える調度品が飾られている。それでいて嫌みに感じる事は無く、部屋と調和が取れるよう配置されているように感じられた。流石は王宮の待合室と言った所だろう。


 ブリットはその調度品を眺めながら、


「これ、万が一壊したら弁償料ってどのくらいするのかな?」


 と言って、花瓶を突いていた。


「少なくともブリットの全財産出しても足りんかも知れんな・・・。」


 俺は無闇に触るんじゃ無い。と言いながら脅しておいた。


「げっっ!」


 ブリットは慌てて手を引っ込めた。自分が、どのくらいのお金を持っているか把握しているのだろう。それが全部無くなって足り無いと言われれば、そりゃあビビるだろう。


 そんなやり取りをして暫くすると、メイドがお茶を用意してくれた。それを皆静かに飲みながら、会談の案内が来るのを待ち続けた。


 暫く待つと扉をノックする音が聞こえた。返事をすると扉が開けられた向こうから執事が現れた。


「大変お待たせして申し訳ありません。ただ今、会談の準備が整いました。キュリーシア様、ヨーン様御一行様、会談の間へご案内させて頂きます。」


 執事はキュリーシアのことを王女とは言わなかった。そこに引っかかりを覚えるが、今はそこを突っ込んでも仕方があるまい。素直に従った。


 広い廊下を暫く進み、突き当たりの門が開かれる。中に入るとそこは大広間となっており、大の大人が200人入っても十分余裕のある広さだった。


 その広間の真ん中には大きな長テーブルが置かれており、その長テーブルの奥の方には、既に何人かの人物が席に着いていた。


 真ん中に二つ席が空いている。そこに国王が来るのだろう。


 手前側には誰も座っていない。きっとこちらが我々が座る席なのだろう。席の数を数えると13席ちょうどあった。


 そしてその先客達は俺達が中に入ると、まるで奇異の目で見るように何か囁いている。


「・・・あれが魔王領の・・・」


「・・・何て禍々しい角・・・」


 聞こえてくる声に好意的な者は無かった。キュリーシアにも聞こえている事だろう。


 俺達はキュリーシアの人柄を知っている。正直腹が立ったが、ここで暴れるわけにも行かない。


 俺は意識して、この声の主達は噂にしか耳を傾けない、人族らしいものだと可哀想な者だと感じるよう心がけた。


 そして案内された席に着き国王が来るのを待った。真ん中にキュリーシア、その両サイドを俺達、大外をメイドゴーレム達で固める布陣だ。


 さっきの人族の会話で俺は腹を決めた。ここは会談の場では無く、戦場なんだと・・・。

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