再び第2号遺跡へ・目覚めたメイドは「僕っ娘」!?
翌朝、第2号遺跡へ向かう馬車へ乗り込んだ。
パーティ名「テーブルトーク同好会」(気付いた時には既にそうなっていた。)のメンバーは8人になった。これだけで半分以上席を占有してしまっている。
冒険者の中にメイド服姿の少女が2名。違和感この上ない・・・。
俺の席の隣には当然のようにチョコロールが座り、ヘンリクの隣にはエクレアが座っている。外野からの奇異の目が痛い・・・。これだけは絶対慣れる事は無いだろう。
せめて見た目だけでも冒険者風に出来ないものかと提案もしたのだが、このメイド服で無ければ本来の性能が出せないらしい。
しかもその生地は伝説の鉱石、オリハルコンを織り込んだもので作られたメイド服であると説明された。となれば、中途半端な防具よりも格段に性能が高くて当たり前だ。
ついでに昨日のチョコロールが出してきたバトルアックスの事も気になったので、どこから出してきたのか訪ねたら、異空間収納という物が有るらしい。
どうやら今の時代では再現出来ない、失われた魔法文明の遺産のようだった。
その異空間収納は無限に収納出来るらしい。俺の持つ1,000kgまで収納出来る魔法鞄の究極系とも言えるだろう。
そんな会話をしながらも、周りの視線が痛いように突き刺さる。それはヘンリクも同じようで、そこはかとなく表情が硬い。
表情が硬いと言えば、ブリットとエステルだ。第2号遺跡のモンスターは虫が中心だ。苦手を克服したとは言ってはいたが、そう簡単に克服出来るものでは無いだろう・・・。
まして、11階層以下に挑戦するのだ。いくらエステルの魔物よけの魔法を使っても、19階層あたりでモンスターとの遭遇は避けられない。
その時にどれだけ我慢して戦う事が出来るかが勝負になるだろう。
明日の昼頃には到着する予定なので、到着ししだい11階層から20階層まで地図屋から購入する必要がある。その時に、20階層のボスモンスターの情報も手に入れておきたい。
そんな、メイドゴーレム達の話や女性陣の心配などをしている内に野営ポイントに到着した。
野営の準備はいつもの事だ。慣れた手順で設営を行っていく。焚き火の支度を済ませる頃には、ヘンリクとエリックが一晩分の薪を、ブリットとエイナルが獲物を捕ってきた。
いつもと違うのは、俺のテントの設営にチョコロールが手伝いをし、ヘンリクの薪拾いにエクレアが同行した事だろうか?
設営の準備も終え、ブリットとエステルが夕食の準備を進めてくれる。それを、チョコロールとエクレアが手伝っていた。
焚き火の周りでは狩りで得た肉を焼き、火の中央には鍋が置かれ肉と野菜のスープが煮込まれていく。旨そうな臭いが辺りを満たしていき、俺のお腹も空腹を訴えた。
「ほう!旨そうな料理に仕上がったな!」
「旨そうじゃ無くて旨いわよ!」
ブリットに鋭く突っ込まれる。
「そりゃ失礼・・・。」
そう言って舌を出して、とぼけて見せた。
ふと、今囲っている人数を見渡し改めて、これからのメンバーの人数を考えてみる。
この先順調に、メイドゴーレム達を目覚めさせられれば、あと4人増える事になる。と言う事は、合計で12名のパーティと言う事だ。問題は多くある。その問題を少し皆に相談してみる事にした。
「のう、これから順調にメイドゴーレム達を目覚めさせられたら、ウチ等のパーティは12名になる。テントも足り無くなるだろう。定期馬車も利用しにくくなると思うが皆はどう思う?」
「確かに・・・他の冒険者の視線もこれほどとは思いませんでした・・・。」
即座に反応したのはヘンリクだった。やはり、今日一日で堪えたようだ。
「確かに12人になった場合は定期馬車が貸切になっちゃうね。」
エリックは定期馬車の利用に問題が発生しないか指摘してきた。俺たちのパーティだけで一台貸し切りになってしまえば、他の冒険者が困ってしまう。
「テントも今は足りるけど、メイドゴーレム達が全員揃うと入りきれなくなっちゃうわね・・・。」
ブリットも同調する。エステルや、メイドゴーレムが子供サイズとは言え、4人用のテントに女性8名はいくら何でも定員オーバーだろう。
「そこでだ、本気で馬車を新調する案をここに提案したい。ちなみに新調する馬車は、見合い席では無く前向きシートで、野営する時は宿泊用にシートをフラットに出来るように改造する。」
「良い案だと思いますが、そんな事が出来るんですか?」
ヘンリクが疑いの目を向けてくる。
「そこは、「ヤンの武具店」の親父さんと要相談だ。ただ、野営の件にしてもこれからの移動にしても、定期馬車だってタダでは無い。毎回12名分を支払うのと、維持管理費に掛かる費用を天秤に掛ければ、自由に行動が出来る馬車があった方が何かと都合も良くなると思うのだが?」
マイ馬車を手に入れたいと前々から思っていた俺は、ここぞとばかりに滑舌が火を噴いた!
