再び第1号遺跡へ・メイドゴーレム達を復活させる旅
ハレックの街へ帰る予定を急遽変更し、翌朝は、第1号遺跡へ向かう馬車へ乗り込んだ。
乗り込んだのは良いのだが違和感が半端ない・・・。
何せ、メイド服姿の少女が同行しているからだ。他の冒険者からの奇異の目が痛い事、痛い事・・・。
最初は誤魔化す為に寝たふりをしていたのだが、どうにも間が持たない。挙げ句の果てにはメンバーもよそ見を始める始末。
そんな扱いなものだから、チョコロールも段々と居たたまれ無くなってしまったようで、涙目になってしまっていた・・・。
さすがに可哀想に思えてきて、色々と会話を絞り出す努力をしたのだった。
最初に疑問に思ったのが俺たちの世界にあった、ロボット三原則だ。ゴーレムもいわばロボットだろう。人間への安全性・命令への服従・自己防衛である。
それとなく訪ねてみると、チョコロールからそれに近い回答が得られた。
曰く、専用の武器以外は使用出来ない。(但し、調理用器具の使用は可能。ナイフなども調理として使う場合は使用可能。)
曰く、専用の衣装以外を装備すると性能が著しく低下する。(但し、アクセサリーなどの装着は可能。魔法付与は効果が無い)
曰く、マスターの戦闘をサポートをし、命を守る事が主な使命となる。(但し、パーティとしての参加は可能)
曰く、無闇に人へと危害を加えない。
曰く、自信に危害が加わる場合のみ自衛を行える。(但し殺さない程度に加減する事。)
大まかに分類すると、この5項目がメイドゴーレムシリーズの役割だそうだ。
そのほかにも、メイドゴーレム達が倒したモンスターの経験値は、パーティまたはマスターに還元されるとか言っていた。
それ以上の事は旨く思い出せないらしい。早く姉妹を起こしてあげるべきだろうな。
ちなみにチョコロールには魔鉱石を1kg最初に与えてある。1ヶ月は稼働し続けるだろう。そう考えると、隠し扉の中に保管されていた魔鉱石250kgぶんは、このゴーレムの20年分のエネルギーだったと想像出来る。
まあ最後まで冒険者達の視線に心の中で冷や汗が止まらない中、無事夕方に第1号遺跡へ到着した。
早速冒険者ギルドの出張所へ顔を出し、素早く登録を済ませる。すると、受付の人が俺の冒険者カードを見て訝しげな顔をした。
「所有欄?型式番号006:地のチョコロール?」
「ん?ああ、何か知らないうちに記載されておったぞ?」
と、そうしらばっくれた。冒険者ギルドの出張所の中にはチョコロールを連れてきていない。詳しい事情がわからなければ理解出来ないだろう。
予想通りそれ以上の追求はされずにすんだ。
その後宿を確保して一度荷物を置きに各自部屋へ移動した。
チョコロールが男部屋へ付いて行こうとしたものだから引き留めて、ブリットに女部屋へ連れて行って貰った。
夕食の時は、毎度の打ち合わせタイムだ。テーブルに並んだ料理を食べながら、明日の段取りを行う。
まずは15階層の魔鉱石の確保、そして20階層のボスフロアの攻略と隠し通路の事だ。
今回は急遽この第1号遺跡へ来たものだから、各階層の地図が無い。仕方が無いので、地図屋から11階層から20階層までを購入し、20階層のボスの情報を仕入れた。まとめ買いをしたものだから情報料はまけて貰った。
フロアボスは巨大なトレント。木のお化けだ。全長は約5m。取り巻きは4体のトレントで、全長は3m位だそうだ。
枝を鞭のようにしならせて攻撃を仕掛けてくる。切り落としても直ぐに再生する厄介な攻撃になるという。巨大な口は噛みつきもするそうだ。
結構厄介な相手のようだが、エステルのファイヤーボールで焚き火にでもしてやろうかと頭の中で考えていると、
「いつもの方法で良いんじゃ無い?」
ブリットがあっけらかんとして言ってきた。
「ボスモンスターは、後方支援で先手必勝。弱った所を前衛が叩く!何も変わらないじゃ無い。」
確かに・・・少し環境が変わって、少し前の自分が出てきてしまったようだ。せめて石橋は叩いて渡るだ!
