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カヌレ博士の研究所、そして馬車の魔改造・・・

説明セリフが多くなってしまいました・・・。読み辛いかも知れませんがお付き合い下さい・・・。

 翌日、朝食を済ませた俺たちは、馬車に乗り込み『迷いの森』を目指した。順番で行けば今日の御者はエリックである。


 情報通り、2時間ほど東へ移動した先の海側にその森が見えてきた。暫く進み森の近くまで馬車を進めると、今まで見えなかった森へ向かう道が見えるようになった。


「このまま森の方向へ馬車を進めよう。」


 と指示を出し、馬車を森の方へ向かわせた。道は木を分け入るように一本道になっていたが、暫く進むと森の中央辺りでその道は終わりを告げた。


 よく見るとそこは開けた場所になっており、その中央には転移ポータルらしき魔方陣を見付ける事が出来た。


「あの魔方陣がカヌレ博士の研究所に行く転移ポータルかな?」


 エリックは少し不安げな表情でこちらを見たが。俺としても確証は無い。


「チョコロール。あれで間違いないか?」


「あ・・・はい・・・あの転移ポータルでカヌレ博士の研究所へ行けます。」


 他のメイドゴーレム達も頷いた。


「このまま転移ポータルまで馬車を進めよう。」


 そうエリックに指示を出し、馬車を転移ポータルまで進めさせた。


 中央に馬車が到着すると、転移ポータルが輝きだし、俺たちはカヌレ博士の研究所へ転移した。


 気が付くとそこは真っ白な空間だった。周りをよく見ると青い・・・空の上だろうか?しっかり観察して見ると、白いのは足下の地面と正面に見える空間のみだ。ざっと目視で直径300mはあるだろうか?


 自分達の馬車がいる場所は隅の方だった。馬車を降りようとした時に気が付いた。正面に青空が広がっていた。ここは空中に浮かぶカヌレ博士の研究所と言う事だ。


 俺は降りるのを止め、取りあえず正面に見える一際高い建物を目指すようにエリックに指示を出した。入り口近くで馬車を止め、馬車から降りて建物の中へ入る。


 中央ロビーとでも言えば良いのか、広いフロアに全員が入ると正面に巨大なモニターが出現した。そこには一人の女性が映っていた。


「初めまして。私は魔法王国で魔導機の製作に携わっているカヌレと言う。この映像を見ていると言う事は、2千年後の世界で私の作ったメイドゴーレム達がマスターを得て目覚めたと言う事で間違いないのかな?」


 何故それが解るんだ?と突っ込みを入れたくなったが、博士の話はまだ続いた。


「一方的な話で申し訳ない。2千年経って、メイドゴーレム達がマスターを得て目覚めた事に確信を得ている事に驚いているのであれば、それで間違いないからだ。これから話す事は、この世界の存亡に関わる事態が発生して、精霊王の欠片を集めようとしている者達へ、どうすれば良いのか、その成り立ちと、解決方法を伝える為のものだ。」


 こうなる事は事前にわかっていたと言う事か?


「君たちの時代から2千年前、魔法王国と魔王領が100年にも及ぶ大戦を繰り広げてきた。しかし決着は付かず、お互いに疲弊しきっていた。それでも魔法王国は魔王領に勝利する必要があった。魔王領の連中は弱者から奪う事を平気で行っている。当然人族の限界レベルが50に対し、魔王領の魔物は最大レベルが100まであった。人族は弱者だ。奪われる側にある。それを止めさせる為に、魔法王国はある1つの決断を下したんだ。それは魔王領を別次元へと飛ばす事だった。それを実践する為に我々は、研究に研究を重ねた。しかし最終的に出た結論は、この世界中の魔力をかき集めても、魔王領を別次元へ隔離する事が限界だと言う結論だった。」 


 だが、精霊王の欠片とどう結びつくというのか?


