25.来訪者
森の中を馬車が走っている。
木々がそれほど密集しておらず、平地が続いているせいか、馬車は街道とそう変わらない速度で進んでいく。
空は抜けるように青く、木漏れ日が心地良い。
馬車の上を、鳥が数羽飛んでいた。
「燕か、珍しいな……」
御者が空を見上げて呟く。
「そうなの?」
「ああ。この辺りだと鳶が一般的だな」
幌の中からかけられた声に、御者が答えた。
「しかし、本当にこの方向でいいのか? この辺りは地元の者だと誰も寄り付かない魔物の森だぞ。猟師でさえ、半日で戻って来れる辺りまでしか入らないほどだ」
「ああ。だからこそ、だよ」
「物好きな奴もいたもんだな」
御者はそれ以上詮索しなかった。
御者は普段は冒険者をやっている。馬車を持ち、これを操る技術に長けているという触れ込みで、仕事を貰っていた。
このような危険な場所へ依頼人を送り届ける仕事を多くこなしているが、これが普通に冒険者ギルドで仕事を受けるより実入りが良かった。
危険な仕事だという事は依頼人の方がわかっているので、報酬を弾んでくれる事が多い。
危険な場所へ赴く者以外でも、人に知られず移動したい者からの依頼が舞い込む事もある。
そうした人間は独自に情報網を広げていて、腕の立つ運び屋の話は簡単に出回り、依頼人が向こうからやってくるようになる。
そんな仕事をこなすうちに、そうした依頼人は総じて詮索される事を嫌うと理解するようになった。
「しかし森に入ってもう二日。でかいでかいとは思っていたが、ここまででかかったとはな」
「前に来た時は、目的地まで徒歩で五日かかった」
「なら、あと一日くらいで着くかな……!?」
「おわっ!?」
御者は、陽光に煌めくそれに気付き、馬車を急停止させた。
突然馬車が揺れたため、幌の中から間の抜けた声が漏れた。
「ど、どうした……?」
「……あんた、中々やべぇ仕事持って来たな……」
幌の中からかけられた声には答えず、御者は呟いた。
唇の端が吊り上がっているが、頬を伝う汗が、彼の心情を物語っている。
彼の目の前には、うっかりすると見落としてしまいそうなほど、細い蜘蛛の糸があった。
木と木の間に、往く手を阻むように張られている。
日の光に照らされていなければ、気付かなかっただろう。
糸で巣を作り、獲物を待ち構える蜘蛛型の魔物は御者も知っている。
しかし、この糸を張った相手は間違いなく異質だ。
見つかりにくいよう、細い糸を横糸のみ。
それでいて、しっかり相手がひっかかるよう、何本も並んで張られている。
本能で巣をつくる魔物ではあり得ない発想だ。
確かな知能を持った相手による、狡猾な罠だ。
「とりあえず方向を変えて別の道を行くぞ」
「あ、待って、多分……」
御者が馬に指示を出すが、しかし、二頭の馬はまるで反応しない。
指示を聞かないというよりは、時が止まったかのように、身震いさえしなかった。
「な、なんだこれは……!?」
更に、御者も自分の体が動かなくなっている事に気付く。
そして木々の向こうから、何者かが地面を走って来る音が聞こえてきた。
「でやーっ!」
馬車の横手に現れたのは、巨大な雄鶏の魔物だった。
チキンレッグのコータである。
気合いの掛け声とともに蹴り技のスキル『スラッシュキック』を放つ。鋭い刃となった蹴り足が幌を切り裂き、馬車の中身を露出させる。
そのままコータは馬車を跳び越え、森の中へと走って行き、姿を消した。
「動くな!」
そして彼らの頭上から、鋭い警告が発せられた。
彼らの上空に、人の体に蝙蝠の顔と翼をもつ、カマソッツのガンゲイルが、矢を番えた弓を構えて浮かんでいた。
「お前達の周囲には、狙撃手が配置されている。動けば撃つ」
「『知恵ある魔物』か! 厄介な……!」
幌の中にいた、女性冒険者が抱えていた槍をガンゲイルに向けて投擲すべく構えた。
しかし、その直後に体が動かなくなる。