「ブリットの言うとおりだな。皆もそれで良いかの?」
俺が念の為にみんなの顔を見渡す。
「まあ、それでいつもやってましたからね。」
ヘンリクが同調する。
「今更でしょ。」
エリックがおどけた。
「ファイヤーボールで焚き火にしてあげる。」
エステルが『フンスッ!』と両拳を上げて気合いを入れた。
「じゃあ、いつものように、まずは15階層の隠し扉の確保、そして20階層のボスモンスターの討伐とを明日中にやってしまおう。」
そう言って、残りの夕食も片付けて解散した。
翌日、チョコロールも同行して、第1号遺跡の11階層からスタートした俺たちは、まず最初に、エステルの魔物よけの魔法を掛けて貰い、最短で15階層を目指した。
15階層にある隠し扉の魔鉱石を確保する為だ。俺の記憶する場所へ誘導して、エイナルに場所を特定させる。
「この壁の辺りだ。エイナル頼む。」
「了解。」
もうおなじみの光景だ。すぐさま扉は発見された。中に入り、宝箱の中に入っていた150kgもの魔鉱石を素早く俺の魔法鞄に押し込み、続いて20階層を目指す。
さすがに、19階層からモンスターと遭遇するようになった。レベル差が効果の範囲外になったようだ。
遭遇するモンスターは植物系ばかりだ。ラフレシアのような人食い植物や、蠅取草やウツボカツラのようなモンスターもいる。
それらを素早く退治していくのだが、チョコロールの活躍がめざましい。いつの間にやら彼女の手にはバトルアックスが握られていて、それら植物系モンスターを一刀両断にしてしまう。
これは確かに俺のレベルの1.5倍相当である、レベル60代と言えるだろう。難なく19階層を踏破した俺たちは、20階層のボスモンスターのいる部屋の前までやってきた。
脇からこっそりのぞき込むと、巨大なトレントが1体、大きなトレントが4体居た。
「じゃあ段取りはいつも通りだな?」
「最初に皆にバフを掛けて、直ぐにファイヤーボールの準備をするから。」
「エリックは中位の火の精霊の準備を頼む。」
「わかった。」
「前衛は、ファイヤーボールの衝撃波と熱風が弱まったと同時に飛び出すぞ。」
素早く会話をするも、段取りはいつも通りだ。
エステルには事前に対物・対攻撃支援魔法を俺とブリット、ヘンリク、エイナルに掛けて貰い(チョコロールには支援魔法などのバフは効果が無いそうだ。その代わりデバフ抵抗も非常に高いのだとか・・・)、続けざまに、ファイヤーボールの準備だ。
エリックも中位の火の精霊を準備して貰う。
エステルの魔法の準備が整った所で合図を送る。すぐさま隠れていた場所からエステルが飛び出し、ファイヤーボールを打ち込む。そして俺を盾にするように背中へ隠れる。少しすると爆音が響き渡った。
熱風が弱まった所で、部屋へ突入する。今回はクリティカルしなかったようだ。
しかし、トレントの体はファイヤーボールの余波で燃えている。レベル40代のファイヤーボールの威力はクリティカルしなくても絶大だ。
こちらがトレントに取り付く前にだめ押しの一撃が、ヘリックから放たれた。
これで取り巻きのトレントは片付いた。後はボスのトレントのみとなり、前衛が一気に取り囲む。
しかしチョコロールの見事な一撃で一刀両断にされてしまった。結局前衛のお仕事は何も無く、ただ走っただけとなってしまった・・・。
「いや~・・・チョコロールちゃんの一撃は見事だったね~あたし等の仕事がなくなっちゃったよ~」
ブリットも感心したように、チョコロールを褒める。
「え!?・・・いえ・・・そんな・・・ただ皆さんのサポートをと思って必死になってただけです・・・」
彼女たちがそんな会話をしている間に、俺とエイナルは隠し通路の場所を探す。
「構造が一緒なら、この辺だが・・・」
そう言いながらエイナルは手探りで場所の特定に努めていた。
「あった!やはり基本は一緒のようだ。」
