第4号遺跡に向かって出発!
4日後、今発見されている遺跡の最新マップが俺の手元にある。
ギルドマスターのマーリン嬢やセディット氏からもたらされた物だ。
今発見されている遺跡は全部で4つ。ハレックから北北東に二日半行った場所に第1号遺跡、北東2日行った場所に第4号遺跡がある。王都ルステーゼから北東に3日行った場所に第2号遺跡、北北東に2日半行った場所に第3号遺跡がある。この番号は遺跡が発見された順だ。なんと安直な・・・。
俺が知る限り、未発見の遺跡は後2つあるはずだ。場所も大体予想が付いている。
さてここで問題がある。預かった遺跡のマップはどれもこれも20階層くらいまでしか載っていないのだ。この遺跡の最深層は確か30階層のはず。
階層イコールレベルだったはずだ。それが20階層止まりと言う事は、探索する冒険者のレベルが低いのか、他の要因があると言う事だ。
全てのマップを見ながら、今の俺達のレベルを比較して、まず最初に行く遺跡を決める。一番詳細に書かれているマップは第4号遺跡だった。
ハレックからも一番近い遺跡で北東に二日移動した場所に位置する。定期馬車も出ているので便利だろう。
「と言う事で、最初の遺跡探索は第4号遺跡にしたいと思うのだが皆はどうだろうか?」
「手始めには手頃かもね?だけど、最下層まで到達出来てないのが不気味よね?全体のレベルが低いとか?」
ブリットは俺も感じた不審な点を指摘してきた。
「ああ、元々この遺跡は古代魔法大国期の遺跡だから、各5階層ごとに地上へ続くテレポーターもある。無理をせずとも、30階層にはいけそうなモンだが・・・」
俺も難易度については疑問があったので皆の意見の追従する。
「そうすると他の要因を疑った方が良いでしょうね。」
「そうだな。予想以上にモンスターが強いとか。」
ヘンリクとエイナルは別視点で疑っているようだ。
「私たちのレベルだと12階層までが一応の限界として、第4号遺跡にはまだ発見されていない部屋とか通路とかあるの?」
「ワシの記憶違いで無ければ、5階と10階、15階、20階にある。それがこれだ。」
そう言ってマップを書き写した物に加筆修正した物を皆に見せる。
「これってお宝の臭いがプンプンするね・・・」
「トラップの部屋では無い事は間違いない。ただお宝と言っても何が出てくるかは解らんがな。」
「まあ、出来るだけ皆で情報収集をしていきましょ。」
そう言ってブリットが締めくくる。
「皆は何か報告なんかは無いかの?」
「あ!有ります。僕の精霊魔法が増えました。中級だけど、風と火と地の精霊と契約しました。」
エリックの精霊魔法もかなり充実したようだ。
「私も、氷魔法の中級と、補助魔法を増やしたよ。」
彼女の魔法も色々と充実してきたな・・・特にエステルが魔法のロッドを入手したおかげで、攻撃魔法の威力も増している。飛び回るちびっ子砲台だ・・・補助系の魔法も増やしてくれたのなら、彼女の攻撃以外での活躍の場ももっと増えそうだ。
「じゃあ、引き続き情報収集の方は皆も頼む。」
そう言って締めくくった。
俺はその足で冒険者ギルドへと向かった。
「あ!ヨーンさんこんにちわ~。今日はどうしました~?」
「ん?ああ、セディットさんを呼んで貰えるかの?」
「解りました~ちょっとお待ち下さいね~」
・・・いつからだろう、この間延びした声に癒やしを感じる・・・。
暫くするとセディット氏が現れた。
「今日はどうした?」
「地図のお礼と2、3聞きたい事があっての。」
「遺跡の事か?」
「そうだ。一応支度が調ったら第4号遺跡に向かおうと思って居てのだが、見せて貰った地図では地下20階までだったが、そこが終点で良いのかの?」
「いや、それより下はあるようだが、まだ未到達だ。」
気になるなあ・・・やはりヒョッとするかな?
