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40.ボーイズトーク

大変長らくお待たせいたしました。

更新再開です


ある日の午後。

男性たちが『狩場』の中で談笑をしていた。


『狩場』は倒したモンスターに応じて『食料』が得られるものの、これはそういう名前のアイテムであり、実際に魔物の肉などが手に入る訳ではない。


味もよくわからないし、肉と小麦が並んだアイコンがあるだけで、どのような外見をしているのかもわからない。

ただ、アイテムとして使用すると、満腹感を得られて、『空腹』『飢餓』などのバッドステータスが解消されて、暫くの間それらを受けなくなるという効果があった。


時間経過で消滅したりする事もないので、入手数が消費量を上回れば溜まる一方。

しかも、ギリのような骨でも、そのギリの倍以上の体格を持つミノタウロスのげんごろーでも、『食料』を一つ消費した際に得られる満腹感は同じで、それから『空腹』に至るまでの時間も同じという不思議なアイテムだった。


なので、必要分を稼いでしばえば、あとは自由時間なのである。

ボスモンスターは経験値が美味しいので全員で戦って倒すが、それ以外の雑魚モンスターを積極的に狩るような事はしない。


戦闘でも内政でも経験値を得にくい種族、職業のクランメンバーのLVを上げるために利用される事のある『狩場』だが、経験値の少ない魔物を時間いっぱい追い掛け回すのは非効率的過ぎた。


「この世界にも随分慣れてきたなぁ」


暖かな日差しと心地よい風を受けて、気持ちよさそうに目を細めてげんごろーがそう呟いた。


「この世界っていうか、この生活に、かな」


それを受けてウーズのグランドがそう返す。


「とは言え、ここで戦って、時折森の見回りをするだけだからねぇ。どうにも最初に考えていた生活とは程遠いよ」


サールアームのユーキが器用に四つの肩を竦めてみせた。


「まぁなぁ。もうちょっとこう、アレだ。無双とまではいかなくても、チートスローライフみたいなのを想像してたんだが……」


ユーキに同調するのはダークマージのシュガー。


「それならなんで魔属を選んだんだよ」


そしてげんごろーに突っ込まれるまでがテンプレの流れであった。


「そう言えば、エレさんに同じ種族のメスを召喚してもらうって話はどうなったんです?」


「ああ、あれなぁ……」


マッハイーグルのケビンがグランドに話を振るが、どうにも歯切れが悪い。


「一応エレがゴブリンを呼んだらしいんだが……」


「ビジュアル的には50前後で呼び出されるらしくてな」


言葉を濁すグランドに代わり、げんごろーが説明する。


「まぁそんなのでも溜まっている(・・・・・・)現状、問題なく致せるはずだったんだが、知能が犬猫並みだったらしくてなぁ」


一応意思の疎通はできるようだが、簡単な命令を下す事しかできず、会話はまず不可能。

そんな相手に性的興奮を抱くのは少々難易度が高かったらしい。


「これでそれなりに女性経験があればまた違ったんだろうけど、前世から続いて童貞のエレにはハードルが高かったみたいだ」


「ただでさえ男は緊張で勃たなくなる事があるからなぁ。初めての相手がそんなだと、ちょっと厳しいかもな」


ブラックアニスのエレは異世界チートハーレムを夢見てこの世界に転生して来た。

他種族に対して性的興奮を得て繁殖が可能になる『異種族交配』と自分より位階の低いモンスターを召喚できる『サモン』のスキルを保有しており、その下準備は終わっている。


しかし、現状エレが呼び出せるモンスターでは、彼が望むハーレムを作るのは不可能だった。

グランドの言うように、ただの性欲処理ではなく『初めての相手』としては遠慮したいと思っていた。

拗らせた童貞は面倒なのである。


「そうなると、魔王さんに頼んでクランのモンスターとして知能の高い相手を召喚して貰うのが手っ取り早いですかねぇ」


「それも嫌がりそうだけどな」


ユーキの言葉をグランドが否定する。

エレの心情を代弁しているようで、実はグランドの本音でもあった。


恥ずかしがる女性陣にセクハラする事を悦びとしているエロスライムである彼は、しかしだからこそ欲求をぶつける相手は選んでいた。

ぶつけられる方はたまったものではないが。


「ユーキはどうなんだ? ターミットなら呼べるだろう」


「ボクは別にチートハーレム目指してる訳じゃないからね」


げんごろーに水を向けられたユーキは、しかしさらりと躱した。


「性欲に関してもなんだか微妙なんだよね。あるにはあるんだけど興奮してこないというか……」


「わかる!」


ユーキの呟きに反応したのはケビンだった。


「これ絶対発情期設定されてますよね!」


「そうか発情期か。それはちょっと思い至らなかったね」


「ああ、モンスター……魔力を帯びた獣って考えるとそういう事もあるのか……」


ユーキもケビンの言葉に納得し、同じように感じていたげんごろーも理解を示した。

意思疎通が図れる他の種族に対して性的欲求を抱かないという特殊な状況が、彼らの思考力を奪っていたらしい。


「となると、その時までに性欲を解消する代償・・を用意しておかないとマズイのではないか?」


そしてダークプリーストの惣栄そうえいの言葉に全員が沈黙してしまった。


するとその時、近くの森から大気を震わすような咆哮が響いてきた。


「お、出たか!」


微妙な空気をかき消すように、大声で叫んでげんごろーが立ち上がる。


『狩場』は本来一度に四人までしか利用できない。

そしてその際に登場するボスモンスターは迷宮猪という巨大な猪の魔物だった。


だが、今この場には五人いる。

それは『漁場』と同じく『狩場』も強化された結果だった。


一度に利用できる人数の増加。

出現する魔物の強化。

魔物を倒した際に手に入る『食料』の増加。


そして、ボスモンスターの強化である。


「グオオオオオオオォ!」


咆哮に続いて地響きを伴い、何かがげんごろー達に向かってくるのが感じ取れた。

木々が倒れ、鳥が飛び立つ。


そしてそれは姿を現した。


全高は5メートルを超え、体長は8メートルはあるだろう。

見るからに分厚い皮膚と太い四肢が圧倒的な膂力を感じさせる。


それは地球でも地上最強生物の一角に数えられる、狂暴な生物を基にした魔物。


マウントヒポポタマス。


「かかってこい、相手になってやるよ」


巨大な口を広げ、まるで一本一本が巨大な岩であるかのような牙を見せつけるマウントヒポポタマスを前にして、げんごろーはバトルアクスを担いで口元を歪めたのだった。


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