第1話 祝福《しゅくふく》と呪禍《シュクフク》
駄文ですけど少しでも面白いって思ってくれたら嬉しいです
「ナニコレ…ドッキリか何か?」
「ドラマとかの撮影?CGとかだよな…な?」
「嘘…マジで異世界?拉致?」
さっきまでいた教室はどこにもなく、代わりに陽向高校の3-A組の生徒たちの目の前には荘厳な雰囲気を醸し出している大聖堂が広がっている。
足元には煌々と輝く大きく複雑な魔法陣が生徒たちを照らしている。
そして、目の前には白いローブを纏った数十人もの男女がいた。
その中でもとりわけ豪華な装飾品を身につけている女性が口を開いた。
「異世界からの救世主様方、私の言葉は理解できますか?」
「に、日本語…?えぇ、わかりますけど…どういう事なんですか?」
軽いパニックに陥っている中で、クラス委員長の天宮 流星が代表して応答する。
「はい、詳しいことは王宮へ案内してから話します、こちらに。」
そう言うとローブの人達に案内されて大聖堂をでる。
豪華な調度品の数々が飾られている廊下を通り、広間へと通される。
広間は先ほどの大聖堂にも匹敵するほど大きく、天井から下がるシャンデリアが室内を明るく照らしていいる。
壁際には金属鎧に身を固めた何十人もの兵士が並んでおり、部屋の最悪には大きな玉座に座る金髪の老人がいた。恐らく彼が王なのだろう。
王は立ち上がり、俺たちに歩み寄る。
その歩き方は老人とは思えないほどしっかりとした足取りであり、その立ち振る舞いも底知れない威厳を放っている。
「貴公らが異世界の救世主であるか。
私はステライト国王、ランドルフ=レイスターという。
私たちの呼び声に応えてくれてありがとう。救世主よ」
そう言うと俺たちに向かって頭を下げる。
「あの、救世主っていったいどう言うことなんですか?」
一国の王が頭を下げると言う状況に戸惑いながらも俺は口を開いた。
「あぁ、実はこの世界〝フライゼア〟で千年前に封印された魔王が復活してしまったのだ。
〝魔王〟なんて呼んではいるがあれはもう我々の範疇には収まらない。生物の意思とカタチをした災害、破滅、死、終焉…そんな不条理な存在が解き放たれてしまった…
ヤツらは世界各地に拠点を作り、少しずつその勢力を拡大していっている。
人類種、獣人種、精霊種による同盟で押しとどめてはいるが破られるのも時間の問題だ
そこで貴公らを呼んだのだ。
千年前の文献に残された〝異世界の救世主〟を」
「私たちで戦えるの?元の世界に帰れるともわからないし…」
「そうだよなぁ……あの、王様!僕たちはただの一般人です。戦いなんてしたこともないし、そんな奴に勝つのは無理なんじゃ…」
生徒の1人がそんなことを漏らす。
確かにそうだ。俺たちは只の高校生、剣なんて振るったことはないし命懸けの戦いなんてのもない。
「あぁ、心配には及ばない。アレを」
「かしこまりました」
従者の1人が古びた紙の束を持ってきて俺たちに渡す。
文庫本程度の大きさで裏を見ても特に何も書いていない。
「これは〝ラプラスの頁〟という。千年前に作られた人類種に伝わるアーティファクトの一種だ
念じると貴公らの〝才覚〟〝属性〟〝祝福〟が発現する。
〝才覚〟はその分野においての適性を
〝属性〟は最も得意とする属性を
〝祝福〟はかつての英雄や神霊などの導きを示す。彼らは貴公らにチカラを授け、その未来を導く存在だ。」
するとみんなの持ってる紙が白く輝く
「おぉ、なんかスゲエ!魔術師だって!」
「俺の属性火と土だって!」
「これ強いんじゃね?」
そんな中で国王が流星の紙を覗き込んで驚く。
「こ、これは!?」
《アマミヤ リュウセイ》
《才覚》〝騎士王〟
《属性》〝光〟〝聖〟
《祝福》〝救国の騎士王 アルフレッド〟
「これってすごいんですか?」
「すごいなんてものじゃない!
貴公は千年前に世界を救った英雄、アルフレッドの祝福を受けている!君は遠くない未来に救世主となる運命にあるんだ!!」
「おお!スゲェよ流星!」
「さすが流星君!」
歓声が沸き起こる。
まじで主人公だなアイツ。俺はどうなるんだろうな?
少しの期待を胸に目を閉じて意識を集中させる。
すると ドクン、と何かが脈打つような感覚が走る。
違和感を覚え、目を開けると紙に変化が起きる。
しかし、それは白い光などではない。
真ん中から焦げるように、黒いインクを流し込むように黒く変色していく。
周りも水を打ったように静まり返る。
程なくして真っ黒になった紙に白い文字が浮かび上がった。
「な、なんだよ…コレ…」
思わず呟いた。それはどう見ても〝救世主〟には程遠い内容だった。
《シキザキ ハルト》
《才覚》〝銃士〟
《属性》〝闇〟〝幻〟〝時〟〝空〟
《呪禍》〝絶望の魔王 ザミエル〟
「黒い頁…銃士…闇属性…
〝魔王の呪禍〟…彼は遠くない未来…魔王となり、世界を…滅ぼすだろう…」
そう言うと王は震えながら後ずさる。
クラスメイトも一瞬の沈黙の後一気に俺から距離を取った。
みんなの表情には驚き、敵意、そして恐怖が刻まれている。
この瞬間、俺は〝未来の救世主〟から〝未来の魔王〟となってしまった…
投稿速度は不定期です。ごめんなさい