「取りあえず、今日はこのまま20階層の転移ポータルを登録して地上へ戻ろう。1日で10階層踏破はさすがに骨が折れる。」
多分地上へ戻れば夕方だろう。チョコロールも気にはなるだろうが、焦りは禁物だ。明日の段取りも一回経験している。そんなに時間も掛かるまい。
「あ・・・明日にはお姉ちゃんに会えるんですね!」
「ああ、動力炉もちゃんとあるしの。」
そう言って、地上へ戻った。地上へ戻ると丁度夕方を過ぎようとする時間だった。
宿へと戻り、夕食を挟みながら、明日の段取りを確認する。特にこれと言った事は無いのだが・・・念の為だ。
「明日は他の冒険者の目に付かんように早めに出発しよう。隠し通路の場所は特定出来ておるから直ぐに向かう。」
俺は明日の動きを確認していく。
「チョコロールちゃんの時にはアバターやステータスの設定をお任せにしちゃったけど今回はどうするの?」
エステルは前回の事を思い出し確認してきた。
「ワシ等は文字が読めんからのう・・・」
「じゃあ、基本はお任せと言う事で良いかしら?」
「そう言う事になるかのう。」
そんな会話をしながら夕食を済ませ、明日に備えて早めに就寝した。
翌朝は早めに宿を離れ、第1号遺跡の20下層へ向かった。
事前に隠し通路の場所は確認してあったので、直ぐに扉を開け中へ入る。すると前回と同じように全員が入ると扉は自動的に閉まった。突き当たりの転移ポータルへ移動し、そこから石櫃の眠る扉へ向かう。
扉の鍵を開ける為、魔法鞄の中から黄金の鍵を取りだし、鍵穴へ差し込み鍵を開けた。
中に入るとそこは、チョコロールが眠っていた部屋と全く同じ構造だった。奥には石櫃があり、直径15センチの穴が開いている。そこへ動力炉を収める為には、こちらの部屋の机にある直径15センチの穴から通す必要がある。シャッターは閉まっているが間違いないだろう。
第1号遺跡にあった動力炉はヘンリクが持っている。
「ヘンリク。お前さんの魔法鞄に仕舞ってある動力炉をこの穴へ入れるんだ。」
ヘンリクはおもむろに魔法鞄から小箱を取り出し、中の動力炉を取り出す。すると穴の閉じていたシャッターが音を立てて開いた。
ヘンリクは緊張した面持ちで動力炉を中へ入れた。すると動力炉は石櫃へ吸い込まれていき中へ収まった。石櫃が淡い光を放ち机の前には操作パネルが現れた。
「じゃあ、昨日の打ち合わせ通りお任せで良いわね。」
エステルは最終確認と言わんばかりに言ってきた。すると、
「ちょ・・・チョット待って下さい。その操作は私に任せて貰えませんか?姉達の基本ステータスは私の中にも記録があります。それを参考にします。」
「出来るというのであればワシは構わんが?」
「私も異議無し。」
「「「「同じく」」」」
全員同調したのでここはチョコロールに任せる事にした。
チョコロールはもの凄い勢いで操作パネルのキーボード?を操作し、何やら変更を加えていく。その表情は真剣そのものだ。
暫く待つと操作が完了したのか、チョコロールは『ふぅ・・・』と、ため息を漏らし流れないはずの汗をぬぐう仕草をした。
「こ・・・これで私の知っている姉になるはずです。」
そう言ってエンターキー?を弾くと、石櫃が輝きだした。暫く待つとその強い光の輝きも収まった。
近づくと石櫃が大きく開かれた。中に居たのは、どう見ても中学生位にしか見えない、メイド服を着た金髪の少女だった。
暫く起きるのを待つと、その少女はっゆっくりと上半身を起こし、目の焦点の合わないまま、俺の時と同じように、
「型式番号001、光のエクレア、冒険者ヘンリク = ベリルンドをマスターと認証しました・・・」
と言って覚醒した。
「お・・・お姉ちゃん!」
そう言って覚醒したばかりのエクレアに、チョコロールが抱きついた。受け止めたエクレアも驚いた様子だ。こう言う所、人間くさいけど、ゴーレムなんだよな?しかもこの子も洋菓子の名前なの?
