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魔改造馬車を使って魔王領まで大移動!

 カヌレ博士の研究所を後にして、俺たちは一路第3号遺跡を目指す事にした。


 キュリーシアが、この第3号遺跡の近くから来たと言うからだ。キュリーシアはそこで姿を消す魔法を使って、馬車で王都ルステーゼに来たらしい。


 野営を含めつつ途中、ハレックの街で1泊する予定だ。


 この間2日間の道程だったが、馬車の快適性がさらにパワーアップしているのは言うまでもない。


 板バネにショックアブソーバーが装備された事で、衝撃の吸収がさらに増した。また軽量化と馬への疲労軽減効果により速度も増した。窓も強化ガラスがはめ込まれ、ボディーの歪みも剛性アップでほとんど起こらないのだ。


 エアコンも完備して、車内は快適空間そのものだ。


 また誰でも使える異空間収納は、見た目はクーラーボックスだ。蓋を開けるとそこから任意のものを取り出す事が出来る。何より凄いのは重量制限が無い事だ。古代魔法大国期の遺産恐るべしだ!


 そして、俺たちの装備も充実した。


 俺のプレートメールのセットはミスリルから、オリハルコンと魔鉱石の複合素材製になった。インナーには防刃・防魔用、特殊繊維製が使われている。隙間への攻撃などもこれで防いでくれるという。


 他の皆も同様に、防刃・防魔用、特殊繊維製をベースとしたインナーに、皮鎧とは名ばかりのオリハルコンと魔鉱石の複合素材を、防刃・防魔用特殊繊維でサンドした代物になっている。ブリットなどは、


「凄く軽くなって動きやすい!」


 と、喜んでいた。


 付与魔法もそのままとなっているため、更なる防御力の向上と軽量化が図られた事になる。


 武器は製作の期間的な問題で据え置きとなった。それでも伝説級の防具を揃えたようなものだ。


 これ以上を探そうとすれば、それは王宮の宝物殿にでも行かなければお目に掛かれないような代物だろう。


 そうそう、エステルだが、魔法王国の都市部にあった図書館で、上級魔法書を見付けてきたようだ。今はその上級魔法書を読みふけっている。


 まず最初に覚えた魔法が異空間収納だというのだから、彼女の異空間にはどれほどの魔法の本が収蔵されているのか・・・。


 ハレックの街には夕方には到着出来た。行きにハレックの街からローランの街に到着したのが夕方だった事を考えると、それよりも距離があった今回、夕方に到着出来たと言う事はやはり、馬車の速度が上がっている。にもかかわらず馬には疲れた様子は見られない。


