プロローグ ありがちな日常からの集団失踪
オリジナルの小説を書くのは初めてなので色々とガバガバな駄文になってしまうかもしれません。
取り敢えずの目標は完結まで書ききる事です。
暗い、暗い、何処までも真っ暗な中、ただひたすらに落ちていく…
上下左右の感覚もないから〝落ちていく〟なんて表現は語弊があるかもしれない。
この状況をどう表現しようがどうでもいい。これが決して心地の良いものなんかではないことだけは確かだろうから。
《…ヲ千切レ………獄ヲ砕………》
何かの声が響き渡る。
その〝ナニカ〟は男のようでいて女のような声で…
老人のようでいて幼子のような声で …
脳に響き渡る大音量でボソボソと囁くように…
慈愛に満ちていてあらん限りの憎悪を込めて…
《鎖ヲ千切レ……牢獄ヲ砕ケ…
……腐敗シタ処刑台ヲ……ソノ手デ撃チ抜ケ!!!》
そんな矛盾に塗れた叫びが
独りぼっちのシュプレヒコールが
真っ暗な世界を震わせた………
ピピピピ、ピピピピ……
と、その瞬間に無機質なアラーム音が鳴り響き、俺こと四季咲 晴人に月曜日の朝が来たことを無情に告げる。
「…あー、クッソ…最悪な目覚めだよ…」
ガンガンと痛む頭を押さえながら洗面所へ向かう。
二、三回顔を洗い鏡を見るとかれこれ18年間の付き合いとなる仏頂面がこちらを見返してきた。
相変わらず酷い顔だ。唇は真一文字に結ばれて以来微動だにせず、妙な夢で目覚めが悪いせいか隈が濃くなっている。
眉間には彫刻刀で彫ったのではと思うほどの皺が刻まれている。
冷蔵庫からコンビニで買ったパンを齧り、牛乳で流し込む。2分程で朝食を終えて制服に着替え、携帯端末を繋いだヘッドホンを装着する。
「行ってきます」
最後に写真立ての中の両親に挨拶して玄関を出た。
早朝の静かな街を歩く。ヘッドホンから流れる小粋なジャズとは裏腹に俺の気持ちは沈んだままだった。
御察しの通り、俺はお世辞にも学園生活を謳歌しているような人間ではない。
口下手で目付きの悪い俺と共に登校する仲の友達などはいない。
所謂〝陰キャ〟そう揶揄される人間の1人。
学園生活という舞台において俺に割り振られた役柄はその程度でしかなかった。
別に表立って暴力を受けるわけではない。昔のドラマのように机と椅子を窓から投げ捨てられた事もない。
ただ何かしらのトラブルが起きた際に非難を受ける。
大衆の前で醜態を晒し、一定の笑いを提供する。
SNSや噂話での攻撃対象となる。
その程度の〝役割〟を割り振られただけの話なのだ。
程なくして俺の通う陽向高校の門をくぐり、3-Aの教室に入る。読みかけの文庫本を開き、始業ベルが鳴るのを待つ。これが俺の朝の流れだ。
暫くすると不意に座っていた椅子の感覚がなくなり、床に後ろから倒れ込む。
「痛ったたた…」
したたかに打ち付けた背中を押さえながら振り向くと、そこには意地悪く笑う巨漢の男子生徒がいた。
彼は毒島 正隆、クラスメイトの1人で、何かにつけて俺に突っかかる男だ。
どうやら後ろから椅子を抜き取られたようだ。
周囲からもクスクスと笑い声が聞こえてくる。ここまで味方がいない状況は流石に凹む。
「ヨォ、晴人クーン?随分とスカしてんなぁオイ」
「ハハ、ごめんね。椅子返してもらっていいかな?」
言い返したい気持ちを抑えてなるべく穏やかに返す。ここで自分が折れておけば相手も突っかかってこない。
ほんの少しの痛みと恥でこの場を乗り切ってしまおう。
しばらく経ってクラス全員が集まり、始業ベルが鳴る。
取り留めのない当たり前の日常がいつも通り機械的に過ぎていく……
……ハズだった。
「え?ねぇナニコレ地震?」
誰かの声と共に突如教室が揺れ始める。それだけじゃない。天井が不自然に光り出したのだ。明らかに自然現象のそれじゃない。
「大きい!みんな机の下に入れ!」
「マジでヤバくね?」
「うわっ眩しい!」
目も開けられないほどの光に俺たちは包まれ…
「……お願いです。世界を救ってください!異世界の救世主様!」
「…え?…どうなってんの?」
気づけば俺たちの退廃的な日常は、如何にもありがちなファンタジーに塗りつぶされてしまっていた。
なんかいい感じの言い回しを覚えたいです。
誤字、脱字があったらごめんなさい。