それに気押されるようにヘンリクも言葉を濁した。もう一息だ!
「馬車の購入の了解が得られれば、その辺の事はワシに任せて貰えれば良い。どうだろうか?」
「解りました。最後まで反対していたのは僕だけだったようですし、ここはヨーンにお任せします。」
やった!と、ガッツポーズを決めたくもなるも、ここは冷静を装い、皆にも再度確認をした。
「僕も賛成!」
「異議無し。」
「良いと思うよ?」
「完成予想図が出来たら見せなさいよ?」
ブリット辺りは抜け目が無い。完成予想図の提示を求めてきた。
「了解だ。ハレックの街に戻ったらヤンのオヤジに相談してくるわい。」
そんなマイ馬車計画とともに夕食を済ませた。
翌日は予定通り昼頃に、第2号遺跡へ到着した。冒険者ギルドの出張所で登録を行い(所有欄についてはとぼけた。)エイナルには、地図屋で11階層から20階層までの地図のまとめ買いと20階層のボスモンスターの情報を仕入れるように頼んだ。
登録を済ませたあと宿を取る。丁度お昼時だったので皆で食道に集まっていた。そして俺はおもむろに今日の予定を皆に話す。
「さて、今日は一気に15階層まで言って、隠し扉の魔鉱石を回収して、15階層のポータルで戻ってお仕舞いにする。」
俺は今日の予定を大雑把に説明する。
「で、明日は?」
皆が確認してくる。
「明日は出来れば姉妹の回収までやってしまいたいのう・・・。しかし、そこはボスモンスター次第じゃ。その辺の事は今夜にでも話すとして早速出発しよう。」
そう言って、第2号遺跡の転移ポータルへ向かった。
11階層に入る前に、エステルには魔物よけの魔法を掛けるように頼んだ。おかげで15階層の隠し扉まで順調に歩みを進める事が出来た。
手早く扉を開けて貰い、中に収まっていた魔鉱石を回収する。その足で15階層の転移ポータルを目指し移動した。
隠し扉を経由すると15階層は転移ポータルまで相当な大回りになる。他の階層よりも時間が掛かったが、魔物よけの魔法のお陰で地上には暗くなりかけた位には上る事が出来た。
宿に戻り夕食とともに明日の予定を話し合う。
「明日はやはり、20階層のボスモンスターを倒した時間によって、どうするか決めたいと思う。」
「姉妹の回収までやっちゃわないの?」
ブリットが訪ねてくる。無理も無い。彼女がこの第2号遺跡に眠るメイドゴーレムの動力炉を持っているのだから、早く目覚めさせたいのだろう。
「だが、20階層のボスモンスターは巨大ムカデだぞ?虫は克服したと言っておったが、本当に大丈夫か?」
俺がワザと確認した。
「ううぅ・・・だっ!大丈夫よ!ダイジョウブ!問題ないから!」
顔色が優れないように俺には見えた。俺としては無理をして欲しくは無い。
「のう、苦手なものを無理に克服せんでも良い。普通のサイズの虫を克服するのと、モンスターサイズの虫を克服するのでは訳が違うぞ。それよりもブリットが無理をして本当の力を出せずに怪我をしてしまう方が、ワシや皆は正直つらい・・・」
そう俺が言うと皆からもブリットに無理しなくても良いという声が掛かる。
「誰だって苦手な物は有る。」