 馬車を「鹿の角亭」に預け、皆は一端各部屋へ戻っていった。俺はその足で、「ヤンの武具店」に顔を出した。


「お!帰ってきたか・・・って!その防具はどうした!」


 親父さんは俺の装備している鎧が変わっている事に一目で気が付いた。


「すまん。いろいろあって、ミスリルの鎧がオリハルコン製になった・・・。」


「どんな理由があって、ミスリルがオリハルコンになるんだ!?」


 まあ、そう言われるとは思っていたが・・・。

 親父さんは呆れかえっている。


「詳しい話は出来んが、せっかく親父さんが作ってくれた鎧が変わってしまったもんだから、報告した方が良いと思っての・・・。」


「う~ん・・・元は俺の作った鎧そのものだな。」


 親父さんは俺の付けている鎧を見回してみる。


「あくまで元の鎧は親父さんの鎧だ。それは間違いない。」


「しかし、伝説の鉱石をこうも惜しげも無く使った鎧とはねえ・・・。って、鎖帷子も変わってねえか?」


「これも耐刃・耐魔用特殊繊維というらしい。」


「へえ・・・。こんな素材見た事ねえな・・・。」


 親父さんは驚きっぱなしだ。それもそうだろう。この素材は全て魔法王国時代の代物だ。今の時代では作る事は出来ないのかも知れない。


「明日には王都ルステーゼに向かう。そのあとは暫く戻れそうに無いから顔見せだ。早ければ一月ぐらいで戻ると思う。」


「まあ、ひと月位の出っ放なしは、今に始まった事じゃ無いしな。気を付けて行ってこいよ!」


「ああ、今度は今までに行った事が無い所に言ってくるから、土産話を楽しみにしていてくれ。」


 そう言って俺は「ヤンの武具店」を後にした。


 「鹿の角亭」へ戻ると、皆が下に降りていて夕食の注文をしていた。俺も慌てて注文をする。と言ってもここではいつものメニューとなるのだが・・・。


「明日は王都ルステーゼに向かうが、そこでも1泊する予定だ。そこでワシは冒険者ギルド本部のマーリンに中間報告を行う。翌日には第3号遺跡に向かうからゆっくり出来る時にはゆっくりしておいてくれ。」


 俺がそう言うと、


「馬車もチョコのおかげでますます快適になったし、何の問題も無いっしょ。」


 ブリットは、余裕余裕!と、手をヒラヒラさせて言う。


「まあ、確かにチョコロールのおかげで、さらに快適になった。こんな凄い馬車は王族でも持っておるまい。」


 俺もブリットの意見に賛同した。するとチョコロールは、


「あ・・・いえ。私は皆さんの要望を形にしたまでです。皆さんの発想が素晴らしいんです。」


 そう言って恐縮した。


「発想したのはワシ等かも知れんが、それを実現出来るか出来ないかは別物だ。チョコロールは出来ないと思っておったものを、実現させてくれた。そこは誇って欲しいぞ。」  


 チョコロールは顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。褒められ慣れていないのだろう。


「それに他のメイドゴーレム達も、今回これだけ素晴らしい防具を揃えてくれた。大事に使わせて貰うぞ。」


 そう言って、他のメイドゴーレム達にも感謝を告げた。すると、他のメンバーも拍手してそれを称えた。


「いえ、我々はマスターのために出来る事をしたまでです。」


 代表してエクレアが答えるも、他のメイドゴーレム達も恐縮してしまっていたが、ブリットだけは恐縮していたモンブランに頬ずりをしながら褒めていた。


 そうこうしている内に料理や飲み物がテーブルに並ぶ。カヌレ博士の研究所での一仕事を終えての事だ。乾杯の音頭を取った。


「取りあえず、1つめの依頼は完了した。あとは王都ルステーゼに行って、冒険者ギルド本部に報告するだけだ。お疲れ様。かんぱい!」


「「「「「かんぱーい!!」」」」」


 エール酒や果実酒の入ったジョッキをお互いに打ち鳴らして一気にあおった。何だかんだ言っても一仕事を終えた後の一杯目は特に旨い!(報告が残ってはいるが・・・。)


 その後も何だかんだと夜遅くまでドンチャン騒ぎになったのは仕方があるまい。そのあとの事は自己責任だ・・・。


 翌日、キュリーシアの分のみチェックアウトし、他のメンバーは、ひと月ほどまた戻らない事をマスターに伝えて、王都ルステーゼに向かった。今の馬車であれば3日目の昼間には到着出来るだろう。


「・・・・・ウエエエェェェ・・・ぎもじわるいぃ・・・。」


 そう言って馬車の窓を開けて、顔を出しているのはブリットだ。昨夜はかなり飲んでいた。遅くまで付き合っていたモンブランは、ブリットの席の隣で気持ちよさそうに眠っていた。


