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第5号遺跡に挑戦する

 第5号遺跡に挑戦する朝、皆は乗合馬車の集合所に集まっていた。


 皆準備も万端だ。エリックも鳥対策の為か、いつもより多めの矢を用意していた。


 予定通り出発したが街道がまだしっかり整備されていないせいか、馬車は良く揺れた。


 最近見かけなかったが、ひと山当てようとしていた見るからに駆け出しの冒険者がリバースしている・・・。


 こんなんで大丈夫なのかと心配にもなったが、まあ、誰もが通る道だと割り切って生暖かい目で目を逸らす・・・。


 距離では2日程ではあるが、この調子ではもう少し時間が掛かるかもしれない。


 一日目の野営の準備をする。相変わらず奇異の目で見られてしまうが仕方があるまい。その視線を無視して野営をこなした。


 翌朝日が昇るとともに旅を再開する。予定では今日中に付くはずだったが案の定たどり着けなかった。


 結局たどり着いたのは3日目の午前中だった。まあ、街道が整備されていなければこんなものだろう。森を切り開いて道を作ってあっただけマシというものだ。


 冒険者ギルドの出張所もまだ簡易的な掘っ立て小屋だった。俺たちも慣れた様子で手続きを済ませていく。


 ただ、少しずつ民家らしき家が作られているのが目に付く。聞くと、第4号遺跡からこちらに来た村人がいるそうだ。そう遠くないうちにここも他と同じく宿泊所なども出来るようになるかもしれない。


「他の遺跡と比べるのも悪いかもしれんが、まだまだこれからのような感じだの」


「まだ見つかったばかりの遺跡でしょ?これからもっと冒険者も増えるんじゃ無い?」


 ブリットもまだまだこれからよ。と言いたげに返事をする。


「さて、予定よりも遅れての到着になってしまったが今日はどうする?5階層まで行ってみるか?」


 俺としては今日は5階層まで行ってみようと思う。そして5階層の転移ポータルを登録して、明日本格的に9階層以降の調査を行う事にする。本命は10階層だ。マップには載っていない場所だがおおよその見当は付いている。


 隊列はいつもの通りだ。前衛は俺とブリット、中衛はエリックとエステル、後衛をヘンリクとエイナル。マッパーはエイナルに頼んだ。


 1階層へ降りて地図を確認する。8階層まではマップは完成しているのだから、5階層の隠し扉までは寄り道は無しだ。


 遭遇するモンスターは事前の情報通り鳥ばかりだった。最初の内は鶏などの飛ばない鳥。そのうち空中からのクチバシ攻撃が飛んでくるようになった。


 5階層まで順調にたどり着いた俺たちは、そこで不思議な光景を目にした。ヤケに冒険者が多いのだ。きっと他の遺跡でこの5階層から隠し扉が発見された為、みんな躍起になって探しているのだろう。


「う~ん・・・やっぱカンニングしてる気分になっちゃうわね・・・」


 ブリットの感想としてはやはり気が引けるのか、歯切れが悪い。


「しかし見当違いな所をいくら探しても、いつまで経っても見つからんわい。」


 俺も記憶を頼りに隠し扉のある区画へ向かった。そこはまだ誰も冒険者は探していないように思える程、綺麗なままだった。


 エイナルも指示した壁を手際よく調べていく。予想通り隠し扉を見つける事に成功した。何故他の冒険者は見当違いな場所を探していたのだろう?不思議だ。


 そこで、宝箱を回収し、5層にある転移ポータルまで移動する。

 この第5号遺跡にはまだ宿屋が無い。


 今夜から、次の定期馬車が来るまでは野営になるのだ。早めに引き払い、今夜の野営の準備を行う為に地上へ戻った。


 野営に使えそうな広い空き地を確保し、役割分担を決める。

 と言っても最近は率先して自分に向いた役割に向かって行動を開始していく。


 俺は魔法鞄から魔法のテントと魔法の食器を引っ張り出す。そしてたき火の準備を行なう。


 ブリットとエイナルは獲物を探しに森の中へ出掛けていった。

 エリックはエステルを連れて薪を確保しに出掛けていく。

 ニーニャは食器を並べるお手伝いだ。


 少しするとエリックとエステルが薪を確保して戻って来る。火をおこし終わる頃にはブリットとエイナルは獲物を確保して戻って来た。いつも通りだ。


 獲物の調理はブリットとエステルに任せ、俺は冒険者ギルドの出張所へと向かった。今日の報告を行い、5階層の隠し扉の場所を伝える。宝箱を検めて貰ったが、案の定魔鉱石100kgが入っていた。換金するか確認されたが、ハレックの街でも換金出来るからと言って、今回はこのまま持ち帰る事にした。

