急遽予定変更!第6号遺跡へ向かう
予定では王都ルステーゼを経由して、ハレックの街へ向かおうとしていたのだが、何やら、きな臭いウワサが耳に入ってきた。
それはどうも、俺たちに関係していることのようだ。王都に立ち寄ると、冒険者ギルドの本部に呼び出しが掛かりそうだと言うウワサだった。
その為、急遽、第6号遺跡と第5号遺跡へ向かう事を選択をした。
「ねえ、それって確かな情報なの?」
「いや、ウワサに過ぎん。ただ、こちらも人数が増えて目立っておる。ならば王都にそれが何なのか問われるのに引っかかって無駄に時間を過ごすより、確実にメイドゴーレム達を揃えさせた方が良いと思っての・・・。」
「ん~・・・考え過ぎな気もするけどなぁ・・・」
俺もそう思う。ただ、そうじゃ無かった場合が厄介なのだ。それを避ける為でもある。
今乗っている乗合馬車は第2号遺跡に向かう馬車だ。御者に無理を言って少し多めのチップをはずみ、黙らせて乗り込んだ。夕方には到着するだろう。
第2号遺跡で一泊し、翌日の乗合馬車で第6号遺跡に向かう。20階層まで地図が出来ているかは不安だが急いだ方が良いと俺の感が言っている。
夕方、第2号遺跡に到着すると、冒険者ギルドの出張所には寄らず直接宿を取った。
こちらの動きがバレていなければ、第6号遺跡に入ることは出来るだろう。とにかく
ウワサになっていることが厄介なのだ。
こうなれば全てのメイドゴーレムを揃えてから、堂々と王都に出向くべきだろう。
翌日も第6号遺跡へ向かう乗合馬車へ乗り込み移動を開始する。ここでも御者にチップをはずんだ事は言うまでも無いだろう。夕方には到着する予定だ。しかし、この第6号遺跡周辺には、宿が多分無いはずだ。野営をするほか無いだろう。
無事暗くなる前には第6号遺跡に到着出来た。大分人が増えている。調査団による階層の調査も順調なのだろう。
俺はエイナルに11階層以下の地図の調達を頼んだ。探して貰っている間に俺は冒険者ギルドの出張所に出向き登録を行った。
ここはまだ出張所とも言えない状態なので、俺たちがここに来たという情報が、王都の冒険者ギルドに流れるのは遅くなるだろう。
さすがに宿も出来ていないようで、俺たちは皆で野営を行った。夕食を取っている時に皆に指摘された。
「やっぱり考えすぎのような気がするけどなあ・・・」
と言ってブリットは思案顔になる。
「そのウワサは本当に信頼出来るものだったのですか?」
ヘンリクも信憑性に疑問を感じている。
「俺の方でも調べてみたが、それと言ってきな臭いものは無かったがな。」
エイナルも裏取りをしてくれたのだろう。
「だけど気になったんでしょ?」
と言って、エステルは信用してますよ。って顔をしてくれた。
「すまん。ヒョッとしたら俺の暴走に過ぎないかもしれん。ただ、この子達には皆を目覚めさせてやると約束をしてしもうた。ならばほんのわずかな疑いも見逃す訳にはいかんかったんだ・・・」
俺は思っている本心を皆に伝えた。初めてチョコロールと出会い、乗りかかった船だと言って請け負ったのだ。冒険者が依頼を受けたのであれば、それは達成しなければならない。俺はそう思っていた。
「ヨーンらしいって言えばヨーンらしいわね。」
半分以上だろうあきれ顔で、ブリットは納得する。
「まあ、本気でヨーンを信じられ無かったら、その時点でルステーゼ行きの馬車に乗ってますもんね。」
冗談めかしてエリックは場を和ませてくれた。
「ホント、すまんな。で、エイナル、地図の方はどうだった?」
何処まで進んでいるのかが気になる。
「20階層まで到達していた。しかし、15階層は3分の1位しか埋まっていない。」
そう言って地図を見せてくれた。確かに15階層に至っては、俺の知っている隠し扉までが遠い。
「こうなったら15階層の隠し扉は諦めよう。明日朝イチで11階層に入って20階層まで行く。ボスモンスターを倒したら、隠し通路を探し出してメイドゴーレムを目覚めさせよう。そして、一晩そこで立てこもる。」
「あぁ、なるほど!で、日の出前に地上に出て第1号遺跡に向かう馬車に乗るってことね。」
「そう言う事だ。20階層のボスは何か解ったか?」
「残念ながらそこまでは不明だ。」
「そうか・・・行き当たりバッタリだが仕方あるまい。いつもの作戦で行くぞ。メイドゴーレム達にも頑張って貰うからそのつもりでな。」
「「「「畏まりました。」」」」
翌朝の早朝、転移ポータルで11階層へ降りたヨーン達は、エステルの魔物よけの魔法を使って一気に19階層まで突き進んだ。
今回は15階層の隠し扉は無視だ。19階層からはアンデット系モンスターが現れた。
アンデット系はサイズは普通より少し大きい程度だったが、しぶとさが売りだったようだ。種類も、ゾンビ系や、ワイト、スケルトンなど様々だ。しかしこちらもパワー系の前衛が多く居る。
俺のバトルアックスが一刀両断にしていく。またメイドゴーレム達も過剰とも思える力で、一撃の下に倒していく。また遠距離はエリックとエステルの火魔法が炸裂していった。
20階層のボス部屋まで辿り着いた一行は一息つき、ボスモンスターの様子をうかがう。
そこに居たのは10階層と同じドラゴンゾンビだった。
最初は目を疑ったが、このフロアのモンスターの特徴を考えると、考えられる事はただ1つ、スタミナが高くなっていると言う事だろう。
そこでだからと言って、作戦を変える事はしなかった。こちらも今では過剰戦力なのだ。いつものように、エステルの対物・対攻撃支援魔法を唱えて貰い、その後でファイヤーボールの投入だ。
エリックも火の精霊魔法を準備して貰う。エステルのクリティカルの可能性は7割。ここぞと言う時に炸裂するエステルの幸運値を信じよう。
準備が整い、エステルがドラゴンゾンビの前に飛び出しファイヤーボールを投入した。いつものように、すぐさま俺の後ろに隠れる。一呼吸おいて・・・
『スドーーーーーーンッッッッ!!!!』
ファイヤーボールが炸裂した!明らかにクリティカルだ!
