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なれない戦闘の練習そして・・・

 翌日、冒険者ギルドの管轄する練習用の空き地を利用させて貰って、それぞれ模擬練習を始めた。


 一応有料だ。1日銅貨5枚必要となるが、練習用の刃を落とした武器や的など自由に使える。


 さて、俺は重戦士としての役割が果たせるかどうかの確認。ブリットとエイナルには攻撃担当としてそれに付き合って貰い、ヘンリクやエリック、エステルは魔法の詠唱や発動に、どのような手続きが必要になるのかを確認する事などを練習する。


 ニーニャは別枠で見学中。


 実際エイナルやブリットの攻撃を受けようとすると体が勝手に反応するのが解った。あくまでも、能力値の範囲での話だ。同時に攻撃されればどちらか一方が受けきれなくなる。そのときも、最適解で体が反応する。この条件反射のように動く体には正直驚いた。ただ、頭がと言うより脳が反応し切れていない。まるで自分の体では無いような感覚に襲われる。


 それは攻撃する方も一緒のようで、最適な攻撃をするために体が動くものの、当たると思った場所と実際当たった場所にズレがあるのだという。


 これは何度も練習して体と頭が一致するまで特訓した方が良いのかと思ってしまう。


 それか思い切ってゲーム感覚で体の動きに身を任せるままにしてしまうかだ。・・・


「どうだ?実際体を動かしてみて?わしは何か違和感があってしょうが無い・・・長時間続けると、乗り物酔いした気分だ。」


「あ!解る!目測がズレるから、頭が無理矢理修正しようとしちゃう的な?」


「精密な攻撃が出来るのはありがたいが、追い込まれた時に頭が反応しきれず致命的な隙を作りそうだな・・・。」


 皆同意見のようだ。そうなると前衛のサポートをするヘンリクにも一度確認した方が良いだろう。


「ヘンリクちょっと良いか?いつも使っているメイスでワシを何撃か攻撃してみてくれ。それで違和感があったら教えて欲しい。」


「?はい。」


 と言ってメイスで攻撃してくる。やはりシールドで受け止めようとすると若干角度にずれが生じて気持ち悪い事この上ない。


「攻撃してみてどうだった?」

「気持ち悪いですね・・・酔いそうです・・・。」


 やっぱりか・・・


「魔法の方はどうだ?」


「魔法の方は順調ですよ。何の魔法を使いたいと思い浮かべれば、自然と詠唱につながります。ただタイムラグが発生しますね。例えば今すぐターンアンデッドを掛けて欲しいと言われても、詠唱時間が掛かるので発動まで詠唱する側は動く事が出来ません。その間は前衛が援護する必要があるしょうね・・・。」


 魔法の方も一長一短あるようだ。思い浮かべたらその途端にズドン!と言う訳にはいかないよな・・・


 今までは魔法はサポート役兼後方支援と一方的な考えだったが、これからは魔法が発動するまでは前衛が支援する事を念頭に置いて、編成を考えておかなければならないという事だ。


 特に、ヘンリクやエイナルは場合によって接近戦も担う訳だから、両方慣れろと行ってもすぐには無理だろう。


「要は酔った感じを何とかしたいのよね?」


 俺の肩に腰を掛けていたフェアリー姿のニーニャが言ってくる。


「そうだな。何とかなるものなのか?」


「ん~出来なくは無いかな?皆この体に慣れていないのが理由でしょうし。最初の内だけでしょ?なら私の方でサポート出来るかな?」


 そう言って皆の頭を撫でて回る。


「これで幾分良くなったと思うわ。試してみてちょうだい。」


 そう言われて、最初の打ち合いを再度やってみる。すると今まで感じていた違和感を感じなくなった。最初からそこで受け止めるという指令を、ちゃんと脳が体に伝達しているように感じた。ブリット達も同様のようだ。さっきよりも幾分攻撃の威力も増したように感じる。これなら安心だ。


「よかった~さっきみたいに自分の体に違和感感じて攻撃なんてしてたらすぐ気持ち悪くなっちゃったと思うよ~。これならバッチリ攻撃に集中出来るね。」



 さて、前衛組の方の対策は何とかなったと考えて良いだろう。魔法チームはどうだろうか?様子を見てみると、エステルがなにやら魔法の詠唱を行っている所が見える。対象はその先にある案山子か?最後の詠唱が終わったようだ。


