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39.みんなの事情

進化の続きです。


「じゃあ次は俺かな」


はんぺんがインヴィジブルに進化している途中、立ち上がったのはダークマージのシュガーだった。


「そもそもダークマージってどういう種族なんだ?」


「魔妖士族だけど……まぁ人間ではないな。悪魔……なのかな?」


ギリが口にした疑問にシュガーも首を傾げた。

シュガーの外見は、肌が青く、髪が緑色をしている以外は普通の人間にしか見えない。

ビジュアル値も高いので、人間の感覚で見ても美形ではあった。


「進化先はザントマンとグルアガッハだ。正統進化はグルアガッハになるみたいだな」


「ザントマンはドイツのお伽噺に登場する眠りの妖精だヨ。砂の入った袋を担いでいて、その砂が目に入ると眠ってしまうと言われてるネ」


シュガーが進化先を口にすると、自然とメンバーが佐藤を見た。

佐藤も心得たもので、すぐに解説する。


「グルアガッハはイギリス伝承に登場する、魔法使いの妖精だネ。女性のグルアガッハは家と農園の守り神だよ」


「女性の? じゃあ男性は違うのか?」


「性格が悪くて悪戯好きのタイプと、女性と同じく農園の守護者だけど、働き者過ぎて過労死するタイプがいるネ」


「うっ……」


働き者過ぎて過労死する、の文言に、ポラリスをはじめ何人かが胸や頭を押さえて呻く。


「シュガーなら前者の方だな」


「なんでだよ!?」


「そういうとこでしょ」


エレに弄られて叫ぶシュガーに、エリがツッコミを入れる。


「ザントマンは『睡眠』をはじめ、状態異常を与えるスキルや魔法を使えるようになるみたいだが、まあ、グルアガッハを選ばせてもらうぜ」


「一応理由を聞いてもいいですか?」


「う……、改めて聞かれると恥ずかしいな」


ポラリスの質問に、シュガーは頭を掻きながら顔を背けた。


「まぁ、あれだ。元々魔法で俺ツエーしたかったんだよ」


異世界転生、それも、人外への転生可能という事でシュガーが望んだのはそういう自分だった。


「蓋を開けてみたら外れ種族に外れ職業だったと」


「うるせぇな! 役割分担のお陰で多少役に立ってたろ!」


ギリのツッコミに返すが、自覚があるのか迫力が無い。

実際、貴重な遠距離攻撃役ではあった。

MPの消費量の多さと、魔法威力の低さから、スキルの無い弓よりマシ、程度だったが。


それでもLVが上がれば攻撃回数も威力も増え、進化直前には一端の攻撃役となっていた。


「これで種族として魔法に特化すれば俺の目標に近付けるはずだ」


「近付けるといいな」


「ハーレム作れてねぇお前には言われたくねぇんだよ」


エレは自分を棚に上げて、嫌らしい笑みを浮かべた。


「じゃあ次はドーテイがいこう。ドーテイの進化先はナックラビーとデュラハンだ」


「デュラハンってアンデッドか?」


げんごろーの問いに、ドーテイは一度頷く。


「そのようだな。所謂首無し騎士だが、馬に乗っているというよりは首の無い馬に曳かれた馬車に乗った騎士、といった感じだ」


「それになんでケンタウロスから進化できるんだ?」


「まぁ、ケンタウロスも首無し馬と言えなくもないからな」


「それは超解釈過ぎる……」


「それで、ドーテイさんはどちらに進化なさるんですか?」


「ポラリスはいつも冷静だな」


言い合うげんごろーとドーテイを気にせず尋ねるポラリスに、呆れたような感心したような声を出すげんごろー。

実際は、デュラハンなどがよくわかっていないので、どこがツッコミ所なのか理解していないだけだったりする。


「まぁ、ここはナックラビーだな。正統進化なのは勿論だが、デュラハンはアンデッドだから昼間に活動できない」


「あー、ローテーションの見直しが必要になりますか……」


「ちなみにナックラビーは下半身が馬で上半身が人間って特徴だけ見ればケンタウロスっぽいけど、首が無く、一つ目で、皮膚が存在せず、腕が地面に着く程長いとされてるスコットランドの怪物ネ」


「え?」


その外見を想像して、メンバーの顔が一斉に蒼褪める。

首が無く、肩に直接頭が乗っているのはまだいい。

両腕が地面に着く程長いのはむしろ便利だ。

一つ目も、この間まで名の通りの種族がいたくらいだ。


だが、皮膚が無い?