「く、なんだ……!? 体が……!」
「馬も俺もさっきから動かねぇ……!」
「が、ガンゲイルさーん! 大丈夫! この人達は敵じゃありませんよー!」
幌の中にいた、もう一人、整った顔立ちの少年が、ガンゲイルに向けて手を振り、味方である事をアピールする。
「なんだ、マイガじゃないか」
馬車に乗っていたのは、かつてサザンクロスのダンジョンを襲撃した勇者の一人、逢魔維牙ことマイガだった。
ガンゲイルは弓を降ろし、馬車の傍に降りた。
「どうした? 人間社会に馴染めなかったのか?」
「いや、それはないけど……」
尋ねるガンゲイルは半分冗談なのだが、真顔だったのでマイガには冗談だと思われなかった。
例えわかりやすい表情をしていたとしても、蝙蝠の表情の違いなどわからないので、やはりマイガには通じなかっただろうが。
「色々この国の事を聞いてきたよ。それと、領主軍を撃退したって聞いたからさ」
「ああそうか、LV3ストーリーの内容はお前も聞いていたものな」
「そうそう。人間の兵士の強さは俺もわかってるから、被害が出たとは思わないけど、一応戦力の増強を手伝おうと思ってね」
「なんだ? 一緒に戦ってくれるのか?」
「いやいや。どっちかって言うと、商売?」
言ってマイガがちらりと目をやったのは馬車の荷台。
そこには、鉄鉱石をはじめとした、大量の鉱物資源が積まれていた。
馬車が再び森の中を進む。
幌が無くなってしまったので中身は剥き出しだった。
馬車の上空をガンゲイルが飛び、馬車を先導するように、コータが前を走っていた。
荷台には妖艶な女性の魔物、サキュバスの幸恵も一緒に乗っている。
馬車の隣では、木の枝に糸を絡ませ、振り子の要領で前に振られ、タイミングを合わせて次の木に糸を絡ませる、という方法で高速移動する土蜘蛛のよりこーが並走している。
3メートル近い体長のよりこーなので、糸を絡ませ飛び移るたびに、木々は大きく軋んでいた。
「なんだか随分変わりましたね」
「うん。進化したのよ。あれ? そう言えば、よくルーちゃんってわかったわね?」
馬車の荷台で、マイガと幸恵が話をしている。
ちなみに、同行している冒険者は、念のため、として幸恵の『呪術』、『不動の呪い』で動けなくしていた。
ガンゲイルがバードマンからカマソッツに進化したのは、マイガがダンジョンを出た後なので、一目で彼女をガンゲイルだと判断した事に、幸恵は疑問を覚えたのだ。
「喋り方と声。あとは、まぁ、人間の体に動物の顔と翼って記号が一緒だったので」
「へぇ、そういうものなのね」
素直に幸恵は、マイガの観察眼に感心していた。
「というかよりこーさん、凄いね……」
「私達もあれを見た時はびっくりしたわ」
二人の視線は、糸を器用に使って木を伝っているよりこーに注がれている。
「彼女が言うには、ジャンプして移動する小さい蜘蛛がいて、それを参考にしたんですって」
「え? ちょっと何言ってるかわかんないです」
よりこーが説明したのは所謂ハエトリグモなのだが、糸をつかって木の枝にぶら下がり、反動でジャンプするような習性はしていない。
「マイガ、説明しなさい」
「え? うーん、難しいな」
体を動かせないので、目線だけマイガに向けて、女性冒険者が言った。
声には明らかに怒気が含まれている。
「まぁ、ちょっとした知り合いだよ。イリエも噂で聞いただろ? 領主軍が魔物の統率者の討伐に失敗した話」
「聞いたけど、それが何?」
「その統率者が彼女達の王、魔王なんだよ」
「はぁ!? 魔王なんてお伽噺……とも言えないか。魔物の統率者だってお伽噺の類だと思ってたものね」
イリエと呼ばれた女性冒険者は、マイガの言葉に眉を顰めながらも、どこか納得した様子で呟く。
「それで、噂でも言われてるだろ? 領域を侵さなければ危害を加えられる事はないって」
