遺跡探索について考える・・・
乗合馬車で3日、無事にハレックへと戻って来た。帰りの道中、マジックアイテムを誰が持つか決めたりもした。
最終的に、魔法鞄と器用度上昇の指輪、魔法のテント、魔法の食器が俺。魔法の水嚢と魔法のランプをヘンリク、エリックが魔法のランプ、ブリットが敏捷度向上の腕輪、魔法のナイフ、魔法の水嚢、エステルが魔法のロッドと魔法のローブを持つ事で決まった。
「少し器用度が増したからって、攻撃が当たるの~?」
と、ブリットには散々からかわれたが、少しでも攻撃に参加出来るに越した事は無い。
到着後、早速冒険者ギルドへ立ち寄った。王都までの護衛という依頼の達成の確認を取る。
「ヨーンさん達、お疲れ様です~」
垂れ耳犬娘受付嬢さんの、間延びした掛け声が妙に懐かしい。
「王都までの護衛の依頼、無事達成してきたぞ。」
そう言って冒険者カードを受付嬢さんに渡す。
「確かに~、依頼達成ですね~お疲れ様でした~」
10日くらいと思っていたが、何だかんだで13日間の旅になってしまった。長旅の疲れもあるから、このまま「鹿の角亭」へ直行だ。
そこで部屋に戻る前にみんなに声を掛ける。
「少し相談があるんだが、ちょっと良いか?」
真剣な表情で皆を呼び止める。
「特に用事も無いし・・・何?」
大事な話だと思ってくれたようで、聞いてくれる。
「実は王都での一件での事を相談したいと思っての。次の冒険は遺跡探査にしようと思っておる。」
「遂に遺跡探査か~『探索者』なんて称号も貰っちゃったし、私は賛成かな?」
ブリットは率先して参加を表明してくれた。
「まだ何処に行くかは決めておらんが、本部のマーリン殿も全面的に協力すると言っていたから、時間を見て、最新の遺跡のマップを調達しようと思っておる。」
そこで一息ついてからもう一つの本題に入る。
「そこでだ、皆の装備について再度検討して貰いたい。もちろんブリットは変えたばかりだし、エステルは新装備が手に入ったから問題ないが、エリックやエイナル、へリンクは防具に魔法加工を掛けて鎖帷子などでもう少し防御力を充実させる事は出来んか?これはあくまでもワシの希望であって、強制という訳では無い。」
強制では無いとは言ったが、本音では防御力の拡大は全員して欲しい。出来るだけ怪我は負って欲しくは無いのだ。
「「「・・・」」」
皆真剣に黙り込む。もう一押しか・・・
「今まで格上との戦闘も無かったし、あまり不自由を感じておらんかもしれんが、遺跡探索では何が起こるか解らんからのう・・・。ワシの心配に越した事は無いが万が一に備えて検討して貰えんか?」
TRPGでもダンジョン攻略の際には準備はしっかり行う。まして日帰りになるとは限らないのだ。この世界の遺跡はそれなりに階層が深かったはず。怪我を負う度にヘンリクの回復魔法に頼っていては、すぐに精神力が尽きてしまう。と言って、余裕の出来た資金に物を言わせて、回復薬を大量に持ち込むのも得策では無い。資金に余裕が出来たからこそ、装備の見直しなのだ。
「そう言うことなら検討してみよう。」
真剣な面持ちで、エイナルが頷く。
「そうだな。ダンジョンでは何が起こるか解らないし、出来る事はやっておきましょう。」
ヘンリクも同意してくれた。
「僕もブリットさんの装備真似してみようかな?」
エリックも賛成のようだ。
「この組み合わせ結構使えるよ。オススメだから。」
