第5号遺跡へ・最後のメイドゴーレム
俺たちは、第4号遺跡の研究室で仮眠を取った。早朝、転移ポータルを利用して地上へと出てくる。まだ辺りは薄暗い。しかし第5号遺跡へ向かう定期馬車の御者は準備を行っていた。
「すまん。急で申し訳ないのだが、第5号遺跡へ向かいたいのだが、乗せて貰えるかの?」
そう言いながら御者に馬車の乗車代とは別に、少し多めのチップを握らせる。ちらりとその金額を確認すると御者はとぼけた顔をして、
「しょうがねえなあ・・・特別だぜ?」
そう言って俺たちの乗車を認めた。暫くすると、冒険者達が第5号遺跡へ向かう為の馬車へと集まりだしてきた。
席は満員だ。俺たちは立ち席、または床に腰を下ろし同乗させて貰った。
定刻になり馬車は出発した。順調にいけば午前中には第5号遺跡へ到着出来るだろう。予想通り、お昼前には第5号遺跡へ到着出来た。俺たちは分担して第5号遺跡へ入る準備を進める。
俺は、簡易な掘っ立て小屋の冒険者ギルドの出張所で申請を行い、エイナルは情報収集だ。
ここもまだ遺跡自体が発見されて、2月も経っていなかったはずだ。
俺が冒険者ギルドの出張所から出てくると、エイナルも地図屋から11階層以下の地図を入手してきてくれた。
人目の付かない所で地図の内容を確認してみる。ここでも20階層のボスモンスターの居る部屋までは解るようになっていた。しかし、15階層の隠し扉までのルートは出来上がっていなかった。
「ここも、15階層はパスするしか無いな。20階層まで直行するぞ。」
無理は承知の提案だ。
「今から中に入って20階層まで向かうと夜中になっちゃわない?」
ブリットの意見はもっともだ。この時間に入れば間違いなく、20階層のボスモンスターとの戦闘は夜になってしまうだろう。
それから、隠し通路を探して、メイドゴーレムを目覚めさせるとなると多分時間は深夜になる。
「そうだな。だがワシ等の目的は、最後のメイドゴーレムを目覚めさせる事だ。今更徹夜になろうが関係あるまい?」
「まあ、確かにそうかもしれませんが・・・。」
「冒険者ギルドの本部がワシ等を探しているとなると、見つかる前にメイドゴーレムを全て見付けてしまって既成事実を成立させた方が、交渉ごとになっても有利に進められるだろう?」
「そうだな・・・一体分の動力炉をよこせと言われる可能性もあるしな・・・。」
エイナルもそこは同調してくれた。
「もう一息だ!ハレックの街を出て1ヶ月の長旅になってしもうたが、それもこの第5号遺跡で最後だ。頑張ろう!」
そう言って皆を鼓舞し、第5号遺跡の11階層へ転移ポータルで移動を開始した。この第5階層は鳥の集団が主なモンスターだ。
取りあえず、戦闘を極力避ける為、いつものようにエステルの魔物よけの魔法を掛けて貰い、19階層までを走破する。
ここも15階層の隠し扉は割愛だ。
19階層にたどり着くと、魔物よけの魔法も効果を無さない。出てくるモンスターも鳥型とは言え様々だ。
大形の鳥で言えば、ダチョウやエミューのような鳥から、凶暴な鶏が巨大化したもの、鷹やワシなど空を飛ぶモンスターまでいる。
この第5号遺跡は全フロアーを通して天井が高い。ざっと20mはあるだろうか。
ワシや鷹フクロウなども大型化している為、小柄な、ニーニャやエステルを標的にしてくる。
それに対応する為にこちらの編成も、前衛に俺、エクレア、チョコロール、中衛にエリック、エステル、モンブラン、中衛サポートにパンナコッタ、後衛にエイナル、ヘンリク、ブリットにしてある。
もしニーニャやエステルが襲われそうになったら、自衛はもちろんして貰うが、間に合わない場合に備えて後衛とモンブランに任せる。前衛はいつも通りだ。19階層と20階層のボス部屋の前までで時間は取られたものの、無事に到着出来た。時刻は深夜21時頃と言った所か?