「……臆病風に吹かれた討伐隊の生き残りが、自分を正当化しようとしてるとか言われてるあれね」
「事実ですよね?」
「そうね。少なくとも、うちの魔王様は人間の国に戦争を仕掛ける気は無いみたいよ」
一部、過激な思想の持ち主がいる事は黙っておく。
「信じられるの?」
「あの魔王さんなら、信じていいと思うよ。少なくとも、俺達がこうして無事でいられるのが、その証拠じゃない?」
「縄張りまで呼び込んでから殺すつもりなんじゃないの? マイガの強さを考えれば、あり得る話だわ」
イリエの言葉に、幸恵は一瞬何を言っているのかわからない、という表情を浮かべる。
すぐに勇者としてのマイガの強さと、この世界の一般人らしい兵士の強さを思い出し、納得した。
勇者の強さにしても、ステータスをあとで教えられて理解しているだけで、幸恵が見た勇者であるアキラとマイガは、どちらも魔王に瞬殺されているので、あまり強いという印象が無かったのだ。
「期待を裏切るようで悪いけど、この人達がその気なら、俺はとっくに殺されてるよ。イリエが今動けない事からも、わかるだろ?」
「…………」
「それに、良い商売ができるっていうのも嘘じゃないからさ」
「……はぁ、わかったわ。どのみち、もう私には選択肢が無いしね」
「危険かもしれないって話はしたじゃん」
「具体的な内容は聞かされていない」
「流石にそれはね、出発前に魔王の所に行く、魔物の統率者の所に行く、なんて言えば、同行してくれないかと思ってさ……」
密告される可能性を考えた、とは流石に言えなかった。
「あっそぅ」
マイガの弁明を聞いたイリエは、そう言ったきり目と口を閉じてしまった。
そんなイリエを見て、困ったように頭を掻くマイガ。
「んふふ」
二人の様子を眺めながら、幸恵は楽しそうに笑うのだった。
それから休憩を挟んで一日進むと、ダンジョンの入口に到着した。
休憩は途中にあった拠点で行ったが、流石に『遠距離入口』は使わなかった。
「お久しぶりですね、マイガさん。そちらのお二人は初めまして。私、クランサザンクロスの盟主をいたしております、魔王のポラリスと申します」
マイガ達は『玉座の間』に通され、そこでポラリスと対面した。
入口から真っ直ぐに伸びた通路には、本来『空堀』が設置してあるのだが、部外者に見られないよう、『土の床』を上に被せて隠していた。
「はい、お久しぶりです、ポラリスさん。ダンジョン、大分変わりましたね?」
「ええ。向こうが干渉してこない限り、こちらからは何もしないと言ってありますが、防衛用の備えは必要ですので」
言うポラリスの言葉は、どちらかと言えばマイガ以外の二人に向けられていた。
二人は、様々な異形の魔物に囲まれて気が気ではないようだ。
特に、玉座に座るポラリスから放たれる、強大な力と威圧感に気圧されている。
「それで、こちらの戦力増強の手伝いをしてくださるというお話しですが……」
とは言え、ポラリス達にも、マイガ達の後ろに置かれた様々な資材は見えている。
鉄や石の『素材』は、サザンクロスで圧倒的に足りていないから、これが手に入るなら確かに戦力増強になる。
「当然タダとはいかないわけですが、スキルで服や鎧が作れますよね? それを俺達が街へ持って行き、売ります」
「そしてそのお金で、また鉱石類を買って持って来てくれる、という事ですか?」
「そういう事ですね。俺が直接取引すれば、この場所が他の人間にバレる事はないですし」
「領主軍にはもうバレているのでは?」
「負けて帰って来たんで、詳しい事は領民には流れてないんですよ。まぁ、人の口に戸は立てられないって言いますから、魔物の統率者に負けて戻ってきた事は知られてますけど。逆にそれで、領主軍を簡単に撃退できるほどの魔物がいるって噂になってまして、余計に人が寄り付かなくなってるんです」
そのお陰で、ここまでの足を確保するのに苦労した、とマイガは苦笑した。