衝撃波と熱風が落ち着きだした辺りで、エリックの火の精霊魔法が追撃を掛ける。それと同時に前衛が飛び出していく!
さすがにスタミナが高いようだ。エステルの会心のファイヤーボールでも生き残っている。
こちらはすぐさま攻撃を仕掛けていく。手こずりながらも一体一体討伐するも、一際活躍したのは光の両手剣を手にしたエクレアだった。
ドラゴンゾンビのボス相手に一歩も引かず、一刀の下で片足を切り落としたのだ。そのまま返す剣で胸を貫き絶命させた。そうしている間にもこちらも片付ける事が出来た。
「凄い剣技でしたね・・・」
皆の率直な感想だった。エクレア恐縮しきりだったが、間違いなく今回のMVPだっただろう。
ボスモンスターを倒した後、隠し通路の探索に入った。おおよその見当は付いているのだが、エイナル程のベテランが手こずる程、発見の難易度が高い。ようやく見付けた時には30分を要していた。
今回は直ぐに開けて中へ入る。全員が入ると扉は閉まった。外から見たらそこに扉があるようには見えない事だろう。
通路の突き当たりにある転移ポータルで次の通路へ進み、突き当たりの扉を黄金の鍵で開く。
中は過去のメイドゴーレムシリーズが居た部屋と全く同じだ。奥には石櫃がある。
ここの動力炉を持っていたのはエイナルだったはずだ。エイナルに目で合図を送ると魔法鞄から小箱を取り出した。蓋を開けて動力炉を取り出すと、机の上で『パシュッ!』と言う音が聞こえた。
机に開いた穴へその動力炉を入れると、透明な壁を隔てた石櫃にある穴に吸い込まれていった。
石櫃が淡い光ほのかな光を放ち、こちら側の机に操作パネルが浮かび上がる。
「これはショコラ姉様だね」
メイドゴーレムのモンブランが言った。
「間違いない。」
エクレアも肯定した。そして直ぐさま操作パネルのキーを叩き適正化を図っていく。暫くすると準備が整ったようで、最後の決定キーを弾く。
すると石櫃の光が一際大きく輝きだした。それも暫くすると収まり、淡い光も消え去った。俺たちが石櫃に近づくと蓋が大きく開かれた。
中には、やはりというか何というか・・・チョットおませな感じの中学生っぽい少女が眠っていた。髪は黒髪でツインテールだろうか?をしていた。
様子を見ていると暫くして、メイドゴーレムの皆が起動した時みたいに、上半身を起こして目を開く。目の焦点は合っていない。
「型式番号002、闇のガトーショコラ、冒険者エイナル = シェーグレンをマスターと認証しました・・・」
とそう言って覚醒した。そして辺りを見渡し、他のメイドゴーレム達を確認したようで、
「あら、皆そろってどうしたの?」
覚醒したばかりのガトーショコラはそう言った。
「まだアプリコッテがまだだがな」
エクレアはそう返す。
「さて、これで5人目だな。一応確認なんだが、自分が何者か解るか?」
まあいつもの確認だ。自身の認識のズレが無いか簡潔に質問をする。
「え?私はカヌレ博士に作られた対魔族用決戦ゴーレム、型式番号002、闇のガトーショコラですわ。」
「大丈夫そうだな?で、お前さんのマスターはこやつじゃ。」
そう言ってエイナルを紹介した。
「あら、狼さんが私のマスターなんて素敵ですわ。」
嫌みなのか本気なのか俺には解らなかったが、ブリットとエステルはニヤニヤしている。と言う事はそう言う事なんだろう・・・。
「皆良いか?今夜はここで休息を取る。早朝に出発して、第1号遺跡行きの定期馬車に飛び込むからな。それと、ガトーショコラだったか?これを受け取っておけ。」
そう言って、魔鉱石1kg相当を手渡した。寝起きではガス欠寸前のはずだ。
「ありがとうございます。で?これからどうするんですの?」
状況の飲み込めていないガトーショコラが聞いてくる。
「今言った通りだが?これから第5号遺跡を目指す。そこに最後のメイドゴーレムが眠っておる。今はあまり表立って動けんのだ。」
詳しく話しても、目覚めたばかりで理解出来ないと思い詳しくは話さなかった。
「あらあら、それは大変ですわね・・・。」
大変とは思えない軽い口調で返答をしてくる。そう言う性格なのだろうか?
