王都観光そして鑑定結果は!?
黒蝶を一掃した翌日、気分も晴れやかに、王都観光に勤しむとしよう。
王都での見所のひとつは昨日聞いた4大神殿だ。東に光の神の神殿、西に商業の神の神殿、南に大地の神の神殿、北に戦の神の神殿がある。
それも商業区画にあるというが、一日で全部回るのには骨が折れそうだ・・・日程にも余裕がありそうだし、東西南北に分けて回ろうと思う。
「さてどこから回ろうかのう・・・」
俺はみんなに意見を求める。
「はいはい!中央広場の朝市を見に行かない?」
ブリットは午前中の中央広場で開かれている朝市の見学を提案する。
「教会も見てみたいですね。」
大地の神を信仰するヘンリクは教会見学がしたいようだ。
「美味しいものもいっぱい有るって言うから食べ歩きもしてみたいね」
エリックは食べ歩きを提案。彼は、前の世界でも食べ歩きツアーの企画をよく提出していた。
「アクセサリーのお店があるって言ってたよ。そこも行ってみたいね。」
ブリットは朝市を見た次の行動まで視野に入れているようだ。
「私は魔法屋を覗いて見たいかな?王都の品揃えが気になるよ。」
エステルは魔法屋の本の品揃えが気になるようだ。
「そう言うことならワシは武具店を見たみたいのう。」
ここで俺も武具の品揃えが気になりだした。
「この間買い換えたばかりじゃ無い。」
ブリットから盛大な突っ込みが入った!しかし気になってしまったモノは仕方が無い。
「いや、防具じゃ無くて武器をだな・・・」
そんな言い訳をしてみるものの・・・
「どんな武器にしたって当たらないものは当たらないんだから気にしなくても良いじゃ無い」
痛い所を突いてくる!身も蓋もない・・・今俺が所持している武器はバスターソードだ。ドワーフは手足が短いから当たらないのであって、リーチの長い武器なら当たるんじゃ無いか?という淡い期待をした事もあった。しかし、チームの連携を考えると長物の武器はかえって邪魔になると思い断念した。・・・っと、ブリットの突っ込みのおかげで話が逸れたな・・・
「意見が纏まらんのう・・・」
こう意見が纏まらなければ出掛ける時間も遅くなってしまう・・・
「集団行動にこだわる必要も無いでしょう~。各自バラバラでも良いのでは?」
天の声が聞こえた・・・!? あっ!ニーニャだった。
「それもそうか?皆はどうだ?」
意見が纏まらなければそれも仕方有るまい。そんな感想を漏らすと、
「え~・・・それも何かなぁ・・・あっ!じゃあ朝一だけみんなで見に行かない?で、中央広場で解散して、夕方宿に集合ってどう?」
ブリットが強引に纏めてきた。しかし、朝市の見学は午前中のみだしそれはナイスアイデアだ。
「よし!ではそうしよう!」
そう言って王都へ出掛けるのであった。
中央広場の朝市は賑やかだ。ここだけで、拠点にしているハレックの人口を上回るんじゃ無いかという盛況ぶりだ。
中央広場の噴水の前では大道芸が行われていた。その周りでは、縁日の屋台のように色んな出店が立ち並んでいる。
その場で食べられる軽食や、野菜市なんかもある。
他にも、食器などの陶器を扱った露店や、武具を並べた露店もあった。アクセサリーを扱ったお露店を見つけた時には女性陣が釘付けとなっていた。
確かにこの朝市には何でもある。俺も武具を取り扱った露店の前を通りかかるとつい足が止まってしまう。一通り見て回ったあと、
「じゃあ、ここからは自由行動で良いか?」
と確認を取る。全員了解して解散した。
俺はその足で一番近くにある南側に位置する大地の神の教会へ足を運んだ。当然ヘンリクも一緒だった。遠くからでも解る巨大な佇まいは近くで見ると一層その荘厳さを表していた。
元の世界で言えば・・・そう!完成したサグラダ・ファミリアだ!その巨大さに二人揃ってポカーンとしてしまう・・・
「王都の教会がここまで大きいとは・・・」
確かに。ハレックの大地の神の教会も大きいと思っていたが、優にその5倍の面積はある。
「僕はこのまま中でお祈りをしてきますね。」
そう言って、ヘンリクは中へ入っていった。
俺は、観光気分で来ただけだったので外周をじっくり見学し、中を少し覗かせて貰ったらその場を後にした。