「二日酔いになるまで飲むなんぞ、ブリットらしくも無い・・・。」


 今までもそうだったが、二日酔いになるほど酒を飲むような事は無かった。まさかその二日酔い第1号がブリットとなるとは予想外もほどがあった・・・。


「いや、だって・・・。何かテンションが上がっちゃって・・・。うっプッ・・・あまり揺らさないで!」


「これ以上揺れない馬車は無いわ!」


「大きい声もダメ・・・」


 今日の御者はエイナルだった。流石に気を使ってか、少々ゆっくり目の移動だ。それでも他の馬車と遜色ない速度で走っている。


 結局ブリットは午前中はこんな調子だった・・・。


 午後に入りブリットの調子も戻って来たので馬車の速度も増している。


 盗賊団がアジトに使っていた場所の近くにさしかかった時、俺はメイドゴーレム達に地上の神殿で思い当たる場所について確認を取った。


「エクレア、地上の神殿というのはあの奥の事だろうか?」


 そう言って北の山脈の方を指さした。


「そうです。この奥が地上の神殿のある場所です。」


 どうやら正解のようだ。冒険者ギルド本部のマーリンに報告出来る。


 そんな確認を取りながらも、今夜は野営となる。馬車とテント二張りそして暖を囲える場所を見付け、野営の準備をする。


 前回の野営から、狩りと薪拾いは交代制にしている。メイドゴーレム達が同行すると、どうしても食材も薪も過剰供給になってしまうからだ。


 それでも取れすぎた場合は、馬車に備えた異空間収納へ保管する。異空間収納では物の劣化が進まない。実は薪も雨が降った日の野営に備え、二晩分は収納してある。


 夕食を済ませ、暖を取っていると、ブリットが、


「みんな今日はごめんね・・・なんかテンションが上がっちゃって・・・二日酔いなんて生まれて初めてだったわ・・・」


 と、謝罪してきた。


「まあ、行程に遅れが出ている訳では無い。気にするな。反省の分はその身に刻んだんだろ?」


 俺がそう言うと、ブリットは舌を出し、


「この身に刻ませていただきました・・・」


 と言って頭を下げた。


 そのあとは他愛も無い会話し、その日の火の番の順番を決めて、各自仮眠を取った。


 翌日は明るくなると同時に馬車を出し、王都ルステーゼを目指した。もう一晩野営をし、到着したのは3日目の昼だった。


 いつも泊まる宿に部屋を取り、馬車を預けた。俺はその足で、冒険者ギルド本部に足を運ぶ。マーリンに会うためだ。


 中に入ると正面に受付のカウンターがある。受付に挨拶をしてギルドマスターのマーリンを呼んで貰う。暫くするとマーリンが奥からやってきた。


「ヨーンか・・・もう何か解ったのか・・・って、何か鎧が変わってないか?」


「そこは気にするな。でだ、依頼の件だがここではなんだ・・・」


 俺がそう言い淀むと、マーリンも察して奥の応接室へ案内してくれた。


「ここで良いか?」


「構わない。でだ、依頼の1つ、精霊王の欠片の解放の仕方が解った。」


 マーリンは驚いていた。まさかこんなに早く解るとは思っていなかったらしい。


「もう解ったのか?」


 そして、カヌレ博士の研究所で聞いた話をマーリンに説明した。


「てことは何かい?今回の事は魔法王国は事前に察知していたって事かい?」


「そう言う事になる。その為の対策も施していたようだ。」


「あんた達のゴーレムがその鍵になるとはねえ・・・」


 マーリンは何やら考えている様子だ。


「どちらにせよ、このままでは世界が滅びる事になる。ワシ等は明日ここを出発して魔王領へ向かう。実際にこの目で見てみなければ解らん事もあるだろうからな。その間にそっちはそっちで問題の早期解決に当たって欲しい。」