ブリットも、俺の言いたい事が解ってくれたのか、エリックが真似ようかと言った事に太鼓判を押してくれた。
「武器の方もよろしく頼む。ワシも器用度の上がる指輪を貰ったが何処まで効果があるか解らんからな。」
器用度上昇の指輪のおかげで、ステータスが大分上がった。それでも人並み以下だ。もう一押しなんだよなあ・・・そんな事を考えていたら、
「「「「「そこは期待はしていません!」」」」」
口を揃えて突っ込まれた!次の戦闘の時は絶対当ててやる!と心に誓う瞬間だった。
「続いての議題だが、馬車を購入せんか?これから頻繁に遺跡へ向かうとなれば、移動に必要だろう。ワシ等の拠点はあくまでこのハレックだ。特に最初のウチは遺跡に何週間も籠もる気は無い。遺跡への移動にも便利だと思うのだが・・・」
これからは、頻繁にハレックと各遺跡へ往復する事にもなるだろう。遺跡だけでは無く、ちょっとした旅にもマイ馬車があれば便利になるだろうと思っての提案だったのだが・・・
「う~ん・・・私も荷馬車を持つ事は考えましたが、維持管理費が結構するんですよね。これはもう少し様子を見ては如何ですか?」
維持管理費についての指摘が出た。確かに馬車を保管する場所代、馬の餌代、管理代、諸々と掛かる。
「私も反対に賛成かな?すぐ必要って訳じゃ無いし、本当に必要になった時に改めて考えたら?」
確かに・・・急ぎと言う程では無いし、ハレックから遺跡へと向かう定期馬車も出ている。これは保留だな。
「解った。荷馬車の件は保留にしよう。」
意見が纏まった所で、最後の議題に入った。これは重要な案件だと思っている。TRPGをしていた時には気にしていなかったが、異世界転生をした今、重要な案件の一つだと言えよう!
「最後の議題だが、今までこの「鹿の角亭」で、男女で大部屋を借りていたが、個室にしてはどうかの?各自プライベートは必要だと思ったんだが・・・」
そうなのだ!大部屋を借りていると言う事は、雑魚寝も当然。プライベートは一切無かった。王都では個室を用意して貰えたのでその事を大いに実感したのだった。
ただ、大部屋の場合、一部屋1泊銅貨3枚だが、一人部屋の場合1泊銅貨2枚だ。単純計算一人あたりの1泊の単価が2倍になる。贅沢な事だ。
「あ!それは賛成!夜中とか起きちゃうと、エステルを起こしちゃわないか心配しながら移動しなきゃいけないし・・・」
「それは私も同意」
やはり夜中に目が覚めてしまった場合や早く起きてしまった場合など、同室の安眠を妨げる心配は皆にもあったようだ。概ね女性陣は賛成してくれた。
男性陣はもっと大人数だったのだからその心配は同様だ。
「僕も問題ないですよ」
「同じく。」
「私イビキ五月蠅くなかったですか?」
と皆、賛成してくれた。
ならばと早速マスターを呼び出して、相談を持ちかける。
「おう!ウチとしては願ったり叶ったりだ!個室利用は元々少ないから、あんたらが使ってくれればウチも助かる。」
そう言って早速部屋の準備を始めてくれた。
「では今夜から個室利用という事で良いな。」
「「「「「了解」」」」」
「じゃあワシはちょっと「ヤンの武具店」に行ってくる。」
そう言って席を立つ。器用度が上がった事でもう一押しのアイデアがあるのだ。
「何を買いに行くの?」
ブリットがジト目でこちらを見てくる。何を疑ってる何を!?