その後の3日間も散策を楽しんだ。
添乗員をしていた時はどちらかと言えばお客のスケジュールを管理する事が多く、ゆっくり観光する余裕は無かった気がする。
今回各自散策になった事でのんびりと散策して回れた。
当然、教会は全て見学した。どれも特徴的な教会だったが、ここが一番大きいという差は無かった。どれも立派な教会だった。
商業区画でも違いがあり、北側は鍛冶屋などの工業区画になっていた。武具を見ているのは良い・・・とそこで気になる商品を見かけた。無骨なバトルアックスだ。ついつい店に吸い込まれてしまう。
「らっしゃい!」
元気な掛け声でドワーフの職人が応対してくれる。
「そこに飾ってあるバトルアックスは何か他と違うようだが・・・?」
「あ、解ります?ありゃ隕鉄で作ったもんだ。作ったは良いが重すぎて誰も使いこなせない不良品だ・・・」
「持っても良いかの?」
「そりゃかまわないが、持てるかね?」
そしてバトルアックスを掴み持ち上げてみる。問題なく持ち上がる。感触も良い。少し素振りしてみるが、問題なく扱える。
「お客さん凄えな!そのバトルアックスをそんなに軽々と振り回してる所始めてみたわい!」
「これを貰おう・・・」
金貨5枚と結構な金額だった。いわゆる衝動買いだ。ただどうしても目が離せなかった。ブリットのあきれ顔が目に浮かんでしまった・・・。
散策していて気付いたのだが、商業区画でも比較的安い商品を取り扱っているのは外周寄りだ。内側になっていく程高級店が増えていく。
これは王都の構造上の問題だろう。外側には市民が、内側には貴族の邸宅が多く建ち並んでいる。店側も対象とするお客をある程度絞った商売をしているのであろう。
そんな分析をしつつも、あっという間に4日間が過ぎていった。
案の定バトルアックスを見つけたブリットに、散々小言を言われたのは言うまでも無い・・・。
そして4日目の夜、マーリンから明日午後には、全ての鑑定が完了すると報告が入った。
それについて立ち会いの下、詳細を確認して欲しいと言われた。マーリンが凄くニヤついていたのが怖かった・・・。
鑑定結果、国に保管されるべきアイテムが複数見つかったので、これらは有無を言わさず買い取りとなった。どんな物が有ったのかは教えて貰う事は出来なかった。
それらを除いた魔法のアイテムを一覧表にしたものを渡された。
「この一覧表に載っているマジックアイテムは、ヨーン達の物だ。自由にして貰ってかまわない。必要の無いものはこちらで買い取らせて貰うよ。」
と、マーリンは教えてくれた。
持ち帰る事の出来るマジックアイテムの一覧を見せて貰ったが、前衛職が戦闘に使えるような武器や防具の類いは何も無かった。
「ここに魔法のロッドやローブというのが有るがこれは良いのか?」
俺が確認すると、
「容認出来る範囲の付与効果って事さ。他の武器は・・・っと、これは極秘事項だった・・・」
「どんな付与が付いていたんだ!?」
気になって問い質すも、マーリンはその後口を閉ざしてしまった。
それでも数十種類にも及ぶマジックアイテムをみんなと検討し、10種類のアイテムを持ち帰る事にして、残りは全て換金する事で合意した。
持ち帰るアイテムを一覧にすると・・・
1,魔法のロッド(魔力を上昇させる。)
2,魔法のローブ(魔法防御力上昇の付与とサイスの自動調整が付いている。)
3,敏捷度向上の腕輪
4,器用度向上の指輪
5,魔法鞄(最大1,000kgまで。常に鞄の重さしか感じない。)
6,魔法の水嚢(常に水が湧き出る)×2
7,魔法のテント(4人用)×2
8,魔法のランプ×2
9,魔法の食器(10セット一組。常に清潔を保つ付与が付いている。)
10,魔法のナイフ(このナイフで調理したものは何でも美味しくなる。但し、食べ物に限る。毒なども無効化する。)
このほかにも、最大積載量50kgの魔法の絨毯や、生けた花の枯れない花瓶など色々あったが、冒険と直結しそうなアイテムに絞って厳選した結果、この10種類となった。
それよりも、あの宝箱自体が凄かったそうだ。後で教えて貰ったが、外側に、強化と腐食防止、中には空間拡張の魔法が付与されていたそうだ。