エイナルから聞いていたこの部屋のボスモンスターはいわゆる始祖鳥のような鳥であると言う事だ。
あまりの巨体でフロアのサイズが足りず、空は飛ばないと言っていたので、肉弾戦になるだろう。
しかし、取り巻きの始祖鳥もどきは飛べるらしい。そこは要注意ではあるが、だからといって俺たちの攻撃必勝パターンは変わらない。
最初にエステルの対物・対攻撃支援魔法をメンバーに掛けて貰う。そしてファイヤーボールの準備だ。
エリックも同様に火の精霊魔法を準備して貰う。準備が整いしだい、攻撃開始だ!ファイヤーボールの準備が出来たと合図を貰うと、すかさず不意打ちのファイヤーボールを始祖鳥もどきの居る部屋へと投下する。
『ドンッッッッ!!!』
と大きな音が鳴り響くが今回クリティカルは無かったようだ。衝撃と熱風は直ぐに収まる。続いてエリックの火の精霊魔法が追撃する。
それに併せてこちらも攻撃に入る。エステルは次の魔法の準備だ。きっと、ファイヤーアローを放つつもりだろう。彼女の攻撃の射線に入らないように注意しながら攻撃をしていく。
ちらりとチョコロールが視線に入ったが、明らかに動きが違っていた。これが彼女の本来の力なのだろう。彼女のバトルアックスは巨大だがそれを軽々と振り回す。
他のメイドゴーレム達もそれぞれの武器で応戦していく。取り巻きの始祖鳥もどきには羽を集中的に攻撃し空を飛べなくしていく。
次々と始祖鳥もどきの取り巻きを屠って行き、ボスモンスターへ取り付こうとする直前に、エステルのファイヤーアローが発射された。10本の炎の矢はすべてボスモンスターに命中した。
俺やヘンリク、ブリット、エイナルは足を攻撃し、身軽なメイドゴーレム達は翼を切り刻んでいく。
そうして動けなくなって頭を下げた所を俺のバトルアックスがかち割る形でトドメを刺した。
トドメを刺し終えた感慨にふける暇も無く、俺は皆に指示を送る。
「俺とエイナルは隠し通路を探す。皆はその間に魔鉱石の回収を頼む。」
そう言って、早速隠し通路を探し始める。
「しかし、機密が隠されてるから仕方が無いかもしれんがここの難易度は結構高いよな・・・。」
珍しくエイナルが愚痴をこぼした。探すこと20分程経っただろうか?他の皆は魔鉱石の回収も終わり休憩をしていたが、やっと隠し通路の場所を特定した。
「あった!ここだ!」
そう言ってこちらに目で合図を送るので、こちらも目で合図に答える。
扉の開閉スイッチを押すと、今まで壁だった所に長方形の四角い筋が現れる。人一人が通れるサイズだ。
その扉が『プシューッ!』と空気の抜ける音を立てて内側へヘコみ横へスライドする。
その先は見慣れた通路だ。全員がその通路へ入ると、とブラはまた『プシュッ!』と音を立てて閉まってしまう。
もうチョコロールの再調整分も含めれば7回目の経験だ慌てるものは誰も居ない。
通路の突き当たりには転移ポータルがある。それにのり、各自その先の通路へ転移されていく。突き当たりの扉にある鍵穴へ黄金の鍵を差し込み扉を開く。
中に入ると他の5カ所と全く変わらない部屋の造りがある。奥の部屋には石櫃があった。
エリックが魔法鞄から小箱を取り出し中から動力炉を取り出す。すると机の上にある直径15センチのシャッターの閉まった入り口が『カシャッ!』となって開いた。
エリックはその穴へ動力炉を入れる。入れられた動力炉は奥の石櫃にある穴に収まった。それと同時に淡く光り輝き出す。
俺たちの居る部屋の机には操作パネルが出現した。
「これはアプリコットで間違いないわね・・・。」
「ええ、間違いないわ。」
そう確認し合うメイドゴーレム達。そしてエクレアが代表してパネルを真剣な眼差しで操作し始めた。
これが最後かと重いながら、メイドゴーレム達の作業を見守る。どうやら外観の操作には全く触れず、ステータスの調整を主に行っているようだった。
画面を見てみると、横グラフのようにも見える。きっとチョコロールのお任せの状態は、これが全て標準値だったのだろう。
今の表は突出している場所もあれば平均より低い場所もある。きっと全体の総量が決まっているのだろう。
その中で最善の最適値を弾き出しているに違いない・・・勝手にそんな感想を思っていると、そのうちに準備が出来たのか、最後の決定キーが押されたようだ。
奥の石櫃が輝き出す。暫くするとその輝きも収まった。皆で石櫃のある部屋へ向かう。
エリックが近づくと石櫃の蓋が大きく開かれた。そこには他のメイドゴーレム達と同じ背格好で、編み下ろした髪が胸元まである緑の髪をした少女が眠っていた。
