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古代魔法大国期のメイドゴーレムが仲間になった

 滞在7日目、予定では今日が最終日だ。20階層のフロアボスを倒して、転移ポータルは登録してある。


 今日の目的は、そのフロアボスがいた場所に存在した隠し通路を攻略する事だ。何が待っているのか?またもっと大きな「球体」があったりするのだろうか?


 そんな不安と期待が胸に去来し、昨夜はうまく寝付けなかった。


 早朝、全員が揃うと早速転移ポータルを利用して、20階層へ向かう。


 他の冒険者はいないようだ。昨日隠し通路を確認してあった場所へ向かい、通路を開けて貰う。


 やはり隠し扉の時とは違い、今まで壁だった場所が四角く切り取るようにへこみ『プシュッー!』と言う空気の抜ける音とともに横へスライドし扉が開いた。


「いよいよね・・・。」


 緊張した面持ちでブリットが呟く。


「ああ・・・。」


 その緊張に当てられたのか、俺も言葉が続かない。


 隠し通路に入ると自然と扉が閉まった。言い換えれば閉じ込められたような物だ。覚悟を決めて隠し通路を暫く進むとそこは行き止まりだった。


「!?どういうことだ?」


 そこには何も無かった。するとエステルが声を掛ける。


「よく見て。そこに転移ポータルがある。」


 確かによく見てみると突き当たりの足下には、幾何学模様で描かれた魔法陣があった。


 しかし、いつも地上と階層を行き来する、転移ポータルの魔法陣とは違って見えた。


「これ、上位の魔法陣だ・・・。」


 エステルはその魔法陣を読み解き説明してくれた。


「この魔法陣で先に進めるみたい・・・。」


 俺たちは互いに顔を見つめ合い、意を決して魔法陣に飛び込んだ。全員が中に入ると魔法陣が輝きだし魔法が発動した。


 そして先が続く通路に転移された事に気付く。さらに通路を進むと一枚の扉に突き当たった。そこには鍵穴があった。


 その鍵穴のサイズには思い当たる物が有る。あの黄金の鍵だ。おもむろに魔法鞄から黄金の鍵を取り出しその鍵穴に差し込んでみる。サイズはピッタリはまった。


 緊張のあまり舌が乾く・・・ゆっくりと鍵を回してみた。すると『カチンッ!』と鍵の開く音が聞こえた。鍵を鍵穴から抜くと、扉が自動的に横へ開いた。


 扉をくぐり中へ入ってみると、そこは広い空間になっていた。


 よく見ると奥には1つの石櫃が置かれていた。近づいてみるが、石櫃の少し手前で見えない壁に突き当たった。


 ガラスのような物だろうか?それ以上先には進めない。


 石櫃のサイズは、幅100cm、高さ80cm、奥行き150cm位だろうか?

その石櫃には直径15cm程の穴が開いていた。


 俺たちのいる部屋を良く見渡してみると、何かの研究室のようにも見える。石櫃に近づく方法が無いか皆と手分けをして手段を探した。


 するとエイナルが、


「ここにあの「球体」が入りそうな穴がある」


 と言って机に案内した。


 そこを見るとシャッターらしき物で閉じていたが、確かに直径15cmほどの「球体」が入りそうな穴があった。どう見てもあの「球体」を入れる為の物のようにしか思えない。


 俺は魔法鞄から小箱を取り出し、中に入っていた「球体」を取り出した。すると先ほどまで閉じていた穴のシャッターが『カシュッ!』と言う軽い音を立てて開いた。


 やはりこの「球体」を入れる為の装置のようだ。


 しかし何が起こるかも解らないのに、そこに「球体」を入れても良いものかと瞬間的に悩んだ。


 が、何もせずこのまま帰るにしても、帰り方なんて解らない。意を決して「球体」をその穴の中に入れた。すると球体は透明な壁を通り抜け、石櫃の穴に吸い込まれていった。


 吸い込まれて暫くすると石櫃がほのかに光り出し、何か透明な操作パネルらしき物が机の上に出現した。


 操作パネルを見てみたが文字が全く解らない。ただ解るのは人の絵が描かれていて矢印が頭や顔に向いている事ぐらいだ。何となくアバターやステータスを作る時の設定画面のように見えた。隣でエステルが文字を読んでいた。


「エステルにはこの文字が読めるのか?」


 そう訪ねてみると。


「これは古代魔法文字ですね。今説明書きを読んでいるので、チョット待ってて下さい。」


 と言われた。古代魔法文字!?何か古代魔法大国期の遺産とかだったりするのか?


 もしそんな物を手にしてしまったら、冒険者ギルドの本部経由で王都に没収されてお仕舞いじゃ無いか?