「・・・遺跡のモンスターは強いのか?」
「そうだな・・・報告によれば、地下5階のモンスターの強さは冒険者の平均でレベル10相当だそうだ。」
「!と言う事は、地下20階は冒険者のレベルは40相当と言う事か!?」
「そう言うことになる。レベル40を超える冒険者ともなると、そうそう居るもんじゃ無い。遺跡の地下がどれほど続いているかも解らん。危険は犯せないと言う事だろう。」
この世界のレベルの上限は50じゃないのか?
「それに地下深くに潜らなくても、魔鉱石がそこそこ取れれば結構儲かるから、レベル25位の冒険者がその先を続けずに冒険者家業に足を洗って、田舎に引っ込むのも進まない理由の一つだろうな・・・」
「レベルの上限は何処まで何だろうか?それに魔鉱石?なんだそれは?」
「英雄級の冒険者のレベルは50って言われているな。それ以上のレベルの話は俺も聞いた事は無い。」
「後魔鉱石か?ああ、ヨーン達は遺跡に行った事が無いから知らないかもしれないが、遺跡のモンスターを討伐すると希に魔鉱石という鉱石を落とすんだ。これは武器や防具を作る素材になっている。この街じゃあ希少すぎて取り扱ってる店は無いが、王都辺りに行けば取り扱ってるぞ?」
知らない情報が次々出てくる。王都で武具屋を覗いた時にも見かけなかった。貴重な武具だから、貴族連中御用達の武具店じゃ無ければ置いていなかったのかもしれない。
それにレベルの上限はやはり50と言った所か・・・どう頑張っても30階層には到達出来ないと言う事になる。何か秘密があるのか?
「そうか・・・いや助かった。初めての遺跡探索で知らない情報が多すぎてな・・・何か気になる情報があったらまた教えてくれ。」
「ああ、解った。と言ってもお前達のレベルでは精々6階層までだろう?無茶はするなよ?」
「抜かせ!きっちりレベルを上げて帰ってくるわい!」
そう言って冒険者ギルドを後にした。しかし魔鉱石という物にが引っかかる。武具の取り扱いと言う事なら聞いてみる場所は一つだけだな。
そう思って、「ヤンの武具店」へ向かう。
「お!ヨーン!武具はまだ出来てねえぞ!」
ここは俺にどんなイメージを持っているのやら・・・と思いつつも、
「解ってる。それよりも聞きたい事があってな。」
「なんだ藪から棒に・・・?」
いぶかしげな顔でこちらを見てくる。
「魔鉱石って知ってるか?」
さっき聞いた魔鉱石について聞いてみる事にした。
「お?どこからその情報を掴んだ?」
やっぱり知っていたか・・・。
「冒険者ギルドのギルマスからだ。」
「そうか・・・お前らがレベル20を超えてからの、お楽しみに取って置いたんだがな・・・。」
「やはり知っておったのか。」
「当たり前だろ?」
「前に言ってたオーダーメイドはレベル20以上になってから。と、言うのもそれが理由か?」
「そう言うことだ。魔鉱石で作った武具防具の性能は、鋼の武具防具の比じゃねえ・・・。そう言う道具を金に物を言わせて買ってく連中は、道具に振り回されて長生き出来ねえ。だから俺は最低レベル20を目指せと言ったんだ。」
「そう言うことか・・・もしレベル20を超えて魔鉱石を持ってくれば、ヤンは武具を作れるのか?」
「誰に言ってる!こちとら信用商売だ!魔鉱石の武具の取り扱いは何度も経験積みだ!」
「すまん。そういうつもりで言った訳では無いが・・・」
「解ってる。俺も魔鉱石について黙ってたのが悪い。ヨーン、お前は上を目指すのか?」
「まあ、色々巻き込まれてしまったからのう・・・最低限の役割は果たすつもりだ。」
「レベル20を超えて魔鉱石を持ってきたら、最高の武器と防具を作ってやる!だからヨーンも死なない程度に頑張れよ!」
「誰が死ぬか!さっさとレベル20になって、どっさり魔鉱石とやらを持ってきてやる。楽しみにしておけよ。」
そう言って「ヤンの武具店」を後にした。
その日の夕食時、昼間仕入れた情報を皆と共有する。特に驚かれたのは、レベルと階層の件だ。
「え!?、じゃあどうやって30階層まで行くのよ!?」
ブリットはウインナーをフォークに突き刺したまま固まっていた。
