新しい遺跡?発見王都経由で情報収集
宿に戻った俺達は、夕食を取りながら新しい遺跡が発見されたことを素直に喜んでいた。しかしまだ発見されたばかりだろう。
俺の頭の中にあるマップもおぼろげだ。出来れば20階層まで誰かが踏破して、マップが完成するのを待ちたいと考えていた。もし時間が掛かるのであれば皆で頑張って踏破するしか無いのか?そんな事を考えていると・・・
「食事中の考え事は禁止だよ。」
ブリットに窘められた。自分の手元をよく見てみると、穴だらけのウインナーがあった。しまった。今後のことを考えていたら、つい深く考え込んでしまっていたようだ。
「スマン。今後のことを考えていたらツイな・・・」
「それで、新しい遺跡にはすぐに向かうの?」
「出来れば最低10階層までのマップが出来るのを待ちたいのう・・・それともみんなで挑戦してみるか?」
「それも面白そうだね。今までが、カンニングしてた感じだし・・・」
言われてみれば確かにその通りだ。事前にあったマップを元に、未発見の隠し扉や隠し通路を発見してきたのだから、張り合いが無かったのだろう。
「皆がそれで良いと言うのなら、王都で少し時間を取って、それからハレックへ戻ろう。」
出来れば新装備にしてから遺跡に挑戦したいと考えた。そのあとは、レベルを最低40にして、20階層の隠し通路へ向かわなければならない。そこに今回集めた「球体」の謎があるような気がしてならない。
「新しい遺跡へ挑戦するなら、今回結構無理もしましたし、少しゆっくりしてからでも良いかもしれませんね」
「そうだな。王都経由でハレックの街に到着したあと、新しい武具が完成するまでは、ゆっくりするとしよう。」
ヘンリクの申し出を了承しつつも、今後の予定を確かめた。
「王都にはどのくらい滞在するの?」
「ギルド本部に挨拶もしようと思っておるから、王都には2日程滞在して3日目には出発しようかと思うがどうだ?」
エステルは王都の魔法屋に行きたいと言っていた。2日あれば足りるだろうか?他に買い物をしたいというのであれば、もう少し滞在を延ばしても良いかもしれない。
「前回ゆっくり散策もしたから街の様子は何となく解るし、2日もあれば大丈夫出よ?」
「じゃあ、宿も前回と同じ場所を取りましょう。」
そんな話で盛り上がる。俺も魔鉱石の武具のことが気になる。王都に着いたら武具屋を廻ってみようと思った。
翌朝、王都行きの乗合馬車で王都へ向かう。到着するのは予定通りであれば3日目の昼頃だ。道中何のトラブルも無く王都へ到着出来た。
しかしキャンプセットが役に立つ。これを選択したのは正解だったと思う。
一瞬で広がる魔法のテントを出すと、同行者がビックリするのだ。狩りに行けば豊富な食料が手に入る。他の同行者が干し肉をかじっている傍らで、新鮮な肉や魚を頬張っているのだから逆に申し訳なくなってしまう。
やはり今後のことを考えると、気兼ねなく旅をするにはマイ馬車は欠かせないのでは無いだろうか?
馬車の乗り合い所を後にしたヨーン達は、早速前回利用した宿へ向かった。そこで個室を取ると各自解散となった。
俺は冒険者ギルドへ向かった。ギルマスのマーリンに会う為だ。冒険者ギルドの本部に到着し、受付のお姉さんに挨拶する。
ふと垂れ耳犬娘受付嬢さんを思い出す。(元気にやってるだろうか・・・)
「ハレックの街で冒険者をしているヨーンと言う。ギルドマスターのマーリン氏に会いに来たのだが、取り次いで貰えるだろうか?」
そう言って冒険者カードを提示して見せた。確認する受付嬢さんは、
「お噂はかねがね伺っております。ギルドマスターに面会ですね。少々お待ち下さい。」
丁寧に応対された。ウワサって、どんな噂だ!?思い当たることを思い浮かべていると、マーリン嬢が顔を出した。
「ヨーン。良く来てくれたな!お前達の活躍は噂で耳にして居るぞ!」
そのウワサって、どんな噂か問い質したい!そんな事を思いつつも、そこは抑えて本題を切り出す。
「新しい遺跡が発見されたそうだが?」