「そうそう、僕も虫全体じゃありませんけど青虫が苦手ですね・・・」
「僕は、蓑虫がダメだったなぁ・・・」
「大きいカエルが出たら気を失う自信がある。」
皆、苦手を披露し始めた。苦手なものは誰だって有る物だ。無理する必要は無い。
「皆、ありがとう。正直に言うと、ボスモンスターの巨大ムカデに向かう勇気は無いかもしれない。」
ブリットは正直にそう言った。
「それで良いんだ。なら、それに応じた対策を練れば良い。じゃあ、チョコロールとエクレアは前衛でボスを相手に出来るか?」
「問題ありません。」
「え・・・あ・・・はい。大丈夫です。」
「では今回ブリットに変わって前衛ボスモンスターに当たってくれ。最初はいつも通り、エステルの支援魔法付与後のファイヤーボールの投入だ。あとは全力でぶっ叩く!」
「それって作戦て言えますか?」
ヘンリクから突っ込みが入るも、おどけてみせる。
「まあ、いつもの事じゃろ?」
いつも通りだ。苦手があれば、皆で支える。それだけだ。
夕食を済ませ、明日に備えて早めに就寝した。
翌朝は早めに出発し、16階層から攻略だ。エステルに魔物よけの魔法を掛けて貰い一気に19階層まで抜けていく。
前衛は俺とチョコロール、エクレア、中衛をエリック、エステル、後衛をヘリンク、エイナル、ブリットの布陣だ。
19階層ではムカデや蜘蛛、カブトムシなどが大型化したモンスターが多く出現した。
それらに対応すべく支援魔法が炸裂するとともに、チョコロールとエクレアの攻撃が素早かった。
さすがレベル60相当と言った所か。俺の鈍足では敵に接敵する頃には戦闘が終わっている事もしばしばあった。出るまでも無かったとは言うまい・・・。
危なげなく、20階層のボスモンスターのフロアに到着したのは昼を少し回った頃だろうか。壁越しに巨大ムカデを確認する。長さ5mを超える巨体に無数の足がうごめいている。触覚はせわしなく動き回り、これは苦手で無くても気持ち悪い!取り巻きのムカデも同様だ。長さはボスモンスターを下回るが、その動きの気持ち悪さは同様だ。
再度、攻撃の手順を確認する。先手はエステルの対物・対攻撃支援魔法を攻撃組全員にかける。、そしてファイヤーボールの準備、エリックも、エステルがファイヤーボールの準備に入った所で火の精霊魔法を準備する。用意が出来たら最初にファイヤーボールを投げ入れ、遅れて火の精霊魔法を投入する。以下はいつも通りだ。
「ブリット。あれはワシでも気持ち悪い。無理しなくても良いからな。」
「ありがと。目視してダメなら声援送る!」
「そりゃ有難い!じゃあ、始めるかの!!」
早速攻撃陣に支援魔法を付与される。その後すかさずファイヤーボールの準備に入った。同時にエリックも火の精霊魔法の準備を始めた。
俺の背中に隠れていたエステルから合図が来る。ファイヤーボールの準備が出来たと言う合図だ。
すぐさまボスモンスターの居るフロアへ向かわせてファイヤーボールの投入だ。エステルは着弾する前に俺の背中へ飛んで戻って来る。待つ事わずか、
『ドゴンッッッッッッッ!!!!』
今までに無い音を立てて衝撃波が飛んでくる。続いて今までに無い程の灼熱の熱風が舞い踊る!
