20日間の強行軍が始まります!
「ヤンの武具店」に武具を預けた俺たちは、3日後の午後イチに約束通り武具を取りに向かった。
「よう来たな!仕上がってるぜ!」
そう言って店で預かっていた武具を出してきてくれる。
「わ~!はげた所とか焦げた所も綺麗に直ってる!」
これには驚いた。購入して1ヶ月そこそこか半月しか経っていない武具だったが、親父さんのリペアで使い込まれた武具のように仕上がっていた。
「で、ヨーンのバトルアックスはこれだ。」
そう言って渡して貰ったバトルアックスは、見違えるように様変わりしていた。元々隕鉄の影響か黒々としていた見た目が、魔鉱石による加工の影響か黒光りする斧に変貌していた。軽く振ってみるが、今までと特に変わった様子は無い。
「一度溶かして練り込んである。万が一刃が欠けても再生する。一生モンだ大事に使えよ!」
これだけの仕事を短期間で行える親父さんの腕は凄い。王都でも十分にやっていけるのでは無いだろうか?そんな事を思っていると、
「他の連中も問題無いか?有れば調整するぞ!」
特に気にした様子も無く、テキパキと全員の装備の具合を確かめていく。
「いや~良い塩梅に味が出て歴戦の剣士に見えない?」
と、ブリットがポーズを決める。確かに痛んだ箇所の補修痕も目立たないし、しっかり補修されているから、長年使い込んだ防具にしか見えない。他のメンバーの防具も同様だ。
「明日から長旅になるから助かった。礼を言う。」
そう言って頭を下げると親父さんは、
「何だ、もう出掛けるのか?今度は何日ぐらいで掛けるんだ?」
そう聞いてきた。
「ざっと20日くらいだな。第1号遺跡から第3号遺跡を全部廻ってくる。」
そう言うと親父さんは目を丸くした。
「3日前に第4号遺跡に行ってきて、もう他の遺跡に行くのか!?」
まあ、普通に考えるとそう思うだろう。しかし、あの「球体」が気になる。レベルも上げておきたい。そう考えると早いに越した事は無いだろう。押さえるものを押さえれば後はゆっくり出来る。
「ああ、まあその後ゆっくりするさ。どっちにしても、20日掛けて戻って来た所で魔鉱石の武具はまだ仕上がっていないんだろ?だったら少しでも稼いでくるさ。」
あくまで予定通り行程が進めばだが・・・。
「まあそうだが、あまり無茶はするなよ?」
親父さんは気遣うようにそう言った。そもそも目的は各遺跡の10階層までだ。
「解ってる。武具も大事に使わせて貰うさ。」
そう言って、「ヤンの武具店」をあとにした。
そのあと各自は必要な道具を揃えに各地に散っていった。俺は最新の地図に変わりが無いかを確認する為、冒険者ギルドへ顔を出す。
「あ!ヨーンさんお疲れ様です~。ギルドマスターに用事ですか~?」
返答を先起こされてしまった。
「ああ、居るかい?」
「チョット待ってて下さいね~今呼んできます~」
そう言って奥へ引っ込んでいった。するとすぐにセディット氏が現れた。
「明日から第1号遺跡から第3号遺跡へ向かうのだが、何か地図に変更は無いか?」
主に第10層の件が気掛かりだ。
「特に変更と言ったものは無いですね。冒険者の目的は魔鉱石だけですよ。」
そう言うことであれば問題ないか?
「先日話した情報の方はどうなった?やはり噂話だと動けんか?」
動いてくれれば、こちらとしてもその後が動きやすいのだが・・・
「それは今検討しています。発見出来ればハレックの街の冒険者ギルドから人材も派遣出来るし、この街も潤いますからね。前向きに検討中です。」
あれ?そう言えば、いつの間にか敬語を使われるようになってる?いつからだ?
「これで発見出来れば、ワシ等も新しい遺跡にも挑戦出来るな。」
少しプレッシャーを掛けてみた。するとセディット氏は、
「お手柔らかにお願いしますね・・・」
と言ってきた。
さすがに第4号遺跡の隠し扉から出土した魔鉱石を、転売せずに持ち帰った事は噂になっていたらしい。地図の変更が無い事も確認出来たし、あとは明日に備える事にしよう。
そう言えば調味料が不足していたんだった。買い足しておくか・・・
夕食で、皆と最終打ち合わせに入る。と言っても、粗方話してあったので目新しい事は無いのだが・・・
「一応最新の地図の確認をしたが、特に変わった事は無いようだな。」
冒険者ギルドで確認した事を皆に報告する。
「じゃあ、各遺跡は全部第5階層の隠し扉と第10階層の隠し通路、フロアマスター討伐と10階層の転移ポータルの登録って事で良いんだね?」
ブリットが最終確認をしてくる。
「それで間違いない。今のレベルなら十分対応可能だろう。各遺跡には長くても2日の滞在で済ませたい。」
「強行軍ですが頑張りましょう!そして終わったらゆっくり休みましょう!」
ヘンリクがそう言ってガッツポーズを取る。・・・変なフラグが立った気がする・・・
「まあとにかく、今日はゆっくり休んで、明日の第1号遺跡へ向かう馬車で移動開始だ。」
そう言って締めくくった。
第1号遺跡へ向かう馬車は予定通り出発した。今回は2両編成だ。距離が長い分第4号遺跡よりも需要は少ないのだろうか?