「ん?王都で買ったバトルアックスに、ワシが考えている魔加工出来ないか相談しようと思っての。」
俺は観念して白状した・・・。
「なんだそう言うこと。じゃあ、さっきの話もあるし、みんなで押しかけようか?」
そう言って、「鹿の角亭」のマスターが部屋の準備をしている間に、「ヤンの武具店」へ押しかけた。
「へいらっしゃ・・・・い・・・今日はまた大勢で来たモンだな。」
全員揃っては初めてだったか・・・親父さんが驚いている。エイナルも皆が行くんじゃと同行している。
「ワシはこのバトルアックスに魔加工が出来ないか相談に来たんじゃ。」
そう言って、いきなり本題を切り出す。
「ほう、こりゃ隕鉄の武器だな?って重い!」
一目で隕鉄製だと見抜いた。
「まあ、ワシの筋力で丁度良い重さだからな。これに命中と切れ味、血糊浄化の付与は付けられるかの?」
そう言って、少しでも命中精度の向上に貢献出来るアイデアを申し出てみた。
「どうかな?預からせて貰えれば調べてみるが?」
ただ、隕鉄という特殊な素材だから魔法の付与との相性が良いか悪いか解らないらしい。
「じゃあ頼む。期待してるぞ。」
「プレッシャーだな・・・で、他の面々はどういう用件だい?」
大勢で押しかけてきた理由を問いかけてきた。
「近々迷宮に行こうと思っての、防具や武器を充実させてやって欲しい。」
そして、先ほど話し合った結論を親父さんに話した。
「そうか、迷宮に挑戦か。そりゃ準備は入念にするに越した事は無いな。予算は問題ないのか?」
予算の事を心配する親父さん。そこは商売人だ。
「そこは何の問題も無い。しっかりした物を揃えて欲しい。」
そこは資金的にも余裕がある。今のレベルで出来る最大限の装備をしたい。そう言って、親父さんに皆の今の装備を確認させた。そして入念にチェックしていく。
「神官の兄ちゃんは、その鎖帷子の上にブレストアーマーを付けると良いかもな。どっちも軽量化して、ブレストアーマーには防御力を追加かな?で、エルフの兄ちゃんは、付与も含めてブリットと同じ装備でどうだ?問題は、シーフの兄ちゃんだな・・・音が出ると意味が無いからなあ・・・これはオーダーメイドで作るしか無いか?」
そう言い切る。
「出来るのか?」
「何度かやった事があるから大丈夫だろう。」
「武器の方はどうだ?」
「こっちの方は簡単だな。今ある武器を預かって、切れ味、軽量化、血糊浄化の付与を付ければ大丈夫だろう。あっ!メイスは硬化の付与をした方が、より効果的だな。弓は何も出来ないから預かれないが・・・逆に変更したい武器とかなんて無いのか?」
特に武器を変更しようという考えは無いようだった。
「どのくらいの日数で出来るかの?」
「少し加工が入って魔法の付与やら何やらで、ざっと10日は欲しい所か?」
「もう少し巻きで頼む・・・」
「じゃあ、7日でどうだ?」
「解った。7日後に取りに来る。無理言って済まんな。」
7日間で遺跡の情報を集めなければならない。TRPGの知識に頼り切ってはいけない事は前回の洞窟で思い知らされた。
「無理を言われるのにも慣れたわい。防具を作る連中は少し残ってくれ。防具の調整をする。」
そう言われて、ヘンリクとエリック、エイナルは防具の調整の為に、武具屋に残った。
店を後にした俺はもう一度、冒険者ギルドに立ち寄った。
「あ!ヨーンさん~。今日は2度目ですね~。どうしたんですか~?」
垂れ耳犬娘受付嬢さんが出迎えてくれた。
「支部長に用があってな。居るかな?」
「チョット待って下さいね~」
そう言って奥へ引っ込む。猫耳受付嬢さんは無口だ・・・
少し待つと支部長のセディット氏が現れる。
「実は本部のギルドマスターから手紙を預かってな。」
そう言って一通の手紙を渡す。セディット氏がそれを読み終えると、ため息を一つこぼし頷く。
「手紙にはヨーンさんのパーティに協力してやって欲しいと書いてあった。遺跡の調査をやるんだな?」
遺跡の調査を俺たちがすると書かれていたのだろう。何とも根回しの早い事だ。どちらにせよ、一度はどんなものか知っておく必要はあるだろう。
「全面的にやると返事はしなかったが、全くやらないという訳にも行くまい。それに気になる事も言われたしのう・・・」
調査をするのにも、闇雲に行う訳には行かない。皆の安全が掛かっている。利用出来るものは何でも利用しよう。
「で、何を協力すれば?」
「遺跡の最新のマップが欲しい。」
「解った。少し時間をくれ。各遺跡の最新のマップを用意させる。」
セディット氏との約束を取り付けて冒険者ギルドを後にした。
さて、7日で何処まで準備出来るか?




