遺跡攻略、そして王都ルステーゼ帰還
第5号遺跡を攻略した俺たちは、一気に第4号遺跡、第1号遺跡、第6号遺跡、第2号遺跡、第3号遺跡と攻略していった。
全てが順調という訳には行かなかった。
ブリットが苦手としている第2号遺跡では、30階層まで順調に進んでいた。
もちろんエステルの魔物よけの魔法のお陰で、その前の第6号遺跡ではボスモンスターまで敵と遭遇しなかった。
ブリットも30階層まで敵と遭遇し無かった事で余裕が生まれていた。
「もうここまで来れば、ボスモンスターまで大丈夫でしょ!」
と、ブリットが言ってしまった。
「「「「「あっ!それ今言ったらフラグ・・・!」」」」」
と、全員が言いかけたのだが、時既に遅し・・・。見事にフラグを立ててしまった後だった。その直後、通路の角を曲がった先で、大型のムカデに出くわしたのだった。
それまで後ろ歩きで余裕ぶっていたが、ムカデに接触してしまい、ゆっくりと振り向いてそれを見上げた瞬間、ブリットの尻尾が3倍くらいに膨れあがって、フロア全体に響いたのでは無いかと思うぐらいに、ブリットが悲鳴を上げたのは言うまでも無い。見ていて可哀想だった・・・。
「ボクのマスターにっっ!!」
と言って、硬直したブリットに変わって、速攻でパートナーのモンブランが、その巨大ムカデを切り刻んでいた。
逆に第3号遺跡で大型のカエルが出現した時に、前は「気絶する自信がある」と言っていたエステルが、積極的に攻撃魔法を放っていたのは印象的だった。
ただこちらも、ファイヤーアロー15連射を放っていたのは過剰攻撃では無いのかとも思ったが、倒し終わった後エステルが、
「もうカエルは大丈夫!」
と、鼻息を荒くして豪語していたが、それは皆、温かい目で見守る事とした。
もちろん第25階層の隠し扉は押さえておいた。おかげで魔鉱石は1tを超えた・・・。この魔鉱石は俺達のため、馬車のためにも有効に使わせて頂こう。
30階層のボスモンスターであるドラゴンに関しても、弱点属性を利用した上位魔法と、圧倒的前衛の戦力とレベルで危なげなく討伐していった。
最後の第3号遺跡の精霊王の欠片を確認して、転移ポータルの登録を無事に終わらせた俺達は、冒険者ギルドの出張所へ行き冒険者カードの更新を行った。
最終的に今回の遺跡行脚でレベルは66になった。
ここまでで11日の期間が掛かった。今夜は第3号遺跡にある宿に宿泊して、明日王都ルステーゼに向けて出発する。
遺跡巡り最後の夕食となったこの日は、少し豪勢におこなった。そして俺が音頭を取る。
「この11日間の遺跡巡りお疲れ様!!」
「「「「「おつかれ~~~!!」」」」」
そして、それぞれが持つジョッキを皆交互に打ち鳴らして、お互いの苦労を労った。
「いや~・・・第2号遺跡のムカデには参ったわ~・・・」
ブリットは、今でも思い出すと鳥肌が立つと言わんばかりに、自分の体を抱きしめていた。
「「「「「あれはフラグを立てたブリットが悪い。」」」」」
みんなで総突っ込みを入れる。キュリーシアは、その突っ込みに置いてけぼりだ。
「え~!だって第6号遺跡じゃ、ボスモンスターまで遭遇しなかったじゃん!」
ブリットは納得がいかん!とばかりにエール酒をあおってから、パートナーのモンブランに同意を求めた。
「そうですよ!あの時ボクが、もっとしっかりと注意していれば良かったんです。」
モンブランは自分のせいで、ブリットが危険な目に会ったと言わんばかりに、反省を始めてしまった。
「ほれ、モンブランが自分のせいだと言い始めてしまったぞ。」
俺がブリットに目で促した。するとブリットは、
「あ~・・・ゴメンゴメン。今回のは私が油断しすぎただけ。モンブランは何も悪くないよ。」
「かわいいな~も~!」とか言って抱きしめていた。
今ではメイドゴーレム達も一緒に食事を取るようになっている。食事と魔鉱石を併用する事で、エネルギーの消費が抑えられる事が解ったからだ。
食事をしなかった日は魔鉱石のエネルギーを消費して、食事をした日は食事の分が先に消費されるというのだ。
ならば折角なので皆で食事をしようという事になったのだ。
「今回は2列目を担当してくれた、エクレアや、ガトーショコラにモンブランもご苦労だったな。頑張ったが結構な数を2列目に任す事になってしもうた。」
俺がそうお礼を言うと、
「いえ!そんな仰るほどこちらには来ておりませんでした。」
とエクレアは言う。
「そうそう、あれじゃあ全然物足りない感じ?」
とガトーショコラはもっと回して貰っても良かったと、言わんばかりだ。
「ボクたちがしっかりサポートするよ!」
モンブランはブリットに抱きしめられたままの格好で力こぶを作るポーズをした。
そんな賑やかな食事は遅くまで続いた。
翌日、予定通り王都ルステーゼに向けて出発した。道程は2回の野営を行い、その翌日の昼前には到着する予定だ。
馬車は快適に進み1日目の野営を行い、2日目の夕方前にも野営を行った。いつものように俺は設営の準備をし、チョコロールがその手伝いをしてくれる。
狩りは最近エイナルが担当している。ブリットは料理に専念するためだ。薪拾いはエリックが行った。
火をおこすために近くの枝を拾い集めエステルの火魔法で火をおこす。その内にエリックとエイナルが戻って来た。今夜はイノシシ料理になりそうだった。