「世界中の魔力をかき集める対象は、精霊にも及んだんだ。その中でも多くの魔力を保有しているのが精霊王だった。魔法王国は6柱の精霊王を強制的に従属させて、その力の一部を切り離し、動力の一部とした。全部を使っちゃうと世界が滅んじゃうからね・・・。そして、魔王領に次元転移の魔法を、領土全域を対象に放ったんだ。そしてその攻撃は見事に成功。魔王領はこちらの世界から隔離する事が出来たと言う訳だ。」


 と言う事は、キュリーシアの使った次元転移の魔法は同一の魔法だったのか・・・。


「しかし、ここで大きな問題が発覚したんだ。隔離出来たのは良かったが、それは魔王領だけで無く、精霊の力も同時に隔離してしまった。この次元転移による隔離を維持する為の魔力は、精霊王の欠片でまかなう予定だった魔法王国としては、精霊王の力が、3分割になってしまったのは誤算だった。精霊王の欠片を隔離維持の為に使い続ければ、世界全体が徐々に疲弊してしまうと結論が出たんだ。そして計算して出たそのタイムリミットが、2千年後と言う訳だ。」


 とんだ誤算があったモノだ。確かに魔王領の横暴は許すべき話では無いが、魔法王国の取った最終手段も頂けない。結局問題の解決を先送りにしただけでは無いか!?


 俺が心の中で憤慨していると、今度は解決方法に話が移ったようだ。


「ここまで話を聞いて憤慨している者もいる事と思うが、当時はそれしか方法が無かったと思って貰いたい。魔王領も次元転移で孤立して、弱者のいなくなった世界でどうしたら良いか、考える切っ掛けになっていればと思っている。2千年という時間が、魔王領の独自の文化が生まれれば、なお良しだろう・・・。」


 本当にそこまで考えていたのだろうか?だが実際に今のキュリーシアを見ていると2千年の歳月を掛けて文化を育んだ事は事実だ。


「さて、ここから話す事は、世界の環境改善とともに、魔王領もこちら側へ戻る事を前提とした話になる。その事を良く踏まえた上で聞いて欲しい。まず、精霊王の欠片は異空間収納などの魔法では持ち運びが出来ないと言う事。また、精霊使いが上位精霊として契約を結ぶ事も不可能だ。唯一運び出せる方法は、メイドゴーレム達の動力炉の補助装置のみとなる。そもそもメイドゴーレムシリーズを開発したのも、動力炉を別に保管していたのも、そこに理由があった。動力炉は各精霊王の波長に同期するように作られている。30階層まで各メイドゴーレム達が、精霊王の欠片の前まで行き格納する。格納が完了したら、地上にある神殿へ行き、精霊王の欠片を同時に解放するんだ。ここまでのプロセスは、各メイドゴーレム達にプログラムされているから、任せると良い。解放すると同時に精霊王の中に欠片は取り込まれる。そうなれば、精霊王は魔王領にある残りの欠片を回収すべく、魔王領ごと引き寄せるだろう。そうなれば、精霊王は本来の力を取り戻し、異常気象などの災害も徐々に戻っていくだろう。」


 まさかメイドゴーレム達に、そんな特殊技能があるとは思わなかった。それに、欠片とはいえ精霊王を格納するとも為ると、その負担は計り知れないのでは無いだろうか?代償も無くそんな事が出来るのか?


 そんな事を考えていたら続きがあった。


「この作戦を実行した場合、メイドゴーレム達の動力炉の負担は計り知れない。私の計算では、精霊王の欠片を格納し、その後解放した場合、その過負荷によって、通常はマスターのレベルの1.5倍ほど出力が出せるゴーレムが、マスターのレベルと等倍まで下がる事になる。要するに、マスターにメイドゴーレム達を所有するメリットが、限界突破だけになってしまうと言う事だ。私としてはメイドゴーレム達を作った者として、この過酷な選択はさせたくは無かったが、限られた時間の中で用意出来る方法はこれしか無かった。許して欲しい。」


 やっぱりあったか・・・だが大した問題でも無いだろうと俺は思っていた。人間と同じように振る舞うメイドゴーレム達を、物としてみている者は俺の仲間達にはいないと信じている。もう彼女たちは『テーブルトーク同好会』の仲間だ。返って、こんな試練のような事をさせるかも知れない事に申し訳なく思う。


 俺は振り向き仲間達の顔を見た。皆思いは同じだと言わんばかりに、顔を引き締めていた。ブリットはモンブランの手を、エステルはパンナコッタの手を強く握りしめていた。


「さて、最後に魔法王国を代表して、今回の騒動に巻き込んでしまった謝罪を込めて、今後この研究所を自由に使って貰って構わない。もし残っていれば転移ポータルで、空中都市も自由にして貰って構わない。何せこの映像が再生されていると言う事は、魔法王国も2千年後には無くなっていると言う事だからね・・・。武具に使える希少金属オリハルコンやミスリル、繊維素材などもある。受け取って欲しい。メイドゴーレム達のマスターになった君たちが、勇気ある行動をしてくれる事を願ってるよ。」