「詳しい話は姉妹でやってくれ。」
そう言って俺はガトーショコラと離れて、エイナル達と今後の打ち合わせをした。
そして、仮眠を取り夜明け前に、転移ポータルで20階層へ出た。そこからさらに転移ポータルで地上へ出て、第1号遺跡へ向かう定期馬車へと飛び乗ったのだ。ここでも御者には以下略だ・・・。
第3号遺跡以降俺たちの噂は耳にしなくなった。このまま杞憂であればと願う。エイナルにも、それとなく第1号遺跡に到着したら情報収集をして貰うように頼んだ。
第1号遺跡には昼過ぎに到着出来た。早速エイナルは情報収集に動いてくれているようだ。
俺たちは宿に部屋を取り、目立たない為にも外を出歩かないように心がけた。もちろん、冒険者ギルドの出張所にも顔を出さないでおいた。そして明日の第4号遺跡へ向かう為の準備をする。
するとエクレアが、第4号遺跡に行くのであれば、チョコロールの調整の為に20階層に連れて行って欲しいと頼まれた。お任せで目覚めた為、本来の性能では無いそうなのだ。
そうなると隠し扉の件もある。全員で行った方が良いだろう。エイナルが戻りしだい全員と相談する事にした。
暫くするとエイナルが返ってきた。
「やはり冒険者ギルドの本部が俺たちを探しているそうだ。まだ第3号遺跡に居ると思っているようだから、第5号遺跡までは間に合うだろう。」
「それなら良いが、こっちも第6号遺跡に手を出したから、そろそろ情報が伝わっているかもしれない。何で俺たちを探しているのかが不明だが、きっと碌な事じゃ無いと思うが皆はどう思う?」
俺はゲンナリしながらも皆にもどう思うか聞いてみる。
「ん~表彰される事は無いでしょうね・・・」
「やっぱりメイドゴーレムの件でしょうか?」
「そもそもメイドゴーレムの事を知っているのか?」
どちらにせよ碌でもなさそうだ・・・。
「エクレアからの願いだが、第4号遺跡についたらチョコロールの調整の為に、あの場所に連れて行って欲しいそうだ。お任せで目覚めた為に本来の性能では無いらしい。明日夕方に第4号遺跡へ着いたらそのまま向かいたいと思うがいいか?」
「じゃあ、昨日みたいにそのまま泊まってっちゃう?」
ブリットが何か悪戯を前にしたようにワクワクしながら言ってくる。
「ワシは構わんが皆は大丈夫か?」
「今夜は宿泊ですし問題ないですよ。」
「私も異議無し。」
「同じく。」
「よし、じゃあ、昨日のようにチョコロールの目覚めた場所に宿泊と言う事で明日は実行するぞ。」
そう言って打ち合わせを終了する。
翌朝、第4号遺跡へ向かう馬車には11人の変わったグループが乗り合わせた事が話題になった。
第4号遺跡には夕方には到着した。ここも、冒険者ギルドには顔を出さず、暗くなるのを待ってから、転移ポータルで20階層へ向かった。
隠し通路を使い、チョコロールが目覚めた部屋へと入る。もう何度も見た景色なはずだが、ここがスタートだったと考えると感慨深いものを感じる・・・。
直ぐ調整に入ると言う事で、チョコロールは石櫃の中に入った。すると自動的に蓋が閉まり隣の部屋には操作パネルが出現していた。
そのキーボードを操作し、チョコロールに最適なステータスへ変更がなされていく。暫くすると全ての調整の準備が整ったのか、決定キーが押され、あのまぶしい光に石櫃が包まれた。光が収まり、俺が近づくと、石櫃の蓋が開かれる。
外見では変わった所はみられなかったが、体が軽いと喜んでいた。お任せでは到達出来ない領域なのだろう。本来の調子になってくれたのならここに来て正解だったと思う。
明日は第5号遺跡だ。冒険者ギルドに見つかるのが先か?第5号遺跡にたどり着くのが先か?しかし、悪い事をしている覚えは無いんだがなあ・・・。