「ああ、もうその情報が耳に入ったか?話によれば、情報の出所はヨーンだったそうじゃ無いか!今じゃ街道の整備が進んでいる最中で、一攫千金を狙う冒険者が殺到しているそうだぞ?」
マーリンはそう言ってガハハと豪快に笑う。
「それと隠し扉から出土した魔鉱石の量には驚いた!そのまま市場に流出すれば魔鉱石の相場が下落しかねない量だ。今は冒険者ギルドで一括管理して、市場に混乱が出ないように管理している。良くこれだけ頻繁に隠し扉を見つけられるものだな?」
何か知っているのでは無いか?という疑いの眼差しを向けてくるが、俺は誤魔化した。
「ワシたちにはフェアリーという幸運の女神様が付いておる。そのお陰だろな。」
女神であることには間違いない。新米という肩書きが付くが・・・それに、俺の知識がある。隠し扉があることは事前に承知しているのである。見つけることが出来るのは当然なのだ。
「ちなみに、新しい遺跡の進捗状況や名前はどうなっておる?あと、今ある遺跡を廻って気付いたんだが、そこに出没するモンスターに特徴があるようだ。新しい遺跡も何か特徴があるのかの?」
「遺跡は見つかった順に名前が付けられた。ハレックの街の東北東の遺跡が第5号遺跡、北北西の遺跡が第6号遺跡と名付けられた。進捗はまだ始まったばかりだからな。7階層までは順調に進んでいるようだが、8階層からはまだ地図も継ぎ接ぎだらけだ。各遺跡で出没するモンスターの特徴だが、第5号遺跡は鳥型、第6号遺跡はアンデットだそうだ。特に第6号遺跡のアンデットは魔法効果の無い武器ではダメージが通らないと言う報告が入っている。」
そう言って、最新の地図を持ってきてくれた。確かにどちらの遺跡も8階層より下は継ぎ接ぎだらけだ。それに、出没するモンスターも厄介だ。
しかし、10階層まではマップが続いている。しかし俺の知識と照らし合わせても、そこには隠し通路につながるルートにはまだ届いていない。
「そう言えば、元盗賊団のアジトだった場所の調査は進んでいるのか?」
「そっちは調査団を送っているけど、これと言った進歩は見られないね。」
「しかしこの短い期間でレベルも大分上がったみたいだね。そろそろ装備も一新した方が良いんじゃないかい?もし当てが無ければ紹介するよ。」
親切心だろう。オススメの武具屋を紹介してくれた。
「有難いが、ハレックの街にも腕の立つ武具屋の親父が居る。もう既に発注してあるから、到着する頃には出来上がっているだろう。」
少しサバを読んだが丁重にお断りをした。そのあとは他愛の無い話をして冒険者ギルド本部を後にした。
時刻はすっかり夕方だ。皆も待っているかもしれない。急いで宿に向かった。
宿の食堂に向かうと、魔法書らしき本が山積みにされた席が目に付く。きっとエステルが魔法書の衝動買いをしたのだろう。その周辺には皆が席に着いていた。
「ギルドの話は終わったの?」
ブリットが訪ねてくる。皆にも新しい遺跡の進捗状況など、ギルドで聞いたことを伝えた。
「鳥にアンデットかぁ・・・厄介なモンスターが続くね・・・」
「そうだな・・・鳥もダチョウや鶏みたいに飛ば無ければ良いのだが、普通に飛ばれてしまうとワシ等の武器では攻撃が届かん。アンデットに関しては通常の武器ではダメージが通らないと言っていたからな・・・。ヤンの親父さんの武具に期待しよう。」
魔鉱石の武具であれば魔力を微力ながら通しているはずだ。その辺も含めて明日は武具屋を巡って調査してみようと思う。
「皆は明日の予定はどうなっておるのかの?ワシは武具店で魔鉱石の武具について調べようと思っているのだが・・・」
「私は折角だし朝市に行ったり、ショッピングかな?」
「私は礼拝に言ってきます。」
ブリットはショッピング、ヘンリクは礼拝、他にもそれぞれ予定を決めているようだ。エステルはきっと今日買った魔法書を読みあさるのだろう。
「ならば明日も自由行動で良かろう。」
「武具店巡りなら僕もついて行って良いですか?」
するとエリックが珍しく俺との動向を申し出てきた。別に構わないがどうしたのだろう?