どうやらクリティカルが最上級で回ったようだ。
熱風が収まるのと同時に攻撃を仕掛けようとフロアに突入するも、そこには少し大きめの魔鉱石が1つ、それより一回り小さい魔鉱石が4つ転がっていただけだった・・・
エステルの、ブリットへあのムカデを見せたく無いと言う思いが、気持ちになったような一撃だったのだろう。
魔鉱石をエリック達に回収して貰いながら、俺と、エイナルは隠し通路の扉を探していた。3度目でもここの隠し扉は特別見付け辛いらしい。探す事しばし、やっとその場所を見付ける事が出来た。
隠し通路を開ける扉のスイッチを押すと、いつものように今まで存在しなかった扉が、壁の一部が切り取られるように四角く現れ、『プシューッ!』という空気の抜ける音とともに横へスライドした。
8人が中へ入ると、何事も無かったかのように扉は閉まった。突き当たりの転移ポータルから次の通路へ移動し、扉の鍵を黄金の鍵で開ける。
中に入ると、奥には石櫃が置かれていた。ブリットは小箱を魔法鞄から取り出し、中から動力炉を掴みだした。机の上にあったその動力炉を入れる穴のシャッターが開く音が聞こえた。迷う事無く歩み寄り、その穴へと動力炉を入れた。
石櫃に動力炉が収まると淡い光が漏れ出し、机の上には操作パネルが出現した。
今回は長姉のエクレアが操作するそうだ。パネルを確認した所、ここに眠るのは5女である、火のモンブランと言うそうだ。
う~ん・・・また洋菓子か・・・だけどこっちの世界には無いものだから良いのか?そんな事を考えているとエクレアが操作を開始する。
暫く待っていると設定が完了したのか、石櫃が明るく輝きだした。その輝きが収まると同時にエクレアやチョコロールが石櫃へ駆け込んでいく。俺たちもそれに続いた。
石櫃が大きく開くとそこに眠るのは真っ赤な髪の短髪ヘアーの女の子だった。見た目はやはり年の頃は13~14歳位の中学生位だ。
目を開き上半身を起こすと、その目の焦点が合っていないまま、
「型式番号005、火のモンブラン、冒険者ブリット = ティレスタムをマスターと認証しました・・・」
とそう言って覚醒した。
「あれ?ここは?あれ?エクレア姉ちゃんにチョコじゃん!」
「ふう、無事覚醒したようだな。」
「よかった・・・」
「スマンが通過儀礼と思って聞いてくれ。確認だ。お前さんは自分の事は解るかの?」
「うん。僕はカヌレ博士に作られた対魔族用決戦ゴーレム、型式番号005、火のモンブランだよ。」
やれやれ。無事問題なく覚醒してくれたようだ。しかし僕っ娘とは、このカヌレ博士、なかなか抜け目が無いな・・・。そんな無駄な思考を働かせていると、
「私がブリットよ。よろしくね」
と、自己紹介が始まっていた。
「わあ!お姉ちゃんが僕のマスターなんだね!よろしくお願いします!」
元気な挨拶だった。
「ワシはヨーンだ。詳しい話は姉妹同士で聞いてくれ。時間も時間だ。宿へと戻ろう。」
そう言って、転移ポータルで20階層へ移動し、そこを登録した上で、地上へ戻った。結構時間が経っていたと思ったがまだ明るかった。
そこで思い出す。そうだった。今日は15階層からのスタートだったんだ・・・。
ブリットは妹分が出来たようで嬉しそうだ。モンブランは姉妹から今の状況を聞かされている。
3人ともメイド服なのだが、全く同じ装飾では無かった。エクレアとチョコロールは似た感じでも、フリルのボリュームがチョコロールの方が多い感じがする。エクレアの方がすっきりした感じだ。
それよりもだ!僕っ娘モンブランの格好は膝上のスカートに半袖だ。フリルも少ない。一応メイド服には見えるが目のやり場に困る!
さて、次は第3号遺跡だ。今夜はここで休み、明日は第3号遺跡に向かう定期馬車へ乗り込まなければ。そう思いながら、冒険者ギルドの出張所へ顔を出す。レベルは上がっていない。42のままだ。
気が付けば、ついに30話まで書く事が出来ました。
読んで下さっている皆さん、ありがとうございます。
今までは駆け足でしたが、これからはのんびり更新していきます。