 そう言い終えると、カヌレ博士の映った映像は消えた。何ともまあ言いたい事を言って一方的に切られた電話のような内容だった。


 しかし、事前に解っていた事が多く含まれていたから、最終確認になったようなものだ。


「さて、カヌレ博士の伝言メッセージは聞いたが、これと言って問題になるような事はあったか?」


 俺は皆に最終確認を取った。


「ん~・・・特には無いかな?ただ、メイドゴーレムちゃん達が大変だなぁって思ったけど。」


 ブリットはメイドゴーレム達の仕事が大変だと心配した。


「そこは皆でサポートすれば問題ないでしょう?」


 ヘンリクはそこは皆で助ければ良いと言った。


「ですね。精霊王を解放したあと、僕らとレベルが等倍になるからと言って困る事も無いですし。」


「問題ない」


「もう皆仲間ですよ」


 エリックもエイナルもエステルもメイドゴーレム達は仲間だと強調していった。


「と言う訳だ、メイドゴーレム達も厄介な仕事が舞い込んでしまったが、気負わずに困ったらワシ達を頼ってくれ。」


 そう言って俺たちは、それぞれが契約したメイドゴーレム達に改めて握手を求めた。


 握手を求められたメイドゴーレム達は


「「「「「「こちらこそ。今後ともよろしくお願いします。」」」」」」


 と言って、その手を握り返した。



「さて、本来の用事は今ので終わってしまった感じがするが、この施設を自由に使っても良いという話は貰っても、使い方が解らんな・・・。」


 俺が用途に困っていると、エクレアが、


「この施設の使い方は自分達が解ります。」


 と教えてくれた。そして、


「各遺跡へ向かう可能性が高い事を考えて、皆さんの防具をこの施設にあるオリハルコンや、防刃・防魔用特殊繊維素材で装備を見直してはどうでしょう?」


 と、提案をしてきた。しかし「ヤンの武具店」で人数分作ったら、半月掛かったものが、そんなに早く出来るものなのだろうか?


「もしやるとして、どのくらいで出来るのかの?」


「そうですね、私たちが管理すれば3日もあれば、全員分用意出来ると思います。」


「3日で出来るのであれば問題ないか・・・。」


 周りを確認すると全員うなずく。


「そ・・・それなら私、馬車を改修します。先日話していた内容の改造なら、ここの設備で対応出来ると思いますから。」


「それも可能なのか?」


「は・・・はい。ここの設備は万能ですから。」


 正直驚いた。そんな高性能設備を自由に使って良いとは・・・ここはお言葉に甘えさせて貰おう。


 それから3日間メイドゴーレム達は俺たちの装備を預かって、それを元にして新たな装備を着々と作っていった。


 チョコロールも、馬車に張り付いて色々と装備を追加していったのを見かけた。


 その間、自分達の出る幕は無く、全てメイドゴーレム達にお任せとなった。


 とは言っても何もしていなかった訳では無い。カヌレ博士の伝言メッセージを精査していた。


「精霊王の欠片を集めて解放する場所だが、その場所というのは・・・」


 思い当たるのは一カ所しか無い・・・。しかも各遺跡からほぼ統一距離の位置にある。いわば扇の付け根に当たる部分だ。


「あの盗賊団が使っていたアジトって事?」


 ブリットが訝しげな顔をする。


「マーリン殿も言っておったが、古代魔法大国期の遺跡かもしれないと。」


 調査団も派遣したと言っていた。


「可能性は十分考えられますね。」


 ヘンリクも予想していたのだろう。まず他に思い当たる節も無い。


「だけど、ボロボロだったでしょ?あれで精霊王なんて解放出来るのかな?」


 エステルも心配になったのか会話に加わってきた。


「どちらにせよ、あのアジトの近くを通る。その時にでもメイドゴーレム達に確認してみよう。」


 ルステーゼにも寄る。その時にマーリンに会えればこのことを中間報告としてあげておこう。


 「それと、キュリーシアよ、魔王領へおもむく際に、次元転移の魔法を我々にも掛ける事が出来るというのは本当か?カヌレ博士の伝言から察するに、同一の魔法とみておる。おぬしには、かなりの負担になるのでは無いか?」


 彼女は次元転移の魔法を使って、第3号遺跡辺りからこちらに来たと言っていた。その後、どう言う訳か魔族として捕らわれてしまった。この魔法はかなり負担の大きいものでは無いかと予想している。俺達人数分はキュリーシアに無理が出るのでは無いかと心配になって声を掛けた。すると、