 冒険者ギルドの方でもまだ、これほどの物を換金出来るだけの準備が無いとの事だったので好都合だった。


 実際の所は馬車の夢が捨てきれないのだ・・・どこかのタイミングでヘンリクを口説き落とそうと考えている。


 夕食の準備が整うと、明日の打ち合わせを行いながら食事を取る。今夜は野ウサギの丸焼きだ。


 食事を終えお茶をすすりながら9階層以降の調査をするのが先か、10階層のフロアボスと倒すのが先かで少し揉めた。


「さてどうしようかのう・・・」


 俺は明日の事で悩んでいた。


「いくら適正レベル以下でもフロアボスと何度も戦うのは面倒だぞ?」


 エイナルの言いたい事はもっともだ。


「そうは言っても9階層や10階層から5階層まで戻る事を考えたら時間のロスが酷いですよ?」


 ヘンリクの言いたい事も良く解る。最短のルートをたどっても4階層分を戻るには時間が掛かるのだ。


「その前にフロアボスって何度も出てくるものなの?」


 その辺は今まで経験した事が無いから何とも言えない・・・


 明日の段取りについて喧々囂々だ。10階層の転移ポータルは11階層に向かう途中にある。10階層の転移ポータルを登録すると、次回9階層へ戻る時はまたフロアボスと戦う羽目になるのでは無いかというのが原因だ。


 一度倒したら次には出てこないという確証は無い。だからといって、5階層から9階層まで行くには距離がある。


 何とも面倒な事極まりない話だった。そこで明日はとにかく10階層のマッピングと隠し通路の捜索に専念する事で一応の話を纏めた。


 10階層のフロアボスがどれほどのものかにもよるが、厄介であれば、1階層からやり直すのも1つの手だろう・・・



結局意見は纏まらず翌日、5階層から6階層につながる踊り場からスタートした俺たちは、そのまま10階層を目指した。


 鳥形のモンスターも大きくなっていく。9階層を一端素通りし、10階層にたどり着いた時までに遭遇した鳥の中には、ダチョウやエミュー、巨大化した鶏などもいた。


 俺にとって一番厄介だったのはツバメのような鳥だった。素早い攻撃で、こちらの反撃が全く当たらなかった。


 最近反撃が当たっていただけに、パーティからも元に戻ったとからかわれてしまった・・・


 後方にいたヘンリクの反撃も当たらなかったはずだが、俺にばかり集中放火してくるのは何か釈然としない・・・


 しかもそれだけ手こずった相手に、ブリットやエイナルが難なく反撃している所を見るとやっぱり悔しい・・・。


 10階層では隠し通路を見つける事が最優先だ。

 

 マッピングの要領は冒険者ギルドのセディット氏から聞いている。10歩で一目盛りを目安に地図に書き込んでいく。


 俺自身も脳内マップを駆使し、隠し通路までの道をたどっていく。途中ズレが無いかの確認は怠らない。


 そうしている間にもモンスターにはバッチリ遭遇する。俺たちの今のレベルでは十分戦えるのだが、マッピングしながら進むと言うことは時間が掛かってしまい、モンスターとの遭遇率も必然的に高まるのだ。面倒な事この上ない。


「モンスターと遭遇しないで済む魔法が無いものか?」


 と、エステルに冗談のつもりで聞いてみた。


「ん~あるよ。」


 と事も無げに言ってきた。


 何でも最近買った中級魔法書にあったというのだ。この魔法の問題は、自分よりも弱いモンスターを寄せ付けないというものらしい。


 ならばレベル的には十分だろう!早速魔法を唱えて貰った。それからはモンスターとの遭遇はぱたりと無くなった。たぶん、ニーニャの幸運値との相乗効果だろう。


 どうにか隠し通路のある道へたどり着いた。


「あった。ここだ。間違いない。エイナルすまんが頼めるか?」


 エイナルに頼んで調べて貰う。俺の記憶に間違えは無かったようだ。隠し通路の扉を開けて貰い進んでいく。この通路も既に見慣れた光景だ。小部屋の真ん中には小箱が置かれている。中を確認するそこには直径15センチ程の「球体」が仕舞われていた。小箱をエリックに預け、小部屋を後にする。


「さて、このままマッピングの作業をしてこの隠し通路の偽装を行うとするかのう・・・」


「ヨーン悪い顔になってる・・・」


 ブリットが半眼でこちらを見ている・・・知らん!


