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45.【魔王軍拡大】決意


「人間が森の入口に砦を造っているんですか?」


ダンジョンの外を探索していたメンバーからそう報告を受けて、ポラリスは渋面を作った。


「上空にソニックスワロー飛ばして確認させたけれど、あれ、いつかの王子様よ」


ポラリスの言葉を肯定しつつ、エリが補足を加える。


「性懲りもなく攻めてくる気かよ」


「野営地じゃなくて砦ってのが物騒だな」


内政班として『玉座の間』にいてその報告を聞いていたギリとグランドがそれぞれ呟いた。


「…………攻めましょう」


「「「えっ!?」」」


逡巡の後、ポラリスが決断を下す。

予想外の結論に、その場にいた全員が驚いて彼の方を見た。


「ただの遠征軍なら撃退すれば済みますが、砦を建設しているとなると見過ごせません。森の中へじりじりと進出されて、押し潰されていまいます」


「まぁこっちはダンジョンで自給自足できるけども、あんまりいい気分じゃないよな」


「その自給自足ができる事が問題でもあります」


ギリの言葉を、しかしポラリスは否定する。


「一方向だけとは言え、森の入口を封鎖された状態で、我々が問題無く活動していては、補給路を探られてしまいます。マイガさんとの交易が中断される事になるでしょうし、ダンジョンから物資を生み出せると推測される事さえ避けたい」


「なるほど」


ギリの言葉の通りに、サザンクロスは森を全周で完全封鎖されても問題無く機能する。

しかし、それが相手にバレた場合、必ずその対策に乗り出してくるだろう。


砦を建設して腰を据えてじっくりと攻略するのではなく、大軍で一気に攻め寄せられたら確実に潰されてしまう。


「長期戦に付き合うのも良いですが、相手、この場合は以前こちらに来た王子ではなく、その背後、というか上にいる国王などですね。彼らの考えがわからない以上、主導権を向こうに渡すのは悪手です」


これまでは相手が森の外にいたから、撃退と警告だけで済ませて来た。

それも結局は相手の思考が理解できなかったが故の対処だった。


「けれど、相手は腐っても王子様でしょう? ほら、こういう時ってそういう人たちの面子を潰したりするとさ……」


「素早く行動に出る事で、こちらの意図を明確にする効果が望めます」


はんぺんが消極的な意見を口にするが、ポラリスは即座に反論してみせた。


はんぺんに限らず、クランの多くのメンバーはフィクションの世界でしか戦争を知らない。

ダンジョンに攻め込んで来た相手を撃退する経験はあっても、こちらから相手に攻撃するというのはまだ躊躇いがあった。


「それに、このような行動に出てきた以上、受け身に回っては相手をつけあがらせる事になります。譲れないラインははっきりと示すべきです」


「砦を攻撃した時の反応で、王国の考えも少しはわかるかもしれないからネ」


ポラリスの意見に佐藤が同意する。


「まぁ、一度全員を集めて意見を聞きましょう。前の世界の経験だけ、それも私一人では限界がありますからね」


その提案に反対意見は出なかった。




「賛成だ!」


全員を『玉座の間』に集め、一通りの状況説明が終わったところで、エレがいの一番に同意を示した。


「攻め寄せて来る人間の軍隊! こっちをハナから異形の軍団、滅ぼしても良い相手と見做して襲い来る高慢な王族!! これをわからせずしてなんのための異世界転生か!!!」


彼はいかにも(・・・・)なシチュエーションに燃えていた。


「自分も賛成ですね。砦なんて造られてそこを拠点に活動されたら、折角増えて来た連絡拠点が壊されてしまいます」


ケビンの意見は現実的だ。


「まぁ、ここらでボク達の恐ろしさをしっかりと教え込んでおいた方がいいかもね」


「あまり譲歩しすぎるのも良くありませんからな」


ユーキの言葉はやや軽い印象があったものの、こんにゃくがそれに追従する。


「我々探索班としても放置すると危険が増しそうだからな」


「ああ、間違いなく今後の活動に支障をきたすだろう」


「既に周辺の伐採作業が進んでいるからね。放っておくとこちらの領地をどんどん減らされるだろうね」


ドーテイが意見を述べると、ガンゲイル、ぷっちりがそれに同意する。


「他の奴も特に反対しないみたいだし、俺も賛成だが……」


積極的に意見を述べる者が他にいないか周囲を見回しながらげんごろーが口を開く。


「ポラリスは本当にそれでいいのか?」


「まぁ、このような状況に追い込まれる事自体が不本意ではありますが……」


「いやそうじゃなくてさ」


真正面からポラリスを見据えて詰問するも、彼の真意は伝わらなかった。

どこか毒気を抜かれたように、げんごろーは苦笑する。


そんな二人を見て、エリとドーテイがにやにやしていた。


「砦を攻撃するとなると、間違いなく相手を何人も殺すことになるぜ?」


「そうですね。あまり気持ち良い話ではありませんが、仕方ない事だと思います」


既にマイガの仲間の勇者達をはじめ、ダンジョンに侵入した人間を殺している。

とは言え、何を今更、とは言わない。


防衛のために戦い結果的に殺していますのと、こちらから積極的に攻撃を仕掛けるのとでは、精神的な負荷が違って当然だ。


「それもあるけどそれだけじゃなくてさ。人間って殺した時に得られるソウル、結構多いだろ?」


「ああ……」


その言葉を聞き、ポラリスはげんごろーの話の着地地点を理解する。


「10万ポイント、超える可能性高いぞ」


クランストーリーのLV4を敢えて進めず、クランの戦力拡大に努めて来たサザンクロスにとって、それは確かに懸念すべき事項だ。


「それならそれで、仕方のない事だと思います」


ストーリーLVの維持よりも、クランの安全確保を重視した結論だった。

しかしそれだけではない。


ポラリスがこの世界にきた経緯を考えれば、間違いなく何者かの意思がそこに介在している。

そして、多くの転生条件をランダムで設定したポラリスが魔王として転生した以上、その介入はかなり恣意的だ。


ならば、自分達のストーリーを強引に動かすためにこのような状況を用意したと考えるのは自然だ。

それに強引に逆らったところで、事態が好転するとは思えない。

むしろ、より最悪の状況でストーリーの進行を求められる可能性さえあった。


「だったら、一度目で受け入れるのが一番ダメージが少ないと思うんですよ」

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