「ファイヤーアロー!」


 そう唱えると案山子に向かって炎の矢がもの凄い勢いで飛んでいく。


『ズドンッ!!!!』


 案山子に凄い火柱が上がった。


「ファイヤーアローって初級の火魔法だよな?初めて見たが、あんなに威力があったのか?」


 俺がそんな事を誰に言うでも無く呟くと、ニーニャが答えた。


「あれはあなたの世界で言うクリティカルなのよ。あの子、元々幸運値高いみたいなのよね・・・そこに私の加護がついちゃったから・・・」


「高い確率でクリティカルすると?」

「うん・・・」


「あんな高火力なファイヤーアローを洞窟や遺跡で放たれたら味方も巻き込まれるかもしれないな・・・。まして中級魔法なんて使えないだろう・・・。」


 どうしたものかと俺は頭を抱える。火力はあったに越した事は無い。されどいつ高火力で放たれるか解らない・・・。博打だな・・・。洞窟や遺跡では使わないように行っておく方が良いか?待てよ・・・魔力を押さえて放つ事が出来ないだろうか?


「エステル。ちょっと良いか?」

「はい?どうしましたか?」

「攻撃魔法を放つ時、魔力を押さえる事は出来ないものなのか?」


「え?・・・えーと・・・確か出来るはずです。火魔法の中級魔法書に魔力の制御の事が書いてありましたから。」


「なら、攻撃魔法を使う時は出来るだけ魔力を押さえて貰えないだろうか?特に、洞窟とか迷宮とか・・・」


「はあ・・・解りました。」


 何やら残念そうにしていたが、皆の命のためだスマン!



 さてと少し離れた所にはエリックが精霊らしき物体と、何やら会話らしき事をしている。近寄っても良いものなのだろうか?いきなり声を掛けてマズい事になっても困るから、エリックの視界に入る場所まで行きジェスチャーで知らせる。


「あ!何してるんですか?近づいても大丈夫ですよ。」


 良かった気付いてくれた。俺はエリックの所まで近づき状況を確認する。


「調子はどうだ?」


「ええ、今精霊達と何が出来るか話をしていました。光の精霊なら、明かりをともしたり、フラッシュのように目くらましをしたり、あと体当たり?とか・・・。水の精霊だと大きさにもよるけど、相手を丸ごと飲み込んじゃう事も出来るって言ってますよ。」


「凄いな。呼べばどこでも来てくれるのか?」

「ええ、精霊の御霊さえ持っていればどこにでも来てくれるそうです。」

「魔法を唱えたりはしないのか?」


「魔法というより、精霊との交信ですね。精霊の御霊を持って語り掛ければ出てきてくれます。」


「解った。引き続き交流?を深めておいてくれ。」


 自分でも何を言っているのか解らなくなるのだが、端から見れば友達と談笑しているという雰囲気にしか見えない。それで正解なんだろうと、自分自身を納得させる。



 一日訓練を済ましたが、概ね納得の出来る内容だったと思う。少々、新米女神様加護は利用してしまったが・・・


 戦闘経験を積みながらレベルを上げて行けば、そのうちに馴染むと言っていたし、まずはそつなく戦闘がこなせるようにしていかなければならない。


 そうなると後は実践なんだが、ブリットの防具がまだ仕上がらないのと、エステルが昨日購入した中級魔法書を読破出来ていない。


 武具屋の親父には無理言って早く仕上げて貰えないか交渉してきた。それでも後4日欲しいと言われてしまった。


 明日も引き続き訓練をしていこうかと思ったのだが、正直間が持たない。一度簡単な依頼を受けて、実戦を経験してみたい。


 ただ焦って不十分な準備のまま挑む程、俺の心は強くない。石橋は叩いて渡るのだ!依頼を受けるのはあくまでも、俺とブリットの装備一式が揃って、エステルの魔法書を読み終わるのが先だ。


 ただどうしても一つ気掛かりな事がある。テーブルトークの世界と、この世界が同一であるかどうかという事だ。


 前回達成した依頼というのが、ゲームと重なるというのも気に掛かる。もし同じだという事であれば、実はあの盗賊が根城としていた場所には重要な見落としがあった事になるからだ。