 隠し通路から出てきた俺たちはそのまま戻る訳には行かなかったので、夕方になる頃までマッピング作業を行った。


 頃合いを見てフロアボスへと挑戦だ。事前に仕入れていた情報には、巨大な鶏がフロアボスとして陣取っているという。


「さて、ここの鶏は焼き鳥にでもして食ってやりたいが、超音波攻撃で万が一にも足止めされたら敵わん。エステルは最初、サイレンスの魔法を敵の中心に放り込んでくれ。それが終わったらファイヤーアローで焼き鳥の刑にしてやってくれ。」


「解った。だけど、サイレンスの魔法の効果は皆にも影響しちゃうけど大丈夫?」


「皆も戦闘には大分慣れてきた。意思疎通は出来るだろ。」


 エステルのファイヤーボールで焼き鳥にしてやろうかとも考えるが、1つ厄介な攻撃があるという。それは、超音波攻撃だというのだ。十分なレベルで挑めば耐える事が出来るという。


 今回の戦闘では、エステルにはサイレンスの魔法を唱えて貰うよう頼んだ。飛べない鳥なら十分前衛にも勝機はある。


 エステルの魔法の準備が整った所で、俺とブリット、ヘンリク、エイナルが飛び出す。エリックは弓で攻撃だ。


 全高5mはありそうなボス鶏は俺たちが接敵する前に超音波攻撃を仕掛けてくる。しかしその時には既にエステルのサイレンスの魔法が発動した後だった。


 こちらの声も届かない空間の中で戦闘が行われた。


 取り巻きの鶏は4羽だ。サイレンスの魔法を唱え終えたエステルは、次にファイヤーアローを準備していた。それぞれに2連射ずつの最大10連一斉攻撃だ。狙い違わず各鶏に2発ずつ命中していく。


 そのうち3羽はクリティカルし一撃で屠った。残りの鶏も虫の息だ。それはヘンリクに任せた。


 ボス鶏はとにかく大きいので、立たせておくと首まで攻撃が届かない。それならばと足を狙って攻撃する。羽をばたつかせた時の風圧も凄い。何度目かの足への攻撃で鶏がバランスを崩し倒れ込む。


 ブリットとエイナルはその隙を見逃さず急所の首へ集中的に攻撃を仕掛けた。俺もそれに参加する。何度目の攻撃だっただろうか大人しくなったと同時に塵と化した。


 今回は危なげない戦闘だったと思う。あの大きさが面倒だったが・・・今から5階まで戻って転移ポータルで地上へ戻るのは得策では無い。


「時間的に5階層まで戻るには無理があるだろう。今回の鶏はそんな厄介でも無かったし、10階層の転移ポータルを利用しよう。」


 俺はそう提案し、皆も賛同してくれた。地上はもう良い時間だろう。魔法のテントなども盗難防止の為に魔法鞄に仕舞ってある。ここは再度鶏と戦闘する覚悟で10階層の転移ポータルを登録する事に決めた。



 地上へ戻ってみると、結構良い時間になっていた。昨日の場所はもう他の冒険者が設営してしまっているかと思ったが、運良くテントふた張り分位は残っていた。


 近くの冒険者に声を掛けテントを張る事に快諾を貰い準備を進める。要領は昨日の通りだ。


 準備を済ませニーニャに留守番を任せた俺は冒険者ギルドの出張所へ顔を出し、10階層で書き進めたマップを提出した。


 戻って来るまでに結構時間が掛かった所を見ると、相当更新出来たのでは無いだろうか?


