再び第4号遺跡、11階層以下に挑戦
二日間の休息を挟み、いよいよ第4号遺跡に再チャレンジする日が来た。目標は20階層までだ。
今のレベルであれば15階層までは余裕で行く事が出来るだろう。問題はその下の階層だ。どうやって攻略していくか・・・悩み所である。
当日は予定通り第4号遺跡へ向かう馬車は出発した。2日間の道程だ。予定通りであれば2日後の夕方には到着出来るだろう。
攻略に関しては3日目からとなる。そこから一週間でレベル40まで上げて20階層のフロアボスを攻略する。
これが今のところ皆で出した結論だった。よくよく考えると穴だらけではあるが、後は臨機応変に対応していくしか無いだろう。
1日目の夕方には廃村になった村跡で野営を取る。もう野営の準備も手慣れたものだ。俺が設営の準備をしていると、ブリットが戻って来た。
「今夜はごちそうだよ~!」
そう言ってブリットが担いできたのは子鹿だった。血抜きは既に済ましてあるようで、魔法のナイフで手早く捌いていく。
この魔法のナイフは前に手に入れた、何でも美味しく調理が出来る便利な魔法アイテムだ。
捌いた肉を串に刺して焚き火の周りで炙っていく。当然調味料は欠かせない。旨そうな臭いが野営地に立ちこめる。
周りの冒険者は干し肉を囓っているから申し訳ないと思うのだが、これも狩猟技術のなせる技と幸運の女神様が化けたフェアリーの成せる技だろう。
翌日は予定通り夕方には第4号遺跡に到着した。いつも通り冒険者ギルドの出張所で登録を済ます。滞在日数は7日間だ。冒険者カードに記録が残っている為、詳細な説明は省略された。
その足で、宿泊所へ向かう。滞在日数分の料金を前払いで払い、男女分かれて部屋に向かう。
夕食時に明日の段取りを話し合う。
「明日は15階層までで良いでしょ?」
「そうだな・・・ただ15階層にも隠し扉があるからそこは押さえる。その後もし時間的に余裕がありそうなら、15階層の転移ポータルを登録して16階層へ行ってみよう。レベルより上のモンスターになるが、こっちも装備が充実しておる。やれん事も無いじゃろ?」
「そうだな。少しぐらい冒険しても良いだろう。しかし無理と判断した場合は即撤収と言うことで良いか?」
エイナルも同調するものの慎重だ。
「それで良い。初日から大けがを負っても何の得にもなりゃせん。」
俺も同意見だ。この冒険者カードの厄介な所はモンスターを倒して適正レベルに達したからと言って、直ぐにレベルアップしない事だ。
一端戻って、冒険者ギルドの出張所で冒険者カードを提出する事で得られた経験値がレベルに繁栄される。あしたの頑張りによってさらに下の階層へ降りる事が出来るか判断出来るようになると言うことだ。
翌日は朝早くから準備を済ませて、11階層からスタートだ。15階層までは難なく踏破出来た。15階層の隠し扉も俺の記憶通りの場所にあった。
「エイナル、ここに隠し扉があるはずだ。頼む。」
そう言うといつもの作業に取りかかる。扉は直ぐに発見された。中に入ってみると宝箱が1つ置いてあった。
デカい!罠を調べてみるが罠どころか鍵も掛かっていなかった。箱を開けてみるとそこには魔鉱石が鎮座していた。5階層の隠し扉の部屋にあった魔鉱石よりも大きかった。
一体どれほどの値段が付くのか想像も出来ない。取りあえず魔鉱石を魔法鞄に収納し、隠し扉の場所を地図に書き残して場所を離れた。
地図を頼りに15階層の転移ポータルを目指した。ここまでに遭遇したモンスターは動物系ばかりだ。
しかし大型化が進んでいる。物理的にはあり得ないサイズの狼や、猫、猿などが出てくる。しかし装備を一新している俺たちの敵では無かった。
ブリットも3連撃を使いこなせるようになり、俺もパワーにものを言わせて一撃で屠って行く。
ここまでで掛かった時間はおよそ5時間だ。栄養補給の為に干し肉を囓りながら歩を進めていき、15階層の転移ポータルへたどり着く。
「夕方までには時間がある。16階層の様子を見てみるか?」
「無理の無いように15階層に近い場所に陣取ろう。」
慎重派のエイナルは安全策を提案してくる。俺も賛成だ。
「そろそろ、ライオンとかゴリラ辺りが出てくるかな?」
物騒な事をブリットが言い出した。フラグになるから止めて欲しい・・・
そして見事にブリットの予想が的中した。出現したモンスターは15階層とは異なり、肉食獣が中心だった。ライオンや虎、豹が襲いかかってくる。
むこうはレベル32相当だ。こちらはレベル31。均衡しているが、武装の差で倒す事が出来る。
肉食獣の素早い動きに対応出来ているのも心強い。今日はここで経験値稼ぎを行った。4時間程16階層にとどまりモンスターと相対した。
15階層の転移ポータルを利用して地上に戻ると少し薄暗くなっていた。その足で冒険者ギルドの出張所へ出向き、隠し扉の報告と、魔鉱石の売却、冒険者カードの提出を行った。今日の出来はレベルが2つ上がった。これならば17階層へ行けるだろう。
夕食はいつものように打ち合わせを行う。
「いや~・・・まさか本当にライオンが出てくるとは思わなかったよ~・・・」
そう言うのはブリットだ。
「いや、ブリットがそう言っていなければライオンなんて予想しないで16階層へ挑んどった。むしろ運が良かったと言えるだろう。」
「下の階層は厄介な動物が増えそうですね。」
