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34.強襲のち捕縛

冒険者捕獲用グループによる出撃回です。


ソニックスワローから冒険者のパーティを発見したと報告があったため、ドーテイ達はそこから最も近い拠点へと、『遠距離通路』を利用して向かう。


見張り役の一つ目に周囲を探らせるが、他に気配は無し。件の冒険者パーティはソニックスワローが上空から監視を続けている。


「上空からケビン君とガンゲイル君による逆落としで戦闘を開始しよう。できれば後方から追い立てる形で襲撃してもらいたいな」


「わかりました」


「ああ、任せろ」


ドーテイが作戦を説明する。

マッハイーグルのケビンとカマソッツのガンゲイルが、冒険者パーティの上空を飛び過ぎ、背後に回ってから急降下して奇襲をかける。


「意識が二人に向いたところで、ドーテイとコータ君が強襲。よりこー君と幸恵(さちえ)君はその後でフォローを頼む。


「うっス」


「わかりました~」


「わかったわ」


「幸恵君とよりこー君は基本的に魅了と糸で捕縛して貰う形だが、戦闘が続いているようなら参加して貰う事になる」


「大丈夫ですよ~」


「まぁ、頑張ってみるわね」


ドーテイの補足説明に、よりこーは変わらず緩い感じで応えるが、幸恵はやはり緊張しているようだった。


「茂みに隠れて呪い使ってくれるだけでも十分っスよ」


それを感じたのか、コータがフォローする。


「ええ、ありがとう」


「じゃあ、ちょっと行って参りますね」


「ああ、気をつけてな」


「そちらこそな」


そしてケビンとガンゲイルが空へと飛び立つ。


単純な飛行速度で言えばガンゲイルよりケビンが上だ。

ガンゲイルはソニックスワローよりも飛行速度が出ない。


奇襲効果を高めるためには、ケビンとガンゲイルによる同時攻撃が必要だ。

そのため、ケビンは後ろを確認しながらガンゲイルとの距離を保つ。


(やっぱ気持ちいいな……)


風を切り裂き飛ぶ時の感じがケビンは好きだった。

ある意味で、この世界に願っていたものが全て叶っているのが彼だった。


ガンゲイルとの距離を確認しながらであるので、無意識に飛ぶような事はできず、そのスピード感にトリップする事もできない。

しかし、ケビンにとってはそれが気持ち良かった。


自分の力で飛んでいると実感ができる。

それが何より嬉しかった。


「おっと」


目の前で、ソニックスワローが旋回しているのが見えた。

その下に、冒険者パーティがいるという合図だ。

ケビンは速度を上げてソニックスワローの更に上空を飛び過ぎ、大きく旋回しながら更に加速し、冒険者パーティへ向けて急降下する。


この速度を上げて突撃する瞬間も、ケビンは好きだった。

景色が溶けて流れていくのを横目に見ながら、迫る目標に焦点を絞っていく。


「!!?」


先にエリ達と接触した冒険者と同じく、彼らにも周辺を探索する斥候の冒険者がいた。

にも関わらず、彼らはケビンの接近にまるで気付けなかった。

気付けないまま、ケビンの『ソニックタックル』を受けて斥候が弾き飛ばされる。

更に、後方にいた、戦士風の冒険者と魔法使い風の冒険者を巻き込んで吹き飛んでいく。


ガンゲイルはソニックスワローが旋回している上空で停止し、弓に矢を番えて、引き絞った態勢のまま『気配遮断』を使用しつつ下降を開始していた。

ケビンが三人を吹き飛ばした直後、丁度彼女は上空五メートルほどの位置に降りて来た。


残ったもう一人の斥候風の男と、魔法使い風の女性に向けて矢を連続で放つ。


「がっ!?」


「うっ!」


それぞれの肩と二の腕に矢が突き刺さり、態勢を崩した。

膝をついた目の前に矢が突き刺さり、魔法使いの女性が尻もちをついてへたりこむ。

斥候風の男は何とか立ち上がって逃げようと試みる。


「ぐはぁっ!!?」


茂みの向こうから姿を現した、コータの『ダッシュキック』が彼の胸部を直撃した。


「く、ま、魔物が連携を取っている……!?」


(この前の冒険者からの情報はまだ伝わっていないのか?)


立ち上がった戦士風の冒険者の反応を見て、ドーテイはそう推測した。

自分の存在に気付いていないらしいその無防備な頭部に槍の柄を振り下ろし、昏倒させる。


「動くな、騒ぐな。死にたくはないだろう?」


「こ、言葉が……」


ケビンに吹き飛ばされた斥候の男が驚愕の呟きを漏らす。

最後尾にいたせいで下敷きになったらしい魔法使いの男は既に気絶していた。


「あらぁ? もう終わりましたか~?」


そこで、追いついてきたよりこーが姿を現す。

彼女を見た魔法使いの女性が悲鳴をあげかけ、思わず両手で口を塞いだ。


「ふむ。奇襲をかければこんなものか」


先に遭遇した冒険者パーティと、彼らの実力にそこまでの隔絶があるとは考えにくい。

やはり、攻撃する前に気付かれたのがまずかったようだ。


「男性が多いのは丁度良いわね。早速色々聞いちゃう? それとも、拠点まで連れて行く?」


最後に姿を現した幸恵は、戦わなくて済んだためか、安心した表情を浮かべていた。

そして、不安が取り除かれたお陰で、いつもの調子を取り戻している。


「拠点に連れて行くのも面倒だ。もうここで聞いてしまおう。ケビン君、ガンゲイル君は周辺の警戒を頼む」


「頼まれました」


「了解だ」


応えて、二人は再び上空へと飛び立つ。


「さて、聞いてまともに答えるとは思っていない。安心しろ。これから行う事はお前達には何ら責任が無いのだからな」


怯える魔法使いの女性に向けて、優しく語り掛けるように言うドーテイ。

しかし、相手からすれば、地獄の扉が開く直前のようにしか思えなかった。


幸恵が斥候の男に近付き、両手でその頬を包む。


「さぁ、私に見惚れなさい」


そして幸恵と目を合わせた男の瞳の中に、禍々しい光を放つ、ハートが出現した。


二十メートル以上上空から、超音速で急降下してくる鷲に気付けという無理ゲー。

そしてサキュバスの『魅了』に対しては隠し事も無理。

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