「少し聞いて欲しいんだが・・・。」
そう言って皆の視線を集める。そして話を進めた。
「明日の昼前には王都ルステーゼに到着する。宿に馬車を預けたら、皆は自由にして欲しい。ワシは冒険者ギルド本部に行ってくる。そこでギルドマスターのマーリン氏に会えれば、魔王領でのことを報告をする。会えなければ伝言を頼む事になる。何せ何処まで話が進んでいるか解らん。」
「もし最悪のケースになった場合は?」
ヘンリクは不安そうに尋ねてくる。
「そん時は黙って世界をくっつけて、ワシ等は魔王領へトンズラだな。」
俺は悪びれもせず、そう言った。
「そうなった時は歓迎しますわ!」
キュリーシアは何の疑いも持たない目でそう言った。
「まあ、あくまで最悪の場合だがな。理想は双方納得の上で、共存に道を進んでくれる事だがの。」
俺としても、そうなってくれる事を切に願う。その為にもマーリンに会って、その辺がどう調整されているかが鍵になるだろう。
そして、翌日の昼前に王都ルステーゼに到着した。
いつも使っている宿に馬車で乗り着けて宿泊の手配を済ませる。何日滞在するか解らない。なのでマーリンとの約束の期限イッパイの2週間で大部屋3部屋を取った。これも必要経費だ。
皆には自由行動を伝えて、俺は冒険者ギルド本部に向かった。
「ハレックの街で冒険者をしているヨーンと言うが、ギルドマスターのマーリンさんは居るかい?受けた依頼の報告で来たんだが。」
そう言って冒険者カードを見せる。すると受付の女性は俺のカードを確認して、驚いている様子だった。多分レベルの記載があり得ない数字だからだろう。
「しょ・・・少々お待ち下さい!」
そう言って奥へ下がった。暫くするとマーリンが現れた。よく見ると目の周りにクマが見える。相当苦戦しているようだ。
「話は出来るか?」
「ん?ああ、応接室まで来てくれ。」
そう言って応接室へ案内された。
「で、魔王領はどんなだった?」
マーリンは唐突に訪ねてきた。
「引っ越したいくらい良い所だったわい。」
「そんなにか!?」
「ああ。一緒になったからと言って、何の問題も無いだろう。返って、こっちの国の方に問題が多すぎる気がするがの・・・」
「それはどう言う意味だい?」
「魔王領は人族との争いを知る者は、ほとんど居ない。ワシ等が街を歩いていても、何の問題も無く受け入れてくれた。それも、コボルトやゴブリンやオーク、それにオーガも普通に生活しておる。それ以外にも獣人族や亜人まで居た。」
「そりゃあ参ったね・・・。」
「その参ったとは?」
「こっちは、今でも魔王領は危険な存在だと信じて疑っていない。だから気候変動で死ぬか、魔物に蹂躙されて死ぬかの2択しか出来ないと、決めつけている有様さ・・・。」
「なら、今言った事を報告すれば良い。どちらにせよ、魔王領は陸の孤島だ。各国とは山脈で隔てられている。山を越えてまでの侵略はあり得ない。何よりもキュリーシア王女と直接会って話をすれば、お互い会話が成立する事は明白だと思うがの?」
「その国王がビビって動こうとしないんだ・・・」
「なら言ってやれ、王家が魔法王国の末裔では無い動かぬ証拠を見付けたと。それをバラされたく無かったら会話の席に着けと。」
「なに!?それは本当か!」
「ああ、ワシ等はカヌレ博士の研究所経由で、魔法王国の都を見てきた。図書館にも入った。そこで知ったが、魔法王国は国王制ではなく代表制だ。何年かに一度その年の一番魔法に長けた者が代表になる。そもそも何故優れた機能を持つ浮遊都市があるのに、地上で国王をしとるんじゃ?今言った事は口外無用だぞ。」
「アハハハハハッ!そんな話信じられるかい。」
流石のマーリンも信じられ無かったのだろう。疑って信じようとしない。
「ワシのこのバトルアックスとプレートメール、インナーの素材が解るか?」
そう言って小手の部分を尽きだして見せた。
「これは!オリハルコンかい!?それにこのインナー・・・今まで見た事が無い材質だね・・・。」
「これはカヌレ博士の研究所で作った代物じゃ。このバトルアックスなど一晩で完成させおった。そんな設備が空の上にあるというのに、これでも信じられぬか?」
「まあ、面白いカードが出てきたのは、間違いなさそうだね。それでルステーゼ王が、重い腰を上げるかどうかは、カードの出し方次第ってとこか・・・。」
「ワシは正直言うと、魔王領と他国は交流を持たん方が良いと思っとる。」
「そりゃ何故だい?」
「魔王領は2千年掛けて独自の文化を創った。こっちの世界とは全く違う文化だ。交流を持つにはあまりに違いすぎる。」
「そんなに違うのかい?」
「ああ。違うな。これは行った者にしか理解出来ん事じゃ。」
「そんな言われ方をすると興味が出て来るね。」
「まあ、宿は2週間取っておる。それまでにはある程度目星は付けて貰いたいものだのう。」
「そっちもここまでやってくれたんだ。最後まで足掻いてみせるさね。」
「期待しとるぞ。」
そう言って、マーリンとの会話を終えた。
今回の話を元に意見が反対派と賛成派に分かれる事を祈ろう。そうなればまだチャンスはあるように思える。しかし、最後まで反対派のみで終始してしまった場合は・・・。
考えたくないな・・・。とそう思った。