「確かにな。だが、今の武装だったら十分戦える事も良く解った。慢心はせず階を進めよう。」
まだ20階層までは遠い。それまでは、15階層を行ったり来たりしなければならない。下に進むにつれて無駄な時間も増えてくる。最悪はエステルの魔物よけの魔法に頼る事も考えなければならない。
レベル差がどのくらいあれば効果があるのだろうか?エステルにもそこまでは解らないと言っていた。1つぐらいの差ではそうは変わらないだろう・・・。
「明日は16階層を抜けて17階層を目指そう。」
「「「「「了解!」」」」」
2日目も15階層から再スタートだ。今回は16階層も最短で抜けて17階層を目指す。
こちらのレベルが上がったとはいえ、その差は1つしか違わない。5匹連れのモンスターと接敵すれば十分歯ごたえがある。
自分は元々タンクが役割だ。最近は攻撃が当たるようになったから攻撃重視になっていたが、基本に立ち返り無理して攻撃をするのでは無く、味方に攻撃が当たらないように守りを固める戦法に切り替える。相手の動きを止めて、味方に反撃のチャンスを作って行く。
17階層に到着すると昨日と同じように上の階に近い場所を選びモンスターとの戦闘をこなしていく。17階層にはゴリラのようなモンスターも出現してきた。
スピード型のモンスターよりもやりやすいと思ったが、一撃の重さがすさまじかった。
俺も筋力では自信があったが、レベル差がそれを補ってくる。隙を作り、エイナルやブリットが反撃をして倒してくれたが、腕が痺れている。
万が一複数体と接敵した場合は耐えきれないかもしれない。作戦を変更する必要があると思った。
「ここからは作戦を変えよう。」
「どうしたの?」
ブリットが何かあったのかと心配顔で顔を見てくる。
「あのゴリラもどきのパワーが凄すぎる。今も腕が痺れておる・・・」
こんな攻撃を何回も食らっていては体が持ちそうに無い。
「そんなに!?」
俺の筋力を信頼してくれていたのだろう。俺がそんな事を言うとは思いもしなかったようだ。
「ここからは前にもやったが遠距離攻撃主体にしよう。弱らせた所を攻撃する。エステル、ファイヤーアローの準備を頼む。」
「解った。矢の数はこっちに任せて貰ってもいい?」
「やり過ぎないようにな・・・。」
エステルの幸運値は高いのだ。高確率でクリティカルする。それに新米女神様も付いているのでその発生率は7割を超える。
エイナルに斥候を頼み、モンスターをおびき出す。離れた場所からエステルのファイヤーアローを炸裂させる。
5頭のゴリラもどきもこの攻撃には形無しだ。運良く残っても2頭が精々だ。エステルの負担は大きくなるがと思っていたが、エステルは気分良く打てるからと上機嫌だった。
17階層ではこの作戦が大きく貢献した。弱った所を前衛がとどめを刺すというのは王道かもしれないが、チョット卑怯かなとも思う・・・。
しかし相手はモンスターだ。ここはきっちりレベル上げの餌になって貰おう。
この日の夕方冒険者ギルドの出張所で確認した所、レベルは2つ上がっていた。これでレベル35・・・さらに18階層を目指せる。ある意味折り返し地点だ。
夕方の打ち合わせでも、今日と同じ先方で行くと確認を取った。エステルの魔力がもつか心配だったが、回復薬はタップリ持ってきているとの事。頼らせて貰おう。
3日目、4日目は順調にレベルも上がっていった。しかし、4日目には19階層まで来ていた為、戻る時間の方が長くなってしまう。4日目までに上がったレベルは39だった。
夕食時の打ち合わせでも、5日目はもう一度19階層を攻略すべきとの意見でまとまった。
5日目は打ち合わせ通り19階層を攻略した。夕方戻り、冒険者ギルドの出張所で冒険者カードを提出すると、遂にレベルは40に達した。
これで20階層に進出出来る。予定日まで残りの日程も少ない。6日目は、フロアボスの攻略をする。
事前の調査で20階層のフロアボスがマウンテンゴリラもどきである事は判明している。同格とは言えボスモンスターだ。油断はならない。パワーでどうにかなるものでも無いだろう。いつも通り、魔法支援を中心とした戦闘に専念するのみだ。
6日目の朝、準備を整えて15階層からの再スタートが始まった。
最初はエステルの魔物よけの魔法を掛けて貰い、18階層までは順調に進む事が出来た。
しかし19階層ではモンスターと遭遇してしまった。想定外の接敵だった為、エステルの対物・対攻撃魔法を唱えて貰い反撃をしていく。
そこからはエイナルに斥候をつとめて貰い遠距離からの攻撃をして弱らせた所にトドメを刺す戦法に切り替えた。
20階層に到着してもその作戦は同様だ。最短でボスモンスターのいるフロアへと到着した。
壁越しにボスモンスターと、その取り巻きのゴリラを確認してみたが、やはりデカい・・・あのゴリラのパンチを貰えばひとたまりも無いだろう。少し離れた場所で作戦を確認する。
エステルには事前に攻撃と防御の対物・対攻撃魔法を俺とブリット、エイナル、ヘンリクに掛けて貰い、その上でファイヤーボールを打ち込んで貰う。
エリックも中位の火の精霊で攻撃して貰う。相手が怯んだ所に前衛組が攻撃を仕掛けるという寸法だ。クリティカルすれば儲けものだ。
準備を整えエステルの対物・対攻撃魔法を貰う。そしてファイヤーボールの準備が整った所で合図を送る。エステルは部屋に飛び込みファイヤーボールを打ち込んだ!