「成る程。良いと思います。仮にそれで噂が広がったとしても、我々が人間に危害を加えないアピールにもなりますし」
言いながら、ポラリスは周囲を見回す。
エリを始めとした、メンバーが頷くのを見て、ポラリスも一度頷いた。
「それで、何がどのくらい必要でしょうか? 服や革の鎧ならある程度ストックがありますよ」
「服がいいですね。こっちの国だと、革製品の方が安いんで」
「そうなんですか?」
元の世界だと、革製品はやはり高級品のイメージがあった。
「狩猟民族なんですよ、基本的に。布の場合は作物を育てるにしろ、糸を紡ぐにしろ、人手も技術も道具も、革製品より必要になるらしくて」
「なるほど、文化の違いというやつですね」
言われてみれば、『革の服』はスミスが『武具作成』を使用してSPのみで作成できるが、布製品は植物の『素材』が必要になる。
ただ、植物の『素材』は森の中で山ほど取って来れる自然物を『錬成』すれば作れるので、それほど苦労ではなかった。
更に、ただの布でよければ、クラフトマンの『道具作成』でSPと『素材』を消費して作成できるから、商品の安定供給は可能だった。
「ただ、あまり大量だとはんぺんさんの負担が大きいですね。戦力の増強を優先するなら、商品用の『素材』を錬成する時間が少なくなりますし……」
「なら、『高炉』を設置すればいいんじゃない? 鉱石の『素材』ならあれで作れるでしょ?」
そこでエリが提案する。
今まで元になる鉱石資源が手元に無かったため、設置を見送っていたが、鉱石類の自然物を置いておくと『素材』になり、『素材』を置いておくと『インゴッド』になる施設がある。
どのようなものでも24時間で変化し、一度に十個まで同時に利用できる。ただし、一種類のみであり、鉄と銅を五個ずつ、のような使い方はできない。
更に『錬成』スキルを所持したキャラクターを最大二人まで配置でき、配置していると一人につき、利用できる個数が一つ増える。
しかも配置されたキャラクターは経験値を獲得できるため、はんぺんを配置するとレベリングが捗る。
「流石に一人は寂しいよ」
「では生産職皆さんで『高炉』で作業すれば良いのでは? あくまで配置されているのははんぺんさんだけ、という扱いですし」
「ポラリス君とのコミュニケーションが、作業中の息抜きなのに?」
「う……」
素直に、ポラリスは照れた。
「それに、それ一度配置されたら24時間出れないだろ? 途中で退出したら効果を発揮されなくなる訳だし」
「あー、それは確かにまずいですね」
サザンクロスをブラック企業にだけはしないと誓っているポラリスは、ギリの指摘に素直に頷いた。
「では、『高炉』は設置しますが、はんぺんさんは配置しないという事で」
「いっそユニークモンスターにアルケミストつけて配置すればいいんじゃないかな?」
「拠点の設置も終わってないのに、これ以上ソウルの使用案出してどうするんだよ」
「佐藤さん、ギリさん、今まで作ったもののストック、持って来ていただけますか?」
「オーキードーキー」
「おっけー、誰か手伝ってくれ」
そして数名のメンバーが『玉座の間』をあとにする。暫くして、様々な服や道具を抱えて戻ってきた。
「ディラン、イリエ、どうだ?」
三人の前に置かれたそれを見て、マイガが二人に尋ねる。
「うーん、革の服や鎧はそれほど値はつかないだろう。街で売られているものとそう大差ない。この布は……木綿か? これなら丈夫だし、欲しがる冒険者や傭兵は多いんじゃないかな」
「装飾を増やして貴族や富豪相手にした方が良くない? 数を売るよりその方が効率的だ」
「それだと出自が問題にならないかな?」
それまで戦々恐々としていた二人だったが、品定めを始めると、途端に生き生きとし始めた。
「ん? これはなんだ? 紙の束? 絵が描いてあるが、絵画か……?」