「ええと、はんぺんさんみたいに透明という事でしょうか?」


「生肉とそれにまとわりつく血管が見えている状態ネ」


「うっぷ」


「いや、お前何を吐くんだよ」


ギリが思わず口元を押さえるが、彼はレッドボーン。骨しかない種族だ。


「まぁ、ビジュアルを見る限り、少し肌が青白いケンタウロス、という感じだし大丈夫だろう。あまりに不気味ならマントでも羽織るさ」


「それがいいネ。真水を被ると死ぬらしいヨ」


「…………」


「…………デュラハンにしませんか?」


「いや、これまでの進化先も、地球の伝承そのものじゃなかったからきっと大丈夫だ」


「果たしてそうかな?」


自分に言い聞かせるように予想を口にするドーテイに、おんたまが声をかける。


「蓋を開けてみたら地雷だった。それが起こらないと断言できる?」


「凄い説得力だ……」


種族はラミア。職業はソーサラー。

この組み合わせが地雷だと見抜ける人間が何人いるだろう。


「拙僧を見ても、大丈夫だと断言きるか?」


「自信がなくなるからやめろ」


追い打ちをかけるのは惣栄そうえいだ。

種族はデビルプリースト。職業はプリースト。

通常この組み合わせは鉄板の筈だった。


「海水には強いらしいから大丈夫ヨ」


「どこにも安心する要素がねぇよ」


げんごろーのツッコミは、メンバー全員の心情を代弁していた。


「じゃあ次はああああがやろうか。佐藤は解説って役目があるし」


「すみません、佐藤さん」


「いいヨ。こういうのを語れるのは楽しいネ」


「進化できるのはガーゴイル、ダオロス、箱入り娘だね」


「最後のは種族なんですか……?」


「まぁ、今のああああの中に女の子が生えるって事だよ」


「女の子の方があーさんなのか、箱も含めてあーさんなのか、それが問題だ」


真剣にくだらない事を考えるエレ。


「女の子の方がああああだね」


「よし、箱入り娘にしようぜ!」


即座にエレが反応し、ギリとグランドも俄然興味が湧いたようだ。


「下半身が宝箱だけどね」


「……ん?」


「だから言ったでしょ? 今のああああに女の子が生えるって」


「つまり、箱の中に女の子が入っているんじゃなく、箱の中から女の子の上半身が生えているって事か?」


「ビジュアル見る限りそんな感じ」


げんごろーの推測をああああが肯定する。


「まぁ、俺は胸が見られるならいいけど」


「いや、服は着て貰いますよ」


勝手にトップレスを想像して自分を落ち着かせるエレだが、ポラリスから冷酷な宣言がなされた。


「ダオロスってなんだっけ?」


「クトゥルフ神話に登場する旧支配者だネ。棒状の物体に囲まれた、様々な光を放つ半球状の姿をいているヨ」


「クトゥルフ!?」


ニンジャと聞いた時と同じようにテンションが上がるエレ。


「え、早くね? 奉仕種族とかなじゃなくて、もう旧支配者出てくんの?」


「というかそれはミミックから進化するようなものなのか?」


「本体が棒状の物体に囲まれているからかしら?」


テンションの高いギリ達とは反対に、げんごろーとエリが首を傾げる。


「正統進化は箱入り娘の方みたいだけど、ああああはダオロスになるよ」


「誰もガーゴイル気にしないのな」


「怪物の姿をした動く石像ってだけじゃね?」


「擬罠っつーか、擬態繋がりか?」


「一応理由を聞いてもよろしいですか?」


「上半身人になったら働かなくちゃいけないじゃん」


「……わかりました」


実にああああらしい理由だった。

彼女は本気で働く気がないらしい。

正直、時間を持て余したり、暇過ぎて逆に苦しくなったりしないのだろうか、とポラリスは疑問に思っていた。


「では最後は佐藤さんですね」


「オーケィ! ミーが進化するのはラストサムライね!」


「え?」


「だから、ラストサムライ。相手の刀を錆びさせる力を持った、錆びた侍ヨ!」


「ダジャレかよ」


「箱入り娘も大概だけどね」


普段と比べて更にテンションの高い佐藤を見て、ああ外国人だなぁ、と今更ながらにメンバーは妙に納得していた。


という訳で今回の進化、完了しました。

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