発動する直前に壁越しに戻り爆発の余波に備える為、俺の後ろに隠れて壁にする。
直後大轟音とともに衝撃波が発生した。どうやらクリティカルしたようだ。
熱風が弱まるのを確認して中をのぞき込む。すると、ボスモンスターを含め全てのゴリラもどきが倒れていた。
どうやら轟音と衝撃で気絶したようだ。すぐさま攻撃に移る。寝転んだ状態であれば攻撃し放題だ。急所の首めがけて斧を次々と振り下ろしていく。塵になるのを確認しながらボスモンスターへも攻撃を仕掛ける。
結局ボスマウンテンゴリラもどきは何が起こったかも気付かずに消滅しただろう・・・。
全てが片付いたあとエイナルに大まかな場所を指示してフロアにあるはずの隠し通路を探して貰った。
いつもより時間が掛かっている。俺の記憶違いか?そんな不安がよぎったが、エイナルは何とか隠し通路の入り口を見付けだしてくれた。
「あったぞ!ずいぶん手が込んでいたがここで間違いない。どうする?開けるか?」
そう訪ねてきたが、時間は多分夕方を廻っているはずだ。最大の難関であるフロアボスを倒したのだから、明日改めても良いだろう。
「もう時間も時間だし、隠し通路の先もどうなっているか見当も付かん。今日はよしておこう。」
そう言って、20階層から21階層につながる踊り場にあった転移ポータルを登録し地上へ戻ったのだった。
地上へ戻った後、冒険者ギルドの出張所へ出向き、冒険者カードの提出をした。レベルが1つ上がっていた。レベル41だ。十分ベテランと言われるレベルまで到達してしまった。
宿へ戻り恒例の反省会という名の打ち上げが行われた。
「20階層フロアボス討伐おつかれさま~!」
ブリットが音頭を取ってくれた。
「「「「「おつかれ~!」」」」」
皆がそれに好応する。
「しかし、エステルのクリティカル率の高さには毎度驚かされるのう」
俺は素直に感心する。彼女のクリティカルにどれほど助けられただろう。戦闘をそつなくこなせるのも、彼女の魔法のお陰だ。
「女神様パワーのお陰ですよ~」
ヨイショされるのに慣れていないのか、顔を赤くして謙遜する。
「いやいや、テーブルトークをしていた時にもそうでしたが、ここぞという時の爆発力は健在ですね!」
ヘンリクもテーブルトークをしていた頃を思い出していたのか、その引きの強さを思い出しているようだった。
「たしかに!もうこうなっちゃったら幸運の女神様の役を引き受けちゃったら?」
ブリットがニヤリとニーニャを見ながらそんな事を進言してみる。
「えっ!?それはダメ~~~!!」
するとウインナーにかぶり付いていたニーニャが、自分の存在意義が薄れるとでも思ったのか、慌ててその言葉を阻止する。
「しかし良くこの短期間でここまで成長出来たのう・・・」
「遺跡が30階層って事は、やっぱりこの上ってあるのかしら?」
確かにそれは考えられる事だろう。ただ方法がわからない。何か失われた限界突破などがあるのだろうか?
TRPGの設定では最大レベルは50になっていた。しかし、この世界が俺の知るTRPGの世界と全く一緒と言う事は言えないのかもしれない。
いまはルステーゼ王国に留まっているが、今回の事が片付いたら、その西にあるリスタニア王国へ行ってみるのも良いかもしれない。まあ、皆と相談してからの話だが・・・。
明日は20階層の隠し通路を探索しよう。何が待っているのか・・・期待半分、不安半分だ。