 その後で10階層から再スタートした場合、フロアボスとはまた戦う必要があるのか訪ねた所、一度倒したら次は現れないと言うことが判明した。


 どうやらこの冒険者カードに討伐したボスクラスのモンスターが登録されるようだ。冷静に考えてみると、確かにフロアボスからドロップする魔鉱石は他のモンスターより大きい。それを独占するグループが現れる事も考えられる。良く出来た話だ・・・この遺跡が特殊なのか?モンスターが塵になって消えるし・・・


 それよりもこの冒険者カードってどういう仕組みで出来ているんだろう!?今更ながらに疑問に思えてきた。


 経験値が入ってレベルが上がるとステータスも上がって、その効果が肉体に反映される?どんな仕組みなんだろう。


 一からスタートしていないからその辺の仕組みは良く解っていない。後でニーニャに聞いてみようと思った。


 テントに戻ると夕食の準備が出来ていた。


「スマン遅くなった。マップの更新が思いの外進んだようだ。その更新で時間が掛かってしもうた。」


「お疲れ!明日はまたあの鶏退治から始めるのかな?」


ブリットは少しゲンナリしながらそう言った。


「いや、一度倒したボスモンスターにはもう遭遇しないらしい。冒険者カードに登録されるらしいぞ?」


「え!?何それ?そんなシステムがあるの?」


「どうもそうらしい。」


「ニーニャは何か知らんのか?」


「その冒険者カードは、登録の際に血を一滴垂らすんです。そうする事で、冒険者カードには所有者のレベルやステータス、スキルなどに加えて、倒したモンスターが記録されていくんです。その記録が経験値としてレベルに反映されるんです。だから冒険者では無い一般の人にはレベルも無ければステータスもありません。」


 女神様モードで説明してくれた。しかし理解は出来ても納得が出来ん。


「じゃあ、冒険者を辞めるって事は出来るの?」


 ブリットが訪ねる。


「辞める事は出来ますが、冒険者カードは生涯残りますね。」


 なるほど。一度冒険者になれば、生涯ステータスとレベルに付き合っていかなければならないと言うことか・・・


「カードを燃やしたり、破き捨てることは出来んのか?」


「カードは特殊な魔法素材で出来ていますから、破くことも燃やすことも出来ませんよ?」


 ん?そのカードは何処で作られているんだろうか?何か古代魔法大国期に関係しているような気がしてきたが、そこまでは解らないとニーニャは答えた。



 3日目は順調に10階層と9階層のマップ更新に貢献した。エイナルの魔物よけの魔法がきわめて役に立った。


 4日目は帰る予定だったが、定期馬車の遅れで1日延びることが判明した。その為この日も地図の更新に勤しんだ。ついでに馬車を購入しようと提案することも忘れない。


「マイ馬車だったらこういう時に遅れたりせんぞ」


 などと言って馬車の有用性を説いたが、


「ダメです!」


 全く通用しなかった。定期馬車は4日目の夜に到着し、5日目の朝出発となった。帰りも半日延び2日半の道程だった。3日目の昼に到着した。


 新しい武具の受け取りの予定日は明日だったので、「ヤンの武具店」には立ち寄らずパーティは自由解散にした。俺はハレックの街の冒険者ギルドに預かった地図を返却しに立ち寄った。


「あ!ヨーンさん~お疲れ様です~支部長ですか~?」


「セディット氏は居るかい?」


「今呼んできます~」


 と言って、奥へ呼びに行った。直ぐにセディット氏が現れて、応接室に招かれる。


「マップの更新だが一応ここまでやることが出来た。確認して欲しい。」


 そう言って預かっていたマップを渡すと大分更新が進んだことで大いに喜ばれた。


 そのあと、帰りに「ヤンの武具店」へ立ち寄った。


「よう!ヨーン。受け渡しは明日だったはずだが?」


「解っている。今日はこれを預けに来た。」


 そう言って魔鉱石100kgを渡した。


「おいおい!本当に作る気じゃ無いだろうな?」


「いや、まだ許可がおりんから暫く先だ。ただきっと馬車は必要になってくると思う。その時の為のものだスマンが預かっていてくれ。」


「まあ預かるのは良いが出来れば早めに決めてくれよ。」


 親父さんに念を押されてしまった。俺としては直ぐにでも作りたいのだが・・・


 今回の遺跡探索ではレベルは上がらなかった。そろそろ、このレベルでこの階層では限界なのだろう。


 まだ第6号遺跡が残っている。それが終われば第4号遺跡でレベル上げをしよう。

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