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第3号遺跡は鬼門なので武器を新調する事にした!

 魔王領の視察を始めて1週間と3日、予定より早いが視察の内容も概ね順調だったので切り上げる事にした。


 エリックも上位精霊6柱との契約を、魔王領にある精霊術士屋で果たしたようだった。


 目的は残りの1ヶ月で全ての遺跡の30階層にある転移ポータルと登録する事だ。


 出発当日、俺たちは、大量のオリハルコンを譲り受けた。本来購入する予定だったのだが、魔物の集団討伐の謝礼と、魔王様の魔力枯渇症回復への対価だそうだ。その他にも、醤油など、此方にしかない懐かしの調味料を、いくらか分けてもらった。


 その魔王様も今は回復に向かっており、あと少ししたら動けるようになるので、それまで滞在したらどうかと引き留められもしたが、遺跡巡りが間に合わなくなる恐れもあったので、丁重にお断りをした。


 そして、俺たちは、キュリーシアを連れてまた向こうの世界へ戻るために馬車で移動を開始したのだった。キュリーシアに誘導されて人気の無い場所まで馬車を移動させていると、


「この辺で大丈夫でしょう・・・。」


 そう言って、キュリーシアは馬車を止めさせた。


「ではまたこれを使ってくれ。」


 俺はそう言って魔石のキューブを持たせて次元転移の魔法を使って貰った。


「何から何まで、ありがとうございます。」


 キュリーシアは頭を下げるが、


「礼など気にするな。さっきは十分すぎるほどの礼を頂いた。」


 そう言って、俺はとぼける事にした。


 次元転移が完了すると、そこは不毛の大地と呼ばれる場所だった。さっきの景色が全く違う景色へ変貌してしまっていた。


 続いてゲートの魔法となったのだが、そこで俺はストップを掛けた。


「キュリーシア、ゲートの魔法は行った事のある場所なら何処でも開けるのか?」


「はい。魔法的結界が張られていなければ大丈夫です。」


 と言う回答だった。俺は思案した。そしてエステルの確認をした。


「エステルはゲートの魔法は使えるようになったのか?」


「1日1回なら使えるよ。それ以上の回数は今のレベルだと無理かな?」


 エステルはそう答えた。ならばと皆に相談する。


 次にメイドゴーレム達に確認する。


「これだけのオリハルコンがあれば皆の武器を作り替える事は可能かの?作り替えるとして何日ぐらいで出来る?」


 するとエクレアが代表して、


「十分すぎる程の量です。2日ほどあれば十分です。」


 と、簡潔に回答した。そこで皆に相談を持ちかけた。


「のう、みんな、第3号遺跡から順に巡ると女性陣が精神的ダメージを負う可能性が高い。さっき頂戴したオリハルコンの使い道も考慮して、一度カヌレ博士の研究所へ行かないか?」


「そこでさっきの武器の作り替えになるわけ?」


 ブリットが確認してくる。


「そうじゃ。準備が出来しだい、第5号遺跡から攻略を開始する。というのはどうじゃ?」


 皆にも確認をする。暫く沈黙が流れたが、最終的に賛成を得る事が出来た。


「キュリーシア、申し訳ないが、ゲートの魔法はカヌレ博士の研究所へ繋がる森の入り口へ開いてくれんか?」


「そう言う事ですね。解りました。」


 キュリーシアはそう言うと魔法を唱えた。すると馬車の目の前に黒い空間が出現する。


 この経験も2度目だ。ためらう事無く馬車を進入させると同時にあの迷いの森に出て来る事が出来た。


 馬車はそのまま森の中へ進入し、魔方陣のある場所まで移動した。そして魔方陣からカヌレ博士の研究所へ到着を果たしたのだ。


「しかし、このゲートという魔法は凄いのう・・・8日の行程を一瞬で移動してしまうとは・・・」


 俺は素直に感嘆の声を上げた。


「その代わり私も1日1回が限度です。2回使おうとすれば頭痛が酷くなり何処にゲートが開くか解らなくなってしまいます・・・。」


 やはり便利な魔法ほどその負担は大きいと言う事か・・・。そんな事を思いつつも馬車は一番大きな建物の前までやってきた。


「では、メイドゴーレム達にあとは頼めるかの?」


「「「「「「お任せ下さい。」」」」」」


 そう言うと、施設へ全員を誘導してくれた。そこで、大量のオリハルコンと各自の武器を預けた。


 メイドゴーレム達は複数ある水槽へ、それぞれのマスターの持っていた武器とオリハルコンを入れていく。


 チョコロールは俺の武器を持ち上げる事が出来なかったので自分から手伝ったが・・・。


 そして、各メイドゴーレム達はその水槽の操作パネルを操作していく。


 するとそれぞれの武器とオリハルコン素材はその水槽の水に溶けて無くなってしまった。


「これで準備は整いました。明日の朝までには全て完了致します。」


 そうエクレアが説明してくれた。武器が新調させるまでの時間を使って、魔石のキューブの補充も行った。今回7つも消費したから念の為だ。


 こちらも、皆と、21階層から30階層までの最短ルートを地図を使って割り出す作業を行っていた。


 この地図は、遺跡を作った魔法王国が保管していた物だ。そう言う意味では攻略本みたいな物で、25階層の隠し扉の位置や、精霊王の欠片のある場所、30階層のボスモンスターまで全てが載っていた。