「王族をどうにかしろって事かい?」


「ああ、最低でもキュリーシア王女との会合の席を作って貰いたい。」


「く~っ!タダでさえ会議が紛糾しているって言うのに、魔王領の王女と会合の約束を取り付けろって、あんたはオニかい!?」


「ワシはドワーフだ!状況によっては冒険者らしい解決方法を選択する事になってしまう。出来ればそれだけは避けたい。」


「・・・覚悟をしているって事だね。」


「そう言う事だ。そっちも覚悟をしてくれ頼むぞ!」


そう言って、冒険者ギルド本部を後にした。


 宿へ戻り、夕方までゆっくりした後、皆に声を掛けて夕食を取った。明日はいよいよ第3号遺跡に向かう。その先は魔王領だ。そこで、魔王領の話で盛り上がる事になった。


「ねえねえ、魔王領ってどんな感じ?」


 ブリットは興味津々と言った感じで訪ねてくる。


「魔王領の都はこの王都のように洗練されていません。もっとのんびりした感じですよ。石畳の道も無いですし、建物も石では無く木で出来ています。」


 キュリーシアもどう言ったら良いのかと言葉を濁す。


「何か特産品とかってあるの?」


「そうですね・・・強いて言えばオリハルコンやミスリルの鉱脈がありますね。あと、自然が豊かなとこでしょうか?」


「オリハルコンの鉱脈があるとは凄いな!こっちでは伝説の鉱石らしいぞ?」


 オリハルコンという単語に俺が食いついてしまった。


「そうなんですか?国交が持てれば色々な交流や交易が出来ると思いますが・・・」


 そこでキュリーシアは顔を落とす。


「何じゃ。自分の国にもっと誇りを持て。最初の頃はもっと自信を持っていただろう?」


「いくつかの街を見て、魔王領がまだまだ届かぬ発展を目の当たりにしてしまいましたから・・・」


「そうとも限らんぞ?ワシ等が行って見定めてやるわい。」


 そう言って話は締めくくった。



 翌日は予定通り王都ルステーゼを出発した。第3号遺跡までは2日半の道程である。2回の野営をし3日目の午前中に第3号遺跡に到着した。


「キュリーシア、ここからは君の指示に従おう。何処へ向かえば良い?」


 俺はそう言ってキュリーシアの顔を見る。皆もキュリーシアを見る。すると、


「ここでも次元は繋がっているのですが、人が多すぎます。ここから北の山脈へ向かって馬車で2時間ほど進んだ人気の無い場所へ進んで下さい。」


「解った。人気の無い場所じゃな?」


 そう言って北の山脈に向かって鬱蒼としげる森の中を、ゆっくりと馬車を進めさせた。すると2時間もしないうちにキュリーシアが、


「ここまで来れば大丈夫でしょう。次元転移の魔法を使います。」


 そう言って、準備のため馬車から降りた。俺たちも続いて馬車から降りた。そして、キュリーシアが次元転移の魔法を使おうとした所で、俺は止めに入った。


「キュリーシア、この魔石を使って魔法を使えんか?」


 俺はそう言って、馬車に使う10cm四方で出来たキューブ状の魔石をキュリーシアに渡した。


「こんな貴重な物を使って魔法など・・・。」


 俺は言葉を遮り、


「この魔石を使って魔法が使う事が出来れば、エステルが助かると思っての?」


 実験じゃ実験。そう言って悪戯小僧のように片目をつむって誤魔化した。


「ありがとうございます。」


 キュリーシアはそう言って、はにかんだ顔で頭を下げ、キューブ状の魔石を両手で持ち魔法を唱えた。


 魔法の詠唱が完成し、一際大きな魔方陣が俺たちを包み込んだ。そして一拍の後何の変化も見る事は出来なかった。魔法が失敗したのだろうか?


「何も変わらんようだが・・・」


 俺は不安を胸にそう呟くと、


「いえ、魔法は成功です。」


 そう言ってキュリーシアは俺が渡したキューブを見せてくれた。キューブは3分の2がガラス化していた。


「ここから都までゲートを開きます。」


 そう言ってキュリーシアは続けざまに魔法の詠唱に入った。魔法が完成すると北の山脈の方に黒い空間が出現した。ゲートの魔法なのだろう。皆馬車へ戻りその黒い空間に入っていった。


 ゲートを潜ぐった先は低い丘の上だった。


 そこから見た景色は美しかった。丘の裾を沿うように黄金色の絨毯が広がっていた。よく見てみると、稲のようだ。その稲の畑が一面に広がっていた。丁度収穫の時期を迎えているのだろう。


 こうした景色を見ると、今が秋であると実感として感じられる


「「わあーっ!綺麗!!」」


 ブリットや、さっきまで本を読んでいたはずのエステルまでもが感動していた。

 本当に綺麗な景色だ。その先には稲刈りをする人たちの姿が目に入った。



 ・・・いや人ではない。ゴブリンが稲刈りをしていたのだった・・・。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >そうそう、エステルだが、魔法王国の都市部にあった図書館で、上級魔法書を見付けてきたようだ。 どうやって移動?研究室から転移ポータル?ってゆうか魔法王国の都市部が現存? [一言] >…
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