「じゃあ、後は換金って事で良いね。総額にするとえらい金額になるけど、ヨーン達はこれからどうするんだい?」
「いつもと変わらんさ。」
「そうかい・・・。羨ましいパーティだね。」
「そうだな。腹を割って話せる良いパーティだ。」
「この買い取りを加算した金額をパーティ均等割で良いね?」
「ああ、頼む。」
と言いながらも、どれほどの金額になるのか戦々恐々だ・・・
「あと、元盗賊団のアジトがあった場所だが、古代魔法王国期の城跡だった可能性が出てきたよ。近いうちに調査団を結成して詳しく調査する事になった。」
「そうなのか?そうなるとやはり洞窟の崩落は悔やまれるな・・・」
「まあ、なっちまったモンはしょうが無いさね。それよりも今回これだけの貴重なお宝が無事に手に入ったんだ。そっちを喜ぼうじゃ無いか!」
慰めだろうか?本音だろうか?どっちとも取れる返答だ。
「この後パーティーを開催する。主役はヨーン達だ。出席してくれよ?」
「この後の予定は何も入れていないから了解だ。服装とかはいつもの格好で良いのか?」
「冒険者のパーティーは冒険者の格好が一番さね。」
そう言いながら、マーリンはパーティーの準備に向かっていった。
そうして始まったパーティーでの第一声、本部ギルドマスターのマーリンは壇上に上がり、とんでもない事を参加者の前で言い放った。
「今回偉大なる功績を残したヨーン達パーティには『探索者』の称号を与えたいと思う!」
『うおっっ!』と場が一斉に盛り上がる。
いやいや!洞窟調査なんて1回しかしてないのに、いきなり称号も有った物では無い!
俺が、マーリンを睨むと、ニヤリと笑った。
!!・・・ああ、そう言うことか。この国には遺跡が多い。未発掘の遺跡もまだあるだろう。新しい扉を開けという事だな?
マーリンの言いたい事を理解した俺は困り顔だ。
しかし、今回の功績はこのパーティーで既に冒険者達に知れ渡ってしまった。してやられた・・・
メンバーもこの事態にあっけにとられている。
遺跡の調査については今回の事が片付いたら一度挑戦してみようと思っていた。これは街に帰ってから皆と相談して決めようと思う。
たぶん誰も反対するものは居ないだろうと、妙な確信はあるのだが、勝手に決める訳にはいかない。
そんな事を考えていると、壇上から降りてきたマーリンが俺の所に真っ直ぐ向かってくる。
「まずはレベルを上げろ。最低でも20だ。遺跡にはレベル上げに適したモンスターもタンマリいる。お前達のチームワークなら難なくレベル20に到達するだろう。」
「無茶を言ってくれるな・・・俺たちはのんびり冒険が出来ればそれで良かったんだ。」
俺は唐突な宣言に愚痴をこぼす。
「そう言ってくれるな。この国は平和ボケしすぎている。未知のマジックアイテムはどの国も、喉から手が出る程欲しいものだ。いま、この国の遺跡で探索している連中は他国の者が多い。そんな連中に、危険なマジックアイテムを横流しされては、今のこの国の状態では対応し切れまい。のんびりしたい気持ちはわかるが協力して貰えないか?」
「今の話はメンバーにも話す。その上でどうするか決める。俺たちは正義の味方じゃ無い。人よりちょっと運が良いだけの一介の冒険者だ。そこら辺をはき違えてくれるなよ。味方に危険が及ぶ事には手は出せない。それを承知してくれ。」
俺はそれをきっぱりと断言した。
「解っている。私も協力で出来る事はできる限りしよう。ハレックのギルドマスターにも手紙を書いておく。拠点はあくまでもハレックでかまわない。よろしく頼む。」
「買いかぶりすぎだ・・・。」
そう言って話を切り上げた。
帰りがけに受け取った冒険者ギルドのカードを見てみたら、レベルが一つ上がっていた。話を聞くと、今回の功績に見合った経験値の付与という事だ。
それに称号の欄に『探索者』と記載がある。迷惑な話だ・・・。
それよりも所持金額の多さに驚いた!0が3つくらい増えている。全員分を併せれば確かに身分を金で買えるというのもうなずける金額だった。
帰りの馬車はハレックまでの乗り合いだ。のんびり帰るとしよう・・・。