 第5号遺跡で30階層の適正レベルまで上げてしまえば、あとはエステルの魔物よけの魔法で、28階層までは偶然による遭遇さえなければ、踏破する事も可能だろう。


 そんな攻略でウンウン唸っていたら、ブリットが声を掛けてきた。


「ねえ!夕食食べにローランの街に行かない?」


 周りを良く見渡してみれば日が傾き始めていた。この研究所でも食事は出せる。しかし流動食みたいな物だった。


 昼は干し肉を囓っていたが確かに腹は減っている。どうした物かと考えていると、


「ここは私たちで見ていますので、行ってきては如何でしょう?」


 そうエクレアが言ってくれた。


「任せてしまって良いか?」


 俺は少し申し訳ない気持ちになった。


「あ・・・ど・・・どうぞ。ここは私たちに任せておいて下さい。」


 チョコロールも背中を押してくれた。


「せっかく行ってこいと言ってくれたのだお言葉に甘えよう。」


 そう思い、


「では、ローランの街へ行ってこようかの」


 そう言って、皆を連れ出して馬車でローランの街へ夕食を取りに向かった。


 ローランの街に着くと丁度夕日も沈み、繁華街の賑やかさが別の物に変化し始める頃合いだった。馬車を南の馬車預かり所へ預け、歩いて適当な飲食店を見付ける。


 やはりここは海産物がメインとあって、魚料理やエビ、イカ、タコ料理なども出ている。魚料理も、蒸し焼きや、素揚げした物など様々だ。


 しかし、生食だけは存在していない。刺身があれば魔王領で手に入れた醤油が効果を発揮するのに!と思いつつも、注文した料理に舌鼓をうつ。


「しかし、装備を変えるって発想、良く思いついたね!」


 エリックがその発想に良く行き着いたと言わんばかりに食いついてきた。


「いや、最初は第3号遺跡からスタートすると次が第2号遺跡と、問題が多いと思っておった。で、5号遺跡へ行こうかと思っても、キュリーシアは第5号遺跡は行った事が無いから、ゲートでは行く事は出来ん。もし、エステルがゲートの魔法を覚えたなら、ついでにカヌレ博士の研究所で武器を新調する時間が取れるんじゃ無いかと思ったんじゃ。」


 俺はどうして、そうしたのかをそのまま皆に伝えた。


「確かにそうして貰えれば、私の魔物よけの魔法があればかなり戦闘は押さえられるから、昆虫とかカエルとか見ないで済みます・・・。」


 エステルは同調してくれた。


「それに武器が新しくなれば、皆も戦いやすくなるだろ?」


 オリハルコン製の防具になっただけでも戦いやすくなったのだ。これに武器もオリハルコン製になれば今後も戦いやすくなる。何せ30階層の適正レベルは60なのだ。


 本来の人族には到達する事の出来ないレベルを目指す事になる。その時に武器や防具が一般的な物だと、武具そのものが、使用者に耐えられなくなってしまうかも知れない。


 そんな危惧が頭をよぎったのだ・・・。


 多分、オリハルコン製の武具はこっちの世界にもあるだろう。だが見かけた事がない。


 ヤンの武具店の親父さんの話では、伝説の鉱石とまで言われている代物だ。それが魔王領では普通に手に入った。


 と言う事は、最初の頃に手に入れた宝箱の中にもオリハルコン製の武具は入っていたとみていいだろう。


 それを国で管理するべき魔法の品として、俺たちが見ていない事を良い事に没収したとみる方が自然な感じがする。


「ブリットも新しい武器でザクザク敵を倒してくれよ?」


 俺はブリットに話を振った。


「・・・ん?まかせなさ~い!」


 ブリットは魚料理を黙々と食べていた。ひょっとして魚料理に飢えていたのか?よくよく考えると、ここへ来ようと言いだしたのもブリットだし・・・。


 もしそうなら、ブリットも十分な補給が出来たのかも知れない。そんな事を思いながらも明日からの攻略を、頭の中で思い描くのだった。


 皆の食事も終わり、ローランの街を後にした俺たちはまた来た道を引き返した。


 迷いの森から、転移ポータルを使い、カヌレ博士の研究所へ戻ったのは良い時間だった。


 馬車をいつもの所へ止めると、メイドゴーレム達が迎えに出てきてくれた。


 カヌレ博士の研究所は夜になっても敷地内は明るい。地上からそれらしき方角を見ても見付ける事が出来ないのに不思議な物だ。


「あと少しで武器の方が仕上がりそうです。仕上がりを待ってからお休みになりますか?それとも明日の早朝にでもお渡しした方がよろしいですか?」


 エクレアがそう言ってきた。大分早い仕上がりだ。きっと俺たちがでている間もこまめに調整をしていたのだろう。


「お前達無理してないか?」


 少し心配になって声を掛けてみた。


「心配には及びません。明日からは連戦になるのです。その為の武器の調整は必要不可欠です。」


 冷静に回答されてしまいました。言っている事が正論なだけに反論のしようも無い・・・。ならば、


「仕上がり具合を確認してからの方がゆっくり休めるかな?」


 そう言って皆を見渡す。・・・皆同意のようだ。


 それから程なくして、皆の新しい武器が出来上がったと報告が来た。


 各自、自分の新しい武器を確認する。見た目は今までと同じだが大きく変わった点は刃の色が金色に輝いている事だ。


 俺のバトルアックスも、ずしりとくる手応えは変わらないが、隕鉄と混ざり合ったオリハルコンが夜空に浮かぶ星のように見えた。刃も見事な鋭さだが、刃こぼれしそうにない硬度を感じさせる。


 皆も満足そうに自分の武器を素振りしている。皆満足そうだ。魔力付与についても従来通りだというが、効果は高めてあるという。


エステルの魔法の杖に至っては、魔法詠唱短縮の効果を付与されているそうだ。


 上級魔法を手に入れたエステルが、どれほどの火力を手に入れたのか末恐ろしい物である。


 こうして、新しい武器を手にした俺たちは仮眠に入り、明日に備えた。

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