「何か限界突破する方法があるとか?もしくは20階層以降はレベル50相当で全て対応可能とか・・・?」
ヨーンの指摘もうなずける。しかし今回の情報は俺たちの分を超えた物ばかりだ。
「まあ、その辺は追々考えるとしよう。ワシ等の今のレベルは12だ。あまり先の事を考えすぎると足下が疎かになるぞ?」
そう言って自分自身も少し焦って情報を流しすぎたかなっと反省しつつも、自重するよう促す。
「確かに。今回の目的はあくまで遺跡がどんなものなのか確かめる事。それ以上の事は取りあえず置いておく事にしましょう。」
ヘンリクの同意でこの話はおしまいにする。
「それにしても魔鉱石か・・・僕らのやってたTRPGには無かった設定ですよね?」
エリックは魔鉱石に興味を示した。ただ、遺跡のモンスターからドロップする事が解っているだけで、TRPGに無かった設定に俺も戸惑っていた。
「ああ、魔鉱石というアイテムは無かった。ましてや、それを使った武具防具もな・・・」
「この世界のオリジナルと言う事でしょうか?」
「ニーニャ・・・何かその辺の事って解らないの?」
俺は、ニーニャに何か解らないか尋ねてみる。
「モグモグ・・・ゴクンッ!ん~・・・皆さんのやってたTRPGでしたっけ?それはあくまでゲームという遊戯です。確かにその遊戯とそっくりな世界と言っても、この世界にも歴史はあって、今があるんです。その一部を切り取ったかもしれない遊戯を比較してしまっても、どうしようとも無いと思いますよ?」
幸運の新米女神様からありがたいお言葉を頂いた。(ソーセージにかぶり付いているが・・・)
「確かにな。古代魔法大国期の遺跡とTRPGには載ってはいたが、それが何で存在するのかは載っていなかった。前にも言ったがTRPGの知識で利用できることは利用しよう。で、あまり過信しないように、もし儂が暴走しているようなら皆止めて欲しい。」
自戒の念を込めて皆にお願いした。
「石橋は叩いても渡らないヨーンが暴走って想像出来ない。」
エステルが辛辣な事を言う・・・。
「まあ確かに?渡るように努力はしてるみたいだけど?」
ブリットがそれに追従してくる。
「まあまあ、ヨーンの石橋は叩いても渡らない性格は皆さんを思っての事ですから。」
ヘンリクが有難くないフォローを入れてくれた・・・
それから3日後、武器防具受け取りの約束の日だ。お昼過ぎに皆で「ヤンの武具店」に足を向けた。
「へいらっしゃ・・・・ってお前らか。全部揃ってるぞ!」
「無理言って済まんな。」
おきまりの謝罪をしながら店の中に入っていく。
「そう思うなら余裕を持って注文に来い!」
そんな文句を言ってもやり遂げる親父さんはやはり凄い。
そしてカウンターの前に箱を並べだした。
「右から順に、ヘンリク、エリック、エイナルの武具、防具だ。具合を確かめるから試着してくれ。で、ヨーンのバトルアックスだが、どうにか付与が出来たようだ。お前も具合を確かめてくれ。」
そう言われて、隕鉄のバトルアックスを軽く素振りしてみる。うん、ブレが少なくなってる。当たる気がする!と喜んでいると、ブリットが、
「ふーん・・・今度こそ当たると良いね・・・」
『プークスクス・・・』と口元に手を当て、冷やかしてきた!
今度こそ防御特化とは言わせない!・・・・・たぶん・・・・きっと・・・
しかしこうしてみると鏡に写る俺の姿は凄い事になっている。普段、ラージシールドは背中に背負っている。
元々ずんぐりむっくりな体型に大きめのラージシールドを背負った姿は、亀そのものである。
それにバスターソードからバトルアックスへ転身・・・う~ん周りからはどんな風に見えているのだろう?何か気になってきた・・・
そんな事をしていたらブリットに見つかってしまった!
「・・・・・・・・。」
ニヤニヤしながら、何か言いたげだったが何も言ってこない。こういうのが一番困る。
そんな他愛も無い感想に浸っているウチに全員の装備の微調整が済んだようだ。
準備は揃った!2日後に第4号遺跡に向かう馬車が出発する。