そんな事を考えながらも道中は進んでいく。途中野営を行うが、夜食べる分の狩りの収穫は相変わらず多い。今回は同行者も少なかったので少しお裾分けもしてみた。みんな有り難がって食べていた。
2日目も野営となる。前日残しておいた食料を利用して夕食を取る。翌日はお昼頃に到着する予定だ。
そして予定通り3日目のお昼に第1号遺跡に到着した。
早速冒険者ギルドの出張所へ登録を行った。ここでも、遺跡での注意事項を聞かされた。
1つ気になった事があったので質問する。
「第4号遺跡で第10階層の転移ポータルを登録してあるのだがそれは残るのか?」
「はい。各遺跡では共通していませんから、第4号遺跡の調査を再開する時は10階層から始められます。」
皆と相談し、今日の午前中に第5層まで行く事に決めた。入り口で入場登録を行いいざ出陣だ!
第4号遺跡では、動物型のモンスターばかりが出てきたが,ここも同じなのだろうか?
そんな事を考えつつ通路を進めていくと、遭遇したのは植物型のモンスターだった。
俺たちの隊列はいつもと同じだ。1階層から5階層まで特に苦労する事も無く進める事が出来た。マップにチェックしたポイントを目指し進めていく。
「ここだ。」
そう言うと、エイナルが手際よく隠し扉を見つける。中に入ると、第4号遺跡と同じ宝箱が鎮座していた。中を確かめるとこれまた同じ、魔鉱石100kg相当だ。
これを魔法鞄に収納し、今日の作業は終わりにする。第5層の転移ポータルを利用し地上へ戻った。
冒険者ギルドの出張所で5階層の隠し扉の報告を行う。出土した魔鉱石は転売する事にした。あまりのサイズにここでも驚かれたが、売却価格にこっちも驚かされた。
事前に取ってあった宿で夕食を取りながら、明日の打ち合わせを行う。
「明日は一気に10階層まで進むが、植物系のフロアボスとなると何か解らんな?また前回みたいにエステルの火魔法で一掃しようか?」
俺が冗談交じりでそう言うと、
「ファイヤーボールは懲りたから、風魔法のウインドストームで切り刻む・・・」
エステルはそう言ってきた。中級魔法であればどちらにしても危険では無かろうか?
「ファイヤーボールをやめて、ファイヤーアローの連射は出来ないのか?」
そう聞いてみると、
「それは可能かな?10本くらい纏めて出せるよ。」
「なら、それを作戦の軸に戦闘を考えよう。どんなモンスターかは明日情報屋から聞いてみよう。」
そう言って、作戦会議とも取れない作戦会議は終わったのだった・・・
翌日は第6階層からだ。要領は第4遺跡と全く同じだ。7階層目から複数の植物型モンスターが現れるようになった。
広い通路では3人フォーメーションを崩さない。多い時には後方からファイヤーアローと火の精霊魔法で援護を貰う。
俺のバトルアックスも性能向上のお陰か、草刈りをしているような感覚で植物型モンスターを倒していく。
しかし10階層で、第4号遺跡とは違う事が起きた。それはモンスターが毒を放ってくるようになった事だ。また、遠距離攻撃のように、種を飛ばしてくる。
俺はシールドを最大限活用し、後ろに味方を隠しながら飛んでくる種をはじき返し、打ち止めになった所でブリットが飛び出してモンスターを倒していく。
「球体」の入った小箱がある予定の場所へ到着すると、早速エイナルに隠し通路を探して貰う。前回の経験もあってか、難なく装置を発見出来た。扉を開け奥へ進んでいく。これも第4号遺跡と全く同じだった。
突き当たった小部屋の中心には台座があり、小箱が置かれていた。万が一があるので、エイナルが罠などを調べていく。しかしここにも罠は無かった。
小箱を開けてみると中には直径15センチ程の球体の物体が入っている。(やっぱりあったか・・・)そんな感想を抱きつつもその球体を小箱ごと回収した。
俺は1つ持っていた為、どの遺跡のものか解らなくならないように、第1号遺跡の小箱はエイナルに保管して貰う事にした。
さあ、あとはフロアボスの討伐だ。
フロアボスの居る部屋の角までやってきた。そこからそっと様子をうかがってみる。
そこに居たのは巨大なラフレシアのような植物だった。直径はゆうに5mはあるだろうか?その周りには少し小型の同型植物がうろうろしている・・・正直見た目が気持ち悪い。
打ちもらしがあった場合を想定し、入念に打ち合わせを行う。打ち漏らしたモンスターは敏捷性に優れるブリットとエイナルが先制を仕掛ける。ボスラフレシアは俺が担当する事で纏まった。
ヘンリクは毒攻撃があった場合の支援だ。そして一斉に仕掛けた。
まずはエステルのファイヤーアロー10連射だ!呪文を詠唱し発射の準備を整える。こちらも駆け出す用意が出来た所で合図を送った。
「ファイヤーアロー!!」
「「「「「シュッッ!!!!!」」」」」・・・・
「「「「「ドドドドドンッッッッ!!!」」」」」
この一撃で取り巻きのモンスターは一掃された。
珍しくクリティカルしなかったようだ。
生き残りがいる事を確認した俺たちは、反撃させない為にフロアへ駆け出す。
ブリットとエイナルは素早くボスラフレシアに斬りかかる。遅れて俺も斬りかかった。
結局ボスラフレシアは反撃らしい反撃はする事も無く沈黙した。
10階層の転移ポータルは、11階層へ向かう途中の踊り場にある。そこから地上へ戻った時はまだ昼過ぎだった。
冒険者ギルドの出張所へ行き冒険者カードの更新を行った所、レベルが3つ上がっていた。これでレベル28になった。
しかし、レベルの上がりが悪くなっている。これは間違いなく、適正レベル以下のモンスターを相手にしているからだろう。
今日第2号遺跡へ向かう馬車はもう既に無い。向かうなら明日になる。
明日出発すれば明後日の昼には第2号遺跡に到着出来るだろう。今回の第1号遺跡と同じ要領で攻略出来ればと祈るばかりである。