 そんな事を考えていたら、エステルが説明書きを読み終えたようだ。


「これ、私たちが居た世界で言う、ゲームのアバターやステータス設定の制作に似た作業みたい。」


 え?アバター?ステータス設定?予想通りになったけど、何でこの部屋にそんな近代的な物が有るんだ?それよりもそれってゲームとかでの話だよね?


「はい?アバターの制作?ステータス設定?何でこっちの世界でそんなのがあるんだ?」


 俺は思ってしまった事を正直に口にしてしまった。


「それは解らないけど、『メイドゴーレムシリーズ』って書いてあります。」


 古代魔法大国期の『メイドゴーレムシリーズ』!?もう何でそんな物がここに有るのかさえ理解が出来ない。


「エステル、そのアバターの制作とステータス設定の作業って任せられるか?」


 全く状況について行けなくなってしまった俺は、エステルに丸投げをする選択をしてしまった。


「ん~出来なくは無いけど、一応「お任せ」って言う項目もあるみたいですよ?」


 唇に人差し指を当てて、古代魔法文字とにらめっこをしていたエステルはそう答えた。


 なら「お任せ」でも良いんじゃないだろうか?


 しかし、ゴーレムという単語が引っかかる・・・まさか巨大な決戦兵器みたいな物が飛び出してくるんじゃ無かろうか・・・?


 そんな不安を抱えながらも皆の顔を見渡す。皆も少々引き気味だ・・・

 えーいっ!ここまで来たのなら引くに引けないし帰り方も解らない!


「じゃあ、「お任せ」で・・・」


 言葉が続かなかった・・・


「じゃあ、「お任せ」でっとっ・・・」


 そう言って操作パネルを操作しだした。最後に決定ボタンだったのだろうか『パチンッ!』と指ではじき、暫くすると石櫃の淡い光が強く輝きだした。


 最初は何か暴走しているのでは無いかとも疑ったが、石櫃は光を放つばかりで何が起こっているのか解らない。


 こちらとしても黙って事態の収束を待つしか無かった。暫くすると、石櫃から放たれていた光が収まり、淡い光も無くなっていた。


 その様子を透明な壁越しに見ていたのだが、突如、その透明な壁が無くなって先へ進めるようになっていた。


 俺たちは先ほどまで光っていた石櫃に恐る恐る近づいていった。すると石櫃の蓋が大きく開かれた。


 皆で中をのぞき込むと、中には一人の少女が眠っていた。容姿は整った顔つきに、髪はブロンド。眠っているので髪型は解らなかった。着ている服はメイド服だった。


 しかし問題があった。どう見ても背格好が中学生ぐらいにしか見えない。


 起こして良い物かと悩んでいると、そのメイドが目を覚ました。おもむろに上半身を起こすと、こちらが見えていないのかポニーテールを揺らしながら、目の焦点が合っていない状態で何やら言葉を発する。


「型式番号006、地のチョコロール、冒険者ヨーン=オロフソンをマスターと認証しました・・・」


 はい?俺をマスターと認める?そもそも起きたばかりの少女が、何をもって俺をマスターと認めたのか?


 ましてや自己紹介すら行っていない。しかも旨そうな名前だ。

 すると、本格的に目を覚ましたのか、俺たちの存在に気が付くチョコロール。


「え!?あれ!?ここは?」


 彼女は自分の身に何が起こっているのか、理解が追いついていないようだった。


「ここは、第4号遺跡の中じゃ。偶然隠し通路を見つけての。そこでお前さんが眠っておった。」


 8割嘘だが、これ以上挙動不審になられても困る。まずは安心させないといけない。


「まずは自分の事は解るかの?」


「え?・・・あの・・・はい・・・私はカヌレ博士に作られた対魔族用決戦ゴーレム、型式番号006、地のチョコロールです。」


「対魔族用決戦ゴーレム?まあそれは良いとして、それで、さっきワシの事をマスターと認証すると言っておったが覚えておるかの?」


「えと・・・はい。私どもの動力炉を装填した者をマスターとして登録するよう作られております。既に、ヨーン様のカードには私が登録されております。」


 カードって、ひょっとして冒険者カードのことか?そう思い至り確認してみると、確かに、所有欄と言う項目とともに「型式番号006:地のチョコロール」と名前が載っていた。


「こんなことが出来るとは・・・お前さん、さっき対魔族用決戦ゴーレムと言っていたな?それはなんじゃ?」


「えっと・・・魔法王国に隣接する魔王領からの侵略に対抗する為の兵器としての役割です。」


 魔王領?その名場所は聞いた事も無いし、俺の知識にも無い。


 ただ俺の記憶に1つ引っかかる単語が出てきた。魔族だ。確か、作れるキャラクターにバンパイアなどの魔族があったはずだ。


 しかし今のところ、この国でそれらしき種族は見た事が無い。それに、ワールドマップにも魔王領という地域は存在していなかった。ひょっとすると、他の国や地域では魔族が居るのかもしれない。