 これを知っているのはゲームマスターをしていた俺だけだ。冒険者ギルドからそれが見つかったという報告も聞いていない。皆にそのことを相談するべきか悩んでいる。


 そしていつものように「鹿の角亭」で夕食を取りながら、今日の訓練の反省会と明日のメニューを決めていく。


「どうしたの?何か思い詰めた顔しちゃって?何か訓練で気になる事でもあった?」


 ブリットが心配して訪ねてきた。


「いや、訓練は概ね納得した。ただのう・・・皆の準備が整うまであと4日間訓練を続けるというのも進歩が無いのでは無いかと思ってしまってな・・・」


 俺は正直に感想の伝えた。


「・・・何か考えがあるの?」


 ブリットが追い打ちを掛けてくる。俺は悩んだが腹を決めて相談してみる。


「実はの、最後にやったテーブルトークのシナリオは完全に達成したとは言えんのだ。」


「「「「「え?」」」」」


 皆驚いていた。そりゃそうだろう。依頼の荷を運び、盗賊を退治して、お宝をふんだくり、無事街に帰ってきたのだから。どこに未完遂なポイントがあったと言えるのだろうか?


「だけどちゃんとミッション達成で経験値も貰えたよね?何が未完遂だったの?」


「あの盗賊の宝はワシが追加で用意したものだ。本来のシナリオでは、あんなに多くのお宝は無かった。レベル10の記念にと思って、ワシが調整した結果なんだ。」


「・・・と言う事はあそこにはそれ以外の何かが隠されていたという事ですか?」


 ヘンリクが推察する。


「その通りだ。あそこは元々古代王国の城跡という設定だ。盗賊達はそこを根城にしておった。あの先はすぐに行き止まりだが、隠し扉があるはずだ。その隠し扉を見つけて、古代王国期のお宝の一部を手に入れるというのが本来のシナリオだった。」


「凄いじゃない!結構な額になるの??」


 ブリットの目が$マークになってる・・・


「イヤ・・・金額はレベルに見合ったくらいの額だ・・・ワシが問題にしたいと思っているのは・・・」


「実戦経験を積むチャンスだと言いたいのか?」


 エイナルが俺の言葉を奪って言う。


「そうだ。今なら盗賊もおらんし、道中さえ気を付ければ比較的安全に目的を達成出来る。と、考えておった・・・のだが・・・」


 俺の歯切れが悪いのに、皆が訝しむ。


「ブリットの防具が仕上がっておらんし、武器も限界を迎えておるという。エステルも魔法書を読む時間が欲しいだろうし、今皆にこの話をして良いものかと悩んでおったのだ・・・」


「そんな事心配してたの?大丈夫。ダイジョーブ!皮鎧は市販品を調達すればそんなにしないでしょ?剣もすぐに折れるとは言われていないもの。エステルもどう?」


「ん!今夜中には2冊目も読み終わると思う。残りは道中で読めば間に合うと思うよ。」


「往復3日の旅でしょ?馬車を借りて、保存食の確認と・・・」


「おいおい!まだ行くとは言っておらんぞ!それにゲームと違うかもしれんし・・・」


「いや・・・この話題を出しちゃったら行かない選択肢はないでしょ?」


 ヤレヤレと肩を窄めてエリックは諦め顔だ。


「女性陣が行く気を見せた段階で俺等は従うのみだな・・・」


 エイナルもどこか開き直った感じだ。


「じゃあ私今から市販品の皮鎧を買いに武具屋さんに行ってくる!」


 と言って止める間もなく、飛び出して言ってしまった。


「じゃあ僕は馬車の手配をしに冒険者ギルドへ行ってきます。」


 ヘンリクもそう言って席を立つ。


「皆いいのか?不安はないのか?」


 俺はまだ行くと決めた訳ではない。危険度は低いと思っているが、全く無いと言う訳でも無い。それなのに皆はやる気十分だ。


「せっかく異世界に来たんですから、多少の不安は受け入れていますよ。それを含めて楽しみましょう?」


 ヘンリクはそう言って冒険者ギルドへ向かっていった。


「まあ、なんだ・・・お前の気持ちもわかる。だが、お前が思っている以上に皆はこの世界を受け入れようとしていると思うぞ。」


 エイナルは周りをよく見てくれていたようだ。

 俺が不安であることがイコール皆も不安何だと思い込んでいたのだろうか?


「そうですよ先輩!もっと楽しみましょう!」


 エリックまで追従してきた。


 ふう・・・。楽しむか・・・TRPGの基本じゃないか。ああ・・・異世界に来てしまった事で大事な事を忘れていたな。もっとこの世界を楽しもう!

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