「何か欲しいものでもあるのか?」
「弓がそろそろ限界で・・・ヤンの親父さんには弓の新調はお願いしていなかったから何か良い弓があれば良いなって思って。」
そう言うことか。弓を新調するにも時間が掛かるだろう。特に問題も無かったので同行を認めた。
翌日、俺は朝からエリックと一緒に中央区画北側にある工業区を歩いていた。
出来るだけ貴族御用達になりそうな店を選んでだ。そうやって店を見て歩くと、その違いも一目瞭然だった。
一般的な武具屋はハレックの街にある「ヤンの武具店」のような無骨な雰囲気だったが、貴族御用達の店はその佇まいから洗練されていた。貴重なガラスを使いショーウインド越しに、立派な武具を見ることも出来る。今の俺たちの姿では中に入れて貰えるかも疑わしい。それでも覚悟を決めて一軒の店に入ってみた。
「いらっしゃいませ。」
綺麗なお姉さんが出迎えてくれたが、俺たちの姿を見つけた途端、あからさまに拒絶の空気を纏いだした。俺はそれを無視して店内を歩いた。
「何をお探しですか?」
さすがはプロと言えるだろう。俺の背負っているバトルアックスに気が付いたのか、気を取り直して俺たちに接触してくる。
「魔鉱石製の武器が見たいあるか?」
「魔鉱石製の武器でしたらこちらになります。」
そして案内された場所を見てみれば、鋼色というよりも、鈍色に白銀色が混ざって星をちりばめたような刀身をもつ剣が何本か並んでいた。装飾も立派だ。俺の持つバトルアックスとは雰囲気が違う。
「魔鉱石製の弓なんかもあるんですか?」
エリックは何やら雰囲気に飲まれているようだが、定員さんに尋ねていた。
「弓でしたらこちらになります。」
「触ってみても良いですか?」
「はいどうぞ・・・」
ハイエルフを見るのは初めてか、ぽ~っとしている。まあ見た目は美青年だからな。異性が見ればこうなるものなのかと呆れ半分見ていた。エリックが弓の具合を確かめている間に俺は定員さんに尋ねてみる。
「魔鉱石製の武器は魔力を帯びているというので良いのか?鋼の武器では通用しないモンスターでも相手に出来るのか?」
「え!?はい。そのように聞いております。」
まあ実際に使ったことは無いだろうから、得られる情報もこんなものだろう。弓の具合を確かめていたエリックも定員さんに本体を返す。
「すみません。僕の力ではその弓は軽すぎますね・・・」
まあ、ここに置いてある武具は実用性よりも美術品に近い。他の店も当たってみるか・・・。そのあと数件探してみたが何処も同じようなものばかりだった。
半ば諦めかけた所でもしかしてと思い、このバトルアックスを買った店を思い出し足を運んでみる。店はすぐに見つかった。
「オヤジいるか?」
「何じゃ!って、おおう!あのときバトルアックスを買っていった兄ちゃんか!」
そう言って店の中からドワーフのオヤジが飛び出してきた。
「少し聞きたいことがあっての。王都に立ち寄ったからよってみた。」
「ん?そのバトルアックス、魔鉱石を練り込んであるな!?」
「解るのか?」
「そりゃあな・・・しかし隕鉄に魔鉱石を練り込むなんざどんな職人だ!なかなか出来ん仕事だぞ!」
俺のバトルアックスをしげしげと見つめて感心するオヤジ。そんなに凄いことなのか?3日で作ってくれたぞ・・・放っておくと何時までも見続けそうだったので、話の本題を切り出す。
「魔鉱石製の武器でアンデットは切れるか?」
「その武具に使われる魔鉱石の純度にもよるな?純度100%の魔鉱石で武具は作れん。そこで鋼や希少金属を併せて武具は作られる。そこで使う魔鉱石をケチれば大したダメージにはならんだろうな。」
「なるほどな・・・ところでここには魔鉱石製の武具は置いてないのか?」
「裏に隠してある。表においておくと、この界隈じゃ盗まれちまう・・・」
「弓はおいてないか?」
「何張かあるぞ。お前が使うのか?」
「いや、ここに居るハイエルフが弓を探していてな。」
「な!?お前エルフとつるんどるのか?」
「悪いか?同じ冒険者仲間だ。」
「いや・・・髭を剃っちまうようなドワーフのあんただ。それ以上は驚かんわい。弓だったなチョット待ってろ。」
そう言って奥へ引っ込んでいった。
「ここでそのバトルアックスを買ったんですか?」
「ああ、たまたま見かけてな。丁度良い重さだったから衝動買いしてしまった・・・」
「先輩でもそんな事があるんですね!」
正直に驚いていた。前の世界でも結構衝動買いはしてたぞ。なんて話をしていると店のオヤジが4張の弓を抱えて持ってきた。
「今あるのはこれだけじゃ。握ってみろ。」
全て魔鉱石製の弓だ。エリックは一張一張丁寧に感触を確かめていく。その中の一張を入念にチェックする。それは必要最低限の装飾しか施されていない、素人から見たら4張の中で一番見劣りする弓だった。
「これ、凄く良い・・・ただ、弦を選びそうかな・・・」
「ほう・・・さすがエルフじゃな。その弓は魔鉱石にミスリルを練り込んだ自信作じゃ。但し弦を選ぶ。半端な弦じゃと直ぐに切れてしまうぞ。」
そう言って店のオヤジは弦を張った状態でもう一度エリックに感触を確かめさせる。
エリックも軽く弦をはじいて見せたり、実際引いてみたりと入念にチェックしていく。
「うん!これ気に入った!これ下さい!」
「金貨10枚じゃ。弦は10本サービスしてやる。」
結構な金額だったが即決で弓を購入していった。必要な情報は聞くことが出来た。あとはヤンの親父さんを信じることとしよう。そう思いながら店を後にした。
店をあとにすると丁度良い案配で日が傾き掛けていた。