「美術品としての価値は流石にわからんが、同じようにものの価値がわからん奴相手なら、大きさがある程度欲しいな」
イリエが手にしていたのは、一枚が片手に収まる程度の大きさの紙の束だった。
絵と見た事も無い模様が描かれている。
「お、トランプ。そっか、アラビア数字ってこの世界じゃないもんな」
「あー、暇潰し用に作った奴だな。植物繊維の『素材』か革の『素材』があればすぐ作れるぜ」
「ウノやハナフダもあるヨ!」
「リバーシも作ってたろ、確か」
「暇潰し用? 玩具か? ああ、絵札なのか」
「ボードゲームならチェスっぽいのならあったけど、確かにリバーシは見なかったな」
「他に転生者がいれば、誰かしら広めてそうなものだけど、無いのか」
「ストーリーを追ってると、そんな暇がないんじゃないかな? 俺途中で止まったから、LV3以降を知らないけどさ」
「ひょっとしたら国が違うのかもしれん。聞いた限りの文明なら、中々情報が他国に広がる事もないだろうし」
「じゃあボードゲーム系は適当に遊んで貰って、良さそうな奴を持ってって貰うか。量産簡単だし」
「トランプは色んな遊び方のルール書いた紙を一緒にすれば良いんじゃないか?」
「でもこの世界に特許って考え方あんのか? 簡単に真似されちゃわない?」
「こんな厚紙で綺麗な植物製の紙は見なかったし、絵具も基本高価だから、それで差別化できると思う」
「まて、マイガ、まさかこれ、そんなに安く作れるのか!?」
マイガの言葉を聞いて、それに気付いたイリエが会話に割り込んだ。
「トランプとして認識して作れば、一回の『道具作成』で54枚で出てくるから、かなり効率良いぞ。植物繊維の『素材』なんて山ほどあるし」
「また私の睡眠時間が削れるんだね……」
マイガが無言でギリを見ると、その意味を誤解しなかったギリがそう答えた。はんぺんが項垂れている。
「今まではどれが何にどれだけ必要かわからなかったから、とりあえず片っ端から『素材』にして貰ってましたが、必要なものがわかれば、優先順位を付けられるので、一日の仕事量はかえって計算しやすいかもしれませんよ」
これまではんぺんは、依頼が残っているのに休むのが苦痛だったのでサービス残業、自主的な休日出勤を行っていたが、一日に必要な仕事量が定まれば、かえって精神的な余裕が出るのではないか、とポラリスは考えた。
当然、その仕事量は、はんぺんのキャパシティを超えないように調整するつもりだった。
「少なくとも、一日に十個は作れるな。元手の点で言えばほぼ無料だ」
「だってさ」
「じゃ、じゃあこの色鮮やかな紙の束もか!?」
ディランと呼ばれた御者の男が手にしているのはウノだった。
「ああ。それも一緒だ。枚数は多いけど、消費するSPと『素材』の数は変わらないんだよな」
「多分、それで一個って括りなんでしょうね。確かカード一枚だけでも消費するSPと『素材』の数は同じでしたもんね」
「マイガ、これはイケる! これだけ品質の良いものなら、誰もが欲しがる! 貴族や富豪ならそれこそ言い値で買うぞ!」
「ぼーどげーむ? もなんだこれ、こんなに小さいのに、こんなに精巧で……」
イリエが目を輝かせてマイガに迫り、ディランは特殊な宝石を取引する商人になって遊ぶ、という設定のボードゲームの、そのアミュレットを模したコマを見て唸っていた。
「あれ? これ俺が過労死するフラグか?」
「アンデッドならバステ食らわないから不眠不休でも働けるから大丈夫だろ」
「させませんよ」
衣服や武具に比べて、かなりカードゲームやボードゲームの反応が良いのを見て、ギリが戦慄と共に呟いた。
グランドの無慈悲な提案は、幸いにもポラリスによって阻止されそうだ。
金属の素材ゲット。そしてスパイ勇者はチート商品ゲットです。
ただ、あまり派手にやると、領主や欲深い豪商から狙われる可能性が高まります。