 まあそれは一端棚上にげしておこう・・・。


「スマンが魔王領というのは聞いた事が無いのう・・・それに魔法王国も既に無いぞ?」


 俺がそう伝えると、


「ええええ!!!じゃあ、私はどうしたら良いんですかぁ~!」


 と泣き出してしまった。


「少女を泣かすドワーフの姿は絵にならないねえ・・・」


 ブリットがからかってくる。


「ねえ、チョコロールちゃん、これもあなたの言う動力炉よね?何か知ってるの?」


「あ!それはお姉ちゃんの動力炉です!と言う事は本当に魔族はもういないんですか?」


「う~ん少なくとも私は会った事は無いかなぁ・・・」


 ブリットも言葉を濁した。チョコロールも気落ちした様子で、俯むいてしまっている。


 その後も話を続けたが、どうにも要領を得ない・・・とにかく何時までもここに留まる訳にも行くまい。


 チョコロールは俺がマスターと認識してしまっている。同行させるにしても今後の事を考えると気が重くなってきた・・・。


 また、さっき言っていたお姉ちゃんと自分を含めて、全部で6体の姉妹が居るそうだ。きっと各遺跡で集めた「球体」が動力炉で、全ての20階層に眠っているのだろう。


 皆の顔を見る。気持ちは同じようだ。意を決してチョコロールに伝える。


「乗りかかった船だ、チョコロールの姉を全員見つけてやろう!」


「え・・・え!良いんですか!?」


「言ったじゃろ?乗りかかった船じゃ。気にするな。そう言えばさっきの話の続きだが、決戦ゴーレムと言う事は少しは戦えるのかの?」


「え・・・あ・・・はい・・・マスターのレベルの1.5倍相当の出力で、前衛職として戦えるようになっています。」


「1.5倍!?それはステータスも反映されるのか?」


「いえ、基本ステータスはゴーレムごとに・・・?すみません記憶が・・・」


「何じゃ記憶が飛んどるのか?」


「いえ、そういう訳では・・私たち姉妹で共有しているものの情報は、全員揃わないと引き出せないんです。」


「なる程の・・・ステータスに関しての情報は、他の姉妹が持っていると言う事じゃな。」


「あ・・・はい・・・その通りです・・・」


 魔法大国時代はきっと、前衛で戦える兵士が居なかったのだろう。


 その為にゴーレムを前衛に据えて自分達は後方支援に徹して、その魔王領の魔族と戦っていたのだろう。


 しかし、こんな子供型にした理由は何か理由があったんだろうか?

 そんな疑問をチョコロールに訪ねてみたらこんな返答があった。


「え・・・あの・・・それは、博士の趣ッ・・・ゲフンッ!ゲフンッ!的が小さいと攻撃が当たりにくいからだと仰っていました。」


 趣味って言おうとしなかったか!?


 しかし言葉を詰まらせて咳き込むとは・・・何かセキュリティにでも引っかかったのだろうか?


「さて、じゃあ、ここから出るとするかの。と言ってもどうやって出れば良いんだ?」


「この転移ポータルから20階層の転移ポータルに出る事が出来ます。そう言って石櫃の隅にあった転移ポータルへ案内してくれる。」


「じゃあ、それを使って20階層へ出よう。」


 そう言って、新しい仲間となったチョコロールを伴って地上へと向かった。


 明日の朝には帰りの馬車になってしまう。今夜が第4号遺跡最後の夕食反省会の場だ。チョコロールにも同席して貰ったが、食事は、魔鉱石であれば1kgで1ヶ月活動出来るそうだ。俺たちと同じ食事をする場合は同じように1日3食必要になるとの事だった。


「さて、今回の事で遺跡巡り2週目を開催する事になった・・・のだが・・・このまま第1号遺跡から第3号遺跡を巡るという方法と、一度ハレックへ戻る方法がある。皆の意見が聞きたいのだが・・・」


「ん~・・・時間的な事を考えると第1号遺跡から第3号遺跡を行っちゃう方が効率的よね?」


 効率を考えればその通りだ。しかし問題がある。


「そうだな。皆のレベルも40を超えたし攻略はさほど難しくはあるまい。しかし、第3号遺跡までの間に仲間が3人増えると言う事を忘れんでくれよ。」


「だ・・・大丈夫です!お姉ちゃん達も戦えますから、人数が増えれば攻略も楽になるはずです」


 ゴーレムとは言え、早く姉達に会いたいのだろう。積極的に意見してきた。


「では予定を変更して、明日から第1号遺跡から第3号遺跡を巡る。と言う事で良いか?」


「「「「「「異議無し!」」」」」」


 と言う事で急遽第2回遺跡巡りを開催する事となったのだった・・・

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