第15月の女性
第15話月の女性
勇気は女性の美しさに見とれていたがすぐに頭を切り替え夏の言っていた、月で暮らしている種族の事を思い出す。
「あなたはここに住んでる人ですか?」
月の女性はびっくりした様子勇気をチラチラと見つめ、青く尖った角を忙しなく触っている。
勇気にはその角が無理矢理付けられたような違和感を感じた。 女性は右の頭に角が生えていて右目の目の瞼上まで肌が青くなっていて、布を体に羽織っていてポンチョのような青い服を着ていた。
「そう……だよ」
「良かった! 言葉は通じるみたいですね、どこから来たんですか?」
勇気は月の女性との距離をさらに詰めようと近づこうとした。
「ダメ! 勇気は私と近づいちゃダメ!」
勇気は驚いて足を止めた。
「早くこれ持って行って帰って!」
月の女性はそう言うと、勇気の足元がめくり上がり酸化物の塊が浮かんできた。
勇気はその酸化物を重力を操作し受け止める。 月の女性は勇気が受け止めたと同時に勇気とは反対方向に走り始めた。
「ちょっと待って!」
勇気の呼びかけにも応じず女性は少し先で姿が見えなくなってしまった。
「行っちゃった。 誰だったんだろう、俺の名前知ってたし、重力操ってたし。 あながち俺が月出身なのも間違いではないのかもしれない」
勇気は酸化物を浮かせながら宇宙船に向かった。 途中でサンドが後ろから追いついてきた、勇気の方を見るとサンドはさらにスピードを上げて宇宙船に向かった。
「夏! ちょっと待てよ! 俺が悪かった!
待ってくれ!」
サンドは勇気の方を向くと酸化物を勇気に向かってぶん投げた。 勇気はなんとか重力を軽くし受け止めた。
「何か用?」
勇気はいきなりの酸化物を投げた事に対してツッコミたかったが夏が怒りそうなのでグッとこらえた。
「さっきはごめん俺が悪かった。 夏の気持ちをあまり考えられてなかった。 出来る限り指示に従うよ」
「わかった、私もふざけすぎて悪かったよ、でも1人で行動するのは本当に何かあってからじゃおそいから言ってるんだよ」
「あの、その事なんだけど俺会ったよ、月の住人に」
「はあ? レーダーには何の反応もなかったけど」
「いや、本当なんだって! 片側だけ角が生えてて角の以外は普通の人間みたいだった!」
「どうせテンション上がって幻でも見たんじゃない? 一応もう一度宇宙船に帰ったらレーダーで確認しておくよ」
「違うって! 本当だもん!」
勇気は瞬きを細かくしながらサンドの方を向く。
「勇気だってすぐふざけるよね、もうさっさと帰ろ」
「ごめんって明日は何するの?」
「明日は水源の確保かな、とりあえず大体の目星は付いてるからそこまで車で行こうかな」
「そっか、楽しみだわ!」
「なら良かった、私は先に大気さんの美味しいご飯食べに行くからじゃね!」
夏は通信を切って食事に向かってしまった。
「おい! 待ってよ!」
勇気は月面を駆け出した。