そんなしょうも無い感想を抱きつつも俺は、念の為に確認する。
「スマンが確認じゃ。お前さん、自分の事は解るか?」
「はい。私はカヌレ博士に作られた対魔族用決戦ゴーレム、型式番号001、光のエクレアです。」
うん。大丈夫なようだ。
「詳細は追々話す(チョコロール経由で・・・)として、大事な事だけ伝えとおこうと思う。魔法大国はもう既に無い。ついでに魔王領というのも無い。よって魔族と戦う必要も無い。解ったかの?」
「!!!なっ!?それでは魔族は滅んだと言うのですか!?」
「それはワシにも解らん。詳しい話は宿に戻ってからだ。あと、君のマスターはこいつだ」
そう言ってヘンリクを紹介した。
「よ・・・よろしく。」
「あなたがマスターか!私はあなたの剣となり、命の限りお守りしましょう!」
エクレアは飛び起き、ヘンリクに向かって騎士の構えで畏まった。メイド服姿で畏まられても違和感しか感じない・・・。
堅いなあ・・・と思いつつも口には出さない。まじめ同士、気が合うかもしれない。端から見れば良い兄妹に見えるかもしれない。
部屋の隅にある転移ポータルで、20階層経由で事情へ戻るとまだお昼前だった。
冒険者ギルドの出張所で明日、第2号遺跡へ向かう旨と、15階層での隠し扉の発見の報告を行う。
魔鉱石は持ち帰りだ。俺の魔法鞄は魔鉱石だけで既に200kgを超えた。重さは感じないが、あと2カ所廻って回収すると、合計500kgを超える事になるだろう。魔鉱石を燃料として使うべきか、売却して食費を確保するか悩みどころだ。
冒険者カードを提示すると、レベルが1つ上がっていた。これでレベル42になったと言う事だ。
ヘンリクの冒険者カードにも、「所有欄 型式番号001:光のエクレア」と記載があったので訝しむが、しらばっくれて冒険者ギルドの出張所を後にした。
宿で昼食を取る事にした。こんな時間に宿に居るのは俺たちぐらいなものだ。他は遺跡に潜っている事だろう。
エクレアにも魔鉱石を渡す。その魔鉱石を手に掴むとエネルギーの補給は完了する。エネルギーとして使われた魔鉱石は塵となって消えてしまった。
「さて、詳しい話はチョコロールに聞いて貰うとして、ワシたちはお前達の姉妹6人全員を見つけて復活させると約束している。明日も君らの姉妹を探す為に移動するが了解してくれるかの?」
「そんな約束をチョコと・・・ありがとうございます。私としても姉妹と共有する情報の欠落が激しい為に、今は有益な情報を大してお話し出来ませんが、姉妹が揃えばそれも可能になるはずです。旅は是非ご一緒させて下さい。」
と言う事で、同行者が一人追加となった。明日は第2号移籍へ向けて出発だ。ヘンリクにも俺と同じ気持ちを味わって貰おう・・・
「ムッ!ヨーンが何か悪い事考えてる!」
ブリットにバレた・・・
あ・・・だけど昆虫か・・・ブリットは大丈夫だろうか・・・?
新キャラが増えていきます。ちゃんとコントロール出来るか見守って頂けると幸いです。