「それは魔王領ごと次元転移の魔法を、使わなければならなかったからでしょう。個人や少人数であれば問題ありませんよ?」


 そう言ってにっこりと答えた。


「そうか解った。あと北の山脈はどうやって越えてきたのだ?」


 次元転移の魔法の事はこれ以上聞いても、やんわり透かされるようだった。あの北の山脈はそもそも道が無い。それを若い女性が、歩いて登れるとは考えにくい。


「行きは、飛行魔法で越えてきました。帰りは自国ですのでゲートの魔法を使う予定でした。」


 事も無げに言っているが、彼女の言っている魔法はどちらも上級魔法だ。若く見えるが、流石は魔王の娘と言った所か?魔法の類いは網羅しているのかも知れない。


「あと、冒険者カードが使えないとなると、現金をいくらか用意しないといかんな・・・。」


 そうなのだ、魔王領には当然冒険者ギルドが無い。いくらか現金を換金して持ち歩く必要があるだろう。そう思っているとエステルが、


「上級魔法の本を買いたいから、現金持ち運ぶのは大変!」


 と言ってきた。きっと俺の魔法鞄を当てにしているのだろう。って待てよ?そこで気が付いた事をエステルに伝えた。


「ここは魔法王国のいわば遺跡だ。上級魔法の本ならあるんじゃ無いか?」


「あっっっっ!!!!」


 その途端、エステルは飛び出していった。きっとパンナコッタを探しに行ったのだろう。目的の本が見つかる事を祈るばかりだ。


 ここから第3号遺跡まではざっと8日間の道程だ。途中、ハレックの街と王都ルステーゼには寄るが、泊まりはしても、滞在はしない。


 最低限の情報収集と不足しがちな食材と調味料が主な目的になるだろう。


 魔王領の食事は心配していない。なぜならキュリーシアが、こちらの食事に馴染んでいるからだ。


 郷土料理と思って挑戦するのみだ。


 その他にも各遺跡の30階層までの地図の入手をし、最短ルートを割り出したりと、入念に準備を重ねていった。


 そこで解った事だが、この遺跡は元々、古代魔法大国期の訓練施設でもあったと言う事だ。


 現在知られているのは30階層までだが、実際は50階層まである。きっと、マスターが弱ければゴーレムも強くは為らない。それを短期間で戦闘出来るようにするために備えた物なのだったのだろう。


 行く事は無い事を願いつつも、念には念をと、50階層までの地図を用意した。


 そんな打ち合わせや準備を行なうなどをしていれば、あっという間に3日が経過していた。


 そして出来上がった装備は・・・


 ヨーンが、オリハルコンと魔鉱石の複合素材で出来たプレートメール、ラージシールド、ヘルムのセット。


 ヘンリクが、オリハルコンと魔鉱石の複合素材で出来たブレストアーマーと、特殊繊維製のインナー。


 ブリットとエリックは、オリハルコンと魔鉱石の複合素材を防刃・防魔用特殊繊維でサンドした皮鎧と、特殊繊維製のインナー。


 エイナルは、特殊繊維製のスーツに、オリハルコンと魔鉱石の複合素材を仕込んだ皮鎧。


 エステルは、今まで使っていた魔法のローブにオリハルコン繊維を織り交ぜ手直しされた特殊ローブ。


 こんな出で立ちとなった。魔法の付与は今までと同じだ。


流石に武器の分までオリハルコンの在庫が足りなかったようだ。それでも十分戦力アップに繋がった。


 また、チョコロールが頑張って馬車の改修をしたのだが、この改造も凄かった。


 足回りにショックアブソーバー装備、馬と馬車を繋ぐハーネスに馬の疲労軽減の付与魔法、車内の一番前に誰でも利用出来る異空間収納ボックスを装備、窓に強化ガラス、車内エアコン、車内灯、魔力補助による車体剛性と軽量化のアップ、などを施してくれた。


 それら魔力を必要とするパーツは、魔鉱石を圧縮加工した、10センチほどのキューブ状の魔石を利用するという。このキューブを所定の場所へセットすれば、この馬車の使用の通常運用で半年は持つという。


 魔鉱石は大量に保有していたので、いくつも魔石を作り異空間収納へ保管した。


 こうしてカヌレ博士の研究所でやれる事をやり尽くし、ここを後にした。次は魔王領の視察へ向かう事になる。

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