暫く様子を見ていると、目を開いた。焦点は合っていないようだ。そしてゆったりとした仕草で上半身を起こし、
「型式番号003、風のアプリコット、冒険者エリック = ビョルケルをマスターと認証しました・・・」
と言って、どうやら覚醒したようだ。これで全員がそろった事になる。約束は果たされた。
そして、覚醒したアプリコットは辺りを見渡し、そこに姉妹が揃っている事を確認すると、
「・・・なんで皆がここに居るの?」
と、すまし顔で聞いてきた。
「我らはここに居る方々に目覚めさせて頂いたのだ。」
エクレアが代表して答える。
「ふーん・・・、そう・・・。」
ぶっきらぼうな子だな。と言うのが俺の第一印象だ。エリックと旨くやっていけるだろうか?チョット不安だ。
「寝起きで不機嫌なとこを悪いが、メイドゴーレム達には全員に確認している事だ。答えて欲しい。自分が何者かちゃんと把握出来ておるかの?」
「別に寝起きで不機嫌って訳じゃ無いんだけど・・・私はカヌレ博士に作られた対魔族用決戦ゴーレム、型式番号003、風のアプリコットよ。」
「あ、あと、魔族が居るかどうかは知らんが、魔王領や魔法大国はもう無い時代じゃからな。そこは理解しておいてくれ。その上で詳細は姉妹で話を進めてくれ。あと、今夜はここで一泊するからの。アプリコットだったか?一応これを渡しておく。」
え!?魔王領も魔法王国も無くなっちゃったの?と驚いていたがそんな事は無視をして、そう言って1kgの魔鉱石を渡しておいた。
「あ、そうそう、お前さんのマスターはこいつだ。」
そう言って、髪おろしで束ねた髪をいじっていた彼女に、エリックを紹介した。
「アプリコットさん?よろしくね?」
「あなたがマスターね・・・、よろしくお願いするわね・・・。」
エリック頑張れ!と、エリックに背を向けて影ながら応援したのだった。
「さて、じゃあ今夜はここで休ませて貰うとして、早朝ハレックへ向かう馬車に乗り込む。もう遅い時間だと思うが少しでも疲れを取って置いてくれ。」
「今回の事で何かお咎めがあるのかなあ?」
ブリットは心配そうにそんな事を言ってきた。
「どうだろうな?だが、こちらには幸運の女神様が付いておる。悪い事にはなるまい・・・。」
「こういう時だけ神頼み!?」
ニーニャが憤慨した。
「いやいや、今まで旨くやってこられたのは、全てニーニャのお陰だと思っとるぞ?」
ここまで言うと周りもヨイショし始めた。するとニーニャも満更でも無いらしく、天狗になった新米女神様は、
「私が居るからには大丈夫!任しといてっ!!」
と宣言してくれた。最後の最後で神頼みだ・・・。
「そう言えば、メイドゴーレム達が揃って、何か解った事とか、ワシ等に報告しなければならない緊急な事はあるかの?」
そうすると長女のエクレアが代表して話し始める。
「直近でお話しできることと言えば、皆さんのレベルの上限が、100になったと言う事です。これは、私たちメイドゴーレムのマスターになる事が切っ掛けで発生したものでした。大戦当時は魔族のレベル上限は100もあり、人族や亜人族のレベルの上限は50と、対抗するすべが無かったからです。魔法王国は技術の粋を集めてレベル100に達する為のカード・・・今は冒険者カードですね・・・を開発し、ゴーレムと主従契約をする事でレベル50の壁を破りました。そして契約したゴーレムの力と協力してレベル100を目指しました。これにより、魔族との戦争は膠着状態となったのですが、その後私たちがどうして各遺跡に眠りについたのかは不明です。博士の研究施設に行く事が出来ればもう少し詳しい事も解るとは思うのですが・・・。」
「まてまて!そんなに長いと頭に入ってこない!要は今のワシたちはレベル100まで目指せるようになったと言う事だな?」
「そう言う事になります。」
エクレアはそう結論づける。
「取りあえず明日朝イチで冒険者ギルドの出張所に顔を出そう。そしてハレックの街へ一端戻ろう。」
そう言って締めくくり仮眠を取った。
翌朝、冒険者ギルドの出張所に顔を出し、冒険者カードを提出した。
レベルが1つ上がっていた。これで43になった。
それよりも受付から何も言われなかったのが気になった。ここまで情報が届いていないのだろか?
取りあえずハレックの街へ行く馬車の予約を済ませた。定期便も増えたそうだ。丁度、今日の出発だったのでそのままハレックの街を目指した。




